ヘキサトレック (Hexatrek) | #03 リサプライ (食料・ギアの補給)とアクセス編 by Beyoncé(class of 2023)
文・写真:Beyoncé 構成:TRAILS
ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。
今回は2023年に開通間もないフランスのヘキサトレック (Hexatrek ※1) をスルーハイキングした、トレイルネーム (※2) Beyoncéによるレポート。
今回の第3回のBeyoncéによるレポートでは、スルーハイキングに向けた準備編として、リサプライ (食料やギアの補給 ※3) とアクセスのプランニングについてお届けする。
リサプライは、ロング・ディスタンス・ハイキングをする上で、知っておくべきものなので、ぜひこれから歩こうと思っているハイカーはチェックしてほしい。
リサプライ①:食料の補給
– どのくらいの間隔 (日数) で町に降りる予定だったか
Hexatrekを歩き始める前に、Hexatrekの公式地図アプリを見てどのくらいの頻度で町へ降りるのかをザっと確認した。すると、小さな村を含め意外と町へ降りる頻度が多いことがわかった。
しかし、降りるすべての町でリサプライをするのは手間だったし、余計なものを買ってお金の無駄遣いにもつながりかねなかった。そのため、だいたい80~100kmの間隔でリサプライを行う予定を立てた。もし町へ降りても食料が十分に残っていたら、その町は通過するつもりだった。
また2022年に歩いたPCT (※4) では、小さい町のスーパーマーケットは品揃えが悪く物価も高かった。もしかしたらフランスでも同様のことが起こるのではないかと思い、リサプライはできるだけ大きな町でするようにした。
– 町、店でどのようなものが補給できるか等 (食料、燃料、ギア)
小さい町や村落では、食料は個人経営のようなグロサリーストア(食料品店) やブーランジェリー (パン屋) で確保することが多い。日本のようなコンビニはない。またガス缶やギアを販売しているショップもなかった。
大きい町を訪れると、Carrefour (カルフール) やCasino (カジノ) などフランスでは一般的なスーパーマーケットなどがあり、食品だけでなく、ガス缶や日用品なども豊富だった。アウトドアショップもいくつかあるが、商品はウェア系が多く、登山やバイク関連のギアがちらほら置いてある印象だ。
またフランスは畜産業が盛んなのか、町の規模とは関係なく、チーズと肉加工食品はほとんどのグロサリーストアで見かけた。そのおかげである程度のタンパク質は確保することができた (例:リゾット用のチーズ、トルティーヤ用のサラミなど)。
– リサプライ・ボックス (事前の郵送) などは使う必要があるか
冒頭でも話をした通り、町へ降りる頻度が多いため、計画を誤らない限り食料に困ることは基本的にない。またトレイル上でリサプライ・ボックスを利用しているハイカーに会ったことはなく、このことが話題に挙がったこともない。
リサプライ②:ギアの補給
いくつかのギアは、旅の途中で再購入をした。理由としては既存のギアを失くした、消耗した、フィットしなかったなどが挙げられる (サングラス、シューズなど)。しかしどれも緊急性の高い買い替えではなかったので、郵送はせず現地で調達した。
三足目となるシューズの買い替えをするタイミングは、ちょうど私が数日のゼロデイを取るタイミングであったため、トレイルから少し外れた大きな町へ行き、シューズを調達した。トレイル上に良いアウトドアショップがない場合があるので、トレイル近くの大きな町を事前にチェックしておくと調達に困らない。
アルプスのセクションでは雪上を歩くことがあったが、山小屋で働く現地ガイドや先行くハイカーによると雪山用のギアは必要ないということだった。また自分でも実際に歩いてみて必要ないと判断し、これらを買うことはなかった。しかしアルプスでは歩く年や月によって雪状況が変わるため、必要であればシャモニーにあるアウトドアショップを訪れてみると良い。
リサプライできるトレイルタウン
– ヴァイセンブルク Wissembourg(0km)
教会や修道院などがある歴史深い町。3~4階建ての建物が並ぶ、典型的なヨーロッパの町並みといった感じだ。このエリア周辺はワインの生産も盛んで、観光客も多い。
この町にはスタート前日に到着し、フランスではどんな食料があるのかを複数のスーパーマーケットを回ってチェックした。ここでは3日分の食料で十分だったか初のリサプライということもあり、食事が身体に合うかも分からないため、余裕をもって4日分調達した。
また出国前に確認した通り、この町には徒歩圏内のアウトドアショップがなかった。そのためフランクフルト国際空港からヴァイセンブルクへ電車移動する途中、ドイツの町でガス缶を確保した。
– タン Thann(340km)
670kmあるセクション1の中間地点に位置する町。ヴァイセンブルクと町の規模感は似ている。アルザスワイン街道の終着点であるため、観光地としての人気もある。
タンには複数のスーパーマーケットがあり、十分なリサプライができる町の大きさ。自分はモバイルバッテリーの充電も兼ねて、アイスクリーム屋とレストランに立ち寄った。さらに水に当たって急遽ここで一泊することになったのだが、近くにユースホステルもあり最低限の施設は揃っていた。
– シャモニー Chamonix(832km)
アルプス界隈を観光・トレッキングする人たちの起点となる町。私が訪れた7月中旬はハイシーズンで、世界中からバックパックを背負った観光客が押し寄せていた。トレイル上で最も賑やかな町だった。
物価は高いが、リサプライは一番便利だ。複数の大手スーパーマーケットがあり、チーズや加工肉専門店なども豊富でリサプライには困らない。
またアウトドアショップも大小合わせると10店舗以上はあった。万が一、雪山用のギアが必要になった時には、ここですべて調達できる。店舗によって値段設定の幅も広いため、購入を検討する場合は複数の店舗を回ってみると良い。
– ディー Die(1,429km)
セクション3の後半、そしてHexatrekもいよいよ折り返し地点に迫る頃に辿り着く町。中心地は迷路のように通路が狭いが、雑貨屋やブーランジェリー、アイスクリーム屋が並び、町ブラするにはおすすめの町でもある。
スーパーマーケットも複数あり、アウトドアショップも一店あるため十分なリサプライがここでできる。またキャンプ場もありここで安く一泊することもできる。しかし私が訪れた7月下旬はキャンプ場利用客が多く、泊まることができなかった。そのため、夏に前述のシャモニーやディーで宿泊をする場合は事前予約をした方が無難だ。
– カルカソンヌ Carcassonne(2,063km)
セクション4の終着点、そしてセクション5の起点となる町。世界遺産の城塞都市やミディ運河、ショッピングスポットなどがある魅力的な観光地だ。
町の中心地は観光用のレストランやショッピングスポットが立ち並び、リサプライできるスーパーマーケットも複数ある。しかしアウトドアショップは町から少し離れた郊外に移動しなければならない点が残念。そういったことを考慮すると、ここではニアゼロやゼロデイを取ることをおすすめしたい。
私はカルカソンヌに到着後、数日ゼロデイを取った。そして友人に会いにカルカソンヌから4時間かけてバルセロナへ行き、そこで三足目のシューズをゲットした。
– リュス=サン=ソヴァール Luz-Saint-Sauveur(2,645km)
セクション6の起点から約50kmのところにある町。コンパクトな町の中にバイクショップやスキーショップが幾つかあり、この周辺ではアウトドア活動が盛んなのだろうという印象を受けた。一般的なアウトドアショップもあるが、登山系の商品は少ない。ここから先は、本格的なピレネー山脈に入り寒さも増してくるため、防寒用のギアは事前に準備しておくと良い。
食料調達に関しては、2つのカルフールがあるので問題なくリサプライできる。また、広々としたカフェがカルフール近くにあり、バッテリー充電や小休憩として利用できる。
地図とトレイルヘッドまでのアクセス
– 地図はなにを使用したか
主にHexatrekの公式地図アプリを利用した。アイコンは「野営地」、「施設」、「魅力的な場所」、「水場」、「リサプライ」、「その他」の6つに分類されている。アイコンを押すと、その詳細情報を見ることができて便利だ。しかしPCTで利用した地図アプリFarout (※5) のようなコメント機能はついていないため、リアルタイムの水場情報はなく、行程を考える上で苦労した。
地図上のトレイルのルートラインが緑色と橙色の二色で表示されており、緑色は野営可のエリア、橙色は野営不可のエリアとなっている。基本的に町がある周辺は橙色表示になっている。また地図をズームアップすると50m毎の等高線を見ることができるので、近くに野営地やキャンプ場がない場合は等高線の間隔が広い (傾斜が緩い) 場所で野営する行程を組んだ。
ただできたばかりの地図アプリにもかかわらず、水場やお店の情報は古いことがしばしばあり、ネットがつながる場所では、Googleマップも併用した。
– トレイルヘッド (スタート地点) までのアクセス
まず、飛行機でフランスに入国するか、飛行機でドイツに入国し陸路でフランスを目指すかの選択肢があり、私は後者を選択した。理由としてはドイツ (フランクフルト国際空港) で降りた方が航空費が安いこと、さらに空港からスタート地点のヴァイセンブルクまでの道のりが圧倒的に楽だったからだ。
空港からヴァイセンブルクまでは鉄道を利用した。バスも利用可。乗り換えは必須で、ちょうど真ん中に位置するマンハイムというドイツの町で乗り換えをすることが多い。スムーズに行けば4~5時間でトレイルヘッドへ到着できる (パリのシャルルドゴール空港からだと10時間以上はかかる)。
ヴァイセンブルクからトレイルヘッドまでは数kmしか離れていない。そのため、自力でトレイルヘッドへ向かった。
今回は、Hexatrekをスルーハイキングするにあたって、リサプライ(食料やギアの補給) やアクセスのプランニングについてレポートしてもらった。次回からは、いよいよhexatrekのトリップ・レポートをお届けする。
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