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パックラフト・アディクト | #58 ポーランドのブダ川、ソロ・パックラフティング3DAYS

2022.07.01
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(English follows after this page.)

文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳・構成:TRAILS

TRAILSのアンバサダーであるコンスタンティンが、今回レポートしてくれるのは、中欧・ポーランドのなかでも、リバーツーリングで人気の高いブダ川。

「野鳥の楽園」のなかを川旅できる場所で、クロヅル、カワセミ、オジロワシなど、鳥とパックラフティングの組み合わせを楽しめるそうだ。

リバーツーリングにも最適な川で、流れが停滞するトロ場が少なく、つねに流れがあり、舟が進んでいく。そして川の周りは、トゥホラの森という、ポーランドでもっとも広い森林地帯に囲まれており、景色も素晴らしい。

そんなブダ川の70kmのセクションを、野営しながら2泊3日で旅した、コンスタンティンのレポートをお楽しみください。

いざ、2泊3日のソロ・パックラフティングへ!

中欧・ポーランドにおいて、リバーツーリングで人気の高いブダ川。

ブダ川は比較的川幅が広く、ゆったりと流れている。

今年の5月の連休に、妻の実家を訪ねるためにポーランドへ行きました。しかし、今回は実家のあるポズナンには滞在せず、ポーランド最大の森林地帯である、トゥホラの森と呼ばれるところにホテルを予約しました。

妻と妻の母親、そして娘の3人にはこのエリアの散策を楽しんでもらい (義母は一度も行ったことがないとのこと)、私は数日間パックラフトを楽しむという、お互いにとってWin-Winのプランでした。

今回漕いだブダ川は、このエリアで一番大きな川で、ポーランドにある15の主要なカヌーコースのひとつです。クロンジノ湖に始まりシフィエチェの町を流れるビスワ川との合流地点まで、198kmも流れています。

ブダ川は低地を流れていますが、大きく蛇行しているのが特徴です。砂地の岸辺はほとんどが森林に覆われ、高く険しい場所も多くあります。場所によっては、まるで峡谷を漕いでいるような感覚になることもあります。


川沿いにはキャンプ場もたくさんあることもあって、パドラーにも人気。

6つの水力発電所があるにもかかわらず、この川はほとんど自然のままの姿を保っています。実際、ブダ川の全長の30%以上が自然保護区域にあり、そのなかには2つの景観公園 (※) といくつかの自然保護区が含まれています。

この一帯にはたくさんの民間および公共のキャンプ場もあり、パドラーに人気のある川です。

キャンプ場はPTTK (ポーランド観光協会) が運営していて、無料で利用することができます。私は昨年のブルダ川でのパックラフティング・トリップ (詳しくはコチラ) で、そのいくつかを利用しました。

※ 景観公園 (ランドスケープ・パーク):ポーランドにおいて、自然、歴史、文化、景観の価値のために保護された地域のこと。自然保護法によって定められている。

ブダ川でもっとも美しいエリアを、2泊3日で旅する。

今回選んだセクションは、ブダ川でもっとも美しいエリア。

今回は3日間しかなかったので、ブダ川でもっとも美しいとされるオソボ・レシュネ (ビスワ川との合流点から113km地点) からトレン (ビスワ川との合流点から43km地点) までの70kmを漕ぐことにしました。

たまたまではあるのですが、2017年に妻とこの地域に来た際、その時は短いセクションでしたが、同じくトレンを終点とするところを漕いだことがありました。今回漕いだ70kmの区間は、トゥホラの森のなかを川が流れ、途中にはいくつかの村があります。しかも、この区間には湖がなく、つねに流れがあるので、とても楽しいツーリングができます。

流れの速さは場所によって異なります。ブダ川の川幅は15〜20mくらいが多いのですが、ときどき幅が狭くなって流れが少し速くなります。一方、川幅が広くてゆっくりと流れている場所もあります。

トレンのテイクアウト・ポイントの直前で、川は徐々にほとんど気づかない感じで、長くてとても浅いジュル湖に注ぎ込みます。でも、ここでも流れは完全になくなるわけではありません。


水量は十分。メロウな旅を楽しむことができそうだ。

この旅の前の数週間、雨はあまり降っていませんでしたが、水量は十分でした。水深は比較的浅いものの、透明度があまり高くないため砂地の水底は見えません。

実は、この川は別名で「ツァルナ・ボダ」(「黒い水」という意味) とも呼ばれています。この川の水の色が濃い茶色で、時には黒に近い色をしていることが由来となっています。

この色の理由は、湿地の土手、水が運ぶミネラル化合物の数にくわえて、19世紀まで川に隣接する村や集落に存在したタール工場からのヘドロが影響していると言われています。

私はこの川の水を飲むつもりはありませんが、豊富な野生動物やその痕跡からしても、昔ほど汚染されていないことは間違いありません。


ブダ川の全長は198km。今回は、オソボ・レシュネ〜トレンまでの70kmを、テント泊をしながら2泊3日で漕いだ。

「鳥の楽園」のなか、パックラフトを漕いでいく。

ビーバーの痕跡を目にするものの、ビーバーには出会えず。

このエリアの代表的な野生動物といえば、ビーバーでしょう。痕跡もたくさんありました。

土手の中の古い小屋や巣穴、ビーバーの滑り台、かじられた木や剥がれた小枝など、3日間の旅の間中、いたるところでビーバーの痕跡を目にすることができました。

でも、こんなにも痕跡は見つけられるのに、一度もビーバーそのものの姿を見ることはありませんでした。水しぶきさえも見ていません。それは残念なことでもありました。初日の晩に、川のそばでかじる音がしたのですが、見に行ったときには何も見えませんでした。

ビーバーは見られませんでしたが、ここではいろんな種類の鳥を見る (そして聞く) ことができました。大きなヨーロッパツル (クロヅル) から、名前も知らないような小さな鳴き鳥まで、このあたりは鳥の楽園でした。


さまざまな鳥が次々と現れ、まさに「野鳥の楽園」だった。

カワセミも見ることができました。カワセミは突然木の上に現れ、私が1.5mほど先にいるとわかるとすぐに飛び立ちました。目があった瞬間は、お互い少し驚きました (この鳥は巣穴に巣をつくると後で知りましたが、その場所の隣にあった高い砂地の土手は、まさに巣穴に絶好のポイントでした)。

また、ポーランドで繁殖する最大の猛禽類である雄大なオジロワシとの出会いもありました。オジロワシはポーランドの紋章にも描かれているように、ポーランドの文化および象徴としても非常に重要な鳥です。

オジロワシは私を見つけると飛び立ってしまいましたが、それでも木の陰に消える前に何枚か写真を撮ることができました。


ポーランドを象徴する鳥のひとつ、オジロワシ。

さらに、ヨーロッパチュウヒもいました。私がパックラフトで近づくと、この鳥はほとんど不本意そうに、そしてなぜかのんびりと、もう少し下流の水辺にある別の木に飛んでいきました。そして、ふたたび私が近づくとこの動作を繰り返すのです。

私の意図したことではありませんが、この状態がしばらく続き、やがて川が木々から遠ざかり、鳥が安全だと思う距離で追い越しました。


近づくと逃げ、また追いつくと逃げる。野鳥とは追いかけっこを繰り返した。

くわえて、同じ川にいる、たくさんのカモやアイサ (カモ科アイサ属の鳥。別名ノコギリバガモ) にも同様のことが起こりました。

川の反対側を漕いだり、鳥を見ないようにしたり、あるいはパドリングをやめて流れに身を任せたとしても、鳥が驚いて少し下流まで飛んでいき、そしてまた追いついてしまうのです。

このようなことを鳥たちと5〜6回繰り返しました。でも驚いたことに、マガモだけは、私の進行方向を比較的早く察知して、上流に飛んでいきました。なんて頭のいい鳥でしょう。

私の川旅のバディとなったコブハクチョウ。

コブハクチョウとの触れ合いは、思いがけずこの旅の大きな思い出となった。

最後に、至近距離で見ることができた2羽のコブハクチョウの話をします。1羽目は、初日の終わりに出会い、私にケンカを売ってきたのです。このときは、皮肉なことに私が鳥に追いかけられる側でした。

でも、2羽目は攻撃的ではなく、3日目にトレンのテイクアウトポイントに着くまで、私のまわりをのんびりと泳いでいました。私が荷物をまとめている間も離れようとせず、ずっと近くにいました。

おそらく、このハクチョウは餌をねだっていたのでしょう。ハイシーズン (おそらく夏) になると、川を観光客の団体が通るので、餌付けに慣れたのだと思います。


コブハクチョウとは、しばらく一緒に旅をすることになった。

でも私はラッキーなことに、この川をほとんど独り占めしていました。出会ったのは2組のカヤッカーだけでした。

最初のグループは日帰りで、もう1組は数日間の旅をしているようでした。後者のグループとは、2日目の朝、キャンプの片付けをしているときに出会いました。そして同じ日のうちに、私が個人的にこの川でもっとも興味を持っている場所、クシべ・コウォ自然保護区で私に追いつきました。

川がつくりだした不思議な造形の「半島」。

クシべ・コウォ自然保護区に到着。

このクシべ・コウォという名前は、「曲がった輪」という意味です。なぜこのように呼ばれているかというと、自然の川の流れによって、「曲がった輪」みたいな驚くような形の場所ができあがったためです。

保護区のエリアのほぼすべてが川に取り囲まれていて、保護区と本土の間は、わずか幅約5mの狭い通路だけでつながっています。それによって、「半島」のようなものができているのです。


本土と保護区をつなぐ、幅約5mの狭い道。

この狭い道からの景色はとても印象的でした。この狭い道は高い崖の上にあり、両側から静かに流れる曲がりくねったブダ川を見ることができ、その曲がりくねったループはほぼ一周しているのです。

ブダ川沿いには、川旅に最適な野営地もたくさん。

民間および公共のキャンプ場ではなく、自分で見つけたキャンプ適地がお気に入り。

途中には民間のキャンプ場も、公共のキャンプ場もいろいろありましたが (クシべ・コウォ自然保護区の反対側にもキャンプ場はあります)、私は整備された場所ではなく、自然のなかで野営することにしました。

私は、厳しいルールがたくさんあり、人も多いオランダから出た際には、自然の場所と整備された場所のどちらかを選べるならば、私はいつも前者を好んで選びます。


今回のトリップでは2泊したが、いずれも最高の野営地だった。

最初の夜は、川のそばの草地で野営しました。ビーバーの声らしきものを聞いた場所です。とても素敵な場所で、草もぼうぼうには生えてなく、ウッドストーブに適した乾いた薪もありました。太陽の沈むぎりぎりまで、日差しがあたる場所であったのも、良かったです。

2日目の夜も、いい野営地を見つけました。松の木が生えている砂浜でした (今回は松ぼっくりをウッドストーブに使いました)。焚き火台がいくつかあったので、ここは野営地として人気のある場所なのでしょう。数百m上流では釣り人も見かけました。

ゴール地点では、妻と娘がお出迎え。


妻と娘に会うために、早朝にキャンプ地を出発。

私は1日目、23kmを5時間半で漕ぎました。2日目は35kmを8時間弱、最終日は12kmを2時間ちょっとで漕ぎました。

最終日は、朝10時に妻にトレンに迎えに来てもらう約束をしていたので (その後帰宅しなければなりませんでした)、早めの出発となりました。寒かったですが素晴らしい朝でした。

朝7時前に出発したとき、川は霧に覆われていて、そこから眩しい朝陽が差し込んできて少しずつ暖かくなってきました。それでも、防寒用のバフを持っていてよかったと思いました。

しかし、ゴール地点に到着する頃にはかなり気温もあたたかくなっていました。おかげで、私はお迎えが到着する前に、パックラフトや道具を乾かしてくことができました。ゴール地点では、餌を欲しがっているハクチョウと遊びました。


ゴール地点では、妻と娘も餌付けを楽しんだ。

ブダ川とトゥホラの森に別れを告げる前に、テイクアウトポイントのすぐ隣にある建物に立ち寄りました。その建物にはホテルとレストランが入っていて、またビール醸造所もありました。そして面白いお土産をいくつかゲットしました。

ここで私が買ったのは、松の木の香りがする地元の特別なビール (妻がとても美味しいと言っていました) と、ハチミツ入りの野イチゴのジャムです。

今回の旅は、総じて素晴らしい3日間でした。ソロで川旅をすることができ、自分自身をリチャージすることができました。新しいものを見て、体験し、そしてなにより私が一番好きなことであるパックラフトを存分に楽しむことができたのですから!

帰りに、家族3人でレストランへ。素敵なお土産もゲット。

ポーランドでパドラーに人気のブダ川。コンスタンティンの3DAYSトリップを見て、その人気の高さをうかがい知ることができた。

豊かな自然あり、たくさんの野生動物あり、素晴らしい野営地あり。なにより、メロウに漕ぐにはピッタリの緩やかな川の流れが魅力的だった。

いよいよパックラフトのシーズン本番。コンスタンティンは、どんな旅を目論んでいるのだろう。次回のレポートが楽しみだ。

TRAILS AMBASSADOR / コンスタンティン・グリドネフスキー
コンスタンティン・グリドネフスキーは、ヨーロッパを拠点に世界各国の川を旅しまくっているパックラフター。パックラフトによる旅を中心に、自らの旅やアクティビティの情報を発信している。GoPro Heroのエキスパートでもあり、川旅では毎回、躍動感あふれる映像を撮影。これほどまでにパックラフトにハマり、そして実際に世界中の川を旅している彼は、パックラフターとして稀有な存在だ。パックラフトというまだ新しいジャンルのカルチャーを牽引してくれる一人と言えるだろう。

(English follows after this page)
(英語の原文は次ページに掲載しています)

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WRITER
Konstantin Gridnevskiy

Konstantin Gridnevskiy

1978年ロシア生まれ。ここ17年間はオランダにある応用科学の大学の国際旅行マネジメント課にて、アウトドア、リーダーシップ、冒険について教えている。言語、観光、サービスマネジメントの学位を持っていて、研究は、アウトドアでの動作に電子機器がどう影響するか。5年前からパックラフティングをはじめ、それ以来、世界中で川旅を楽しんでいる。これまで旅した国は、ベルギー、ボスニア、クロアチア、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、モンテネグロ、ノルウェー、ポーランド、カタール、ロシア、スコットランド、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、オランダ。その他のアクティビティは、キャンプ、ハイキング、スノーシュー、サイクリングなど。

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