TRAILS REPORT

TRAIL FOOD #06 | ロング・ディスタンス・ハイキング × トレイルフード by 鈴木拓海

2023.09.08
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話・写真:鈴木拓海 構成:TRAILS

What’s TRAIL FOOD? | 「トレイルで、実際みんな何を食べているの?」。みんなのリアルなTRAIL FOOD (トレイルフード) が知りたくて立ち上げた、トレイルフードを紹介する記事シリーズ。ULハイキングをはじめ、ロング・ディスタンス・ハイキング、パックラフティング、さらにはフライフィッシングやテンカラなど、それぞれの遊びに没頭している人たちに、普段どんなトレイルフードを食べているかを紹介してもらう。トレイル上のリアルに触れることが、きっと新たな気づきや刺激になるはずだ。

* * *

ここに登場するのは、世の中でよく紹介されるような「山でこんなに美味しいものが食べられる!」というフードがかならずしもメインではない。それぞれの遊び方やスタイルのなかで、時には質素に見えるかもしれないが、みんなが実際に食べているリアルなトレイルフードだ。

そこには、旅を楽しむための大事なエッセンスや、アクティビティをする上での実践的なTIPSが詰め込まれているはず。そんなリアルなトレイルフードが知りたくて、この連載記事を立ち上げた。

第6回目の今回は、TRAILS crewであり、ハイキングエッセイ『It’s a good day!』の連載でもおなじみのタクミくん (鈴木拓海) だ。

ロング・ディスタンス・ハイキング × トレイルフード


今回は、タクミくんが、ロング・ディスタンス・ハイキングにおけるトレイルフードを紹介してくれる。

タクミくんは、2012年、2014年とJMTを2回スルーハイキングし、さらに2016年にはPCT、2019年にはCDTをスルーハイキングした、ロング・ディスタンス・ハイカーである。

『LONG DISTANCE HIKER』の連載 (詳しくはコチラ) に登場してもらった際は、「楽しくなきゃやる意味がない」と言い、ワクワクすることを求めて歩く姿が印象的だった。そのスタンスはきっと、トレイルでの食生活においても変わらないはずだ。

そんなタクミくんは、実際のところ、ロング・ディスタンス・ハイキングで何を食べているのだろう? 下記2つの視点で紹介してもらった。

・「食べる頻度の高い」トレイルフードベスト3
・「記憶に残る」トレイルフード

第1位:クノールのライス・サイド


アメリカでおなじみのクノールのシリーズは、お米ベースのライス・サイドの他にこの写真のアジアン・サイドや、パスタベースのパスタ・サイドなどがある。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

味が濃く、しっかりした食べごたえが、ロング・ディスタンス・ハイキングで疲れた身体に効く。

本来は熱湯に投入後にしばし茹でつづける、というのが正しい調理法。でも、チタンのクッカーでそれをしようとすると高確率でコゲつくので、ボイルtoブチこみ放置でOK。少し芯が残っていようが、濃い味が誤魔化してくれる。

どんなスーパーでも多様な味が売っていて、安いのもありがたい。チェダーブロッコリ、チキンブロッコリがお気に入り。

一日の終わり、クッカーを火にかけてテントをピッチ。同時進行で調理、放置時間も含めてキャンプの準備が済むとちょうど完成。くってねろ!

■ 作り方

水を400ml沸騰させて、袋の中身を投入。よく混ぜて10分くらい放置。

第2位:トルティーヤ


アメリカの大抵のグロサリーストアで手に入る、フラワートルティーヤ。ピーナッツバターやジャムを塗って食べるハイカーも多い。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

すべてを包む慈愛の食材。これも多くのスーパーで安く手に入り、調理不要のちょっぴり贅沢な炭水化物。なんでも包んでボリュームアップしてくれる。

特におすすめはオイルサーディン、タコライスで簡易ブリトー。ハイキングに飽きてきたら、楽しみになる食事でモチベーションの方向を変えてみるといい。うまいと、楽しい。

軽くはないが、バックパックの狭いスペースに入れることができるので、パッキング性能は優秀。ただ、あまりキュウキュウに詰めると、重なっているうちの数枚が融合してしまうので注意。

■ 作り方

トルティーヤに好きな具材を載せて完成。オイルサーディン、スパム、スニッカーズ、タコライスなどがおすすめ。

第3位:プロテインパウダー


JMT、PCTを歩き終え、トレイルフードを試行錯誤するなかで見出したプロテイン。CDTのスルーハイキングではかなり助けられた。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

重量対効果はバツグンで、軽いのに動ける理想のエナジー源。

水に溶く、容器を洗うという手間が、ナッツなどの行動食よりは増えるものの、圧倒的な軽さが魅力。1食につき、たかだか20〜30gほど。

味も悪くなく、枯渇した身体に驚くほど速攻で染み渡り効果は絶大。

昼と夜寝る前に食事のプラス一品で飲むことが多く、空腹感を見事に消してくれる。異常な運動量の日々にこそ最適な栄養素。

■ 作り方

水と混ぜる。イッキに飲む。

記憶に残るトレイルフード:ドリップコーヒー


右から2つ目が、GSIのウルトラライトジャバドリップ。折りたたみ式コーヒードリッパーで、重量はたった17g。

■ 記憶に残る理由とお気に入りのポイント

とにかく長く終わらない旅。楽しさより我慢が多く、辛くて、なんでやってんだ? と疑問を持ち始めた頃。街のコーヒーショップでトレイルに戻りたくなくてウダウダしていた。

このウマいコーヒーをトレイルに持ち込めば! とひらめいて、GSIのドリッパーを購入し、挽きたての豆と共にバックトゥトレイル。

「美味しいコーヒーを飲むため」に歩みを進める。理由が増えた。他のハイカーからは羨望の眼差し。もちろん何度もいろんな人におすそわけして、気分はコーヒーエンジェル。

軽けりゃ、早けりゃ偉いわけじゃない、楽しんだヤツが優勝だと学んだ。

■ 作り方

お湯は沸騰させきらず、軽く気泡が出るくらい。コーヒー豆は多めに、ドリップは時間をかけて丁寧に。


ロング・ディスタンス・ハイキングにおいては、トレイルフードも楽しんだもん勝ち!

どこの町でも手に入る食材かつ調理が簡単でお腹が膨れること。タクミくんのトレイルフードは、そんなロング・ディスタンス・ハイキングならではのTIPSが詰まっていた。

そして、長期間にわたる旅だからこそ、楽しくなければつづけられない。そんな時にひらめいたドリップコーヒーには、なるほどと感心した。

彼にとっては、トレイルフードも「楽しくなきゃ食べる意味がない」のかもしれない。

また次回の『トレイルフード』もお楽しみに!

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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