TRIP REPORT

高知・仁淀川 パックラフティング & 河原キャンプ 2 DAYS | パックラフト・アディクト #59

2022.07.29
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文:Fumi Sakurai 写真:Packraft Addicted (Fumi Sakurai, Ryusei Murakami, Kenji Habara, Takehito Takashiro, Kota Takahashi) 構成:TRAILS

今回からパックラフト・アディクトの連載で、新たに櫻井史彦 a.k.a バダさん (※1) によるレポートがスタートする!

バダさんは、ULハイカーであり、パックラフターであり、鳥見好きであり、そしてTRAILS編集長佐井に負けず劣らずのギアホリック。hikerbirderというSNSアカウント名から、バダさんの愛称で親しまれている。

今までも「パックラフト・アディクト」の連載を中心に、バダさんはTARILSの記事で何度も登場してもらってきた。

だが、今回からはライターとして、直接、本人によるレポートをお届してもらえることになった。川旅の話を中心にしながら、もちろんギアホリックならではの話も。バダさんがお気に入りのギアとして、偏愛するギアや、新たに試してみたマニアックなギアなども紹介してもらう。

そんなバダさんによるレポートの第一弾は、「仁淀ブルー」という名前でその水の美しさが語られる、高知県の仁淀川 (によどがわ)のトリップ・レポート。

久々の仲間との再会に、立ち話の連続で、なかなか前に進まない旅であったようだが、はたしてどんな旅だったのだのろう。

※1 バダさん:本名=櫻井史彦。hikerbirderというSNSアカウント名から、バダさんの愛称で親しまれている。2010年代前半の早い時期からパックラフトにはまって、以来、日本各地を漕いでいる。またギアホリックなULハイカーでもあり、そして鳥見好き (Birder) でもある。鳥見では、TRAILSの以下の記事で登場している。「PLAY!出社前に遊ぼう # 08 | TRAILS × Fumi Sakurai(hikerbirder) 鳥見(とりみ)」https://thetrailsmag.com/archives/34826


櫻井史彦さん a. k. a. バダさん (写真左)。バダさんの紹介写真(表紙写真と本写真)は、仁淀川と同じ高知県の四万十川での写真。今回の仁淀川も、このときの旅のメンバーが中心で集まった、

全国各地から仲間が集まり、高知の仁淀川 (によどがわ) へ。

パックラフトの楽しみかたはいろいろあるけれど、僕はのんびりと舟を漕ぎ、河原に泊まるツーリングに魅力を感じている。一人でも、仲間と一緒でも、泊まりの旅が楽しい。今回はコロナが少し落ち着いた時期に仲間と集まり、高知県の仁淀川を漕いだ旅の話。時期的にこれから川旅を計画する参考になればと思う。


久しぶりの会った仲間たちと、仁淀川を下る。

毎年どこかの川に集まる仲間たち。コロナの影響でなかなか集まれないし、遠征もしにくいけれど、宮崎から東京までいろいろな地域から5人の仲間が合流してくれた。広島のケンジくん、三重のリュウセイくん、宮崎のタケさん、地元 高知のココタくん。みんなもとはネット上の「友だちの友だち」だけど、今は一緒に川旅をする、最高に楽しい仲間たちだ。

今回のスタート地点は宮の前公園、ゴールは水辺の駅 あいの里 (約20km)。キャンプ地は、当初は黒瀬キャンプ場を予定していたが、片岡沈下橋より約1.5km手前の河原に変更。

無駄話大好きマンたちとの、旅のはじまり。

そんな仲間たちと漕ぐ仁淀川は、基本的にゆるやかな流れで、誰でも取っ付きやすい川だ。今回が川で初漕ぎとなる舟もあるのでちょうどいい。

水質も抜群で、最近でも国土交通省が発表する「水質が最も良好な河川」(※2) に名を連ねていて、パドラーにも釣り人にも人気がある。綺麗な流れは漕いでいて気持ちいいし、キャンプ時に水を調達する上でもありがたい。

そんなことで、綺麗な川であることは大前提に、今回参加するメンバーが集まりやすい地域で、のんびりした旅ができる川ということで、今回は仁淀川に決まった。皆で仁淀川を存分に楽しみたい。

※2 水質が最も良好な河川:国土交通省が実施する水質調査をもとに選出される。最近では仁淀川は、令和元年から3年連続で選ばれている。


水のきれいさでも有名な仁淀川。

遠征するときはいつもスカウティングからはじめる。半日以上も時間を費やすこともあるが、今回は地元のメンバーがいるので時間短縮することができた。しかし、その分はすべて無駄話で消費してしまった。話しはじめると止まらない、愉快な旅のはじまりだった。

無駄話大好きマンたち。

タンデム艇 (2人乗り艇) の「試乗会」。

この旅の目玉はタンデム艇の乗り比べかもしれない。Alpacka Raft (アルパカラフト) のOryx (オリックス) とForager (フォレジャー) (※3)、そして古いAlpacaの3艇に5人が乗り込み、途中で交代しながら漕ぐことになった。

僕はAlpacka RaftのOryxを真っ先に購入した。その後に普及活動し、仲間たちにもタンデム艇を買わせた (笑)。そしたらまるでタンデム艇による試乗会のようになった。今回は、ケンジくんがOryx、タケさんがForagerを持ってきてくれた。試乗会なので、僕は手ぶらで来てしまった (個人装備は別)。

※3 Alpacka RaftのOryxとForager:Alpacka Raftのパックラフトのタンデム艇(2人乗り艇)。Oryxは、カヌースタイルのパックラフトで、湖やクラスⅠの緩やかな川の使用に適した、フラットウォーター向けのタンデム艇。Foragerは、ホワイトウォーター向けのタンデム艇。TRAILSでは、以下の記事で詳細なモデル比較をレポートしている。「パックラフト・アディクト | #50 タンデム艇のABC 〜ギアレビュー ① Explorer42 vs Oryx vs Forager(概要編)〜」https://thetrailsmag.com/archives/47049

5人で3艇を準備するって効率的 (無駄話さえなければ)。

僕としてはForagerを初めて体験するので、Oryxとのスタイルの違い、漕ぎ方の違いをじっくり確かめたいと考えていた。Foragerに乗ってすぐに体感できるOryxとの違いは重心の低さ。またOryxよりも幅広なので、ちょっとした瀬でも安定感が違う。こういう場面ではForagerのほうが安心して楽しめると感じた。

はじめて見るForagerに興味津々。

対するOryxはフラットウォーター向きの設定だけれど、アメリカ人はクラスⅡの瀬 (※4) まではフラットと言うはずなので (先入観)、Oryxだって信じれば問題ない。この旅の行程には大きな瀬はなくトロ場も多かったので、全体で見れば漕ぎやすいのはOryxだったかもしれない。

※4 クラス:瀬(川の流れが速く水深が浅い場所)の難易度。クラス(グレードや級とも表現される)が I〜VI(1〜6級)まであり、数字が大きいほど難易度が高い。ちなみに、I は飛沫もなく静かな流れ、II はやや高い波があるが規則的な流れ。ただし、同じ瀬であっても川の水量や地形の変化などによって難易度は変わってくるので、あくまで目安である。なお、Oryxについては、ALPACKA RAFT社のHPでは、カヌー経験者であればクラスⅡ以上の瀬も漕げるであろう、と説明されている。


メロウな川や、フラットウォーター向きのOryx。

立ち話ばかりで、全然先に進まない川旅。


立ち話ばかりで先に進まない。

さて、旅のほうはというと、10月にしては暑い日差しのなか、僕らは舟を乗り換えるたびに感想を言ったり立ち話したりで、川のなかにいるのに全然先に進まない。

思えば買い出しのスーパーでも、駐車場でも、はじまりからずっとこんな感じだった。まあ、のんびり旅する仲間たちなので、予定した行程を消化できなくてもあまり気にしない。泊まれる河原さえあれば楽しい夜が待っているのだ。


「仁淀ブルー」とも呼ばれる、きれいな水の上を漕いでいく。

そうそう、今回の仁淀川では、「空飛ぶ漁師」とも呼ばれるミサゴを見ることができた (僕は鳥見も好き)。タンデム艇のco-pilotなのに、よそ見しながら鳥見も楽しませてもらった。ミサゴは魚が好物で、獲物を狙って急降下する様はなかなか見ものだ。上空を悠々と舞う姿が見つけやすいのだけど、河岸の高い梢や電線にも気を配っておくと、より見つけやすい。

UL談義などをしながらの、河原キャンプ。


広い河原を自由にシェルターを張る。手前は今回使ったHyperlite Mountain Gear, ULTAMID 2(ハイパーライトマウンテンギア, ウルタミッド2)。

立ち話でなかなか進まなかったが、ようやくたどり着いた河原には、絶妙なタイミングで漁師さんが通りかかり、なんと捕らえたばかりの鮎をプレゼントしてくれた。晩ごはんのおかずがサプライズで豪華になってしまった。


ケンジくんの寝床。舟のベッドにタープの組合せは定番のスタイル。(タープ: LOCUS GEAR, Tarp X Duo Sil / ローカスギア, タープX・デュオ・シル)

キャンプ地に上陸したら、明るいうちに薪拾いと寝床の準備。タープやシェルターを思い思いに張り終えたら、焚き火を囲んで晩ごはん。

ご無沙汰の仲間のことやバカ話、道具のこと、次の川旅のことなど、話はつきなかった。ココタくんとは古いULギアの話で盛り上がったなあ。LuxuryLite (ラグジュアリー・ライト ※5) の背負子なんてもう覚えているひといないよね。あれ、最新型はたためるんだぜ。

※5 LuxuryLite (ラグジュアリー・ライト):円筒状の大型シリンダーを重ねたような独特の形状のカーボン・フレームザック (スタック・パック) など、独創的なアイデアで知られる米国のガレージメーカー。なかでも超軽量コットはTHERM-A-RESTで有名なカスケード・デザインに買収されマスプロダクト化されている。


釣り師さんにもらった鮎もおいしくいただく。

2日目も前日と同じ流れでのんびりと漕ぎ、思ったとおり予定したゴール地点に辿り着けなかったけれど、それは久しぶりに仲間たちとたくさん話せたから故。2日間で漕いだ距離はたったの20kmとかなり短かったけれど、充実して楽しい旅だった。


焚き火を囲む、楽しいディナータイム。

僕のお気に入りの道具


 『ALPACKA RAFT / Alpaca』(アルパカラフト / アルパカ)
 

お尻が丸っこいのがチャームポイント。
 
これは10年以上も前の、古いAlpaca (以下、黄舟)。これを手に入れたのは、ずいぶん前の話。ずっとこの「古い丸い舟が欲しい」って周りにも言っていたら、知り合いから譲ってもらうことができた。
 
最新のAlpaca (今はClassicというモデルの、Smallサイズとして売っている) は、とくにスターン (船尾) まわりが進化して、お尻がすいぶん大きく、長くなっている。最新のは進化し過ぎて、この古いAlpacaとはまるで別モデルのような雰囲気だ。
 
新しいAlpacaは操作性も直進性もいいけれど、のんびりな旅をするなら古くてもいいよね。と言いつつ、この当時のモデルの愛着が強くて、ちょっと激しめの川でもこれに乗ってしまうのだけど。
 
黄舟は丸っこくて、小さくて、軽くて、カワイイ。よく探すと、この当時に製造を委託していたFeathercraft (フェザークラフト ※6) のタグが付いている。古いモデルには古いなりの味があるし、小ネタもあるから面白い (ちなみにこれと同じ黄舟がTRAILS INNOVATION GARAGEにも展示されている)。
 
古い舟は乗っているうちに傷みが生じる。そんなときはAKPACKA RAFTのコロラドのファクトリーに送ればいい。実は黄舟を手に入れた数年後にebayで同じモデルの茶舟を見つけてしまい、いまはそれをメインで使っている。茶舟は、ひと足先にリフレッシュを済ませ、ボトムを張り替え、シート位置を前にずらし、ホワイトウォーターデッキに換装済み。
 
こうやって修理や自分好みのカスタマイズをすれば、古いAlpacaだって現役でいられる。
 

 
※6 Feathercraft (フェザークラフト):1970年代から、革新的なフォールディングカヤックを製造しつづけてきた、カナダはバンクバーにあるシーカヤックメーカー。創業者はダグラス・シンプソン。2015年に生産休止。

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櫻井史彦

櫻井史彦

ULハイカー、パックラフター、バーダー。hikerbirderというSNSアカウント名から、「バダさん」の愛称で親しまれている。2010年代前半の日本におけるパックラフト・シーンの黎明期から、パックラフトを始める。以来、日本各地のさまざま川をパックラフトで旅している。パックラフト歴は10年以上。ギアホリックでもあり、レアなヴィンテージのアルパカラフトの舟なども所有している。
バーダー (鳥見好き) としては、TRAILSの『PLAY!出社前に遊ぼう』にも登場している。パックラフトを漕ぎながらの鳥見も、バダさんが好む遊び方のひとつ。

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