アパラチアン・トレイル (AT) | #08 トリップ編 その5 DAY46~DAY64 by Daylight(class of 2022)
文・写真:Daylight 構成:TRAILS
ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。
2022年にアパラチアン・トレイル (AT) のスルーハイキングにトライした、トレイルネーム (※1) Daylightによるレポート。
全8回でレポートするトリップ編のその5。今回は、ATのDAY46からDAY64までの旅の内容をレポートする。
道を間違え、遠回りしてようやくラトランドの街に到着。 (DAY46〜50)
トレイルを登り山の上に着くと、いきなりスペースシャトルのような建造物が見えた。スキーリフトの終点だ。次に目指すトレイルタウンも、スキーリゾートのキリントンを経由して行くことになる。
Far Out (※2) というアプリの地図には、トレイルタウンを示すビルのアイコンがある。大抵はそこを目指せばいけるのだが、そのアイコンがあったキリントンの街に限ってはただ役所がポツンとあるだけだった。そこから次の街のラトランド行きのバス停とはかなり離れていた。
運悪く、その地域のオフラインの地図をダウンロードしていなかったので、トレイルタウンの位置情報を見ることが出来なかった。トレイルヘッドの位置情報ぐらい調べておくべきだった。前日宿泊予定のシェルターの少し手前で、キリントンのスキー場を通過した。ここで、もうかなりトレイルタウンは近いと気付くべきだった。
翌日ハイカーに出会い、話をしていたのだが、彼女はキリントンから来たと言い、あなたは間違っていると言われたのだが、自分の間違いに気づかず、しばらく歩いていた。
どうもおかしいと思い、地図を見るとビルのアイコンの場所を行きすぎていることがわかった。さらに2時間かけてそこの場所に行ったが、そこはキリントンではなく、そこの役所の人に道を聞いて、1時間以上かけて目指すべきだったトレイルタウンのラトランドへ行くバス停にようやくたどり着いた。
道を間違えていなければ、この日の朝に出発したシェルターから1時間半でバス停に着いたようだ。
ラトランドは大きな街で、そこでゼロデイを取り、テイクアウトの中華やカレーを食べた。宿は都会の中のレストランの2階にあり、ドネーション (20ドル目安) で泊まれて綺麗で朝食もついていた。
ニューハンプシャー州へ入り、森林限界超えのトレイルを歩く。 (DAY51〜55)
次に寄ったトレイルタウンのウエストハートフォードでは、ハリケーンで飛ばされた食料品店の跡地にあるキャンプサイトに泊まった。
隣人が管理している。シャワー、電気、水道、トイレ、洗濯、Wi-Fiが使用可能。東屋とテーブルがあり、奥には、足をつけられる小川が流れている。
食料品店がなくなったので立ち寄るハイカーは少ないようだが、とても落ち着く、安らぎを感じる場所だった。夕方着いて、早朝出発の場所ではあるが、印象に残った宿泊地だった。
ニューハンプシャー州に入ると、案内板がオレンジ色に変わる。各地域で整備するトレイル管理団体が異なるためだ。
この山域では大きな山小屋を管理していたり、案内板がきれいだったり、シェルターにも管理人がいたりする。
ニューハンプシャー州は、緯度が高いので標高1,200m (4,000フィート) で森林限界を超える。トレイルも山頂を通過するようになり、半端ないアップダウンが続く。
標高1,400mのムースローク山に登った。初の森林限界越えだ。
山頂に近づくと、樹木の間から左右に空が見え始め、頂上から風が吹いてくる。周囲は高さ2mくらいの松が多くなり、それがどんどん低くハイマツのようになり、最後は木の生えない山頂に到着する。
標高に関係なく、森林限界の上は風が強く体の熱を奪われ体感温度が下がるので非常に寒かった。
ホステルに向かう途中で、電話が不具合で通話不能に。(DAY56〜60)
次に泊まる予定だったのはノッチホステルという宿だった。ノッチ (notch) とは峠のことで、他にパス (pass) やギャップ (gap) も同様の意味だ。たいていの場合、トレイルヘッドから宿までは、宿に電話連絡をすると車で迎えに来てくれる。
しかし、以前から不調だった携帯電話の通話機能が、この時についに使用不能になってしまった。宿までは5mile (8km) あり、車も走っていなかった。諦めて歩いていると、ハイキング帰りのハイカーに救われ、宿まで送ってもらうことができた。
宿に着くと、6月中旬なのに、マウント・ワシントンに降雪予報が出ていると伝えられた。翌日の出発者はいない。無理に歩く理由もなくゼロデイにした。
宿の人に携帯電話の相談をすると、近くに格安スマホが売っていることが判明。契約の手続きを手伝ってもらい、一旦電話問題は解決した。またこの山域は、1日20mile (32km) 歩くのは困難で、余裕を持った計画が必要なことを教わった。
トレイル上でうずらの卵より少し大きなフンを見つけた。ムース (ヘラジカ) のフンだ。小型の動物にはいろいろ出会うことができたが、ムース自体は残念ながら見ることはできなかった。
トレイルを歩いていると、向こうから知っている顔の女性が歩いてきた。数日前に宿でお世話になったトレイシアさんだ。宿を利用した人とトレイル上で会うことは珍しいと彼女は言っていた。とても嬉しかった。
「Work for Stay」という宿泊手段。(DAY60〜64)
シェルターでトップシェフさんと会った。
なんと彼は重さ25kgのバックパックを背負い、30日間買い出しせずに歩いている。食料は主に、ハイカーボックス (※3) や人からのもらい物で済ませているそうだ。
トップシェフさんから、いろいろな節約術を教えてもらった。ホステルに着いたら買い物に行く前にハイカーボックスをチェックすること。それから「Work for Stay」という宿泊方法である。
「Work for Stay」とは、人数に制限があるものの、簡単な作業をすることで無料で宿泊できるというもの。
一度体験してみた。食事は余り物で (食べ残しではない!) 食後にスタッフと一緒に食べた。寝床は食堂の床にマットを敷いて寝た。このエリアの山小屋は通常150ドルくらいの宿泊費なので、大いに節約できて、良い経験になった。
トップシェフさんは、私と共にいる間にも、他のハイカーから果物や、トレイルミックスをもらった。巧みな話術で私の分ももらった。
この後の行程では、スラックパックに挑戦した。
スラックパックとは、必要な装備だけで日帰りハイキングをすることだ。宿泊、送迎サービスとセットで利用する。
今回のコースは21mile (34km) だ。宿のスタートが8時近くで、若干心配になった。一つでも十分登りがいのある山を三山、登って下ってを繰り返した。
最後の数マイルは川沿いの緩い下り坂なので、暗くなる前に走った。午後9時前にゴールして、宿に連絡した。
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