TRAILS REPORT

Fishing for Hiker | テンカラ釣行 4 days 木曽川水系 (後編)

2026.02.04
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文・写真:Tony 構成:TRAILS

ヤマトイワナ (※1) を求めて、木曽川水系に向かった、TRAILS Crewトニーによる、テンカラ (※2) 釣行の後編。

「渓流解禁」まで、あと1ヶ月。脳内の渓流釣りモードをブーストすべく、「Fishing for Hiker」の記事シリーズをお届けします。

トニーは、夏休みの連休を使って、ずっと恋こがれている日本固有の希少種であるヤマトイワナを求めて釣行に行くことに。

初日から源流部にアプローチするも、あいにくの大雨とそれにともなう川の増水で、1本目の川は撤退を余儀なくされた。

2日目に、一度下山をして、現地の人に情報収集をして、期待をかけられそうな別の支流を教えてもらう。2日目は情報収集とアプローチだけでおわり、目的地の源流部へ向かう途中で渓泊。

今回の後編は、3日目〜4日目の釣行をレポートする。はたして、どんな釣行になったのか。

※1 ヤマトイワナ:イワナの日本固有亜種。個体数が少ない希少種。体の有色斑 (橙色や朱色の斑点) が目立ち、白い斑点が少ないのが特徴。水温15℃以下の水温が低い川の上流部に生息している。

※2 テンカラ (テンカラ釣り):ロッド (竿)、ライン (糸) 、フライ (毛ばり) だけという、シンプルな道具で釣る日本の伝統的な釣り (リール等も使用しない)。主に川の上流部の渓流をフィールドに、ヤマメやイワナ、アマゴなどを釣る。欧米など海外では軽量でシンプルなフライフィッシングとして捉えられたりする。

Fishing for Hiker

Fishing for Hiker = ハイカーのための釣り。TRAILS誕生から大切にしてきたトレイルカルチャーのひとつフィッシング(釣り)。僕たちの熱狂の原点にフォーカスした、ウルトラライト・ハイキングに “釣り” を組み合わせる「Fishing for Hiker」のプロジェクト。ULハイカーが釣りをする際にヒントとなる記事に加え、刺激的なULギアのリリースや、実践までをフォローアップするSCHOOLなども開催していく。

再び源流部の奥へ。


3日目の朝。

3日目の朝。タープの隙間から差し込んできた太陽の光で目が覚めた。

昨夜はナイトハイキングで夜22時頃まで歩いてクタクタだった。夜の暗い山の中で、野営地を見つけるのに苦労し、ようやく見つけたわずかなスペースで無理やりタープを張った。

頼りない寝床だったが、Western MountaineeringのSummerLite(サマーライト)のバフバフなダウンに包まれて、昨夜は快適に眠ることができた。気温も7度程度と想定していた通りだった。

昨日までの雨から一転して、天気も良い。しかし天気が良くても、昨日までの雨で増水した川の状況が悪いままだと、釣りの方はあやしい。昨日までのまったく釣果を期待できない、絶望的な状況が続いてしまうのか…。

起きると同時に、川の様子を見に行くことにした。野営地の眼下に流れる川まで、茂みの中、足元に注意しながら下りていく。


3日目、ようやくたどり着いた一本の川に期待を込めて歩き出す。

近くで川の様子を確認すると、濁りは前日に比べて薄まっていた。わずかながらではあるが、希望を持ち続けられることに安堵した。

さっそくストレッチをして体の準備をし、ここからさらに奥の源流部に向けて、ハイキングを開始した。

3時間ほど源流部に向かって歩き続ける。どんどん山深い中へ分け入っていく。


釣行3日目に入った渓相。

100mくらい先に、大きめの黒い物体が逃げていくのが目に入った。もしかしたらクマだったのかもしれない。

大きな獣の気配に、自分が人の領域ではない野生味の強い自然の奥部に入り込んで来ていることを実感する。気を引き締めて行かねば。

そこからは、周りに注意を払いながら慎重に歩いていく。トレースなどほとんどない。藪をこいで歩いていくと、ちょうど良い具合に、入渓できそうな場所を発見した。

狙った支流を、上流へと釣り上がっていく。


入渓前にまずは腹ごしらえ

午前中のうちには釣り始めたいと思っていたが、気づいたら12時を過ぎていた。予定より遅れてしまっている。

しかし、ここで焦っては、初日に途中までかかった魚に逃げられたように、また悔しい思いをしてしまうかもしれない。もしあれがヤマトイワナだったらと思うと、次は失敗できない。

少し開けた河原で、しっかり昼食をとり、エネルギーを十分に補充して、準備は万端。いざ、入渓!

入渓した場所が、ちょうど二股に川が分岐していたので、勘を頼りに右側の支流を釣り上がることにした。


まずは右側の支流で、魚が居付きそうなポイントを狙う。

魚が居付きそうな、岩や倒木の陰、落ち込みや淵などのポイントを慎重に狙う。1時間ほどロッドを振り続けるも、全く反応がない。ましてや魚影さえ見ることができない。

もしや昨日の大雨による増水で、魚たちは下流に流されてしまったのか‥。

とはいえ、まだここで諦める気持ちにはならない。さらに上流へと釣り上がっていくと、対岸側の藪の奥から低く唸る声が聞こえた。

とっさにベアスプレーを構える。


藪の奥からクマと思われる唸り声が聞こえた。

やばいやばい…と思いながら、自分の心臓が脈打つのがわかる。唸り声はなりをひそめ、あたりは川の流れる音だけに包まれていた。

藪の奥からは何も反応がない。ベアスプレーを構えたまま、後退して徐々に距離をとっていく。声が聞こえた場所から、かなり離れることができた。浅くなっていた呼吸を、ゆっくり整える。

ヤマトイワナに出会えず仕舞いにおわるのか。


右側の支流を諦めて、左側の支流へ。

魚の気配もなく、クマとのニアミスもあったことから、別の支流へと移動することにした。入渓した場所の分岐まで戻り、先ほどとは違う左の支流へ入ってみる。

渓流魚が居付きそうな、ちょうどよい落ち込みを目がけてキャストした瞬間。そこに魚影が浮かび上がってきた。

いたっ!

残念ながら、僕の毛ばりに食い付かなかった。しかし今まで魚影を全く見ることができなかったことを考えると、この反応は希望以外のなにものでもない。

その直後、少し上の落ち込みで、魚がライズした!この瞬間を逃すまいと、呼吸を整えてライズした場所の奥から毛ばりを流してみるが出てこない。


持参したTenkara USAのフライケースには、テンカラ用の毛ばりの他に、カディスやパラシュートといった様々な種類の毛ばりも用意していた。

これならどうだと、毛ばりをカディス (※3) からパラシュート(※4) に変えて、更に一投。バシャっという水しぶきがあがるが、食い切らない。毛ばりのサイズを少し小さめに変えてみるかと、もう一投。

今度はバシャっと音とともにロッドがしなる!きたっ!慌てずにロッドのしなり加減に合わせてフッキング。ラインにテンションをかけながら慎重に寄せて、ネットイン。釣れた!

ゆっくりと魚を手元にたぐりよせ、釣れた魚を確認する。

僕が出会いたかった、ヤマトイワナなのか。


この釣行で初めて釣れた魚。小さいが有色斑が美しい。

有色斑 (橙色や朱色の斑点) がくっきりと出ている。これはヤマトイワナだ!ずっと出会ってみたいと思ってたヤマトイヤナ。個体数が少ない希少種で、ごく限られた場所にしか生息しない。

口の曲がった勇ましい顔のヤマトイワナに出会ってみたいと思っていたが、僕が釣り上げたのはかわいいチビ・ヤマトイワナ。

しかし出会ってみれば、サイズなんて関係なかった。木曽のヤマトイワナに出会えたということが、ただ嬉しかった。

3日目にして、ようやく出会えた念願のヤマトイワナ。ずっとその姿を眺めていたいという思いもあったかが、また会おうと一言声をかけて、早めにリリース。

時間的にもまもなく日も暮れる頃になっていた。今日はここまでにしよう。

※3 カディス:水生昆虫「トビケラ(Caddis)」の成虫を模した毛ばり(フライ)。世界中で最も有名かつ信頼性の高い定番ドライフライ(※5) 。

※4 パラシュートフライ:ハックル (羽) をポスト (目印) に水平に巻きつけることで、ボディーは水面にぺったりと張り付いた浮き姿勢をとるドライフライ。高い視認性もある。特に風がある日や複雑な流れの中でも扱いやすく、初心者から上級者まで幅広く使用されているベーシックなフライ。キャスティングやドリフトの練習にも適している。

※5 ドライフライ:水面に浮かせて使うフライ。カゲロウ、トビケラ、カワゲラ、ユスリカなどの水生昆虫の成虫および亜成虫を模したものやアブ、ブヨ、ハエ、バッタ、コオロギ、甲虫類、毛虫、クモ、セミなどの水に落ちて流れる陸生昆虫を模したものなどがある。また、特に何に似せたわけでもないファンシーフライもある。CDC (cul de canard) は鴨のお尻の意味)で、鴨の尾に近い部分に表の羽に隠れるようにして生えている羽を浮力材として使うフライ。

ひとり渓泊の夜に、ヤマトイワナとの出会いに祝杯!


3日目の野営地は広々としたフラットな場所を確保。

3日目の夜は、なかなかよい野営地を見つけることができた。

昨日の狭い野営地とは違い、今度は広々とした場所で、タープを張る。

野営の準備が一通り完了させた後、今日までの3日間の疲れをやわらげるため、ストレッチして身体のメンテナンス。

少し肌寒くなってきたところで、持ってきたFIRE BOX のNano(ナノ)で小さな焚き火を楽しむ。そこに、炭を入れて火を起こして、暖を取ることにした。


FIRE BOX のNano Titaniumで暖を取る。


SIERRA NEVADA (シエラネバダ)のペールエールで祝杯

次に夕食の準備に。GARAGEから持ってきたクラフトビールで、ヤマトイワナに出会えたことに、ひとり祝杯を上げる。

今宵のメシも、贅沢にマウンテングルメラボをチョイス。この日は楽しみにしていたボルケーノ・キーマカレーだ。これがまためちゃくちゃ美味くて、ビールにも合う。

明日はもう最終日。狙うポイントをシミュレーションしながら、寝床についた。

今回の木曽川水系のテンカラ釣行、最終日。


最終日への期待を込めて、釣りの準備をする。

4日目の最終日の朝。天気は曇り。

時計で確認すると、気圧もそこそこ低くなってきている。低気圧は魚の活性を上げ、捕食行動を促す。再度、ヤマトイワナに出会えるチャンスもあるかもしれない。


川の透明度も高くなってきたため、魚に見つからないよう、身を低くしてキャスティング。

川には魚影も確認できる。渓流魚が居付きそうなポイントを攻めていく。

しかし、ぜんぜん反応がない‥。思った反転流の際に毛ばりをキャストしてみるも、またしても反応がない。そうこうしているうちに、雨が降りはじめた。

空に目をやると、大きな雨雲が木々の隙間から見える。雨で川が増水して渡渉が困難になる前に、きちんと退路を確保しないといけない。


一旦、テンカラロッドを収納し渡渉をした場所まで戻ることに。

まずはここまで来た道で、太もも辺りまでの水量がある危険な渡渉箇所があった。まずはそこまで引き返すことにした。

危険箇所より先に戻ってきたところで、後は余韻を楽しみながら、再度毛ばりを流してみた。

この数日で狙ってきたポイントや、他に狙えそうなポイントをダウンストリーム (※6) で毛ばりを流していく。

それでも、やはり反応なし。

徐々に、退渓しないといけない時間が迫り、ここでタイムアップ。


退渓時間ギリギリまで粘って釣りをする。

今回の旅は悪天に遭遇してしまい、通常であれば釣りができる状況ではなかった。しかし、そのようななかでも1匹のヤマトイワナに出会えたことは、本当に幸運だった。

僕にとっては初めてのヤマトイワナ。しかもそれが木曽川水系という、テンカラの縁がある場所で出会えたことで、僕にとって特別な一匹となった。

また会おう、僕のチビ・ヤマトイワナ。


また来よう、木曽川水系。

※6 ダウンストリーム:下流部への毛ばりを流す手法。テンカラ釣りにおいて、流心や複雑な流れの向こう側に毛ばりを飛ばし、魚のリアクションバイトを誘う有効な手法

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