コンチネンタル・ディバイド・トレイル (CDT) | #06 トリップ編 その3 DAY65~DAY98 by Gazelle(class of 2022)
文・写真:Gazelle 構成:TRAILS
今回は2022年にコンチネンタル・ディバイド・トレイル (CDT) をスルーハイキングした、トレイルネーム (※1) Gazelleによるレポート。
全4回でレポートするトリップ編のその3。今回は、CDTのスルーハイキングのDAY65からDAY98での旅の内容をレポートする。
※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。

コンチネンタル・ディバイド・トレイル (CDT:Continental Divide Trail)。メキシコ国境からニューメキシコ州、コロラド州、ワイオミング州、アイダホ州、モンタナ州を経てカナダ国境まで、ロッキー山脈に沿った北米大陸の分水嶺を縦断する3,100mile (5,000km) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。
コロラド州へ。釣りに夢中になり、時間配分ミス。 (DAY65〜DAY73)

ハイキングに対してはストイックだが冗談好きなジャック。
ともにゼロデイを過ごしたジャックとエンキャンプメントの町を出発し、歩き始めた。
とある小川で苔を取ってきた彼が「ガゼル、わかめだぞ!」とはしゃいでいる。いつもラーメンにわかめを入れてる僕のことをからかっているのだろう。
翌朝、早朝の森を歩いていると「WYOMING STATE LINE」と書かれたプレートが木にめり込んでいた。ついに長く単調だったデザートエリアを抜け、全域が高山エリアのコロラド州に入ったのだ。景色の変化に期待が膨らむ。

ワイオミング-コロラドの州境。
と同時に、カナダから1,506 mile (2,424km) を歩き、ようやくCDT全体の半分を歩き終えたのだ。長かったようで、長かった。
前方から歩いてきたハイカーたちがフライロッドを持っていたので、話しかけた。すると、この先のCDT本線から外れたところにある湖で、デカいトラウトが簡単に釣れると言う。
遠回りになってしまうが、大漁の写真を見せられてしまってはもう我慢ができない。ジャックと別れ、1人オルタネートルートを進み釣りに行くことにした。
結果、2匹だけだがきれいなブルックトラウトを釣ることができた。

良型のブルックトラウト。
しかし釣りに夢中になるうちに、いつの間にか日が暮れかけていた。そういえばまだちゃんとテント場も調べていない。雲ゆきもあやしい。やっちまった!
慌てて道具を片付け、湖を出発した。適当なところでキャンプをしようと、小走りでトレイルを進む。しかし、こんなときに限って急登や藪漕ぎが続き、行けども行けどもテント場が見つからない。
ヘトヘトになりながらやっとテントが張れそうなところに辿り着いたときには、21時を回ってしまっていた。幸い天気は持ちこたえてくれた。
こんな失敗は何度かしている。山で何かあってからでは遅いし、何より多くの人に迷惑がかかる。もう少し気を引き締めて行動しよう。
マウンテンゴートや、センペルビウムなどの高山植物などと出遭う。(DAY74〜DAY77)

火を囲み、この先の予定やこれまで歩いたトレイルのこと、私生活のことなど、話は尽きなかった。
スティームボートスプリングスの町で、ピンクマンたちと合流した。今日はトレイルに戻り、早めにテントを張って、のんびりキャンプファイヤーをしようということになった。
たまたま開催されていたマルシェで酒や食材を買い込み、トレイルへ戻る。数時間歩くと広々としたテント場に着いた。
僕とジャックは一生懸命に木をかき集め、ピンクマンが手際よく薪をくべてくれる。
焼きとうもろこし、ビーフとマッシュルームとオニオンのソテー、旅の話をアテに、安いウイスキーを回し飲みしながら、拙すぎる英語でいつまでも話していた。

ピークを目指すハイカーの灯りの列。
9月4日。CDTの最高地点であるグレイズ・ピーク (標高4,351m) にアタックすべく、朝4時にハイキングを開始した。
まだ9月の初めとはいえ、標高は富士山をはるかに超える。山頂付近はかなり冷え込み、空気も薄い。高山病には比較的強いほうだが、標高を上げるごとに足に力が入らなくなり、ペースは遅くなる。ゆっくりと慎重に、山頂を目指した。
ふと、前年のPCTの旅でホイットニー山を登ったときも、同じような感覚だったことを思い出す。

断崖絶壁を自由に駆け回るマウンテンゴートのファミリー。
キャンプ地を出発し約6km、高低差930mの登りを3時間ほどかけて歩き、日の出には間に合わなかったが、なんとかピークに立った。
稜線に出るとマウンテンゴートの群れや、綺麗な高山植物、そして息を呑むような美しい景色に出会えた。ついでに、隣のトーリーズ・ピークにも登頂する。

高山植物センペルビウム。
それから先は心地よい稜線歩きが続いた。
しかしこの一帯はエルクを狙うハンターが多いらしく、静かな山に似合わない銃声があちこちでしょっちゅう鳴り響く。流れ弾に当たったりしないだろうかと、落ち着かない気持ちで歩き続けた。
前年のPCTで出会った友人達との再会。 (DAY78〜DAY85)

寝起きに1年ぶりの友人と再会。
トレイル脇でカウボーイキャンプをしていた、ある朝。目を覚ますと聞き覚えのある声が聞こえた。「ガゼール!久しぶりね!」
ふと見ると声の主はなんと、昨年のPCTで僕にトレイルネームをくれたハイカー、スパークルだった!コロラドの大きな街デンバーに住んでいる彼女は、この辺りをセクションハイキングしながら僕の動向をSNSで追ってくれていたそうだ。
さらにその後、連絡をとっていた人も含めて3人のPCTハイカー仲間と再会することができた。遠く離れた場所で全く違う環境で生活しているが、同じものを求めている人たち。人の縁をあらためて感じた。

街のバーでビンゴ大会。みんな真剣だ。
レッドヴィルの街に着いた。ここは北米で最も標高の高い都市(標高3,096m)だ。
運良くこの日は”CDT SOBO TRAIL DAZE”というハイカーのためのイベントが開催されていた。
会場では、3大トレイルを1年で踏破した”カレンダーイヤートリプルクラウナー”やコロラドトレイルのFKT保持者など、4人のレジェンドハイカーによるトークショーやQ&A 、豪華景品のあるビンゴゲームが行われた。ちなみにCDTスルーハイカーは参加費無料だ。

1860年頃に金の採掘で栄えたレッドヴィル。伝統的な街並みがかっこいい。
夜はホテル代をケチって公園の芝生で野宿していたのだが、夜中にスプリンクラーが作動してびしょ濡れになり飛び起きた。

多くのエリアがCTと重なっている。
コロラドセクションは、ほとんどの区間でコロラド・トレイル(CT)とルートを共有している。ほとんど人に会わなかったワイオミング州とは打って変わって賑やかな印象だ。
大きな街が多いこともあり、ローカルのセクションハイカーの姿も多く見かけた。また、高速でトレイルを駆け抜けるMTBバイカーも多く、ヒヤッとする場面が何度もあった。
天候の回復を待ち、いざサンファン山脈へ。 (DAY86〜DAY98)

レイクシティのRVパークにはかっこいいキャンピングカーが並んでいた。
サライダの街を出ると、サンファン・ルートに入る。標高3,000〜4,000mのほぼ岩稜帯が約300kmも続く、厳しいセクションだ。急な天候の変化や落雷も多い上、町から町の距離が長く、大量の食糧を担ぐ必要がある。慎重に、余裕のある計画を立てなければいけない。例年、ここで新雪に阻まれて迂回を余儀なくされるハイカーも多い。
僕は運よく間に合ったようだが、数日雨続きの天気予報となったので、最初の町レイクシティで待機することにした。町外れのRVパークのテントサイトなら1泊10ドルで滞在することができた。

町で仲良くなったCTハイカー達と共にトレイルへ戻る。
町ではCTハイカーらと教会の行事に参加したり、RVパークで知り合ったキャンパーと昼間からビールを飲んだりと、のんびり過ごす。
天候の回復を待ち、滞在は4日間となった。満を持して、いよいよサンファン山脈の深部へ入る。次の町まではあと5日ほどかかる予定だ。

まるで映画の世界のような美しい景色が広がる。
トレイルに入ると、視界いっぱいに圧巻の絶景が広がる。この区間をCDTで一番のハイライトだと言うハイカーも少なくない。同じ高山エリアでもワイオミング州のウインド・リバーなどとは様子が違い、乾燥した稜線歩きが続く。
地図に示された水場のいくつかは枯れており、水の確保には苦労した。釣りができるような湖や川もほとんど見当たらなかった。
雪はほとんど降らなかったが、朝晩の冷え込みはとても厳しかった。

毎朝テントもギアもパキパキだ。
釣りもせず先を急いだおかげで、予定よりも早く4日ほどでパゴサスプリングスの町に着き、ようやくサンファン・ルートを無事にクリアすることができた。町の中心を流れるサンファン川では天然温泉が湧き出していて、無料の流れるプールで旅の疲れを癒した。
のちに、一時帰宅のために1週間ほど遅れてサンファン・ルートを歩いていたジャックから送られてきた写真は、同じルートとは思えないほど真っ白の雪山となっていた。

トレイルからコロラドの大自然を臨む。
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