TRAILS REPORT

TRAILS CARAVAN 2016#1 / トレイルズ・キャラバン2016 #1 – パックラフティング・ジャーニー in ニュージーランド

2016.04.08
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TRAILSの編集部クルーで年末に訪れたニュージーランド・トリップの連載(全3回)が始まります。TRAILSクルーで年に1回は長い旅に出ようぜ!ということでスタートした旅「TRAILS CARAVAN(トレイルズ・キャラバン)」。ロング・トリップの中で、仲間と恥らいなくTRAILSのビジョンを語ってみたり、どうしようもなく、どうでもいいことを話して過ごしたり。大自然と仲間とアルコールと…まぁ、そんな旅です。記念すべき第1回は、TRAILSのフィルマーとしてMovie制作で活躍してくれていた小川竜太(from TRAIL MOVIE WORKS)が、この旅からTRAILSに正式にジョイン!というメモリアルな旅になりました。 そして、連載第1回の内容は、ニュージーランド南島でのパックラフトの川旅です。”川遊びパラダイス”としてのニュージーランドの一面に触れてみてください。

■”川遊びパラダイス”としての、ニュージーランド

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僕らがパックラフトに夢中になるシンプルな理由は、ウルトラライトなバックパックの中に簡単にパッキングできて、ハイキングの旅はもちろん、川の旅まで味わえてしまうダブルでおいしい遊びだから。広大な大地にたゆたうように流れる川。水面の高さから眺める、川と青い空との組み合わせ。川の流れに揺られ、ときより現れるホワイトウォーター(*1)とたわむれては、また次の場所へと川の流れが運んで行ってくれる。そんなジャーニー感たっぷりの旅。山の中のトレイルを奥へ奥へと進んだ先に出会える、峡谷の中を通る川。そんな川をパックラフトで進んでいるときは、川旅だけに許された秘密の場所にいるような特別なわくわく感を感じれたりもする。

ニュージーランドは、まさにそんな旅のスタイルにうってつけの国のひとつである。ニュージーランドでは、グレートウォーク(*2)と呼ばれる特に景観の素晴らしいとされるトレイルが9つある。その9つのグレートウォークのうちのひとつが、「ワンガヌイ・ジャーニー」と呼ばれる、川がメインのルートとなっている。まわりを原生林に覆われたワンガヌイ・リバーを、カヌーやカヤックで145kmほど下るルートだ。このように、グレートウォークにリバートレイルを選出してしまうカルチャーからも、ニュージーランドでは川遊びがメジャーであることがわかる。

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ニュージーランドへ入国。環境保全のため、入国時に必ずテントや靴などギアに泥などがついていないかチェックを受ける

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クライストチャーチの空港を降り、そこから最初の目的地のカイコウラの街へ向かう

■いきなり旅の洗礼。雨で川へのアクセスポイントまでの道が通行止め。
「showers」。なんだにわか雨か、たいしたことはない。ニュージーランドに到着して、現地の天気予報を確認して、僕らはこの天気予報なら問題なしと高をくくっていた。クライストチャーチから車で2時間半ほどの、カイコウラという街に僕らは到着していた。もう明日からニュージーランドでパックラフトができる。そんな僕らの上がったままのテンションでは、悲観的な推測などがうまれる余地なんてまったくなかった。

最初のたどり着いた街・カイコウラ。海沿いにある小さな街

最初のたどり着いた街・カイコウラ。海沿いにある小さな街

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カイコウラの街にはカヤックやラフティングのツアーをやっている会社もいくつかある

ところが翌日。川へのアクセスポイントまで車で送ってくれるお願いしていた業者とも連絡が取れない。アクセスポイントの手前にあるゲートを開けてくれる予定だった人とも連絡が取れない。いきなり僕らはトラブルという旅の最高のスパイスにぶちあたった。こうなったら、ニュージーランドで一番頼りになるのは、DOC(自然保護局: Department of Conservation)。DOCは、トレイルの情報は豊富にもっていることは知っていたのだが、川のことまでわかるのだろうか。

DOCのスタッフに、たどたどしい英語で質問をしていると、どうやらここ数日降り続いた雨で、川までの道(ダートロード)が、泥でスリッピーな状態になり通行が制限されている、ということがわかってきた。そして、DOCのスタッフが、山の情報だけでなく、川の情報もとても豊富にもっていることがわかった。さすが川遊び大国だけあって、自然のフィールドで楽しむための情報は、幅広くクロスボーダーにカバーしていることに驚いた。

現地でいろいろと電話してくれたり、最終的にアクセスポイントまでの送迎をしてくれたり、非常にお世話になったご夫妻

現地でいろいろと電話してくれたり、最終的にアクセスポイントまでの送迎をしてくれたり、非常にお世話になったご夫妻

僕らは、もともとはClarence river(クラレンス・リバー)という川を3日間で海の河口まで下る予定でいたが、この途中の通行止めによってプラン全体の変更を余儀なくされた。そして、DOCスタッフから3日間の長い距離ではないが、Clarence river(クラレンス・リバー)にも1日で漕げる距離でよいアクセスポイントがあること。そして、車で1時間45分ほど移動したハンマースプリングスという街の近くにある、Waiau river(ワイアウ・リバー)にもいい場所があることを教えてもらった。まったくパーフェクトなアドバイスに僕らは感嘆した。さて、では新たなアクセスポイントまでの足と、川を降りてからどうピックアップしてもらうか。僕らは突然のプラン変更を楽しみながら、次の日の準備を始めた。

メシもとにかくおいしかった。シンプルな料理から、おいしく味付けされたラムやベニスン(鹿肉)まで、大いにNZフードも楽しんだ

メシもとにかくおいしかった。シンプルな料理から、おいしく味付けされたラムやベニスン(鹿肉)まで、大いにNZフードも楽しんだ

■ 1本目の川:大幅な計画変更を余儀なくされたClarence river(クラレンス・リバー)
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前日にスタートポイントだけを視察をしたときは、川はきれいな青色だった。しかし、実際の僕らがこの川を漕いだ日は、前日までに増水が、この河口付近のエリアにも影響を及ぼし、川の色は一変して泥のまじった茶色になっていた。増水で水面も上がっているし、水の勢いも強くなっている。

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それでも、実際にこぎ始めてみると、もうすぐに天国!今まで見ていた山を川の上から眺め、ちょっと勢いよく波が立つ瀬も、ここのエリアであれば僕らのスキルでもこなしていけるレベルだった。もちろん、危ないと思ったら、事前に川岸に舟をとめて、その先の様子をスカウティング(*3)をする。そして、行けそうだと判断したらそのまま再び舟で渡る。やはり危ないと思ったら、川岸を歩いたりして回避する。ただ、このエリアについて、回避しなければならなかったのは、大きな流木がつっかえていた一箇所だけであった。
この日のルートはどうしても距離が長くとれないところだったので、河口近くの橋がかかっているエンドポイントまで来たところで、再び車でピックアップしてもらい、次の川であるWaiau river(ワイアウ・リバー)へと向かった。

前日までの雨で川は泥色だったけど、青空も出ていてごきげんな舟旅に

前日までの雨で川は泥色だったけど、青空も出ていてごきげんな舟旅に

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次の目的の川があるハンマー・スプリングスへ向かう道

■2本目の川:最高のパックラフト・ツーリングとなったWaiau river(ワイアウ・リバー)
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最高のロケーションに、絶妙な川の流れの強さと大きさあったWaiau river

最高のロケーションに、絶妙な川の流れの強さ、大きさであったWaiau river(ワイアウ・リバー)

2つ目の川は、カイコウラから車で2時間45分ほどのハンマースプリングの近く。川沿いを通る道で車を走らせていると、川の様子が気になってしかたない。これは完全にパックラフト病というやつで、川が見えると、どんな流れで、まわりの感じはどうで、自分でこげそうか、という視点で、川を食い入るように眺めてしまう。車から視察した感じのWaiau river(ワイアウ・リバー)は、もうその時点で最高の川旅になることが想像できる川だった。

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結果的に、このWaiau river(ワイアウ・リバー)では、とっても贅沢な川のツーリングを楽しめた。見た目はおおらかに流れているように見えるが、水の力は強くて、どんどん進んでいってくれるし、ところどころあるホワイトウォーターも流れの強さがあってとても面白い。ちょっとトリッキーな流れになっているところがあり、ラインを読み切れずに四苦八苦するところもあったが、そのスリリングな感じもとてもいいレベル感だった。

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前半は、川の幅は広くはなく、瀬も大きくて強い。大きな岩壁の脇を流れたり、大きくカーブした流れのところで、高い波を越えていったりと、パワフルな感じのパドリングが続く。中盤をすぎたあたりから、肥沃で広大な流れになり、本流がどこなのかわからないくらい、流れが分岐していく。迷路に入り込んだ子供のように、次は右の支流に入るか、左の支流に入るか、飽きさせない川だ。後半はもうフリップ(横転)するような心配もなく、遠くに見える山を眺めたり、川の上を飛び交う鳥たちと川をくだったりと、やたらとピースフルな風景の中、ゴール地点へと向かっていく。

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のっけからプラン変更をせまられたパックラフトの旅も、DOCスタッフとNZの素晴らしい自然によって、最高の旅に生まれ変わった。ここから僕たちは、遅れてニュージーランドに到着する、それぞれの奥さんと4歳の子どもを迎えにクライストチャーチに向かった。そこからはFamilyでのロング・ディスタンス・ハイキングだ。その様子は次回のレポートに掲載するので、是非次回もお楽しみに。Happy Trails!!

[MOVIE]

(*1)ホワイト・ウォーター:瀬によって水流に落差が生じたり、 岩や木などの障害物で水流が激しく変化したりすると起こりやすい現象。空気を多く含んで泡立った状態が、白く見えることから、ホワイト・ウォーターと呼ばれ、その激しい水流の変化が、自分のレベルにあった場所であれば、非常にエキサイティングに楽しめるセクションとなる。一方で危険もその分多くなるので、難易度(危険度)を見極める能力や経験が求めらるセクションとも言え、川の熟練者が同行していないケースは、流れの緩いエリアを迂回したり、川原などの歩ける場所があれば、ポーテージ(フネを水から上けてかつぎ、通行不能な場所を歩いて越える。)する などの手段をお勧めする。

(*2)グレートウォーク:ニュージーランドの中でも、特に景観の素晴らしいトレイルが「グレートウォーク」として指定され、特別な保護と整備がされているトレイル。

(*3)スカウティング:難易度が高いと予想される箇所の場合、艇を降りて陸上から危険はないか、どのルートがいいかなどを事前に偵察する行為。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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