パシフィック・クレスト・トレイル (PCT) | #05 トリップ編 その2 DAY12~DAY20 by Teenage Dream(class of 2022)
文・写真:Teenage Dream 構成:TRAILS
ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。
今回は2022年にパシフィック・クレスト・トレイル (PCT) をスルーハイキングした、トレイルネーム (※1) Teenage Dreamによるレポート。
今回は全8回でレポートするトリップ編のその2。PCTのスルーハイキングにおける、DAY12からDAY20までの旅の内容をレポートする。
ロング・ディスタンス・ハイキングにおける「トレイルライフの日常」が詰まったレポートをお楽しみください。
PCTは出会いと別れの連続。(DAY12)
ロッジを借りてみんなでタコスパーティをして映画を見た。私と同じようにアウトドアメーカーで商品開発をしていたハイカーとも仲良くなった。
あと2週間目にして今の寝袋ではロングトレイルに耐えられないと感じ、新しい寝袋を調達した。この町のアウトドア用品店は規模は小さいがトップクラスにセンスがよかった。
このハイカーの中でも仲良くなったフリーライダーに、自分がつくった「TO TRAIL TO TOWN」の手ぬぐいをあげたらすごく喜んでくれた。
ヒッチハイクでトレイルヘッドへ出発する。
足は相変わらず痛く、筋膜炎がひどい。
他のハイカーはスイスイと進んでいく。多分もう彼らとは会えないだろう。そんな気がしてきた。PCTは出会いと別れの連続だ。そんな考えが歩きながらも確信となっていく。
寂しいし、彼らが初日に出会った嫌なハイカーの思い出を上書きしてくれて、トレイルネームをつけてくれた。最高の時間を一瞬でも過ごすことができて、とても幸せだった。
登り始めて、気がつけば夕方になった。空が突然暗くなり、嵐となった。
雨は降らないが雲の中だ。湿気が酷くて、服がうっすらと結露する。暴風が木を折ってトレイルに落ちる寸前だった。そんな木をくぐって先に向かう。
進むことすら厳しくなり低木の下で寝ることにした。
砂漠の中に立つ山。 (DAY13〜14)
朝には嵐が過ぎ去り、相変わらずな砂漠の広大な景色が見えた。
足も相変わらず痛いままだ。
サンジャシントという砂漠の中に突然現れる、地形的に目立つ山がある。この山はアメリカ本土で6番目の山となる。
雪がまだ残り、砂漠の小さなオアシスのような山だった。ルートはPCTの本ルートとは異なるオルタネートルート(代替ルート) となる。PCTをはじめて逸れるトレイルとなって、少しワクワクした。
雪を踏む感覚も懐かしい。この雪山から流れる冷たい川の水は、PCTの中でも特に美味しかった。
山の標高は3,302m。そこから一気に降って次の山域へ向かう。
1日中ずっと下り坂だった。足が痛いからガンガンと足にダメージが蓄積する。そして標高が下がるほど景色は砂漠へと戻っていく。歩けなくて景色のいい場所に初めてテントを張ってみた。
特撮テレビドラマ『ナイトライダー』に登場する車。 (DAY15〜17)
小さな町に降りた。高速道路沿いの大きなサービスエリアがある町だ。風力発電が並び、『GTAV (グランド・セフト・オートV) 』(※2) というゲームで見た景色だった。
ヒッチハイクをすると、アメリカの特撮テレビドラマ『ナイトライダー』(※3) に出てくる架空のドリーム・カー「ナイト2000」のモデルになったトランザム (※4) を捕まえた。日本ではまず見かけることのできない、車好きにはたまらない車だ。
ガソリンスタンドで補給をして、ハンバーガーショップのIN–N-OUT BURGERで充電をして出発。
トレイルは川沿いを進んでいく。戻りのヒッチハイクではクリフバーを箱ごとドライバーからいただいた。
このセクションは砂漠の川沿いをひたすらと登っていく。トレイルは不明瞭でわかりにくい。でもPCTの砂漠のトレイルの中でも結構好きなトレイルでもある。砂漠を小さな川が削り取った谷を歩くのが楽しい。トレイルは砂地で痛む足にもちょうどいい。
ビッグベアーの町でBoo Booと出会う。(DAY18〜20)
ビッグベアーという大きな町へ到着した。ケニーさんというトレイルエンジェルの情報をつかみ連絡をすることにした。電話をしてみると、「迎えに行くよ」と言う。拾っていただいたケニーさんの家の近くにあるバーで、車から下ろしてもらった。そこでPCTハイカーの板谷さんと遭遇した。板谷さんは別のハイカーと一緒に歩いているらしく、お昼に出発するらしい。
ケニーさんの家はたくさんのハイカーの溜まり場になっていて、壁には家族写真がはりめぐらされていた。
ケニーさんの作るご飯をいただき、夜はバーに行く。アメリカでは飲酒運転は合法だ。ケニーさんは過去にバンドを組んでいたこともあり楽器がたくさんあった。楽器を引っ張り出してカントリーソングを歌ってくれた。
この日は皆既月食で月が真っ赤になった。他のハイカーは誰も皆既月食に興味がないらしく、寂しくも1人でビールを飲みながら月を見ていた。相変わらず他のハイカーとはすぐに仲良くはなれない。
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