AMBASSADOR'S

井原知一の100miler DAYS #05 | 食べる生活(からすてんぐ100)

2020.12.02
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文・写真:井原知一 構成:TRAILS

What’s 100miler DAYS? | 『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げる、日本を代表する100マイラー井原知一。トモさんは100マイルを走ることを純粋に楽しんでいる。そして日々、100マイラーとして生きている。そんなトモさんの「日々の生活(DAYS)」にフォーカスし、100マイラーという生き方に迫る連載レポート。

* * *

トモさんの暮らしを「走る生活」「食べる生活」「家族との生活」という、主に3つの側面から捉えていきながら、100マイラーのDAYSを垣間見ていこうというこの連載。

第5回目のテーマは、「食べる生活」です。

今回は10月に開催され、56本目の100マイル完走となった『からすてんぐ100』(※1) を紹介してくれます。

コロナにより多くのレースも中止となったため、今回はトモさんにとっても実に9カ月ぶりの100マイル。しかも、仲間たちがインディペンデントに作り上げた草レースということで、トモさんもかなり楽しみにしていたようです。

またコロナによる自粛をきっかけに、トモさんの肉体にも大きな変化がありました。下にあるトモさんの写真も、なんだか前より痩せたような気がしませんか? そのワケを今回のストーリーで語ってくれます。

※1 からすてんぐ100:2020年10月9日〜11日に、島根県松江市・かんべの里 (てんぐの森) で開催された100マイル走。今回が第1回目。この地には「からす天狗」の民話があり、これがモチーフとなっている。そのため、1.5kmの周回コースを109周、開催日も10月9日となっている。制限時間48時間、累積標高9,592m。

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久しぶりの100マイルを、じっくり噛みしめながら走るトモさん。photo by Satoru Watanabe


からすてんぐ100:100マイルをはじめた頃を思い出させてくれる、手作り感満点の草レース


1年前の10月4日、ランニングイベントのために島根県松江市にある「かんべの里」を訪れました。その際、イベントの主催者に「ここの周回コースで100マイルを開催してみたら?」と話したのがことの始まりです。

それがきっかけで、やりましょう! となるのは珍しくないのですが、すごいのは、RD (レースディレクター) の西山さんが、なんとこれを1年後に実現させたことです。

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エイドも、ご覧のとおりほのぼのとした雰囲気。レースというよりは、みんなで100マイルを楽しんでいる感じ。

「からすてんぐ100」は、100マイルをこよなく愛する僕としてはたまらない、手作り感満点の100マイルでなんです。ほとんどの選手がはじめての100マイル。しかも一般的にはおじさんおばさんと言えるような年齢の人たちが、人生初100マイルにチャレンジしているんです。その挑戦者の初々しさが、またたまらないんですよね。

自分も10年前はまったく同じでした。ただ経験値があがった今では、はじめてならではのドキドキや不安などの感覚は忘れていたけど、当時の気持ちや新鮮さが蘇りました。

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無事ゴールして、第1回目の「からすてんぐ100」の木製プレートをゲット。

今年はことごとくレースがなくなったこともあり、自分のベースを上げるべく、スピード・持久力・レース特化など、期間を決めてプログラムを組んでいました。「からすてんぐ100」のフェーズとしては、スピード練習を終えたタイミング。

長距離の練習はあまりしていなかったので、目標だったsub27 (27時間以内) というタイムもsub30くらいになればと切り替えて走りました。


【食べる生活 (その1):レース3〜4カ月前】 禁酒! 大好きなビールをやめてみた


実はお酒をやめました。きっかけはコロナです。

自粛期間中にこれまで以上に飲む量が増えて、夕方5時になると飲みたくなっている自分に気がついたんですよね。で、これはちょっとヤバイなと思いはじめて、ためしに禁酒してみることにしたんです。

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夕食時の白米が最高! 愛娘のさくらちゃんもマネして白米をかきこむ。

正直なところ、3日も持たないだろうと思ってました。それが意外や意外、さほど苦労なくやめられました。

もちろん最初のころは、夕食の際に飲みたくなることもありましたが、そういうときは、大好きな白米をかきこんで満腹にすることで、これじゃビールなんて飲めない! ってくらい余地をなくすという技を編み出しました。

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庭で友人家族とバーベーキューをするのも、楽しみのひとつ。お肉と野菜と、もちろん白米!

これまで晩ごはんといえば、お酒とタンパク質、サラダなどの組み合わせでしたが、それがワンパクだった中学生の頃に戻った感じですね。焼肉の日に、お肉にたっぷりとタレをつけて、お米にワンバウンドさせて食べる! その瞬間が、昔も今もたまらなく好きです。


【食べる生活 (その2):レース1〜2カ月】 甘党になるも、体重は例年よりも減少傾向


お酒を飲まないようになってから、味覚も変わったのか、甘いものを進んで食べるようになりました。

これ!と言った好きなものがあるわけではないのですが、仕事中にコーヒーを飲みながらビスケットやチョコを食べたり、コンビニに行くとどうしてもお菓子やデザートコーナーで立ち止まってしまいます。

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以前は素通りしていたのに、最近ではついつい立ち止まって眺めてしまう。

ファットアダプテーション (※2) をしていたこともあり、自分の身体からエネルギーが枯渇していくタイミングがわかるようになったんですよね。それで、お菓子を食べたときに身体に糖分のエネルギーが補充されて、この感じだと自宅の裏山をこのくらい走って帰ってこれるな! なんていう感覚も芽生えました。

炭水化物をとる量も増え、甘いものも以前より多くとっているのですが、逆に体重は減りました。

※2 ファットアダプテーション (FAT ADAPTATION):安静時、運動時に脂質をエネルギーとして利用しやすい身体に調整すること。脂質の摂取と計画的なファスティング、脂質代謝を高めるトレーニングを行なうことで、より高負荷でも高い脂質代謝を保つことが可能になり、高負荷の運動を無理なく継続できるようになる。http://fatadaptation.net

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トモさんの誕生日。これまではホールケーキをひと口くらいしか食べなかったのに、甘党になって迎えた今年はほとんど一人でたいらげてしまった。

おそらくお酒を飲まなくなったことで、睡眠力がアップして、しっかりとリカバリーができてているから練習の質も上がり、高強度の練習が可能になって、代謝もよくなっているのだと思います。

例年この時期に体重は75〜78kgを行き来するのですが、現在の体重は72kgまで落ちてきています。まだ微妙に減りつづけているので、年明けのレースには目標としていた65〜68kgで臨めそうです。


【食べる生活 (その3):レース直後 】 スパゲッティとカツ丼のダブル炭水化物!


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スパゲッティは好物のひとつ。

レースで走っているうちから、終わったらあれ食べたい! これ食べよう! 食べた瞬間に速攻で寝るぞ! といった、普段ならできない贅沢なことばかりを考えてました。たとえば、ラーメン屋でラーメンを2つ頼んで2種類の味を交互に楽しむとか。

レースが終わった日は、そのままキャンプをしたので、レース後にまずはコンビニに直行して大盛りスパゲッティとカツ丼という、普段ではあり得ない組み合わせのダブル炭水化物! でキメてみました。

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醤油ラーメンだけでは足りずに、味噌ラーメンもオーダーして、余裕で完食。

翌日は雑誌の取材だったのですが、合間にラーメン屋に直行して、あっさり醤油にしようか、コッテリ味噌にしようか、迷った末に2つ頼みました。

店主にお二人ですか? と聞かれましたが、はい一人です、と。後半は少し味に変化を加えたくて醤油ラーメンの麺を味噌ラーメンの汁に入れて、つけ麺風にしてみましたが、ただの味噌ラーメンの味でした。


【食べる生活 (その4):レース1週間後】 タンパク質と野菜中心のバランスのとれた食生活


現在の練習プログラムとしては持久力を磨くステージに突入していて、食事で意識していることは、充実した練習後に良質なタンパク質をしっかりとること。

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お肉をガッツリ食べてタンパク質をチャージ。これも身体づくりの一環。

食べるものによって自分が形成されているので、ダメなものを食べれば、それなりの姿になってしまう。だから練習で頑張れば頑張るほど、良いものを取り入れて自分の身体をつくっていきたいと思っています。

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56本目の100マイルを完走することができたのも、奥さんのこの手料理のおかげ。

1日のメニューの例としては、こんな感じです。

■ 朝食:ごはん、味噌汁、納豆、サラダ
■ 昼食:カツ丼 + ライス (普通のカツ丼ではごはんの量が少ないので)
■ 夕食:ごはん、味噌汁、サバと大根の煮付け、サラダ、漬物

いつもながら食事管理は妻がしてくれるので、とても安心だし、助かります。

この調整で体をつくっていきたいと思っています。次の目標は、年明け2月上旬の香港のHK4TUC (※3)、そして3月下旬に出走確定となった北米のバークレー (※4) です。

※3 HK4TUC:Hong Kong Four Trail Ultra Challengeの略称。2012年に、香港在住のウルトラランナーであるアンドレ・ブルームバーグによって創設された。香港にある4つのロングトレイル (マクリホース・トレイル、ウィルソン・トレイル、ホンコン・トレイル、ランタウ・トレイル) をつなげた、全長298kmのレース。4日間かけて走るステージレースとして始まったが、翌年に3日間に短縮、2014年からは制限時間60時間となった。ただし、75時間以内にゴールすればサバイバーとして認定される。

※4 バークレー・マラソンズ:アメリカ・テネシー州のフローズンヘッド州立公園で毎年3月に開催されている耐久レース。「世界一過酷なレース」とも呼ばれている。1986年に第1回目が開催。以来、34年間で完走したのはたった15人。発案者は、ラズ(ゲイリー・カントレル)。総距離は100マイル以上、累積標高は2万メートル以上、制限時間60時間。エントリー方法も公開されておらず、謎の多いレースでもある。

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1年前からコーチングさせてもらっている木村さんの初100マイルを、一緒に走れて嬉しかった。

以前から、「ビールが大好き」と自ら公言していたトモさんが、まさかお酒をやめるだなんて思ってもみなかった。

コロナによる自粛で、「ここままじゃ毎日自宅で5時から飲むダメ人間になる」という危機感がきっかけだったが、禁酒によりタンパク質と野菜中心の食生活がより徹底され、睡眠力も上がり、結果的にはかなり体質改善が進んだようだ。

いつも以上に身体もしぼれつつあるトモさん。次の100マイルでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、とても楽しみだ。

TRAILS AMBASSADOR / 井原知一
現在の日本における100マイル・シーンにおいてもっともエッジのた立った人物。人生初のレースで1位を目指し、その翌年に全10回のシリーズ戦に挑み、さらには『生涯で100マイルを、100本完走』を目指す。馬鹿正直でまっすぐにコミットするがゆえの「過剰さ(クレイジーさ)」が、TRAILSのステートメントに明記している「過剰さ」と強烈にシンクロした稀有な100マイラーだ。100マイルレーサーではなく100マイラーという人種と呼ぶのが相応しい彼から、100マイルの真髄とカルチャーを学ぶことができるだろう。

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WRITER
井原知一

井原知一

1977年、長野県生まれ。アメリカの大学を卒業後、仕事を転々とした末、2007年にスポーツ商社に転職。同企業のダイエット企画がきっかけでトレイルランニングに出会う。当時31歳。すぐさま夢中になり、トレイルラン2年目でOSJ (アウトドア・スポーツ・ジャパン) のシリーズ戦全戦を完走。3年目にはSFMT (信越五岳トレイルランニングレース) で8位。初めての100マイルは、2010年に自ら企画した草レースTDT(ツール・ド・トモ)。以降100マイルの魅力にとりつかれ、『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げて走るようになる。つねにチャレンジしつづけることをモットーとし、90歳での100マイル完走も目標のひとつ。走ることの素晴らしさを広め、人生を変えるきっかけづくりのために、ポッドキャスト『100miles, 100times.』や、自ら立ち上げた『Tomo's Pit』を通じてコーチングも手がけている。

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