TRIP REPORT

アパラチアン・トレイル | #03 リサプライ(食料・ギアの補給)とアクセス編 by Daylight(class of 2022)

2024.03.15
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文・写真:Daylight 構成:TRAILS

ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。

今回は2022年にアパラチアン・トレイル (AT) のスルーハイキングにトライした、トレイルネーム (※1) Daylightによるレポート第3回。

スルーハイキングに向けた準備編として、リサプライ (食料やギアの補給 ※2) とアクセスのプランニングについてお届けする。

リサプライは、ロング・ディスタンス・ハイキングをする上で重要なファクターなので、これから歩こうと思っているハイカーはぜひ参考にしてみてほしい。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。

※2 リサプライ:食料やギアなどの補給 (リサプライ)。長い距離・時間をロング・ディスタンス・ハイキングするためには、トレイルを歩き、町におりて補給をし、またトレイルを歩くという行為を繰り返す。


ニュージャージー州とペンシルバニア州の州境にある、デラウエアウォーターギャップ。教会の一部が開放されていて、ドネーション (寄付) だけで宿泊できる。

リサプライ①:食料の補給


4、5日ごとに補給のために町に降りる計画。自分が好きなスキムミルクはウォルマートでよく買った。

– どのくらいの間隔 (日数) で町に降りる予定だったか

4、5日ごとに補給する想定でいた。1日15〜20mile (24〜32km) 歩けば4日で60〜80mile (96〜128km) になる。ネット (thetrek.co) でお勧めリサプライ場所等の記事を参考にして、上記の距離になるように計画を立てた。

トレイルタウンに立ち寄る最大の理由はリサプライ (補給) である。ATではトレイル上もしくはすぐにトレイルに戻れる場所で、満足のいくリサプライができることが多い。

ホステルやウォルマート (アメリカの大型スーパーマーケットチェーン) などが町から離れたところにあって、町よりもホステル自体の印象しか残らない場所も多い。トレイルヘッド、ホステル、買い出しの店間は送迎サービスが充実している。

トレイルタウンに到着する時間帯も重要だ。夕方に着くと疲れた状態で洗濯や買い物、シャワーなどをこなすため、翌朝出発だとゆっくり休んだ気がしない。なるべく午前中に到着してゆっくりと準備するのがお勧めである。


ゴーハムという町では、地元の人が、このキャデラックで送迎、買い物にも連れて行ってくれた。

– 町、店でどのようなものが補給できるか等 (食料、燃料、ギア)

町にある店舗情報はFarOut (※3) のマップで知ることができる。ウォルマートなどの大型店のあるトレイルタウンが補給地点として有力な候補となる。

ウォルマートなら、店にもよるが大抵の食品やキャンプ用品、薬なども揃う。私の好きなスキムミルクは主にここで手に入れた。

ダラー・ゼネラル (日本の100均のような店) も安くてそれなりの品数がある。小さな店やホステル内の商品でも十分な補給ができたこともある。

燃料 (ガス缶) の調達は大事なので、その町で補給できるかFarOutの情報で事前に調べた。アウトフィッター (アウトドア用品店) があれば確実だ。休日や営業時間も調べておくこと。

主食のパスタ、トルティーヤ、ツナ、ピーナッツバターはどこでも手に入るしインスタントラーメンだと3〜5個で1ドルで手に入る。私は手に入るもので済ませていたので、特に困ることはなかった。

ゼロデイは自炊が多かったので、肉やサラダを調達するにはウォルマートなどのスーパーがあったほうが、食材選びなど楽しくて良い。

※3 FarOut:ロング・ディスタンス・ハイキング、サイクリング、パドリング用のGPS地図アプリ。世界中にある100以上のトレイルが登録されている。もともとは『Guthook App』(ガットフック・アプリ) という名称。このアプリの誕生背景については、リズによる開発者へのインタビューを参照のこと (詳しくはコチラ)。

– リサプライ・ボックス (事前の郵送) などは使う必要があるか

基本的には使うつもりがなかった。この町のスーパーは品数が少ないから送るほうが良いという情報もあったが、そのなかでなんとかするのも楽しいと考えていた。

私のスタート地点はハーパーズフェリーという町で (フリップフロップだったため ※4)、アウトフィッターでガス缶は補給できたのだが、食料は乏しく、遠くにあるセブンイレブンを利用した。

そういう理由から2度目のハーパーズフェリー立ち寄りの時は、迷わず、リサプライボックスを利用した。

あと、日本からの補給を2回行なった。また、リサプライボックスとは異なるが、100マイル・ウィルダネスという場所があり、100マイル (160km) の間に立ち寄れるトレイルタウンがないのだ。

しかし、裏技があって、トレイルの決められた場所で自分の買ったものを受け渡してもらうことができる。利用した知り合いのハイカーに聞くと、2人分で85ドル。荷物の中にビールが入っていたのには感心した。

※4 フリップフロップ:ハイキング用語で、今回の場合は、ATの中間地点 (ハーパーズフェリー) から歩いて北上し、北端から中間地点まで別の交通手段で移動したのち、南端まで歩いてスルーハイキングすること。

リサプライ②:ギアの補給


途中で購入した、「Hyperlite Mountain Gear / Hyperlite 3400 Southwest」。

– 旅の途中でギアのリサプライをしたか

事前に情報を収集し、日本では入手できないペルメトリン (permethrin) という防虫剤を購入した。ディート (DEET) とは逆に、テントなどに使用できて肌につけてはいけないというものだ。4〜6週間効き目がありライム病などの予防に有効な手立てになる。

大きなものとしてはバックパックを2回購入した。自作のバックパックが壊れた時に親切なハイカーが手配してくれた店でオスプレイを購入し、モンソンというトレイルタウンでHyperlite Mountain GearのHyperlite 3400 Southwestに買い替えた。

ハイドレーション関係のアイテムは水漏れ等の不具合があったときに買い替えた。すぐに必要なものはAmazonで購入して、ホステルに送った。REIのオンラインショップも使ってみたかったが、発送に何日かかるのか不明だったので使っていない。

アウトフィッターのあるトレイルタウンは知っていると役に立つと思い、事前にチェックしておいた。

リサプライできるトレイルタウン


ATの全体マップ。今回は、中間地点のハーパーズフェリーがスタート地点。北端まで歩いた後、公共交通機関等でスタート地点に戻り、南端を目指す計画だ。

さいごに、ATで私が立ち寄ったリサプライができるトレイルタウンを一部紹介したい。町の名前の後ろの ( ) 内は、ハーパーズフェリーから歩き始めた場合のスタート地点からの距離を表示している。


今回の私のスタート地点は、ATのちょうど中間地点にある、ウエストバージニア州のハーパーズフェリー。

– ハーパーズフェリー Harpers Ferry, WV(0mile / 0km)
私のスタート地点であり、折り返し地点である。ATのほぼ中間地点にあり、ATC (ATの管理運営団体) の事務局もあり、スルーハイキングのレジストリ (登録) も行なえる。

観光地であるのでホテルやレストランが多いが、満足なリサプライはできない。食料品店は遠くにセブンイレブンがあるくらいだ。ただし、歴史的な建物も多く古いアメリカをイメージできる素晴らしい場所である。

– ポートクリントン / ハンブルク Port Clinton / Hamburg, PA(194mile / 310km)
ポートクリントンまではトレイルヘッドから歩いてすぐだ。巨大な東屋があって10ドルのドネーションで宿泊できる。ハンブルクにあるカラベスという巨大なスポーツ用品店まで無料送迎バスが運行している。

カラべスから歩ける範囲にハンバーガーレストランやウォルマートがあり、昼食や食料補給ができる。広い場所にそれらが点在しているので町としての景観があるわけではない。カラベスでは充電させてもらえた。

– ラトランド Rutland, VT(679 mile / 1,086km)
トレイルヘッド (4号線) からキリントン発のバスに乗って行くことができる。トレイルタウンとしては最大級の大きさで、近代的な建物と古い建物が両方ある町 (都市) だ。レストランも充実しているし、ウォルマートも歩いて行ける範囲にある。私が行った時はウォルマート前の駐車場でアジアンフェスティバルをやっていた。

そんな都会であるのに、ドネーション (寄付) だけで泊まれる宿がある。イエロー・デリというレストランの2階にあり、サービスも充実している。


ニューハンプシャー州ノースウッドストックにて。降雪があったので、このNotch Hostelでゼロデイを取った。

– ノースウッドストック North Woodstock, NH(782 mile / 1,252km)
ニューハンプシャー州に入るとホワイトマウンテン国立公園という山岳地帯になる。ここからは1日10〜15mile (16〜24km) でもハードだ。6月中旬だが、ワシントン山で降雪があった。この辺りで、気象情報の収集をすると良いだろう。

私の泊まった宿 (Notch Hostel) は町から少し離れていて、買い物は送迎を利用するか、無料の自転車で行くことができる。このホステルでは、行程や宿泊地について多くのアドバイスを受けた。

– キャラタンク Caratunk, ME(1,021mile / 1,634km)
渡し船でケネべック川を渡ると、歩いて1時間弱でキャラタンク・ゼネラル・ストアに着く。宿泊もできるが、なんともサービスがすごい。充実したリサプライができる上に、シャワー、洗濯が無料! 送迎も宿泊者でなくても随時無料でしてくれる。

ピザパイ (12inch・30cm) も注文するとオーブンで焼いてくれる。洗濯を待ってる間に買い出し、充電とランチ、デザートにアイスクリーム (500cc)、吊り椅子で昼寝だってできる。この世のすべてが揃っている天国である。


メイン州のミリノキット。カタディン山登頂後、ハイカーの仲間たちとアパラチアン・トレイル・カフェで朝食を食べた。

– ミリノキット Millinocket, ME(1,168mile / 1,870km)
カタディン山登頂後にかならず寄るトレイルタウンである。アパラチアン・トレイルロッジに宿泊した。ボストンに向かう場合にバス停までの送迎サービスがある。ここでギア、食料のリサプライができる。というのもカタディン山登頂前にも利用できるのである。

100マイルウィルダネスを歩いた後でゆっくりしたいというハイカーの真似をして、登頂前にも利用した。ただし片道2時間の山道となる。

地図とトレイルヘッドまでのアクセス


オフラインでも使用できる地図アプリFarOut。(https://faroutguides.com/より)

– 地図はなにを使用したか

FarOutだけで歩いた。ミリノキットからボストンまでの経路などはホステルに置いてあるガイドブックを調べた。ガイドブックは情報が多すぎて消化できない感じがした。

FarOutでトレイルタウンやホステルの情報、送迎サービス等についての情報が十分に手に入る。コメント欄も見ていくと水場の水量やステルスキャンプ地などの情報も手に入る。

GPSで現在地が表示されるので、目的地までの距離がわかる。標高の情報からその日の行程がハードになるかどうかわかる。あと一山越えればシェルターまでは下りだとか、最後の登りは大変だから手前で宿泊しようなどということが予測ができる。


ATの管理運営団体であるATCのウェブサイトも、情報収集の手段のひとつ。(https://appalachiantrail.org/より)

– トレイルヘッド (スタート地点) までのアクセス

ハーパーズフェリーへのアクセスは非常に簡単である。ロナルド・レーガン空港 (ワシントンDC) から公共交通機関だけで行くことができる。現地でGoogleで調べたぐらいだ。

まず地下鉄でロックビルまで行く。途中のメトロセンターで乗り換える必要がある。そこから列車に乗り換えハーパーズフェリーまで行ける。時刻は正確だった。

地下鉄に乗るには専用のカードにチャージして使う。ボストンやアトランタでも同様だった。ロックビル駅のホームには自由に入れたので列車が来たときに車掌さんにチケットを持っていないことを申し出ると、乗車してから他のお客さんに手伝ってもらいCharmPassというアプリをインストールして運賃を払うことができた。

ボストン、ワシントンDC間のアムトラックはネット予約した。空港や駅までのアクセスはUberを利用した。


私のスタート地点である、ハーパーズフェリーにて。

今回は、ATをスルーハイキングするにあたっての、リサプライ (食料やギアの補給) やアクセスのプランニングについてレポートしてもらった。次回からは、いよいよアパラチアン・トレイルのトリップ・レポートをお届けする予定だ。

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20代の頃から山歩きをはじめ、尾瀬や丹沢、南北アルプス、八ヶ岳などでのテント泊を楽しむ。最長で5泊くらいだったが、いつしかもっと長くことはできないものかと考えるように。そこで出会ったのがロングトレイルだった。2021年には、みちのく潮風トレイルをスルーハイキング。2022年に、アパラチアン・トレイル (AT) を約4カ月間歩く。

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