PNTセクション・ハイキング 3年計画 | #01 ジェフからの1通のメール
文・写真:Tony 構成:TRAILS
2015年にPCT (※2) 、2023年にコロラド・トレイル (※3) をスルーハイキングしたトニーが、次に歩くトレイルとして、なぜPNTを選び、なぜ3年計画なのか?
#01はそのきっかけの話。ドタバタと突如動き出したPNT3年計画をハイカー・トニーのパーソナルな視点でつづる、ロング・ディスタンス・ハイキング (※4) の記録。
※1 PNT (パシフィック・ノースウェスト・トレイル) :正式名称は「The Pacific Northwest National Scenic Trail」。アメリカとカナダの州境付近、ワシントン州、アイダホ州、モンタナ州の3州をまたぐ1,200マイル(1,930キロ)のロングトレイル。歴史は古く、1970年にロン・ストリックランドによって考案された。そして約40年の歳月を経て、2009年にNational Scenic Trailに指定された。現時点において、もっとも新しいNational Scenic Trailである。
※2 PCT:Pacific Crest Trail (パシフィック・クレスト・トレイル)。メキシコ国境からカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州を経てカナダ国境まで、アメリカ西海岸を縦断する2,650mile (4,265㎞) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。
※3 コロラド・トレイル:コロラド州のデンバーからデュランゴまで、アメリカのロッキー山脈を通る486mile (782km) のトレイル。標高3,000m~4,000mの、厳しくも美しい高山地帯の景色を楽しみながら歩くことができる。
※4 ロング・ディスタンス・ハイキング:ロング・ディスタンス・ハイキングとは、衣食住を背負いウィルダネス(原生自然)を歩き、野営する、そして、また歩く。そして食料を町で補給し、トレイルへ戻る。これを繰り返す、自由で野生的な生活を楽しむ旅です。
2015年にPCTを歩いて人生が変わった。

2015年にスルーハイキングしたPCT。
ロング・ディスタンス・ハイキングが好きだ。今さらなんだと思われるかもしれないが、僕が初めてパシフィック・クレスト・トレイル (PCT) を歩いた10年前から、その思いは少しも変わっていない。
僕がPCTをスルーハイキングしたのは2015年、ちょうど30歳になるタイミングだった。それまでの敷かれたレールに沿ったような生活から飛び出したくて、勤めていた会社を辞めて旅に出た。
歩き始めは不慣れな英語やケガで苦しんだ時間も長かったが、仲間のハイカーやトレイルに関わる人々との出会いを通じて、素の自分を受け入れられるようになった。

PCTを歩くハイカーからも、大切なことを教えてもらった。

2015年にPCTを一緒に歩いたハイカーたち。
PCTから帰国すると、ハイキングに関わる仕事に就くために、それまでの正社員の地位を一度捨てて、アルバイトでアウトドアショップで下積みを始めた。
自分的には、30歳を過ぎて人生再スタート。よく妻も許してくれたものだ。妻にも感謝しかない。
アルバイトなので、もちろん給料はお世辞にも高いとはいえない。それでも、何かしらロング・ディスタンス・ハイキングに関わることをして生活をしたかった。直接的ではなくても、自分がやっていることが少しでもこのカルチャーの発展に繋がればと、愚直に仕事をした。
何年か仕事をしていく中で、その思いは更に強くなり、もっと直接的にロング・ディスタンス・ハイキングというカルチャーに関わっていきたいという思いが、自分の人生のテーマとなっていった。
タイミングやいくつかの理由も重なって、2023年、TRAILSにジョインすることになる。

2023年よりTRAILSにジョイン (前列左から3番目が筆者)。
TRAILSは、日本でロング・ディスタンス・ハイキングという言葉を発信した初めてのメディアであり、ロング・ディスタンス・ハイキングのリアルにこだわりぬいているスタンスは、ずっと共感を持っていた。
自分もショップという枠組みだけではなく、このカルチャーをもっと広く伝えていきたいという思いが強くなっていたので、TRAILSは僕にはうってつけだった。
TRAILSに入るにあたって、もう一度アメリカのトレイルを歩いてくることになった。PCTから8年ぶり。選んだのはコロラド・トレイル。PCTで出会ったZooというハイキング・バディがコロラドの出身で、彼からコロラドの自然がいかに素晴らしいかを散々聞かされていたのだ。そこに行ってみたいと思った。

2023年、コロラド・トレイルをスルーハイキング。
コロラドの高山帯を貫くトレイルは素晴らしく、そして何も約束をしていなかったのにZooと奇跡的な再会をしたりと、特別な旅となった。
次はどこを歩こうか。この時は、コロラド・トレイルがCDT (※5) のセクションとも重なることから、今度はセクション・ハイキングでCDTの残りを歩いてみたいという気持ちが大きかった。

コロラドトレイルの旅で、奇跡的な再会をしたPCTのバディのZoo。
※5 CDT:Continental Divide Trail (コンチネンタル・ディバイ・トレイル)。メキシコ国境からニューメキシコ州、コロラド州、ワイオミング州、アイダホ州、モンタナ州を経てカナダ国境まで、ロッキー山脈に沿った北米大陸の分水嶺を縦断する3,100mile (5,000km) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。
ハイカー仲間のジェフからの一通のメール

TRAILS Crewと10年来の親交がある、ジェフ・キッシュ。
2025年4月。TRAILSが毎年開催するLONG DISTANCE HIKERS DAY (※6) の準備のため、僕はアメリカの各トレイル団体のメンバーと連絡をとっていた。
そのやりとりのなかで、TRAILS Crewと10年来の親交があり、TRAILSのアンバサダーでもある、ジェフ・キッシュから次のような一通のメールが届いた。
「TRAILSのみんな、元気にしていますか?
先日、パシフィック・ノースウエスト・トレイルの現状について共有しましたが、あの後、信じられないほど事態は急激に悪化し、本当に壊滅的な状況に陥っています。
ハイカーや、自然を大切にしている人たちにとって、アメリカの状況は悪化する一方です。森林局やトレイルを管理するNPO (非営利団体)、また国立公園、自然保護区等の公有地に対する圧力がおさまりません。
この数ヶ月の間にも、大統領の政策に対する抗議活動が数多く立ち上がり、自分もそのうちのひとつに参加してきました。
今年もパシフィック・クレスト・トレイルなどアメリカのトレイルをロング・ディスタンス・ハイキングする日本人ハイカーはいるのでしょうか。日本のハイカーは、アメリカのこのような状況を、どれくらい知っているのでしょう。
ジェフ・キッシュ
パシフィック・ノースウエスト・トレイル / エグゼクティブ・ディレクター」

深いウィルダネスが広がるPNT
壊滅的な状況?悪化する一方?一体、何が起きているんだ。
ジェフは、とにかく真っ直ぐでピュアで、ホスピタリティーが溢れまくるナイスガイ。
ジェフは僕らのハイカー仲間で、最初は2014年に佐井夫婦がポートランドのブリュワリーを訪れたとき、偶然にもそこで働くジェフと出会った。
カウンターの背後にあったPCTの看板について触れると、2012年にPCTを歩いた僕らの仲間のTAKA (根津さん) やGNU (ヌーさん) とも会っていると言う。一気に意気投合し、その後、TRAILSのアンバサダーを務めてもらう間柄にもなった。

2014年に佐井夫婦が出会ったときは、ジェフはVAN LIFEを送りつつポートランドのブリュワリーでも働いていた。
ジェフは、ハイカーとしてパシフィック・ノースウエスト・トレイル(以下、PNT)をスルーハイキングして惚れ込んで、今はPNTのエグゼクティブ・ディレクターを務めている。
ジェフとTRAILS Crewが知り合ってから、その後10年の付き合いになるけど、こんなに危機感と憤りを他人にあらわにするジェフは初めてだった。

アパラチアン・トレイルとパシフィック・クレスト・トレイルを管理する団体が発信した、トレイルの危機を伝える異例の共同声明。画像:Pacific Crest Trail Association (https://www.pcta.org/blog/)
ジェフからのメールの前より、アメリカの連邦政府によって、ナショナル・シーニック・トレイル (※7) に関連する、国立森林局・国立公園の人員削減、予算削減が起きていることは、TRAILS編集部のなかでも注視しつづけていおり、TRAILSからの発信も行なっていた。
ジェフのメールから伝わる切迫感から、それが只事ではないことは明らかだった。僕は自分に冷静になれと勇めながら、動揺は止まらなかった。
AT (※8) とPCTを管理する団体からも、トレイルの危機を伝える異例の共同声明があり、その後もAT、PCTのトレイル閉鎖の可能性や、ジョン・ミューア・トレイル (※9) 沿いのキャンプ場のクローズの可能性など、次々と悲観的なニュースが流れていた。
ジェフも、ワシントンD.C.まで赴き、ナショナル・シーニック・トレイルを管轄する森林局の幹部と面会する等、なんとかトレイルの問題を解決できないかと奔走していた。

森林局の幹部などと面会し、トレイルの問題解決の提案をするため、ワシントンD.C.に赴くジェフ。
僕らTRAILS Crewも、関係各所にコンタクトをとり可能なかぎり状況を把握し、今後起きうること、そして自分たちがとるべき行動について話し合った。
「PNTが歩けなくなってしまうことも、ありえるのか?」、「ジェフももしかしたら解雇されてしまう可能性もあるのか?」、「今年、PCT、CDT、ATを歩こうとしているハイカーたちは旅を続けられるのか?」「いまハイカーができることは?」。
この時、どこまでこの余波が広がるのかが、まったく見えない状況だった。
TRAILS Crewのなかにも、「すぐに現地に行ってできることを探した方がいいのでは」という声も挙がっていた。僕もとにかく現地に行きたい気持ちに迫られたが、すぐに取れるアクションも定まらず、ただただ焦りと不安が募っていった‥。
※6 LONG DISTANCE HIKERS DAY:日本のロング・ディスタンス・ハイキングのカルチャーを、ハイカー自らの手で作っていく。そんな思いで2016年にTRAILSとHighland Designsで立ち上げたイベント。2025年4月に9回目を開催。
※7 ナショナル・シーニック・トレイル:自然を保護し、楽しみ、感謝することを目的に、1968年に制定されたNational Trails System Act(国立トレイル法)によって指定されたトレイル。他にも、National Historic TrailやNational Geologic Trailなど複数のカテゴリーがあるが、中でもNational Scenic Trailは、壮大な自然の美しさを感じ、健康的なアウトドアレクリエーションを楽しむためのトレイルである。一番最初に選ばれたのは、ATとPCT。現在全米にある11のトレイルが、National Scenic Trailとして認定されている。
※8 AT:Appalachian Trail (アパラチアン・トレイル)。アメリカ東部、ジョージア州のスプリンガー山からメイン州のカタディン山にかけての14州をまたぐ、2,180mile (3,500km) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。
※9 ジョン・ミューア・トレイル:John Muir Trail (ジョン・ミューア・トレイル)。アメリカ西部のヨセミテ渓谷から米国本土最高峰のホイットニー山まで、シエラネバダ山脈を南北に貫く211mile (340㎞) のロングトレイル。ハイカー憧れのトレイルで、「自然保護の父」として名高いジョン・ミューアが名前の由来。
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