It’s a good day! #05 | 数千マイル後のオール・ウィー・ニード
文・写真:鈴木拓海 構成:TRAILS
What’s “It’s a good day” ? | ロング・ディスタンス・ハイカーであり、バサーであり、スケートボーダーであるトレイルネーム Sunny (サニー) ことスズキタクミ。2021年よりTRAILS Crewにジョインしたタクミくんによる、ピースでイージーでちょっとおバカな気まぐれハイキングエッセイ。
なんとなくハイキング。で、なんとなくアメリカのあの⽇を思い出す。マストアイテムはウェイファーラーとラジオとハンバーガー。あとはULの屋根が切り取った三角窓のあの景色。それさえあれば、Itʼs a good day.
All we need is here.
タクミです。今日もどこかのトレイルから、ごきげんよう!
バーガーをトレイルに持ち込んでかじりつけば、アメリカン・ハイキングの風が吹く。
最初のスイッチバックで朝食のカロリーをやっつけて、視界がひらけたらバーガータイム。
ラジオのノイズもなく歩く、標高の低いリッジライン。寒いけれど歩き続けるにはちょうどいい、のんきな山とわたし。
視界良好、冷たい風も木々に遮られるナイススポットに屋根を張る。明るいうちからお茶を淹れて横になる。
のどかな贅沢。モノラルラジオは休日の午後のグルーヴ感を讃えている。これ以上のモノなんかないよな。
ふと、アメリカでの愉快なグッデイを思い出す。
あるロングトレイル、明日にはゴールという最後の夜のキャンプでの会話。
「歩き終えたら何する?」
「ピザ食べてビール飲んで、野菜とフルーツも死ぬほど食べたいな。ホットスプリングリゾートにでも行ってゆっくりしたいな。それで元気になったらまた歩くんだ!」
「うん? それって、 ロングトレイルのリサプライと同じだな。スルーハイキングの日常とあんまり変わらないじゃあないか。”All we need is here.” そうか、おれたちは今充分に足りているんだな……」
吾唯知足 (われただたるをしる)。ながい旅は図らずもその意味を自動的に理解させてくれる。街にいると物欲が刺激される。お山にいるとそれは簡単になくなったりする。目的を思い出すのだ。
バックパックに入るものだけで、食べて寝て歩いて、うんこする。生存欲求を満たす悦びに魅せられて、三大欲求も消えないけれど二の次にして。
必要最低限のモノを選び、ひとつの道具にいくつかの役割を見出して持ち物をへらす。軽いほうが楽だから。そんなぐうたらな感覚も同居する、ULバックパッキングなんてそんなものだ。長く歩くという目的のための手段のひとつ。
遊びなのでハイカーはみんな好きにやる。80Lのフルサイズバックパックにアコースティックギターを背負ってるヤツだっているし、ランドセルみたいなサイズまで切り詰めたSUL野郎のバックパックにぬいぐるみが付いていることもある。
自分の幸せ第一なスタイルを。ロングトレイルで学んだ大事なことのひとつ。オレもコーヒー豆とドリッパーは絶対に手放さない。それもひとつの旅の目的だからね。
It’s a good day!
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