TRIP REPORT

アパラチアン・トレイル (AT) | #04 トリップ編 その1 DAY0~DAY6 by Daylight(class of 2022)

2024.08.07
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文・写真:Daylight 構成:TRAILS

ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。

今回は2022年にアパラチアン・トレイル (AT) のスルーハイキングにトライした、トレイルネーム (※1) Daylightによるレポート第4回。

今回はいよいよトリップ編。今回は、トリップ編その1として、スルーハイキングのスタート前夜DAY0からDAY6までのATの旅のはじまりをレポートをお届けする。

ロング・ディスタンス・ハイキングにおける「トレイルライフの日常」が詰まったレポートをお楽しみください。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。


アパラチアン・トレイル (AT: Appalachian Trail)。アメリカ東部、ジョージア州のスプリンガー山からメイン州のカタディン山にかけての14州をまたぐ、2,180mile (3,500km) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。今回は、中間地点のハーパーズフェリーがスタート地点。北端まで歩いた後、公共交通機関等でスタート地点に戻り、南端を目指す。

何もわからずハーパーズフェリーに到着。(DAY0)


MYOG (MAKE YOUR OWN GEAR) したバックパックを背負って自宅を出発。

ATは南から北へ目指して歩くのがスタンダードだが、自分はフリップフロップ (※2)で歩くので、目指すのは最初はATの中間地点にあるウエストバージニア州のハーパーズフェリー (※3)。そこからスタートし北上して進んでいく。

出国の日。成田を出発し、ワシントンのロナルドレーガン空港へ向かう飛行機へと乗り込んだ。


ワシントンの空港に到着。ここからATの出発地点へ向かう。

ロナルドレーガン空港に午後3時頃到着。あっけなく、シカゴ空港での入国審査を済ませた。そこからスタート地点のハーパーズフェリーまでは、Google頼りである。準備不足なのであるが、列車でハーパーズフェリーまで行けることは確認してある。

地下鉄から列車に乗り継ぎ、午後7時過ぎに到着した。地下鉄に乗るには専用のカードにチャージして利用する。列車はCharmPassというアプリが必要である。無人駅のため切符売り場も改札も無い。乗車券がないことを車掌さんに申し出た。列車に乗車後に乗客から教えてもらいアプリをインストールして、電子チケットを手に入れた。乗れて良かった。


アメリカらしい大きなハンバーガーと大量のフライドポテト。

宿に着くと翌日以降の予約は取れていないと言われた。翌日泊まる別の宿を手配してもらい、車で送ってくれることとなった。チェックインと明日の出発時刻を確認した後で、ハンバーガーを食べに行った。ビールを飲むとフライドポテトは食べきれなかった。

ハーパーズフェリーの街並み。

ハーパーズフェリーは歴史ある街並みが特徴である。4月下旬に八重桜が咲いていると思ったら、ピンクのハナミズキだった。水仙も咲いていた。

※2 フリップフロップ:ハイキング用語で、今回の場合は、ATの中間地点 (ハーパーズフェリー) から歩いて北上し、北端から中間地点まで別の交通手段で移動したのち、南端まで歩いてスルーハイキングすること。

※3 ハーパーズフェリー:ATCの本部がある。トレイル上にあり、ATのほぼ中間地点にあたる。小さなホテルがいくつかあり、安価なホステルもある。アウトドア店があってガス缶やプロテインバー程度の買い物はできる。やや離れた場所にセブンイレブンがある。リサプライには不向きだが、南北戦争に関わる歴史的な観光地でもあり、ゼロデイを取る場所としてはおすすめである。

6マイル歩いてスルーハイカー?(DAY1〜DAY2)


ATのスルーハイキングの申請登録をしてもらったタグ。

宿から1時間ほど歩いてハーパーズフェリーに到着。まずはATC (ATの管理運営団体)の本部でスルーハイキングの申請登録を済ませた。手続きは感染予防のため屋外のテントで行われた。

この日はコロナ禍で3年ぶりに開催されたフリップフロップ・フェスティバルがあった。翌日に朝食が振る舞われて、多くのハイカーがスタートするはずである。


いよいよATのスルーハイキングのスタート。

屋外で講演会をやっていたが、寒いし、盛り上がっていなかった。興味のあるテーマでもなかったので1時間ぐらい聴いた後で、近くのセブンイレブンでお昼ごはんを買ってそれを公園で食べてから、ATのスルーハイキングをスタートした。

この日は週末だったので、トレイルでは多くのハイカーが歩いていた。しっかりと眼を合わせ、満面の笑顔で挨拶を交わすところが、日本とは全く違うと感じた。元気をもらい、スタートに至るまでの不安感が和らいだ。


ATの歩きはじめ。ホワイトブレイズ (白い長四角) はAT本線を示す目印。

予定時刻より早くスタートしたので、予定していた6マイル先のシェルター (トレイル上の小屋。三方が壁があり、戸のない建物。数人が泊まれるサイズ) にはずいぶん早く到着した。

時間があれば、ハイカーとおしゃべりをする。これは当初からの目的である。この時は聴き上手な女性がいたので、家族や仕事のことをたくさん話した。ATC本部でスルーハイキングの申請だけ先に済ませてしまったので、「まだ6マイルしか歩いてないが、俺はスルーハイカーだ」などと談笑した。


目的地の最初のシェルターに到着。

ATは里山を繋いだようだと表現されるが、この辺りはまさにそうだ。植生も日本と近いので、撮った写真がアメリカなのか日本なのかわからない。この時期のこの辺りは、まだ樹木に葉がついていないので枝越しに遠くの景色が見える。

この日 (DAY2) は20マイル歩きたくて、ゴールを20マイル先のキャンプサイトに設定して歩いた。20マイルは、ロングトレイルをスルーハイキングするのに必要なスキルだと思っている。スルーハイキングはビザの期限や積雪の影響で、あまりゆっくりとできないのだ。


このあたりのATの景色は、日本の植生に似ている。

シェルターのある宿泊地にはトイレがあり、テントやハンモックを張るスペースもある。歩行計画を立てる場合には、シェルターを宿泊地とするのを基本としたが、歩きたい距離の中に適当なシェルターがない場合はキャンプサイトを利用した。シェルターで宿泊するのが楽でいいのだが、シェルターが満員の時はテントを張った。

早々にトレイルエンジェル、トレイルマジックに出会う。(DAY3〜DAY5)


DAY3は最初の補給地点の街に降りる。

ハーパーズフェリーでは十分な食料補給ができなかったので、スミスバーグへ続いているトレイルヘッドから1.6マイルにあるダラージェネラル (食料品店) へ向かった。

道路を歩いていると車が止まり、店まで送ってもらった。彼女はトレイルヘッドまでハイカーを送った帰りとのこと。名刺をもらったので早速電話して帰りも送ってもらった。早々のトレイルエンジェル (※4) との出会いだった。

ATはトレイルヘッドと街が近いことが多く、2マイル程度なら歩いて往復できる。宿泊しないで食料補給ができるので経済的である。


早々にトレイルマジックにも遭遇!

トレイルが公園に入ると、声がかかり、行ってみると食事が用意してあった。トレイルマジック (※5) だ。食事を提供してくれた人はアメリカの様々なトレイルでトレイルマジックをしている有名人のようだった。

おいしい炊き込みご飯、ジュース、コーヒー、りんご、お菓子などたくさんいただいた。他にも何人ものハイカー達が立ち寄り、食事を楽しんでいた。

※4 トレイルエンジェル:ハイカーをボランティアでサポートしてくれる人のこと。たとえば、自宅やガレージを開放して宿泊スペースや食事を提供してくれたり、トレイルヘッドまでの送迎をしてくれたりする。

※5 トレイルマジック:トレイルエンジェルが、ハイカーのために用意してくれる食料や飲み物。

ATのトレイルタウン定番のバンクルームに泊まる。(DAY6)


トレイルタウンに下りてまずはアイスクリーム。

寄り道してアイスクリームを食べた。

トレイルと並行している一般道沿いの店である。こういう店はFarOut (※6)という地図アプリでルートを調べる際に、事前に見つけておく。アイスは5ディップで5ドル。

アイスクリーム屋の入り口付近で数人のハイカーが休憩していた。でもこの日のゴールは23マイル歩いた先で、しかもそこで宿から迎えに来てくれる人と午後5時待ち合わせだったので、すぐに出発した。ハイカーとのおしゃべりのチャンスを逃した。


アイスクリームでチャージして、この日の目的地に向けて再び歩く。

夕方に予定時刻にボイリングスプリングス (※7) の公園に到着。この日のホステルは、地図上で表示される位置には実際にはなくそこから2マイル以上離れている。そのため迎えが必要なのだ。

寝床は納屋を改造したバンクルーム (2段ベッドがいくつかある感じの部屋)。ここでは掛け布団がなく寝袋を利用する。母屋のシャワーを利用し、有料で洗濯をしてくれた。バッテリーやスマホの充電も大事な作業。夕飯は朝食用に無料で用意された、パン、ソーセージを食べた。


トレイルタウンのボイリングスプリングスで朝食を食べたお店。

ATのトレイルタウンにはバンクルームのあるホステルは大抵あり、30〜40ドルで泊まれるので経済的。シャワー、ランドリー、Wi-Fiがあり、トレイルヘッドから宿へ、宿から街までの送迎サービスがあることを確認して利用した。


トレイルタウンでビールもチャージ。

翌朝は7時頃に宿から街まで送ってもらい、朝食と食料補給をした。トレイルタウンのレストランや食料品店はどこも6〜7時には開いている。cafe101というレストランでビーガン食の朝ごはんを食べた。トレイル上では不足しがちな野菜が一番のご馳走だ。

※6 FarOut:ロング・ディスタンス・ハイキング、サイクリング、パドリング用のGPS地図アプリ。世界中にある100以上のトレイルが登録されている。もともとは『Guthook App』(ガットフック・アプリ) という名称。このアプリの誕生背景については、リズによる開発者へのインタビューを参照のこと (詳しくはコチラ)。

※7 ボイリングスプリングス:トレイル上にあり、池のある公園の脇にATCの地区事務所がある。ホステルが2件あり、街から離れているので送迎を依頼することになる。街の端にテントサイトもある。小さな街だがおしゃれなレストランもあり、ビーガン食を提供してくれる。街の中心から歩いて15分ほどのところに食料品店がある。


野菜もたっぷり食べて、再びトレイルへと向かう。

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20代の頃から山歩きをはじめ、尾瀬や丹沢、南北アルプス、八ヶ岳などでのテント泊を楽しむ。最長で5泊くらいだったが、いつしかもっと長くことはできないものかと考えるように。そこで出会ったのがロングトレイルだった。2021年には、みちのく潮風トレイルをスルーハイキング。2022年に、アパラチアン・トレイル (AT) を約4カ月間歩く。

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