コンチネンタル・ディバイド・トレイル (CDT) | #03 リサプライ(食料・ギアの補給)とアクセス編 by Gazelle(class of 2022)
文・写真:Gazelle 構成:TRAILS
ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。
今回は2022年にコンチネンタル・ディバイド・トレイル (CDT) をスルーハイキングした、トレイルネーム (※1) Gazelleによるレポート第3回。
スルーハイキングに向けた準備編として、リサプライ (食料やギアの補給 ※2) とアクセスのプランニングについてお届けする。
リサプライは、ロング・ディスタンス・ハイキングをする上で知っておくべきことなので、これから歩こうと思っているハイカーはぜひ参考にしてみてほしい。
リサプライ①:食料の補給
– どのくらいの間隔 (日数) で町に降りる予定だったか
僕は経験上、体力的にもバックパックの容量的にも、7日分以上の食糧を担いで歩くのは無理だと考えていたので、5日おきには町に立ち寄ろうと考えていた。
しかしオントレイル(トレイル上)に町があったり、トレイルから簡単に町へ行ける場合は、まわりのハイカーにつられたりして、ついつい無駄に立ち寄ってしまう。
町に行くとどうしても時間とお金を浪費してしまうので、コロラド州の中盤など、町から町の距離が近いセクションでは立ち寄る町を厳選する必要がある。
とはいえ、気の合うハイカーと町でゆったりする時間も、ロング・ディスタンス・ハイキングの醍醐味のひとつだと、僕は思う。
– 町、店でどのようなものが補給できるか等 (食料、燃料、ギア)
町の情報は、まずは『Yogi’s Books』(※3) のタウンデータと地図アプリ『FarOut』(※4) の書き込みなどをチェック。そして、まわりのハイカーからの情報収集がとても重要だ。
アメリカのロングトレイルで立ち寄る大きなトレイルタウンは、ほとんどがスキーリゾートかレイクリゾート。そのため、レストランやアウトフィッターズ (アウトドア用品店)、ブルワリーが充実している場合が多い。
ハイキングカルチャーがトレイル沿いの地域に浸透しているPCTでは、ある程度大きな町はいつもハイカーウェルカムな雰囲気で、燃料やハイキングギアもだいたい買えた。
しかしCDTはトレイルの歴史が比較的浅く、ハイキングカルチャーが地域に浸透してないのでそうはいかなかった。ハイカーボックス (※5) も少なく、トレイルから町へ行くためのヒッチハイクも成功率が低かった。
– リサプライ・ボックス (事前の郵送) などは使う必要があるか
フードに関しては、選ばなければどの町でもほぼ補給が可能。特別なこだわり (オーガニックフード、ヴィーガン等) がない限りは、大きな町で買って小さな町へ郵送する必要はなく、立ち寄った町で入手できる。
僕は3食ラーメンでも平気なハイカーなので、基本的には立ち寄った町で買えるものを食べていた。
リサプライ②:ギアの補給
– 旅の途中でギアのリサプライをしたか
ギアに関しては、序盤のグレーシャーナショナルパークを抜けてからはアイスアックスは不要だと判断し、カリフォルニア在住の知人宅に送った。まわりのハイカーもだいたい同じタイミングで自宅などに送っていた。
しかし気候の変化などにより、手放したギアが予測外に必要になることもある。そういったリスクを避けるためには、安易に送ってしまわず、重くても頑張って担ぎつづけるべきかもしれない。
CDTは5カ月、4,500kmを超える長旅なので、ギアが壊れたり消耗したりして買い替えることは何度もあった。CDT用に導入して初めて使うギアが合わなかったり、まわりのハイカーを見習ったりして、買い換えることもあった。
購入方法はAmazon、メーカーやREIのオンラインショップを使用すれば選択肢が多く、安く買えることもある。
しかし、アメリカオンラインショッピングは日本では考えられないぐらい遅延や行方不明などの配送トラブルが多い。なので、かなり余裕ある日程で注文する必要がある。町のアウトフィッターズで買えれば、手に取ってみて買うのが無難である。
ただ、配送トラブルの場合でもREIのオンラインはすぐに代替品を再送してくれたりと、とても対応が良かった。
リサプライできるトレイルタウン
さいごに、CDTで僕が立ち寄ったリサプライができるトレイルタウンを一部紹介したい。町の名前の後ろの ( ) 内は、北端から歩き始めた場合のスタート地点からの距離を表示している。
– ヘレナ Helena, MT(364mile / 582.4km)
CDTのトレイルタウンでたぶん最大の町。『Van’s Thriftway』などの大きなスーパーや、たくさんのレストラン、スマホショップ、モーテル、ベーカリー、何でもある。
トレイルヘッドでのヒッチハイクで出会ったCDTハイカーと3人でモーテルをシェアして1泊した。
– アナコンダ Anaconda, MT(424mile / 679km)
アナコンダルートを歩く場合に通過するオントレイルのタウン。数軒のスーパー、レストラン、ドラッグストア、安宿がある。
CDTハイカー向けに開放してくれている無料の小屋があったので、その頃一緒にいたCDTハイカーと一緒に利用させてもらった。
– デュボア Dubois, WY(1110.5mile / 1776.8km)
比較的大きな町で、『Lynn’s Superfoods Dubois』という中型のスーパー、モーテル、たくさんのレストランやバー、ハードウェアストアがある。
町に数軒あるチャーチ (教会) の1つに泊めさせてもらうことができた。天候が悪かったこともあり2泊させてもらった。
僕が訪れた時は、町の外れの広場でロデオショーが開催されていた。初めての本場のロデオを見て、ハイカー仲間と楽しい時間を過ごした。
– レッドヴィル Leadville, CO(1832.7mile / 2932.3km)
全域標高の高いコロラドセクションのど真ん中あたりの町で、標高はなんと3,096m。全米で一番標高が高い町である。
1800年代に炭鉱ブームで湧き上がった町で、当時はデンバーの次に人口が多かったらしい。伝統的な造りの建物が立ち並び、当時のにぎやかな雰囲気を残している。
小さいが『Leadville Outdoors and Mountain Market』というアウトフィッターズや、大型のスーパー『Safeway』、カフェや安宿も数軒ある。
僕が訪れた時はちょうど『CDT SOBO TRAIL DAZE』というハイカーズイベントが開催されていて、レジェンドハイカーのトークショーやQ&A、ゲームを楽しんだ。また、世界中でここでしか買えない工場直販で有名なアウトドアメーカー『Melanzana』のマイクログリッドウェアを購入することができる。多くのハイカーが自分用やお土産用に購入していた。
– レイクシティ Lake City, CO(2051.8mile / 3282.8km)
アップダウンが厳しく過酷なサンファンルートの入り口にあるリゾートタウン。多くのCDT&CTハイカーが立ち寄る。
町へのヒッチハイクが難しく、過去最長の2時間半かかった。大きなスーパーはないが、グローサリーストア、ベーカリーショップで食糧補給が可能。この町を出ると次の町パゴサスプリングまで115mile (184km) もある。
僕が立ち寄った頃は雨天つづきだったので、3日ほどこの町で滞在して天気の回復を待ち、サンファンルートに挑んだ。ハイカー向けの宿は数軒あったが、僕は節約のためにRVパークにテントを張って滞在した。こちらは1泊10ドル。
– シルバーシティ Silver City, NM(2889.0mile / 4622.0km)
オントレイルにあるとてもアーティスティックな町で、CDTのSOBO (南向きに歩く) ハイカーにとって最後の大きな町。
『Walmart』などの大きなスーパーや、メキシカンレストラン、中華料理店、何でもある。アウトフィッターズ『Morning Star Sports』では破れたダーンタフ (ソックス) の交換をしてもらえた。町の中心にあるかわいいカフェ『Tranquilbuzz Coffee House』で食べたコーヒー&ケーキが絶品だった。
CDTハイカーと5人でモーテルをシェアして1泊、そして一軒貸しのゲストハウスをみんなでシェアしてもう1泊した。にぎやかで楽しい時間だったが、旅の終わりを意識していて、少し寂しい気持ちだった。
地図とトレイルヘッドまでのアクセス
– 地図はなにを使用したか
地図アプリのFarOutと『Yogi’s Books』のトレイル概要図を日本でPDF化して使用した。
町の情報に関しても『Yogi’s Books』のタウンガイドがとても役にたった。
– トレイルヘッド (スタート地点) までのアクセス
スタート地点へ向かうことが最初の大きな難関だった。まずはロサンゼルスから国内線でモンタナ州の『カリスペル国際空港』に向かった。そして空港から早速ヒッチハイクで、アムトラック高速鉄道の駅のある『スカイフィッシュ』に移動。
駅前の公園で野宿をし、翌朝の列車に乗り込みグレーシャー国立公園の東の玄関口『イーストグレーシャー』に向かった。
車窓から見える穏やかなカントリーサイドの景色は、トンネルをくぐるごとに荘厳で荒々しい氷河 (glacier) の景色に変わっていった。散々写真で見てきたあの景色だ。数日後にはあの中を歩いているのかと思うと、強い緊張と胸の昂りを感じた。
イーストグレーシャー駅に着くと次は『セントマリービジターセンター』へヒッチハイクで向かった。グレーシャー国立公園内でのキャンプパーミットを取得するためだ。
混雑のため結局パーミットは取れなかったが、パーミットなしで歩く計画を立て直し、ここのキャンプサイトで1泊した。翌朝ヒッチハイクでカナダ国境にあるCDTのスタート地点の1つ『チーフマウンテントレイルヘッド』に向かい、いよいよCDTの旅が始まった。
自分はカリフォルニアの知り合いに会ってからスタート地点を目指したが、そうでなければ安くて簡単なのはシアトルから電車で行く方法だろう。23時間の電車の旅になるが、時間に余裕があればそういう方法もある。
準備段階から旅は始まっていると思うので、頑張って自分に最適な方法を見つけるのがおすすめだ。
今回は、CDTをスルーハイキングするにあたっての、リサプライ (食料やギアの補給) やアクセスのプランニングについてレポートしてもらった。次回からは、いよいよコンチネンタル・ディバイド・トレイルのトリップ・レポートをお届けする予定だ。
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