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パックラフト・アディクト | #41 ディンケル川、夜間外出禁止令のなか日帰りパックラフティング

2021.03.12
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(English follows after this page.)

文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳・構成:TRAILS

TRAILSアンバサダーのコンスタンティンが住むオランダでは、冬のあいだ、夜間外出禁止令が続いています。そのような状況で、コンスタンティンもすべての旅の計画をいったんストップしていました。

ところが、突然やってきた春の陽気に、外出時間制限を守りながら、急遽ローカルの川に仲間と一緒にデイ・パックラフティングに出かけることにしました。期せずして訪れた、パックラフティングのシーズン・イン。

仲間のパックラフターは2歳の子どもも連れてきて、のんびりおだやかなパックラフティングを楽しんだようです。

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オランダとドイツの国境に沿って流れるディンケル川。


突然の暖かさによって、急遽パドリング・シーズンがスタート。


今年の2月は、異常な気候が数週間続きました。まず、前触れもなく、北極からの風が吹き、寒気と雪を運んできました。オランダでは、夜の気温が−10℃以下という日が1週間以上も続きました。そして、数年ぶりにあらゆる運河や湖や川に、氷が張りました。ロックダウンから解放されたかのように、たくさんの人々が、一斉に自然の中に飛び出しました。雪で遊んだり、自然にできた氷の上でスケートをしたりして、みんな楽しんでいました。

そうしたら、突然に風向きが変わり、今度は南から暖かい空気が流れ込み、これまでにないほどの暖かさになりました。南からの風は、サハラ砂漠からの砂も運んできました。これによってものすごく綺麗な夕日と日の出が現れました。その色を「サーモン」と、オランダの気象学者は表現していました。

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急に気温が上がり、雪もとけて水位が上がった。

今度は、日中気温は15℃を超える日が1週間近く続きました。2月としては、記録的な暖かさです。この暖かさで雪はすぐにぜんぶ融けてしまい、川の水位も上がりました。

春のような暖かな気候に、豊富な水量。これは私にとっては逃すことのできない、素晴らしい組み合わせです。これはと思って、パックラフティング仲間と一緒に、このタイミングで今年のパドリングシーズンをスタートさせることにしました。


コロナの外出時間制限を守りながら、ローカルの川のワンデイ・トリップへ。


私たちが向かったのは、ディンケル川というオランダとドイツの国境にある小さな川です。漕いだセクション (ロッセル 〜 ルッテルザンドまでの15km) は、もとのままの自然の特徴と魅力がたくさん残っているところで、昔の風景の中を川が曲がりくねりながら流れています。

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ディンケル川には、昔からの自然が今なお残っている。

今回一緒に漕いだ友人とは、年初の頃に、2月末あたりで一緒に週末トリップをしようと話していました。しかし、1月末からオランダ全土で夜間外出禁止令 (21時〜4時半までは外出禁止) が施行されてしまいました。それによって計画はすべて保留にせざるをえませんでした。しかし、今回の天気予報を見て、週末トリップの計画を決行することにしました。

もちろん宿泊を伴う旅は問題外ですが、日帰りであれば大丈夫です。21時までに確実に帰宅できる方法さえ考えれば行けるはずでした。

今回は、過去の記事でも登場したレミ (詳しくはコチラ) と、ディディエというオランダのパックラフター仲間と一緒に行きました。ディディエは、昨年オーストリアで開催された『パックラフティング・ミートアップ・ヨーロッパ』で知り合った仲間です。

ディディエは、パックラフトの経験は比較的浅いものの、経験豊富なアウトドアズマンでありパドラーでもあります。しかも彼はアラスカとベリーズ (※1) でパックラフトを使った遠征をした経験もあります。

※1 ベリーズ (Belize):中央アメリカの東岸に位置する国。ジャングル地帯があり、そこにはマヤ文明の遺跡が残されている。

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2021年に開催された『パックラフティング・ミートアップ・ヨーロッパ』で知り合ったディディエ。

そして4人目のメンバーはレミの息子のセン。彼は2歳になったばかりですが、すでに両親と一緒にキャンプやパックラフティングをしています。

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レミと、息子のセン。


雪解け水による増水で、前回とはまったく違う川に。


ディンケル川を漕ぐには、この地域の河川管理会社であるウォーターシャープ・ヴェクトストロメンの許可証が必要になります。この許可証は無料で、取得すれば10月1日〜3月31日まで川を漕ぐことができます。最近はいろんなものがオンラインで入手できますが、この許可証もオンラインで手続きできます。今回は、あっという間に手続きが終わり、1営業日以内にメールで許可証を送ってきてくれました。

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ディンケル川の標識。この川を最初にパックラフティングしたのは2014年のこと。

ディンケル川は今回が2度目で、2014年の10月に一度、漕いだことがあります。前回は今回の行程とは全然違って、ドイツのグローナウまで電車で行き、川沿いの少し歩いてオランダ側に戻り、そこから27kmのパドリング・トリップを始めました。

水深が浅く (膝くらい)、透明度の高い川で、両岸が高い土手になっています。太陽に照らされた砂地の川底には、何百匹ものザリガニがいました。こんなに大量のザリガニを間近に見るのは初めてでした。ほんとに手の届くところにいるので、2匹のザリガニをつかまえて、まじまじと見ました。

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川と岸辺がわからないほど水位が上がっていた。

しかし、今回の旅では川の様子がまったく違っていました。雪解け水のために、水位は以前よりはるかに高くなっています。事前にウェブカメラのライブストリームをいくつか見ましたが、川と水没した草原の境がほとんどわからなくなっていました。

幸い、私たちが現地に着いたときには、川の氾濫の一部はおさまっていました。それでも、川の水は、高い土手の上まで達していました。川の水は、あたりの草原に流れ込んだり、川の蛇行箇所が水で埋まって、「ショートカット・ルート」ができたりしていました。川の深さを確かめようと、パドルを水の中に入れてみたのですが、パドルが底まで届かないほどの深さになっていてびっくりしました。もはや以前漕いだ時とは、まったく異なる川になっていたのです。


突然の春の陽気に、たくさんの人で川沿いは賑わう。


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ディンケル川は、オランダとドイツの国境付近を、北に向かって流れている。今回は、ロッセルの町の近くからスタートし、デ・ルッテの町の近くにあるルッテルザンドにゴールした。

私たちは、それぞれ別の場所から現地に向かうため、ゴール地点で集合することにしました。そこにディディエと私の車を置いて、レミの車でスタート地点に向かいました。

今回の旅は、どれくらいの時間がかかるかはわかりませんでした。ディディエは、オランダのなかでも真反対にある、北海に近くに住んでいます。彼はディンケル川から2時間半以上かかる、遠いところまで帰らないといけなかったので、外出禁止時間前に確実に帰るためにも、彼の車をゴール地点に置いておき、できるだけ早くここを出発できるようにと考えたのです。

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ロッセルという町の近くからプットイン。

プットイン・ポイントとして選んだ、ロッセルの町のあたりは、たくさんの人で賑わっていました。数日前の川の氾濫で、泥だらけのところも残っていましたが、何十人ものサイクリストやハイカーが、ドイツまで続く『スマグラーズ・パス (Smugglers path)』(毎年開催される自転車イベント) で使用される道を通っていました。

川にも、人がたくさんいました。私たちがパックラフト (レミはアルパカラフトのヌー、ディディエはアルパカラフトのナーワル、そして私は、ロシア製パッククラフトのブラックパイク・アドバンスド) の準備をしていると、カナディアンカヌーに乗ったパドラーのグループを何組か見かけました。その中にはレンタルの人もいれば、自前のカヌーを持ってきている人もいました。

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カナディアンカヌーでディンケル川を下っている人たち。


意外なポーテージの落とし穴。フェンス越えでトラブル。


しばらくして、そのグループの一人が橋の近くをポーテージ (※2) しているところに、私たちは追いつきました。以前ここを下った時は、橋の下を漕いでくぐることができましたが、今回は水位が高くなっていて通ることができませんでした。

※2 ポーテージ:舟を担ぎ上げて、陸路を歩いて障害物を越えること。

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水位が高く、橋の下を通過できずにポーテージした。

今回ポーテージしたところでは、川岸がすべて有刺鉄線で囲われていて、ポーテージのときに苦戦しました。私は自分のパックラフトの長さをきちんと把握せず、フェンスにぶつけてしまい、パックラフトが破けそうになりました。幸いにも、私の舟は穴が開かずにすみましたが、ディディエはアンラッキーでした。ランチタイムで休んでいた時に気づいたのですが、彼の舟には小さなピンホールのような穴が開いてしまっていたのです。

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ランチタイムで、舟に小さい穴を見つけたレミだったが、リペアキットのパッチで応急処置。

ディンケル川が流れるエリアは、オランダとドイツの国境線上を流れています。そのため、草原の真ん中や、道路の上に、小さな石標があるのを、ときどき見かけます。私は、国境というものが、これほどまでに「透明」であることが、以前からずっと興味深いなと思ってきました。


2歳の子どもも、パックラフトの旅に大満足!


ゴール前の最後のパートでは、ルッテルザンドと呼ばれるとても美しいエリアを通りました。自然保護区となっている場所で、最大8mもある高い砂の崖があります。その砂崖の上が松林になっていて、特徴的な景観が形作られています。

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ルッテルザンドと呼ばれる名所。上部に松林がある高い砂の崖が広がっている。

この砂崖は、現在も浸食が続いているのですが、過去2回の氷河期に形成されたものと考えられています。初めて訪れたときは、人が少なく、静かにその美しさを楽しむことができました。しかし今回は、ピクニックをしたり、犬と遊んだり、春の暖かさのなか日向ぼっこをしたりなど、たくさんの人がいました。

約15kmの距離を漕いで、時間に余裕を持って17時前にゴール地点にたどり着くことができました。素敵な仲間と一緒に、美しい景色のなか、のんびりした旅ができました。特にレミの子どものセンが最高でしたね。センも、パックラフトに乗ることを、本当に楽しんでいました。

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このデイ・パックラフティングを一番楽しんだのは、レミの息子のセンだった。

天候にも恵まれて、とても暖かく、風のない日でした。舟を降りてパックラフトをパッキングした後、レミ、セン、私の3人はディディエと別れました。「また近いうちに会おう」と約束して、そして「次はチューリップの中を漕いでみようよ!」と私は提案しました。

たぶん次はそこに行くと思います。でもこの強い日差しがおさまれば、また冬らしい気温に下がります。またいつも通りの気候に戻り、その後に、春が来るのを待つ必要があります。

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次は、花が咲く季節に下りたい。

コロナ期において、ルールとマナーを遵守しつつ、限られた時間であってもパックラフティングへと繰り出すコンスタンティン。制約の中でも工夫して遊ぶそのスタンスは、さすがはパックラフト・アディクトです。

それにしても、川旅が終わった後の、セン君の笑顔は最高でしたね。彼にとっては、大きな冒険の一日だったことでしょう。

TRAILS AMBASSADOR / コンスタンティン・グリドネフスキー
コンスタンティン・グリドネフスキーは、ヨーロッパを拠点に世界各国の川を旅しまくっているパックラフター。パックラフトによる旅を中心に、自らの旅やアクティビティの情報を発信している。GoPro Heroのエキスパートでもあり、川旅では毎回、躍動感あふれる映像を撮影。これほどまでにパックラフトにハマり、そして実際に世界中の川を旅している彼は、パックラフターとして稀有な存在だ。パックラフトというまだ新しいジャンルのカルチャーを牽引してくれる一人と言えるだろう。

(English follows after this page)
(英語の原文は次ページに掲載しています)

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WRITER
Konstantin Gridnevskiy

Konstantin Gridnevskiy

1978年ロシア生まれ。ここ17年間はオランダにある応用科学の大学の国際旅行マネジメント課にて、アウトドア、リーダーシップ、冒険について教えている。言語、観光、サービスマネジメントの学位を持っていて、研究は、アウトドアでの動作に電子機器がどう影響するか。5年前からパックラフティングをはじめ、それ以来、世界中で川旅を楽しんでいる。これまで旅した国は、ベルギー、ボスニア、クロアチア、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、モンテネグロ、ノルウェー、ポーランド、カタール、ロシア、スコットランド、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、オランダ。その他のアクティビティは、キャンプ、ハイキング、スノーシュー、サイクリングなど。

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