アイスランド縦断ハイキング 575km / 18 days by ホイットニー・ラ・ルッファ #02
(English follows after this page.)
文・写真:ホイットニー・ラ・ルッファ 訳・構成:TRAILS
ホイットニーはロング・ディスタンス・ハイカーであり、アメリカのハイキング・コミュニティに強くコミットしているハイカーのひとりでもある。またULギアメーカーのシックス・ムーン・デザインズ (Six Moon Designs ※1) で、ボードメンバーとしても活動している。
TRAILS – HIKING FELLOWのリズ・トーマスとは、古くからのハイカー仲間であり、アメリカのロング・ディスタンス・ハイカーのコミュニティであるALDHA-West(※2)では運営サイドのハイカーとして共に中心的な役割で活動している。
ホイットニーの初来日のときに、TRAILS Crewは彼と出会い、感性が共感し、即座に意気投合。以来、彼の来日の度に酒を酌み交わす間柄。2023年のPCT DAYS (※3)では、TRAILS Crewのトニーと現地で会っており、その後、ホイットニーが日本に来たときには、彼をゲストにTRAILSでイベントも開催している。
この記事では、ホイットニーがアイスランド縦断のJ Leyルート(※4) 535kmをロング・ディスタンス・ハイキングしたレポートを、全6回で連載する。
今回の第2回では、スタート地点のフロウンハフナルタンギ灯台からミーヴァトン湖まで (166km) をレポートする。
永久凍土のツンドラのオフトレイルや、爆発的な水量の滝、火山がつくった広大な溶岩平原など、最初からとてつないスケールのアイスランドの自然に出会ったセクションとなった。
ツンドラ (永久凍土の大地) のオフトレイルを歩き、野営する。
アイスランドの北端に到着。シャトルから降りると、集合写真をささっと撮って、まずは数百m先にある灯台まで行きました。北端の海岸で海の中に手を入れてみると、辺境の地まで来た感慨がわいてきました。さて、ここから南へと向かって進んでいきます。これからアイスランドの旅のはじまりです。
最初の道はよく整備された砂利道でした。その後にジープロードに入っていきます。やがてジープロードは、自然のトレイルへと変わりました。そこから数時間、永久凍土の表面だけ融けたツンドラ (※5) の茂みを、足首をひねらないように注意しながら歩きました。この日は雨の降る寒い予報でしたが、太陽が顔を出し、20℃台半ばの晴天となりました。
ランチの後、地図には載っていなかったジープロードに出ました。しかしだいたい私たちが向かう方向と合っていたので、そのジープロードをしばらく進みました。
やがて歩いていたジープロードがルートから外れ始めたので、私たちは選択を迫られました。 道なりに進んで翌日歩く予定の主要道路のN1号線に合流することを祈るか、それとも自然の中のオフトレイル (トレースも鮮明でなく、ルートにも指定されていない道) を2km歩いて、この日のゴール地点である湖まで行くか。ちなみにその湖は、この先16kmの区間で、唯一の信頼できる水源でした。
現地で合流した2人の友人たちはジープロードを選び、私たち3人 (マイクとナオミと私) はオフトレイルを進んで湖に向かうことにしました。
たどり着いた湖は小さかったですが、水は澄んでいました。水面には2羽のアビが浮かんでいて、歌うようにさえずっていました。私たちは泥んこの茂みの湖畔にテントを張り、食事をして、すぐに眠りにつきました。
時差ぼけと暖かい気候の中で、長い時間ハイキングをしたので、かなり疲れていました。
長い舗装路歩きの1日‥。
2日目は、オフトレイルから始まり、やがて地図に載っているジープロードにたどり着きました。 このジープロードは、アイスランドを囲む有名な環状道路である、N1号線につながっています。その後は、32kmの舗装路を歩く長い1日となりました。
途中で立ち寄ったコーパスケールの町では、売店が併設されたガソリンスタンドがあり、そこでサンドイッチと行動食用のスナックを買いました。
舗装路を歩くのは、足にも体にも負担が大きかったです。しかもこの日は日差しが強く、一日中、日陰がありませんでした。 気温は30℃近くあり、悪天候に備えて暖かめのウェアを来ていたので、不快で長い1日となりました。
この日のハイライトのひとつは、アイスランドのプレートの境界 (ユーラシアプレートと北アメリカプレート) を越えたことでした。このプレートの境界で、アイスランドの大地が半分に分かれ、ゆっくりと反対方向に引っ張られているのです。
他にも、この日は初めてアイスランドの馬を見たり、海に流れ込む見事な滝を見たりしました。そして最後は、8ドルほどの素敵なキャンプ場で1日を終えました。
アイスランド北部の奥地にあるアゥスビルギ渓谷へ。
朝、テントを叩く雨音で目が覚めました。天気予報を見ると、午前中はわか雨で、午後3時ごろにはかなり激しい雨になるとのことでした。
私たちはがんばらずにこの日を過ごすことに決め、19kmほどしか歩かずに、嵐をやり過ごすために早めにキャンプをすることにしました。
この先には、ヨーロッパで2番目の水量を誇るデティフォスの滝がある、ヴァトナヨークトル国立公園と有名なアゥスビルギ渓谷を通ります。
この日は、ほとんどの部分を気軽に歩くことができました。N1号線に沿って進み、雨から逃れるためにガソリンスタンドに寄って早めの昼食をとりました。それから国立公園に入り、目の前に広がる景色と、険しい地形に驚嘆しました。キャンプ地に早めに着いて、嵐が来る前に、余裕をもってテントを張って、中に入りました。
テントで横になっている時間がたっぷりあったので、アゥスビルギ渓谷にまつわる北欧神話について調べてみることにしました。
神話によると、主神オーディンが、8本足の馬スレイプニルに乗って、この渓谷の空を横切っていたそうです。 スレイプニルが大きく飛び跳ね、地上に足をついたときの足跡で、馬蹄形のアゥスビルギ渓谷ができあがったのだそうです。
翌日、私たちは有名なアゥスビルギ渓谷をハイキングしました。渓谷は本当に素晴らしい景色でした。
私たちは渓谷の険しい岩の崖を上ったり下ったりしました。渓谷の片側で、今まで見たこともないほど、澄んだ水が湧き出る天然の泉を見つけました。私たちはボトルに水を満たし、地球上で最高の水を飲みました。
渓流に沿って登っていくと、滝はどんどん大きく見えてきました。トレイルを曲がったところで、目の前に切り立った崖が現れました。
崖に近づくと、登るのに使うロープを見つけました。ロープを使っても登るのはとても危険なところでしたが、私たち3人はなんとか無事に頂上までたどり着くことができました。
驚嘆の迫力のデティフォスの滝と、火山でできた広大な溶岩平原。
橋を渡ると、私たちが目指す場所が見えました。その先には、デティフォスを訪れる人々のための大きな駐車場がありました。
デティフォスの滝の轟音があたりを満たし、まるで別世界に足を踏み入れたようです。
私たちはデティフォスの滝を目の前にして、畏敬の念を抱きました。 私たちは滝から立ち上る霧でびしょ濡れになりました。そこで何枚か写真を撮った後、駐車場に向かい、テーブルでランチをとりました。
この日の午後は渓谷を離れ、ミーヴァトン湖の小さなリゾート地の方角に向かいました。
デティフォスから続いていた道を離れ、溶岩平原を横切って、自然のなかを進んでいきました。地面はやわらかく、足を着くごとに少し沈みます。私たちは遠くの湖に、この夜の野営地を見つけました。そこに到着すると、まだ日が沈む前に時間の余裕があったので、ゆっくりとテントを張りました。
このセクションでは、宿を予約していたミーヴァトン湖までの30km以上の道のりを、最後に追い込んで歩く必要がありました。この先のミーヴァトン湖で、マイクとナオミはゲストハウスに2泊、私はローカルのホステルに2泊予約していました。
このあたりの地形がつくる景色は素晴らしく、火山でできた広大な平原に、野球ボールほどの岩が点在していました。
一歩一歩が岩だらけで足が痛くなるかと思いましたが、足を着くとまるで枕の上を歩くように柔らかく沈みました。私たちは火山の斜面を登り、町に続く幹線道路につながるジープロードを見つけました。
ナゥマフィヤトルの地熱地帯から、最初のセクションのゴール、ミーヴァトン湖へ。
ミーヴァトン湖の町へ向かう道の途中で、「ナゥマフィヤトルの地熱地帯」 (Nȧmafjall Geothermal Area) に立ち寄りました。
ここは地熱の活動が活発なところで、高温の温水が出る沼地、硫黄ガスが出る噴出孔などがあります。 私たちはこの地熱地帯の見どころを楽しみながら歩きましたが、観光客もたくさんいるので、少し人の多さに圧倒されてしまいました。
この地熱地帯を離れ、交通量の多いN1号線に沿って、車に気をつけながらその先へと進みました。
町の数km手前で、主要道路から少し外れたところに小さなサイクリングロードがあったので、車の危険を避けるためそちらを歩くことにしました。
そのまま順調に進み、午後4時少し前に町に到着しました。町は多くの観光客で賑わい、活気に満ちていました。順調に進み、午後4時少し前にミーヴァトンの町に到着した。町は多くの観光客で賑わっていました。ただブユが大量にいたので、目や鼻、口に飛んでこないようにヘッドネットをかぶる必要があったほどでした。湖畔でフィッシュ・アンド・チップスとビールを楽しんでから、その夜の宿に向かいました。
ここで最初のセクションがおわりです。このセクションでは、4日間で166kmも歩きました。休息をとり、回復をするために、予定通りミーヴァトンの町で、ゼロデイを過ごすことしました。そして、ゼロデイ後にアイスランドの広大な奥地へと向かいます。
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