AMBASSADOR'S

パックラフト・アディクト | #42 Packrafting Meet-up Europe 2020

2021.05.07
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(English follows after this page.)

文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳・構成:TRAILS

TRAILSのアンバサダーであるコンスタンティンが、今回レポートしてくれるのは、ヨーロッパ最大のパックラフト・イベント『Packrafting Meet-up Europe』。

2018年から毎年5月にスロベニアで開催されている、このイベント。2020年は、新型コロナウイルスの影響で延期が決定。場所も変更となり、9月にオーストリアで開催されることとなった。

今回の目玉は、3つのメーカーのパックラフトを試せる試乗会。出展していたのは、アルパカラフト、ココペリ・パックラフトに、チェコのロブフィン・パックラフトを加えた3メーカー。これらのメーカーのパックラフトを、いろいろ乗り比べできるイベントだったようだ。

試乗会に加え、例年どおり、パドリングのクリニックや、レスキューやリペアのワークショップも含め、多彩なコンテンツが行なわれた。

ヨーロッパにおけるパックラフティング・カルチャーの今が、体感できるレポートとなっている。コンスタンティンの試乗インプレッションも、お楽しみください。

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オーストリアのヴィルダルペンに、10カ国から約50人のパックラフターが集結。


開催場所を変更し、規模縮小しながら開催にこぎつける。


2020年9月、第3回『Packrafting Meet-up Europe』に参加してきました。昨年は、いつもとは異なった開催になりました。まずはその背景を説明します。

このイベントの第1回目と第2回目は、5月初旬にスロベニアで開催されました。しかし今回は、9月中旬にオーストリアで開催されることとなりました。他の多くのイベントと同様に、新型コロナウイルスの影響を受けたためです。

5月はコロナウイルス第1波のピークで、ヨーロッパのほとんどがロックダウンの状態。それで年内中の延期が決定し、結果的に、9月中旬に開催することになりました。この時期は、新型コロナウイルスの感染者数も比較的おだやかな状態でした。

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パックラフト・ヨーロッパのホームページ。すでに2021年のミートアップも発表されている。(https://packrafteurope.com/より)

とはいえ、スロベニアは安全を期して国境を閉鎖したため、隣国オーストリアのザルツァ川沿いにあるヴィルダルペンに場所を移すことになりました。ちなみに、主催者であるパックラフト・ヨーロッパ (※1) のセオンとミカエラもオーストリア在住です。

このような変更もあって、イベントは開催されたものの、規模は縮小しました (それでも10カ国から50人ほど参加しました)。このイベントを楽しみにしていた北欧の友人たちは、今回は参加を断念せざるを得ませんでした。帰国後に2週間の隔離期間を取らなければならないことがネックになりました。

※1 パックラフト・ヨーロッパ (Packraft Europe):オーストリア出身のセオンとミカエラが立ち上げたパックラフトの会社。アルパカラフトのディーラーであり、パックラフトのガイドやトレーニングも行なっている。2018年からは、『Packrafting Meet-up Europe』を主催。

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オーストリアでの開催となったことで、隣国のチェコからの参加者が増えた。

一方で、場所が変わったことで、新しい人たちがたくさん参加できるようにもなりました。たとえば、隣国のチェコからも多くの人が参加していました。


開催地は、オーストリアにあるパドラーに人気のザルツァ川。


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オーストリアの田舎町、ヴィルダルペンの街並み。

開催地のヴィルダルペンは、人口数百人の小さな村ですが、のどかな山の景色が広がるとても美しい村です。ドイツ語で「Wild Alps (野生のアルプス)」を意味するこの村は、大都市からも幹線道路からも離れたところにあります。

この村の最大の魅力は、ザルツァ川。パドラーに人気の川です。イベントでは、ヴィルダルペンの村にあるキャンプ場2つが使われていて、私たちはそのうちの1つに滞在しました。

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美しく、バリエーションに富んだザルツァ川。

ザルツァ川には、ヴィルダルペンより上流にある穏やかなクラス I〜II (※2) から、川を下った先の小さな渓谷にあるクラス III まで、さまざまなレベルのセクションがあります。

天候に関係なく楽しめる川で、私が滞在した3泊4日の間に、雨や霧の日から晴天の日までありましたが、このイベントはまったく問題なく開催できました。

※2 クラス:瀬(川の流れが速く水深が浅い場所)の難易度。クラス(グレードや級とも表現される)が I〜VI(1〜6級)まであり、数字が大きいほど難易度が高い。ちなみに、I は飛沫もなく静かな流れ、II はやや高い波があるが規則的、III は高い波が不規則にあり流れも強い。


アルパカラフト、ココペリ・パックラフト、ロブフィン・パックラフト、3ブランドの試乗会も開催。


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3ブランドのパックラフトをすべて試乗できる貴重なチャンス。

今回のイベントでは、試乗会も開催されました。今回は、アメリカのアルパカラフトとココペリ・パックラフト、チェコのロブフィン・パックラフト、この3つのメーカーが参加していました。

試乗会では、パックラフトを借りて試すことができます。これは、まさに私がやりたかったことでした。そして、私は3日間の滞在中、毎日違うパックラフトを漕ぎました。

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同じ川でも、パックラフトが異なればまた違った印象になる。

私はアルパカラフトのデナリリャマ (※3) を持ってきていたのですが、ミートアップの期間中、自分のパックラフトを一度も使わず、自分のテントの前に置いたままでした。その代わりに、毎日新しいパックラフトを試すことができたのです。

※3 デナリリャマ (Denali Llama):アルパカラフトのスタンダードシリーズ中、最も大きいサイズのパックラフト。


試乗1:アルパカラフト


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1日目に試乗したのは、アメリカのアルパカラフト (手前の青色の舟)。

初日には、アルパカラフトのウルヴァリン (※4) のホワイトウォーターデッキを借りることができました。私は数年前、アメリカのグランドキャニオンで、このパックラフトのカスタムメイド版を漕いでみたことがあります。

今回は通常バージョンのもので、私は気になっていることがありました。それは、このモデルが、身長が低く、体重が軽い人向けのものであると聞いたことがあり、その点についてでした。私は、身長192cmで体重90kg以上なので、対象外なのではないかと思っていたのです。

実際乗ってみると、クイックネスがとても良く、サイズも小さすぎる感じもなかったです(数日間のトリップで多くの荷物を運ばなければならない場合は、また違うかもしれませんが)。

※4 ウルヴァリン (Wolverine) :ホワイトウォーター向けのハイパフォーマンス・モデル。従来のホワイトウォーター向けモデルである、やや大型のナーワル (Gnarwhal) と小型のアルパカリプス (Alpackalypse) の2つの特徴をあわせ持つ。


試乗2:ココペリ・パックラフト


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2日目に試乗したのは、アメリカのココペリ・パックラフト (手前の黄色の舟)。

次の日は、乗り慣れているアルパカラフトではなく、ココペリ・パックラフトのセルフベイラー (自動排水機能) モデルを試してみました。私は、今までセルフベイラーのモデルには乗ったことがありませんでした。

全体的に操作性は良かったです。ただ、タイストラップ (膝を固定するストラップ) がすぐに緩んでしまうのが気になりました。膝から外れてしまわないように、結び目をつくって対応しました。

これがよく発生してしまう問題なのか、それとも通常3点式のタイストラップの中央部分がなかったことが原因なのかは、はっきりしませんでした。私が使ったときは、前にこのパックラフトを使用していた人たちが、中央部分のストラップを、どこかに置き忘れてしまっていたのです。


試乗3:ロブフィン・パックラフト


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3日目に試乗したのは、チェコのロブフィン・パックラフト (中央の赤色の舟)。

最終日は、チェコのロブフィン・パックラフトを漕ぐことができました。

いろんな種類のモデルを乗ったので、正直、どれに乗ったかちゃんと覚えられていないのですが……。ロブフィン・パックラフトの経営者であるロバート・カジック氏と彼のチームは、いろんなサイズのパッククラフトを試乗用に持ってきてくれました。いずれも、3つの気室 (2つの側面と底面) を別々に膨らませるタイプの舟で、デザインも非常にユニークでした。

これらのパックラフトはPVC (ポリ塩化ビニル) 製なので、かなり高い圧力まで膨らませることが可能です。底面の気室はキール (※5) がしっかりあって、通常のカヤックにも似ています。この効果はすぐに実感できました。エディキャッチ (※6) やフェリーグライド (※7) が、非常に楽にできるようになるのです。

※5 キール:カヤックの船底に張り出している筋状の部分。直進性を高めるために設けられている。

※6 エディキャッチ:岩などの障害物に流れがぶつかると、その下流には水がとどまり渦巻いている箇所が生まれる(エディ)。本流から抜け出てこのエディに入るテクニック。下流を観察したり、水上で休憩したり、上陸する際に必要な止まる技術。

※7 フェリーグライド:水の力を利用して、流れの中で左右に移動するテクニック。船首(バウ)を斜め上流に向け、ボートの底で流れを受け止めながらパドリングし、水の力を使って効果的に横方向にスライドする技術。

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底面にキールと呼ばれる筋状の部分が設けられているのが、特徴のひとつ。

ロブフィンのパクラフトを借りた他の人たちは、座り心地が悪いと言っていましたが、私は何の問題もありませんでした。ロングトリップだとどうかはわかりませんが、半日レベルではすごく快適でした。

このように、ミートアップの3日間、私は毎日違うパックラフトを漕ぎました。これは、とても貴重な体験になりました。


技術やTIPSが学べる、ワークショップやトレーニングも実施。


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パドリング技術を学ぶ、実践的なトレーニング。

最終的には、ワークショップやクリニックのプログラムも少し変わりました。初日にはいくつかのワークショップがあり、再乗艇、ホワイトウォータースイミング、スローバッグの使い方などの重要な安全技術のほか、エディキャッチやフェリーグライドなどのトレーニングも実施されました。

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スライドショーではレスキューのTIPSも紹介。

これらのプログラムは、経験豊富なボランティア・スタッフが、企画、運営してくれました。さらに、いくつかのリクエストに応えて、主催者のセオンは遠征準備のためのワークショップや、パックラフトの修理方法のデモンストレーションも行ないました。

ロブフィンのロバートはPVCボートを修理したエピソードを語り、アラスカのパックラフターであるクレイグは悪天候時の修理のTIPSを教えてくれました。最後に、セオンがブーフ (※7) のワークショップを開催しました。

※7 ブーフ:滝やドロップ (落ち込み) に安全に通過するための技術。大きめのドロップなどの場合、直下に落ちると危険なので、前方に飛び出して着水する必要がある。着水後は、ひきづりこまれないように、すぐに漕ぎ出す。

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パックラフトの修理に関するワークショップ。

全体の感想としては、新しい技術を学び、古い友人と再会し、新しい友人も作ることができた素晴らしいイベントでした。また、自分自身はじめてオーストリアでパドリングできたのも良かったです。私は、きっとまたここに漕ぎにくるでしょう。

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またいつか、このザルツァ川をパックラフトで下りたい。

パックラフターがこれだけ集まるイベントが開催できるなんて、なんとも羨ましい限りである。そして、パックラフトの中心地である北米だけでなく、このように世界各地でパックラフターのコミュニティが形成されていることに、ワクワクさせられる。

ちなみにアメリカでは、アメリカ・パックラフト協会 (American Packrafting Association) がRoundupを毎年主催しているが、こちらは2020年はコロナにより中止となってしまったようだ。

2021年は、少しずつこのようなコミュニティが再活性化していくことを願うばかりである。

TRAILS AMBASSADOR / コンスタンティン・グリドネフスキー
コンスタンティン・グリドネフスキーは、ヨーロッパを拠点に世界各国の川を旅しまくっているパックラフター。パックラフトによる旅を中心に、自らの旅やアクティビティの情報を発信している。GoPro Heroのエキスパートでもあり、川旅では毎回、躍動感あふれる映像を撮影。これほどまでにパックラフトにハマり、そして実際に世界中の川を旅している彼は、パックラフターとして稀有な存在だ。パックラフトというまだ新しいジャンルのカルチャーを牽引してくれる一人と言えるだろう。

(English follows after this page)
(英語の原文は次ページに掲載しています)

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WRITER
Konstantin Gridnevskiy

Konstantin Gridnevskiy

1978年ロシア生まれ。ここ17年間はオランダにある応用科学の大学の国際旅行マネジメント課にて、アウトドア、リーダーシップ、冒険について教えている。言語、観光、サービスマネジメントの学位を持っていて、研究は、アウトドアでの動作に電子機器がどう影響するか。5年前からパックラフティングをはじめ、それ以来、世界中で川旅を楽しんでいる。これまで旅した国は、ベルギー、ボスニア、クロアチア、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、モンテネグロ、ノルウェー、ポーランド、カタール、ロシア、スコットランド、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、オランダ。その他のアクティビティは、キャンプ、ハイキング、スノーシュー、サイクリングなど。

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