TRAIL FOOD #06 | ロング・ディスタンス・ハイキング × トレイルフード by 鈴木拓海
話・写真:鈴木拓海 構成:TRAILS
What’s TRAIL FOOD? | 「トレイルで、実際みんな何を食べているの?」。みんなのリアルなTRAIL FOOD (トレイルフード) が知りたくて立ち上げた、トレイルフードを紹介する記事シリーズ。ULハイキングをはじめ、ロング・ディスタンス・ハイキング、パックラフティング、さらにはフライフィッシングやテンカラなど、それぞれの遊びに没頭している人たちに、普段どんなトレイルフードを食べているかを紹介してもらう。トレイル上のリアルに触れることが、きっと新たな気づきや刺激になるはずだ。
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ここに登場するのは、世の中でよく紹介されるような「山でこんなに美味しいものが食べられる!」というフードがかならずしもメインではない。それぞれの遊び方やスタイルのなかで、時には質素に見えるかもしれないが、みんなが実際に食べているリアルなトレイルフードだ。
そこには、旅を楽しむための大事なエッセンスや、アクティビティをする上での実践的なTIPSが詰め込まれているはず。そんなリアルなトレイルフードが知りたくて、この連載記事を立ち上げた。
第6回目の今回は、TRAILS crewであり、ハイキングエッセイ『It’s a good day!』の連載でもおなじみのタクミくん (鈴木拓海) だ。
ロング・ディスタンス・ハイキング × トレイルフード
タクミくんは、2012年、2014年とJMTを2回スルーハイキングし、さらに2016年にはPCT、2019年にはCDTをスルーハイキングした、ロング・ディスタンス・ハイカーである。
『LONG DISTANCE HIKER』の連載 (詳しくはコチラ) に登場してもらった際は、「楽しくなきゃやる意味がない」と言い、ワクワクすることを求めて歩く姿が印象的だった。そのスタンスはきっと、トレイルでの食生活においても変わらないはずだ。
そんなタクミくんは、実際のところ、ロング・ディスタンス・ハイキングで何を食べているのだろう? 下記2つの視点で紹介してもらった。
・「食べる頻度の高い」トレイルフードベスト3
・「記憶に残る」トレイルフード
第1位:クノールのライス・サイド
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
味が濃く、しっかりした食べごたえが、ロング・ディスタンス・ハイキングで疲れた身体に効く。
本来は熱湯に投入後にしばし茹でつづける、というのが正しい調理法。でも、チタンのクッカーでそれをしようとすると高確率でコゲつくので、ボイルtoブチこみ放置でOK。少し芯が残っていようが、濃い味が誤魔化してくれる。
どんなスーパーでも多様な味が売っていて、安いのもありがたい。チェダーブロッコリ、チキンブロッコリがお気に入り。
一日の終わり、クッカーを火にかけてテントをピッチ。同時進行で調理、放置時間も含めてキャンプの準備が済むとちょうど完成。くってねろ!
■ 作り方
水を400ml沸騰させて、袋の中身を投入。よく混ぜて10分くらい放置。
第2位:トルティーヤ
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
すべてを包む慈愛の食材。これも多くのスーパーで安く手に入り、調理不要のちょっぴり贅沢な炭水化物。なんでも包んでボリュームアップしてくれる。
特におすすめはオイルサーディン、タコライスで簡易ブリトー。ハイキングに飽きてきたら、楽しみになる食事でモチベーションの方向を変えてみるといい。うまいと、楽しい。
軽くはないが、バックパックの狭いスペースに入れることができるので、パッキング性能は優秀。ただ、あまりキュウキュウに詰めると、重なっているうちの数枚が融合してしまうので注意。
■ 作り方
トルティーヤに好きな具材を載せて完成。オイルサーディン、スパム、スニッカーズ、タコライスなどがおすすめ。
第3位:プロテインパウダー
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
重量対効果はバツグンで、軽いのに動ける理想のエナジー源。
水に溶く、容器を洗うという手間が、ナッツなどの行動食よりは増えるものの、圧倒的な軽さが魅力。1食につき、たかだか20〜30gほど。
味も悪くなく、枯渇した身体に驚くほど速攻で染み渡り効果は絶大。
昼と夜寝る前に食事のプラス一品で飲むことが多く、空腹感を見事に消してくれる。異常な運動量の日々にこそ最適な栄養素。
■ 作り方
水と混ぜる。イッキに飲む。
記憶に残るトレイルフード:ドリップコーヒー
■ 記憶に残る理由とお気に入りのポイント
とにかく長く終わらない旅。楽しさより我慢が多く、辛くて、なんでやってんだ? と疑問を持ち始めた頃。街のコーヒーショップでトレイルに戻りたくなくてウダウダしていた。
このウマいコーヒーをトレイルに持ち込めば! とひらめいて、GSIのドリッパーを購入し、挽きたての豆と共にバックトゥトレイル。
「美味しいコーヒーを飲むため」に歩みを進める。理由が増えた。他のハイカーからは羨望の眼差し。もちろん何度もいろんな人におすそわけして、気分はコーヒーエンジェル。
軽けりゃ、早けりゃ偉いわけじゃない、楽しんだヤツが優勝だと学んだ。
■ 作り方
お湯は沸騰させきらず、軽く気泡が出るくらい。コーヒー豆は多めに、ドリップは時間をかけて丁寧に。
どこの町でも手に入る食材かつ調理が簡単でお腹が膨れること。タクミくんのトレイルフードは、そんなロング・ディスタンス・ハイキングならではのTIPSが詰まっていた。
そして、長期間にわたる旅だからこそ、楽しくなければつづけられない。そんな時にひらめいたドリップコーヒーには、なるほどと感心した。
彼にとっては、トレイルフードも「楽しくなきゃ食べる意味がない」のかもしれない。
また次回の『トレイルフード』もお楽しみに!
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