It’s a good day! #12 | ザッツ・イーブン
文・写真:鈴木拓海 構成:TRAILS
What’s “It’s a good day” ? | ロング・ディスタンス・ハイカーであり、バサーであり、スケートボーダーであるトレイルネーム Sunny (サニー) ことスズキタクミ。2021年よりTRAILS Crewにジョインしたタクミくんによる、ピースでイージーでちょっとおバカな気まぐれハイキングエッセイ。
なんとなくハイキング。で、なんとなくアメリカのあの⽇を思い出す。マストアイテムはウェイファーラーとラジオとハンバーガー。あとはULの屋根が切り取った三角窓のあの景色。それさえあれば、Itʼs a good day.
That’s even.
タクミです。今日もどこかのトレイルから、ごきげんよう!
雨が弱いうちにバーガーを片付けて‥たら雨はやんだ。イイぜ。
朝晩はしっかりと涼しい日々がやってきた。
みなさまご自愛くださいよ。
また雨が降る前にナイスなフラットに目処をつけてタープをピッチする。
ラジオはエレクトリック・ギターサウンドに乗せて乾いた声を歌う。
西陽がすこしだけ身体をあたためて、ニヤリとしながらコーヒーを淹れる。
ふと、アメリカでのグッデイを思い出す。
スタートの時期も歩みも遅かったオレのハイキングは、そのトレイルのハイライトでもある高山帯に着くころには季節が進みすぎていた。
直前までは行ってみたが、そこまでですでにトレイルも水場も雪に埋もれ絶望的。迷いに迷ったが最後のジャンクションでエスケープルートを選択した。
残念に思う気持ちに折り合いをつけられないまま、リサプライに寄った売店のおばちゃんは親身に話を聞いてくれた。
「雪で危ない山域に装備もなく行くのは、挑戦ではなく無謀と呼ぶのよ。良い決断をしたわ。それよりツイン・レイクスのあたりは紅葉がステキだったでしょう?あの黄金色のアスペンツリーの並木道を歩いたなら、ここの高山帯を諦めてもイーブンだわ。」
うんうん、と勝手に折り合いをつけてくれたおばちゃんは、いたずらっぽい顔で続ける。
「この売店、今季の営業があと数日だから使い切らなきゃいけない食材があるの。」
チーズがこぼれるホットサンドと、お皿いっぱいのビーンズスープをトレイに乗せて戻ってきた。傍らには缶ビールが2本乗っている。さすがに申し訳ないと、お金を払おうとするも受け取ろうとしない。
「片方は私のよ。あなたの母親でもたぶん同じことをするでしょう?勇気ある選択に乾杯しましょう!」
「何かを失うとき、少なくとも何かを得るスペースは生まれるものよ。」
湿った空に似合わない、乾いた笑顔でカッコいいことを言う。
おばちゃんの何気ない言葉がオレの選択を正しいものにしてくれた。
it’s good day!!
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