高知・仁淀川 パックラフティング & 河原キャンプ 2 DAYS | パックラフト・アディクト #59
文:Fumi Sakurai 写真:Packraft Addicted (Fumi Sakurai, Ryusei Murakami, Kenji Habara, Takehito Takashiro, Kota Takahashi) 構成:TRAILS
今回からパックラフト・アディクトの連載で、新たに櫻井史彦 a.k.a バダさん (※1) によるレポートがスタートする!
バダさんは、ULハイカーであり、パックラフターであり、鳥見好きであり、そしてTRAILS編集長佐井に負けず劣らずのギアホリック。hikerbirderというSNSアカウント名から、バダさんの愛称で親しまれている。
今までも「パックラフト・アディクト」の連載を中心に、バダさんはTARILSの記事で何度も登場してもらってきた。
だが、今回からはライターとして、直接、本人によるレポートをお届してもらえることになった。川旅の話を中心にしながら、もちろんギアホリックならではの話も。バダさんがお気に入りのギアとして、偏愛するギアや、新たに試してみたマニアックなギアなども紹介してもらう。
そんなバダさんによるレポートの第一弾は、「仁淀ブルー」という名前でその水の美しさが語られる、高知県の仁淀川 (によどがわ)のトリップ・レポート。
久々の仲間との再会に、立ち話の連続で、なかなか前に進まない旅であったようだが、はたしてどんな旅だったのだのろう。
全国各地から仲間が集まり、高知の仁淀川 (によどがわ) へ。
パックラフトの楽しみかたはいろいろあるけれど、僕はのんびりと舟を漕ぎ、河原に泊まるツーリングに魅力を感じている。一人でも、仲間と一緒でも、泊まりの旅が楽しい。今回はコロナが少し落ち着いた時期に仲間と集まり、高知県の仁淀川を漕いだ旅の話。時期的にこれから川旅を計画する参考になればと思う。
毎年どこかの川に集まる仲間たち。コロナの影響でなかなか集まれないし、遠征もしにくいけれど、宮崎から東京までいろいろな地域から5人の仲間が合流してくれた。広島のケンジくん、三重のリュウセイくん、宮崎のタケさん、地元 高知のココタくん。みんなもとはネット上の「友だちの友だち」だけど、今は一緒に川旅をする、最高に楽しい仲間たちだ。
無駄話大好きマンたちとの、旅のはじまり。
そんな仲間たちと漕ぐ仁淀川は、基本的にゆるやかな流れで、誰でも取っ付きやすい川だ。今回が川で初漕ぎとなる舟もあるのでちょうどいい。
水質も抜群で、最近でも国土交通省が発表する「水質が最も良好な河川」(※2) に名を連ねていて、パドラーにも釣り人にも人気がある。綺麗な流れは漕いでいて気持ちいいし、キャンプ時に水を調達する上でもありがたい。
そんなことで、綺麗な川であることは大前提に、今回参加するメンバーが集まりやすい地域で、のんびりした旅ができる川ということで、今回は仁淀川に決まった。皆で仁淀川を存分に楽しみたい。
遠征するときはいつもスカウティングからはじめる。半日以上も時間を費やすこともあるが、今回は地元のメンバーがいるので時間短縮することができた。しかし、その分はすべて無駄話で消費してしまった。話しはじめると止まらない、愉快な旅のはじまりだった。
タンデム艇 (2人乗り艇) の「試乗会」。
この旅の目玉はタンデム艇の乗り比べかもしれない。Alpacka Raft (アルパカラフト) のOryx (オリックス) とForager (フォレジャー) (※3)、そして古いAlpacaの3艇に5人が乗り込み、途中で交代しながら漕ぐことになった。
僕はAlpacka RaftのOryxを真っ先に購入した。その後に普及活動し、仲間たちにもタンデム艇を買わせた (笑)。そしたらまるでタンデム艇による試乗会のようになった。今回は、ケンジくんがOryx、タケさんがForagerを持ってきてくれた。試乗会なので、僕は手ぶらで来てしまった (個人装備は別)。
僕としてはForagerを初めて体験するので、Oryxとのスタイルの違い、漕ぎ方の違いをじっくり確かめたいと考えていた。Foragerに乗ってすぐに体感できるOryxとの違いは重心の低さ。またOryxよりも幅広なので、ちょっとした瀬でも安定感が違う。こういう場面ではForagerのほうが安心して楽しめると感じた。
対するOryxはフラットウォーター向きの設定だけれど、アメリカ人はクラスⅡの瀬 (※4) まではフラットと言うはずなので (先入観)、Oryxだって信じれば問題ない。この旅の行程には大きな瀬はなくトロ場も多かったので、全体で見れば漕ぎやすいのはOryxだったかもしれない。
立ち話ばかりで、全然先に進まない川旅。
さて、旅のほうはというと、10月にしては暑い日差しのなか、僕らは舟を乗り換えるたびに感想を言ったり立ち話したりで、川のなかにいるのに全然先に進まない。
思えば買い出しのスーパーでも、駐車場でも、はじまりからずっとこんな感じだった。まあ、のんびり旅する仲間たちなので、予定した行程を消化できなくてもあまり気にしない。泊まれる河原さえあれば楽しい夜が待っているのだ。
そうそう、今回の仁淀川では、「空飛ぶ漁師」とも呼ばれるミサゴを見ることができた (僕は鳥見も好き)。タンデム艇のco-pilotなのに、よそ見しながら鳥見も楽しませてもらった。ミサゴは魚が好物で、獲物を狙って急降下する様はなかなか見ものだ。上空を悠々と舞う姿が見つけやすいのだけど、河岸の高い梢や電線にも気を配っておくと、より見つけやすい。
UL談義などをしながらの、河原キャンプ。
立ち話でなかなか進まなかったが、ようやくたどり着いた河原には、絶妙なタイミングで漁師さんが通りかかり、なんと捕らえたばかりの鮎をプレゼントしてくれた。晩ごはんのおかずがサプライズで豪華になってしまった。
キャンプ地に上陸したら、明るいうちに薪拾いと寝床の準備。タープやシェルターを思い思いに張り終えたら、焚き火を囲んで晩ごはん。
ご無沙汰の仲間のことやバカ話、道具のこと、次の川旅のことなど、話はつきなかった。ココタくんとは古いULギアの話で盛り上がったなあ。LuxuryLite (ラグジュアリー・ライト ※5) の背負子なんてもう覚えているひといないよね。あれ、最新型はたためるんだぜ。
2日目も前日と同じ流れでのんびりと漕ぎ、思ったとおり予定したゴール地点に辿り着けなかったけれど、それは久しぶりに仲間たちとたくさん話せたから故。2日間で漕いだ距離はたったの20kmとかなり短かったけれど、充実して楽しい旅だった。
僕のお気に入りの道具
『ALPACKA RAFT / Alpaca』(アルパカラフト / アルパカ)
お尻が丸っこいのがチャームポイント。
これは10年以上も前の、古いAlpaca (以下、黄舟)。これを手に入れたのは、ずいぶん前の話。ずっとこの「古い丸い舟が欲しい」って周りにも言っていたら、知り合いから譲ってもらうことができた。
最新のAlpaca (今はClassicというモデルの、Smallサイズとして売っている) は、とくにスターン (船尾) まわりが進化して、お尻がすいぶん大きく、長くなっている。最新のは進化し過ぎて、この古いAlpacaとはまるで別モデルのような雰囲気だ。
新しいAlpacaは操作性も直進性もいいけれど、のんびりな旅をするなら古くてもいいよね。と言いつつ、この当時のモデルの愛着が強くて、ちょっと激しめの川でもこれに乗ってしまうのだけど。
黄舟は丸っこくて、小さくて、軽くて、カワイイ。よく探すと、この当時に製造を委託していたFeathercraft (フェザークラフト ※6) のタグが付いている。古いモデルには古いなりの味があるし、小ネタもあるから面白い (ちなみにこれと同じ黄舟がTRAILS INNOVATION GARAGEにも展示されている)。
古い舟は乗っているうちに傷みが生じる。そんなときはAKPACKA RAFTのコロラドのファクトリーに送ればいい。実は黄舟を手に入れた数年後にebayで同じモデルの茶舟を見つけてしまい、いまはそれをメインで使っている。茶舟は、ひと足先にリフレッシュを済ませ、ボトムを張り替え、シート位置を前にずらし、ホワイトウォーターデッキに換装済み。
こうやって修理や自分好みのカスタマイズをすれば、古いAlpacaだって現役でいられる。
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