TRAILS REPORT

FAMILY HIKING | #01 Newzealand (長男4歳0ヶ月) はじめての海外ファミリー・ハイキング

2019.08.28
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What’s FAMILY HIKING? / 長男が生まれたことがきっかけで、小さな子どもを連れて大自然の中を旅することは中々大変で、国内外問わず実践している家族が超少数派ということに気がついた。

一方で、我々はやはり大自然の中を家族で旅したいし、過ごしたい。近所の公園でも便利なキャンプ場でもなく、本物の大自然の中に子どもを解き放った時に、家族で生活した時に、子どもと家族にどんな生活の知恵、生きる知恵のアップデートを与えてくれるだろうか。そんなことを想像するたびに、「最高に決まってるじゃん」とワクワクがとまらないのだ。

そんな思いから、思えば7年前から日々子どもを連れてトレイルを旅する方法を調べ、実践と検証を繰り返すということを続けていた。いつしか、自分たちが家族で旅を続け発信することで、大自然の中を家族で旅をするという素晴らしい行為をする人たちが少しでも増えてくれたら最高だと思うようになった。

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「TRAIL TALK #005 ブレッドウッド・ヒグマン&エリン・マキトリック」。彼らから得たインスピレーションや勇気は計り知れない。

家族で旅を続けるブレッドウッド・ヒグマン&エリン・マキトリック夫妻の存在が、我々に家族で旅を続ける大きなモチベーションを与えてくれた。これから全4回で、2人の男の子を持つ我が家のハイキングトリップの様子をお届けします。第1回は次男が生まれる前の2015年12月、長男は4歳0ヶ月で場所はニュージーランド南島です。

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家族3人ではじめての海外ファミリー・ハイキング。テ・アラロアの一部でもあるマヴォラ・ウォークウェイ。



子どもの成長度・経験値



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街ではロング・ディスタンス・ハイカーのように栄養を過剰摂取。

旅したのは幼稚園年中の4歳0ヶ月(2015年12月時点)、体重17kg。野菜や食べ慣れていないものには積極的に手を出さない食わず嫌いフェーズ。ポテトと唐揚げ、麺類、オニギリ、ぶどうジュース、アイスクリームが大好きな典型的な幼稚園児。楽しい方に流されやすく、お弁当が食べ終わるのは幼稚園で一番遅い方。好奇心が強く何でもやってみたくなるが、ビビリのため実行までにとても時間がかかる。

オムツは1年ほど前に取れていたが、夜寝る時にはお気に入りのタオル(通称ネンネ)を毎夜のパートナーとし、それが無いと眠れないというか眠らない。お気に入りのタオルはブレずに一択のため、タオルが変色しているほどの筋金入り。出発前、ちょうど4歳を迎える今回のニュージーランドの旅からネンネ無しで眠ることを誓っていた。親は予備で小さく切ったネンネを隠し持ってはいたが、ネンネの出番はなく晴れて有言実行となった。軽いアトピー持ちではあるが食物アレルギーなどは特に見つかっていない。

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生後9ヶ月、パックラフトとフェザーフレンズのスリーピングバッグで眠る。シェルターはフロアレスだが蒔きストーブが使えるKifaruの8man tipi。

夫婦でウルトラライトハイキングというスタイルで、国内外のトレイルを旅してきた。7年前の2011年12月に長男の陸(りく)が生まれてからは、幼い子どもを海外のトレイルに長期間連れ出すのは中々大変で、必然的に国内のショートトリップやキャンプが増えていった。

長男の野営デビューはキャンプ場で、生後5ヶ月。それから毎年年間15回くらいのペースで場所に限らず基本的にはULのスタイルでキャンプを続けていた。記憶している限りでは床ありのテントで野営をしたのは北根室ランチウェイで使用したTarptentの4人用テントHOGBACKくらい。基本的には床なしのフロアレスシェルターだった。家族連れにこそULの道具をオススメしたいし、ULなしで家族で長い期間旅なんて絶対にありえなかった。

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近所の森を雨蓋の無いバックパックにリッジレストを巻いた簡易背負子でハイキングした時もあった。

ハイキングは背負子に乗せて近所の森などを歩くことから始め、1歳の時に北八ヶ岳ロープウェイで山頂駅(2,237m)まで登り、坪庭周辺を2時間くらい軽くハイキングしたのが最初の有名な山での経験。その時は何の知識もなく、とにかく2,000mこえて高山病など大丈夫かと息子の体調の変化に常にドキドキしながらハイキングしたのを覚えている。

「子連れだと安全でなければリラックスしてハイキングなんて楽しめない」と、それから夫婦の中で1,500m以下という暗黙のルールが出来上がり、地元千葉の山や奥多摩など1,000m以下の低山デイハイキングを中心に自然の中に通い続けた。

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ニュージランドのテストトリップとなった北根室ランチウェイ。

意思を持って長い距離のハイキングにトライしてみたのは3歳7ヶ月の時、上高地バスターミナルから徳澤園までの約7kmのフラットなトレイルが続くデイハイキング。その2ヶ月後にダメだったらキャンプでもして過ごそうと北根室ランチウェイをハイキングした。結果的には最長1日15km、平均でも10km以上、標高差も500m弱程度は歩けることがわかった。

また野営とホテル泊を組み合わせた5泊以上の長旅である北根室ランチウェイ43.2kmは長男にとっては最初のロング・ディスタンス・ハイキングとなった。情報がない中で実験的な要素の多い旅を続け、文字通り手探りでステップアップしていった。



歩いた場所と選定した理由



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ニュージランド南島にあるアーサーズパスやエイベルタスマンコースト、マボラウォークェイなどをバンで移動しながらハイキングした。

熊などの危険動物などが比較的少なく、トレイルも比較的アップダウンが少ないことに加え、長男が生まれてからの成長をよく知っていて編集部にジョインする予定だった小川が前年に夫婦でニュージーランドを旅をしていたため、勝手がわかっていたことが大きい。旅した場所やトレイルは基本的に小川が息子のレベル感と大人たちのワクワクを考慮しながらプランニングをしてくれた。いざとなったら大人が自分たち以外にいる、というのも心の底で安心感となっていたと思う。

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旅の最終地点とも言えるマボラウォークウェイにあるバウンダリー・ハット。

あと、自分たち夫婦は未だニュージーランドをハイキングしたことがないということ。冒険という言葉は大げさだけど、歩いたことの有無や難易度の大きさに関わらず、些細で良いから常に実験的(予定調和すぎない)な要素を旅に盛り込むのが我々夫婦のスタイル。

子どもの安全を十分に配慮したとしても、旅は親にとっても何かしら生きる知恵のアップデートを与えてくれる。工夫次第では安全に配慮しながら、想像以上にチャレンジングなことを子どもと一緒に体験できると思っている。

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大きな水たまりをこえたり、渡渉をしたり。4歳の子どもからしたら、普段経験しないとってもアドベンチャラスなハイキング。



ニュージーランドの何がよかったのか



大前提として、手つかずの自然豊かな山や川がそこらじゅうに広がっていること。日本ではめったに見られないほどフラットに延びた気持ちがよくて開放感ばっちしのトレイルから、難易度は高くないのに圧倒されるほどの景色を見ながら漕げてまったく飽きのこない川など、ハイカーやパックラフターにとって天国のような国。

ついでに絶景の海岸を見ながら歩けるトレイルだってあるし、星空は世界中からそれを求めて集まるほどなのだから、ここで手に入らないものは無いってくらいの豊かな自然はTRAILS読者なら絶対に熱狂すること間違いなし。

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日差しを遮るものはなにもない広漠とした景色の中を通り、ずっと先まで見渡すことができるフラットさが気持ちいいトレイル。

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少し場所が変わるだけで苔の美しい自然豊かなトレイルが現れる。アーサーズパスの渓谷の懐を歩くゴートパス・トラックを行く。

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このレベルの川がそこらじゅうにある。雨による通行止により急遽目的を変更し、DOC(自然保護局: Department of Conservation)のスタッフに教えてもらったワイアウ・リバーのとあるポイントからパックラフティングをスタートさせた。

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エイベル・タスマン・コースト・トラックの海岸沿いにあるファミリハイカーが多いトレイル。僕たちもトレイル上で子どもたちに何度も出会った。

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言葉にならないくらいに最高だったニュージーランドの星空。こういう時間を家族、そして子どもと共有することの素晴らしさは何にも変えられない。

次に家族で旅をする子連れハイカーに猛プッシュしたいのが、利便性と安全性。日本から10時間強というフライトは短くないかもしれないが、時差3時間でジェットラグになりづらい立地は飛行機内での子守を不安視する親にとっては本当にありがたい。また、国策で観光を打ち出しているだけあって何かにつけてインフォメーションが気が利いていて、DOC(自然保護局: Department of Conservation)のスタッフのホスピタリティや情報量も驚くばかり。子連れで大自然の中を旅をするにはとにかく利便性が高い国だった。

安全性に関しては、とにかくあれだけの圧倒的な大自然に山あり谷ありをハードコアに越えていかなくたってアクセスできてしまう手軽さ。目的地へ到達する難易度が低いということはリスクが低いとも言える。

またハットが一定周期で整備されているので、プラン次第ではテントを減らし荷物を軽くすることもできるし、いざとなった時の保険としても安心感がある。

その他に前述した熊などの危険生物が比較的少ない、世界でも数少ない水道水が飲める国、夏の日没が20:00すぎで行動できる時間が長い等々、子連れハイカーが安心する材料だらけ。トレイルで旅することに魅せられた人たちにはとにかくオススメしたい。

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あって欲しい場所には必ずと言っていいほど道標がある安心感。朽ちている道標は基本的になくメンテナンスが行き届いているのが素晴らしかった。

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1896年頃に建てられた農家の家屋を修復してトレイル・ハットとして復活させた、雰囲気が最高だった海岸沿いにあるファリファランギ・ハット。

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トレイルで冷えて疲れた体にハットがありがたい。標高1070mの森林限界を超えた峠にたたずむゴートパス・ハット。



Mother’s View



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水深30cm程の小さなクリークを見つけたので、息子をパックラフトに乗せてパドリングさせてみる。教えたことは無いのに、舟を漕ぐという行為を本能的に理解しているかのような体使い。

佐井和沙:食わず嫌いの息子が現地のドライフードを食べるのか心配だったが、ヌードルタイプのパスタやチキン味の即席麺はすすんで食べていた。歩くモチベーションが上がるように行動食も色々工夫した。

北根室でテストしたオニギリシステム(アルファ米に持参したふりかけと海苔を添えてラップを巻いたものをオニギリ1個がちょうど入るケースに入れる仕組み)と棒付きの飴(チュッパチャップス)を日本から持参していたので助かったし、現地スーパーで購入したM&M、チョコレート味のシリアルバーは調子良く食べていた。

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自分の顔くらいの大きさのオニギリを本当に美味しそうに食べる。これさえあれば大丈夫という安心感があり、長男にとって完全にトレイルにおけるソウルフードとなっている。

虫に刺されると歩くことに集中できなくなるので対策は必要。ユーカリなどのアロマ成分が入ったものが子どもには安心。日本の虫除けは現地の虫には効かないので注意。after biteとgoodbye sandflyの組合せがオススメ。

日焼け対策は薄いウール性の上下を着用。以前雑草が直接皮膚にあたってかゆがっていたので今回はアンダーパンツが調子良かったみたい。母子手帳一式、体温計、風邪薬(抗生物質)、下痢止め、アレルギー用の軟膏、目薬、絆創膏、消毒液を持参した。

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虫除け対策の一つとして、TRAILSオリジナルの2人用ULスリーピングバッグ ” BUDDY BAG ” 専用のBivyをHariyama Productions madeで用意した。



Father’s View



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水があったら、トレイルなんかより水の中を歩いた方がエキサイティングでしょ?と言わんばかりのメッセージを息子の行動から受け取った。まぁそうだよね、とできるだけ一緒に水の中を歩き靴を濡らすようにしていた。

佐井聡:彼(長男)が今回の旅をどう感じ、どういう意味があるのかにとても関心が高かった。親の主観的な「子どものため」とか「きっと好きなはず」とかいう考えで子どもに体験させることは危険だから気をつけなければと思っていた。

偏見とサヨナラし、とにかくゼロベースで息子を観察することが大切だし、そんな視点で彼が選択する一つ一つの行動を目撃していくと親の想像なんて到底及ばない感じが一番楽しかった。

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子どもを背負って歩くということの深みを体感した旅となった。お互いの汗を共有するのは不快な側面もあるだろうが、圧倒的に家族(長男)の存在を感じながら歩くという特別な体験となった。

そういう意味では夫婦で旅していた時との違いとして、親とか父親とかいう役割や視点が旅の中に芽生えてきたのが発見だった。

気づき的には結構シンプルで、我々は両親共働きで普段平日は子供と一緒に過ごせる時間が長くない。彼からするとかつてなく長い時間両親と一緒に過ごすことができる。しかも普段NGなことがOKになる世界。叫びたい放題。拾いたい放題。投げたい放題。そして歩きたい放題。

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大人と同じ場所にいくのだから大人と同じスペックの道具を用意する必要がある。力が弱い子どもだからこそコストをかけるべきだよなと、この旅を通して学ぶことができた。PFDはAstralのOTTERを事前にパドルクエストで調達した。



次につながる旅の小さな知恵



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この小さな旅の知恵がきっかけで、大自然の中を家族で旅をするという素晴らしい行為をする人たちが少しでも増えてくることを願って、次回はFAMILY HIKING | #02 Portland(長男4歳4ヶ月)をお届けします。お楽しみに。

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WRITER
トレイルズ

トレイルズ

佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

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