TRIP REPORT

パシフィック・クレスト・トレイル (PCT) | #03 リサプライ(食料・ギアの補給)とアクセス編 by Teenage Dream(class of 2022)

2024.02.23
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文・写真:Teenage Dream 構成:TRAILS

ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。

今回は2022年にパシフィック・クレスト・トレイル (PCT) をスルーハイキングした、トレイルネーム (※1) Teenage Dreamによるレポート第3回。

スルーハイキングに向けた準備編として、リサプライ (食料やギアの補給 ※2) とアクセスのプランニングについてお届けする。

リサプライは、ロング・ディスタンス・ハイキングをする上で知っておくべきことなので、これから歩こうと思っているハイカーはぜひ参考にしてみてほしい。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。

※2 リサプライ:食料やギアなどの補給 (リサプライ)。長い距離・時間をロング・ディスタンス・ハイキングするためには、トレイルを歩き、町におりて補給をし、またトレイルを歩くという行為を繰り返す。


PCT沿いのチェスターは、コンパクトで居心地の良い町。

リサプライ①:食料の補給


4日〜1週間おきに町へ降りて補給をするイメージだった。

– どのくらいの間隔 (日数) で町に降りる予定だったか

基本的にはノープランだった。感覚的には、1週間ごともしくは90〜120mile (145〜193km) くらいの距離感で町にいけばいいか、という感じだった。

日本の山を歩くときもそうだが、私はお守りとして練乳を持ち歩いている。常温で日持ちして、480gで1,500kcalもある。だからノープランで万が一食料が足りないとなっても、1〜2日は練乳でしのげると考えていた。

ちなみに、計画段階で行きたい町は何カ所かあったものの、事前に立ち寄る町についてはほぼ何も決めていなかった。その時の気分とその時のまわりのハイカーの意見に合わせて動こうと思っていたのだ。


町にあるお店に行けば何でも手に入るが、節約のためにハイカーボックスを有効活用した。

– 町、店でどのようなものが補給できるか等 (食料、燃料、ギア)

小さな町ではガソリンスタンド、グローサリーストア (食料雑貨店)、大きな町ではスーパーマーケットで補給をしていた。

ただ、なるべく節約したかったので、基本的にはハイカーボックス (※3) などを漁って食料やガス缶を補給していた。特に燃料 (ガス缶) は1度しか買っていない (スタート地点のトレイルエンジェルの家で売ってもらった)。

ガス缶に関しては、町のスーパーマーケットやガソリンスタンドなどにたいてい置いてあるので、買えなくて困ることはない。

あと、Amazonで買ったクリフバー (アメリカでお馴染みのエナジーバー) などを、郵便局やトレイルエンジェルの家へ直送したりもした。

※3 ハイカーボックス:ハイカー (特にスルーハイカー) が不要になった食料や道具を入れる箱のこと。

– リサプライ・ボックス (事前の郵送) などは使う必要があるか

私はリサプライ・ボックスはほぼ使用していない。

しかし、ケネディ・メドウズに関しては、物価が高く、そこから始まるシエラはベアキャニスターも必要な区間となるため、ベアキャニスターに食料を詰め込んだものを、事前に郵送しておいた。

余った食料、要らないギアなどは、大きな町のトレイルエンジェルに送ってキープしてもらい、そこから日本へ送り返していた。送料が比較的安かったので、お土産や不用品を3〜4回ほど日本へ送った。

リサプライ・ボックスをかなり活用しているハイカーも多いけど、山火事が頻繁にあるため、町に降りることができず回収が難しい時もある。

PCTの場合、町で補給ができないことはほぼないので、個人的にはリサプライ・ボックスは使用しなくても問題ないと思っている。余ったものや不用品をまとめるついでに活用するくらいが、良いのではないだろうか。

リサプライ②:ギアの補給


ギアのリサプライは、シューズの買い替えがメイン。ただ、必要に迫られなくとも、自分のブランドでいつか開発したいプロダクトもあえて購入していた。この寝袋もそのひとつ。

– 旅の途中でギアのリサプライをしたか

シューズを買い替える時には、必ずと言っていいほどトレイルエンジェルや郵便局でキープしてもらっていた。

というのも、自分はUS8というアメリカにおいては1番小さなサイズのシューズを履いていたので直営店などの店頭にはなかなか置いていない。なので、インターネットでREIやAmazonから注文して購入していた。

浄水器も買い替えた。フィルターの出力が鈍くなったのと、他のブランドのものも試したくなって、PCTの真ん中に位置する大きな町サウス・レイク・タホにあるアウトドア用品店で購入した。

私が将来商品開発をしてみたいプロダクトでもあるテントや寝袋など、日本ではなかなか手に入りにくいものも、あえて買い換えたりもした。いずれもインターネットで注文して、トレイルエンジェルや郵便局に発送した。

PCTの途中の町には、ネットなどで探してみると、REIや個人経営のアウトドア用品店などがそれなりにある。なかでも小さなお店のデッドストックなど眺めるのが、私は好きだった。時々、コレクション的に購入しては日本に送るようにしていた。

リサプライできるトレイルタウン


PCTの全体マップ。南からカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州と3つの州にまたがる。

さいごに、PCTで私が立ち寄ったリサプライができるトレイルタウンを一部紹介したい。町の名前の後ろの ( ) 内は、南端から歩き始めた場合のスタート地点からの距離を表示している。

– アイディルワイルド Idyllwild(179mile / 288km)
PCTの序盤の町。ログハウスの多い別荘地でもある。スーパーマーケットや郵便局も近くリサプライも楽々。

ここでは他のハイカーと割り勘でロッジを貸し切ってタコスパーティーをした。センスの良いアウトドアショップ「Nomad Ventures」は必見。

– ケネディ・メドウズ Kennedy Meadows(702mile / 1,130km)
PCTを歩く人は必ず立ち寄る場所。砂漠の終点であり、オアシスの始まりでもある。農場などが広がっているだけで特に何もない。でも、ハイカーが1番生き生きと見える町でもある。

PCTのシーズンだけお祭り騒ぎとなるこの町の雰囲気を楽しんで、ハイカーとの交流やPCTの歴史や文化を体験したい。


サウス・レイク・タホは大きな町で、何でもそろう。

– サウス・レイク・タホ South Lake Tahoe(1,092mile / 1,757km)
PCTの真ん中付近に位置する。トレイル上でもトップクラスに大きな町。スキーリゾートとなっており、湖にはボートやパーティーをしている人だらけ。

カリフォルニア州とネバダ州の州境が交わる町で、ネバダ州に入ってしまえばカジノが楽しめる。スキーショップ、マウンテンバイクショップなどもあり、登山用品店も盛ん。

ヨセミテセクションもここで終わり、火山や山火事で焼け落ちた暑くて辛いセクションとなるため、ここで一旦装備を整えてPCT後半戦へ挑む。そんな旗艦となるポイントでもある。

– チェスター Chester(1,331mile / 2,142km)
ほどよくコンパクトにまとまった町。ドラージェネラルという100円ショップがある。おすすめは「Pine Shack Frosty」という最高にノスタルジックで安くて美味いバーガー屋さん。店の目の前がコインランドリーなので、洗濯物をしながらバーガーとミルクシェイクを楽しむのが最高。また行きたい。PCTのなかでも5本の指に入るほど美味しかったバーガー屋さんだ。

また、スーパーマーケットもあるのでリサプライも困らない。ハイカーみんなで公園で寝た思い出の地でもある。公園のスプリンクラーで体も洗えてしまう。


カスケード・ロックスは、オレゴン州とワシントン州の州境にある小さな町。

– カスケード・ロックス Cascade Locks(2,146mile / 3,454km)
「PCT DAYS」というハイカーのイベントが開催される、オレゴン州とワシントン州の州境の町。オレゴン州は消費税がないので、オレゴン州に荷物やギアを送っておいてギアを買い替えるのがおすすめ。

大きな町ではないが、ここからバスに乗ってポートランドまで足をのばすのもいいし、東にあるフッドリバーという大きな町へ行くことも可能。キャンプサイトもあるのでのんびりと休憩することもできる。

あと「Thunder Island Brewing」という醸造所はぜひ行くべき。いいことがあるかもしれない。


レヴンワースは、スティーブンス・パスからアクセスする。

– レヴンワース Leavenworth(2,464mile / 3,965km)
ワシントン州にあるこの町は、ドイツの雰囲気を楽しめる中規模の街。観光地となっていて、結構楽しい。アウトドアショップがあるのも、おすすめポイント。

ワシントン州はスキー場がPCTのトレイル上にあるため、リサプライが比較的しやすいかもしれない。しかし山火事の影響でトレイルが封鎖されることがあるので注意が必要。

ちなみに、ノースバウンド (北上) のハイカーにとっては、PCT最後の観光地。みんなでドイツビールを飲んで楽しむ場所でもある。マクドナルドもあるので、コーラもたくさん飲める。

地図とトレイルヘッドまでのアクセス


オフラインでも使用できる地図アプリ、FarOutが便利。(https://faroutguides.com/より)

– 地図はなにを使用したか

紙地図は使用せず、地図アプリのFarOut (※4) を使った。水場や山火事の情報はPCTA (PCTの管理運営団体) からも入手できるが、更新が遅い。

FarOutならハイカーによるリアルタイムの情報が手に入るため、ハイカー必須の地図アプリ。絶対に事前に買うべきだと感じた。FarOutはオフラインで使用することもできるし、UIも素晴らしい。

ただ、余計な情報を拾いすぎて逆に不安を感じるハイカーもいたりしたので、いろんなことを知り過ぎるのもよくないかもしれないと感じた。

あと、途中でざっくりしたプランニング (他のハイカーと相談する時) をする際には、友人が描いてくれたPCT MAP手ぬぐいが便利だった。

※4 FarOut:ロング・ディスタンス・ハイキング、サイクリング、パドリング用のGPS地図アプリ。世界中にある100以上のトレイルが登録されている。もともとは『Guthook App』(ガットフック・アプリ) という名称。このアプリの誕生背景については、リズによる開発者へのインタビューを参照のこと (詳しくはコチラ)。


ハイカーと話す時は、友人が描いてくれたPCT MAP手ぬぐいが役立った。

– トレイルヘッド (スタート地点) までのアクセス

スタート地点はメキシコ国境のカンポという場所。私はスタート前、サンディエゴに住むスカウトさんというトレイルエンジェルの家に泊まっていたのだが、彼を支援するボランティアの方にトレイルヘッドまで送迎してもらった。

ちなみにスカウトさんは高齢なため、毎年の体調などでトレイルエンジェルをやるかどうかを考えているらしい。

また基本的に、ボランティアやトレイルエンジェルにはドネーション (寄付) をするのがマナー。アメリカ人にとってもこの物価高騰は大打撃で、ガソリン代もバカにならない。

スカウトさんはドネーションを受け取ってくれなかったが、日本からのお土産を持って行ったら喜んでくれた。とあるハイカーは折り紙の鶴を財布に折りたたんで入れて渡していたらしい。たしかに嵩張らないし喜んでくれるのでいいアイデアだ。

私はトレイルエンジェルに頼ったが、公共交通機関を使ってアクセスすることも可能なのでPCTのトレイルヘッドは比較的行きやすい。


ケネディ・メドウズにて。次回から、PCTのトリップ・レポートがスタートするのでお楽しみに。

今回は、PCTをスルーハイキングするにあたっての、リサプライ(食料やギアの補給) やアクセスのプランニングについてレポートしてもらった。次回からは、いよいよパシフィック・クレスト・トレイルのトリップ・レポートをお届けする予定だ。

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子どもの頃から父と一緒にロボットコンテストに出場するほどのモノづくり好きで、機械加工やレザークラフトに夢中になる。大学時代には自転車で日本一周をしながら登山もし、卒業後はアウトドア総合メーカーへ就職。プロダクトデザイナーとしてさまざまなプロダクト開発に携わる。2021年に独立し、アウトドアメーカー『MIYAGEN Trail Engineering』を創業。同時に、念願だったパシフィック・クレスト・トレイル (PCT) をスルーハイキング。

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