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パックラフト・アディクト | #28 ホワイトウォーター・レスキュー・コース

2019.11.13
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(English follows after this page.)

文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳:石黒シエル 構成:TRAILS

TRAILSのアンバサダーであるHIKE VENTURESのコンスタンティンから、「レスキュー講習」のレポートが届きました。

パックラフトをはじめとした川遊びは、川がフィールドゆえ、つねに危険が伴う。そのため、緊急時の対処スキルは欠かせません。

コンスタンティンは、万が一危険な状況に直面した際に、果たして自分自身の身を守ることができるのか? 仲間を助けることができるのか? と疑問を抱いたことがきっかけで、レスキュー講習に参加することにしたそうです。

今回は、彼が参加した講習の内容についての詳しいレポートです。この記事が、読者のみなさんにとってレスキュースキルを見直すきっかけになれば嬉しいです。

そして、より多くの人がこのスキルを習得し、より安全にパックラフティングを楽しめるようになることを願っています。

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レスキュー講習は、『Packrafting Meet-up Europe 2019』の会場であるスロベニアのソチャ川で開催された。



これまで、パックラフトの優れた性能のおかげで危険な目にあわなかった。



パックラフトを初めて買ったとき、最初はホワイトウォーターで使用するつもりはありませんでした。もし使うとしても、自分にとって難し過ぎると感じた急流はとにかく慎重に対応し、時にはポーテージします。もちろん、最初の頃はほとんどすべてが私にとって急流だったので、そうしましたけど。

でも次第に、ある時は間違えて、ある時は意図的に、私はあの恐ろしい急流にトライするようになり、実際に急流をパドリングできるようになったのです! しかも思ったより簡単に。

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パックラフトで急流を下るようになったコンスタンティン。

その理由は、パックラフトの性能によるものでした。パックラフトは本当にしっかり広々としていたので、無敵とまでは言いませんが、本当に安心することができたのです。はじめに私がポーテージをしていたようなクラスII(※)の急流は、一度見ただけで下れるようになりました。

そして、フランスで4日間のホワイトウォーター・パックラフティング・コースを受講して、クラスIII(※)以上の急流にも挑むようになりました。ひっくり返ったかって? それはもう、何度もね。でも、どの状況においても、たとえ私が水中にいる時でさえ、パックラフトが「私を守る魔法」をかけてくれているように思えていたので、危険だとは感じませんでした。

※ クラス:瀬(川の流れが速く水深が浅い場所)の難易度。クラス(グレードや級など表現はまちまち)が I〜VI(1〜6級)まであり、数字が大きいほど難易度が高い。



友人から事故の話を聞いて、急流に対する恐怖が増した。



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講義風景。インストラクターの話を真剣に聞く参加者たち。

しかし時間が経ち、私は自分が本当に困った時に乗り切れる実力と運を持っているのか、疑問を持ち始めました。自分自身の身を守る時、あるいは別のパドラーを助ける時に、どのように反応し、何をすべきか、私は知っているのだろうか?

私はフランスのパックラフティング・コースでホワイトウォーター・スイミングとスローロープの基本を学び、その後もソチャ川のミートアップで開かれたワークショップで、これらのスキルを簡単におさらいしました。でもそれでは不十分でした。良いロープも適切なPFDも持ってなかったですし、水上で困難な状況に直面した場合にどうすればよいかも、まったく知らなかったのです。

急流に対する恐怖は、昨年私の友人がホワイトウォーターにおいて、パドリングパートナーの命を失った話を聞いてから、より深くなりました。私の友人はパートナーを助けることができなかったのです。それで私は、パックラフティングを続けるならもっと学ばなければならない、と考えるようになりました。



理論と実習で構成された、急流救助に関する専門講習を受けることにした。



幸運なことに、今年開催されたスロベニアでの『Packrafting Meet-up Europe2019』の直前に、Rescue3 Europe(※)のトレーニングの一環として講習がありました。

それは、パックラフト・ヨーロッパを経営するセオンとスロベニア人のインストラクターによる、2日間のパックラフトに特化したホワイトウォーター・レスキュー・トレーニング。私はこれを受講して認定をもらいました。

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『Whitewater Rescue Technician – Recreational(WRT-REC)』コースのテキスト。

コースの正式名称は「Whitewater Rescue Technician – Recreational(WRT-REC)」で、対象としているのは、「パドリング中または仲間との、ホワイトウォーターにおける救助能力取得を希望するパドラー」です。 (https://rescue3.com/wrt-rec/)。8時間の座学と8時間の実習を行なう2日間のコースです。

一連のプログラムは、Rescue3の哲学とトレーニングの基礎の紹介から始まり、河川の水圧や危険性、コミュニケーション、および危機管理方法についての学習という内容です。

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リバー・レスキューの基本装備。PFD、クイックリリース・ベルト、スローロープ、リバーナイフ、ホイッスル、牽引用のロックカラビナ&ストラップ。

それから、個人&グループ用装備がパックラフトに適したものかをチェックし、川の流れや医療上の懸念事項についての議論をします。プログラムには理論の講義や議論、個人およびグループでのさまざまな演習が含まれていました。

学んだ理論は一般的に使われるものではありましたが、より広い文脈においてパックラフター用にカスタマイズされていました。それは、講師であるセオンがパックラフターだったからです。彼はサブのインストラクターでしたが、私たちに多くの学びをくれました。

※ Rescue3:世界33カ国に支部がある世界最大のネットワークを持つ民間トレーニング組織。具体的には、スイフトウォーターレスキュー(急流救助)やテクニカルロープレスキューなどの講習を実施している。本部はアメリカ・カリフォルニア州にあり、日本にも支部(Rescue3 JAPAN)がある。



急流に逆らって泳いだり、ロープを投げて人を助けたり、何度も実習を繰り返した。



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実習に向けて事前に細かいレクチャーが実施される。

両日とも、はじめに理論を4時間学んだ後、ドライス​​ーツに着替え、PFDとヘルメットを着用し、実習が行なわれる川まで歩いていきました。初日に私たちが学び、実践したことは、スローバッグを正しく使用する方法でした。

蓋を開けてみると、使用法には複数あって、その時の状況に最適なものを見つけることが必要でした。私がもっとも自信を持っていたアンダーアームスローと比べ、ヘタなオーバーアームスローでは同じ精度も距離も出せなくて、もっと練習する必要がありました。

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必要な道具の名称や正しい使い方も、いちから習得する。

また、ホワイトウォーター・スイミング(急流に逆らう泳ぎ方、急流に沿う泳ぎ方の両方)を練習し、木などが倒れ込んで進めない箇所に向かう場合の対処法(もちろん、この状況に陥らないことが最善ですが)と、瀬を横断するテクニックを学びました。

また、一人が川の中で意識を失った人の役をし、もう一人がスローバッグにPFDのクイックリリース・チェストハーネスを付けて川に飛び込み、溺れた人を確保するというテザーレスキューにも挑戦しました。

川岸にいる人が安全を確保するビレイヤーとして行動し、救助導線を管理します。最初から常にすべてを正しく行なえるとは限らないため、参加者は一人ひとりすべての役割を数回担当しました。(もちろん意識を失って溺れた人になること以外を)



溺れてしまったパドラーを、いかにして救助するか。



2日目は、ロープの扱い方の練習、さまざまな結び方とアンカーシステムの習得、テンションのかけ方と交差のさせ方に集中しました。また、意識がある状態とない状態の「溺れた人」をそれぞれ想定して、岸から対岸に対角線に張ったロープを使って運ぶこと、流れに角度をつけて張ったロープを使用する技術も実践しました。

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救助においては、ロープワークも欠かせないスキル。

この日のハイライトは、溺れた人(今回は人形)の足が引っかかり、水面下に引きずり込まれた場合の練習でした。ストレーナーとサイフォン(※)、これらはパドラーにとって最悪のケースである可能性が高いうえ、自分でどうにかできるケースも少ない。そのため、かなり限られた時間の中でパドリングパートナーにすべて頼る必要があります。

※ ストレーナー:川にある倒木や流木などの障害物のこと。
※ サイフォン:水の流れの一部が岩などの水没した物体の下を通過するときに発生する急流。

私たちのロールプレイングの講習では、救助活動は成功し「溺れた人」は生きて助かりました。しかし、実際にこの救助活動をする日が来ないことを本当に願っています。とはいえ、貴重な学習体験でした。

これまで習得する時間がほとんどなかった新しい知識とスキルが詰め込まれ、疲労困憊の2日間を終えました。私はRescue3がなぜこの全てのコースの最初のステップとして扱っているのか、その哲学を完全に理解し始めていました。これが実践、経験、判断の発展に繋がっていくのです。

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川に入る前に地上でデモンストレーションも行なわれた。



講習を受けること以上に、それを実践し続けることが大切。



この講習は間違いなく非常に重要で貴重なレッスンでしたが、これは実践し続けることが大切だと私は考えています。

だからこそ、私は今回の認定証が3年間有効であるにも関わらず、その期限が切れる前にまた講習に参加したいですし、機会があれば次のレベルのトレーニングであるWhitewater Rescue Technician Professionalに挑戦したいと思っています。

もし次のレベルに挑戦したら、私は今、PFDにつけているものよりクールなバッジと笛を手に入れるでしょう。

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パックラフティングを安全に楽しむためには、単に講習を受けてできた気になるのではなく、復習し続けることが大切。

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(英語の原文は次ページに掲載しています)

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WRITER
Konstantin Gridnevskiy

Konstantin Gridnevskiy

1978年ロシア生まれ。ここ17年間はオランダにある応用科学の大学の国際旅行マネジメント課にて、アウトドア、リーダーシップ、冒険について教えている。言語、観光、サービスマネジメントの学位を持っていて、研究は、アウトドアでの動作に電子機器がどう影響するか。5年前からパックラフティングをはじめ、それ以来、世界中で川旅を楽しんでいる。これまで旅した国は、ベルギー、ボスニア、クロアチア、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、モンテネグロ、ノルウェー、ポーランド、カタール、ロシア、スコットランド、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、オランダ。その他のアクティビティは、キャンプ、ハイキング、スノーシュー、サイクリングなど。2012年に、友人と一緒に『HikeVentures』を立ち上げ、自らの旅やアクティビティの情報を発信している。
WEB: www.hikeventures.com/

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