It’s a good day! #11 | ホワイト・ナイト
文・写真:鈴木拓海 構成:TRAILS
What’s “It’s a good day” ? | ロング・ディスタンス・ハイカーであり、バサーであり、スケートボーダーであるトレイルネーム Sunny (サニー) ことスズキタクミ。2021年よりTRAILS Crewにジョインしたタクミくんによる、ピースでイージーでちょっとおバカな気まぐれハイキングエッセイ。
なんとなくハイキング。で、なんとなくアメリカのあの⽇を思い出す。マストアイテムはウェイファーラーとラジオとハンバーガー。あとはULの屋根が切り取った三角窓のあの景色。それさえあれば、Itʼs a good day.
White night.
タクミです。今日もどこかのトレイルから、ごきげんよう!
しっかし暑い。まだ梅雨も明けてないというのに。
なるべく標高を上げて歩けるトレイルを探し、濃い味のバーガーを冷たい水で流し込む。
チャージOK、イェア!!
グリーンが力強く太陽を求めて、葉を広げる。
今朝まで滴っていた雨粒をごちそうに、来たるべきサマーに備えている。
風に揺蕩(たゆた)う葉が、こちらをうかがってヒソヒソ話をしているように聞こえる。
ニンゲン来たぞお。
バーチを眺める方向で、タープをピッチする。
ラジオはオフビートで猛暑をなだめすかそうとしている。
陽は沈みはじめ、ここは快適な夜になる予報だ。
快適はいい。暑すぎても寒すぎても、参っちまうよな。
ふと、アメリカでのグッデイを思い出す。
ハイキングをしていて、一番寒かった日を覚えているだろうか。
大規模なコールドフロントを街でやりすごし、しかしその影響で雪が残るセクションを歩いた日のことだ。
あたり一面が真っ白。どうにも雪上にしか寝る場所を見つけられず、足りないR値と3シーズン用のスリーピングバッグで熟睡できない二晩を過ごした翌日。今日こそは雪のないところで寝るべし・・と歩みを進めるも、ひたすらに雪原が続く。
このパスを超えたところのフラットに雪がないことを願い、迫るサンセットに最後の気合をふり絞る。うつくしい西陽に照らされる新雪がオレを称えるもすぐに辺りは暗くなる。
無常にも雪まみれのフラットがヘッドライトに照らされる。
しかたない。
またしても雪上にテントをピッチして、ナルゲンに熱湯を注いでお腹に抱え込む。惜しみなく熱を賜う子犬のようなそれは、数時間だけ安堵をもたらす。
夜半に何度も凍えて目を覚まし、ようやく迎えた朝。靴どころか脱ぎ散らかしたズボンのスソまでもがバキバキに凍って自立するほどだった。
テントに陽が当たるまで・・。いや、あと数時間で着く国道からさっさとトレイルタウンへ降りよう。
ふにゃふにゃの意思をしぼり上げてスリーピングバッグから這い出る。
凍てつく足のことは考えないように歩き続け、ヒッチハイクもすぐに成功。
四輪の文明でグングンと標高を下げて街に到着する頃には、身体が欲しがっていたものはビールに姿を変えていた。
奇しくも温泉リゾートで栄える街に降り立ち、ピザ・プレイスにたどり着く頃には靴も足もクサい”だけ”になっていた。
it’s good day!!
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