TRIP REPORT

TOKYO ONSEN HIKING #04 | 御前山・玉翠荘

2020.03.04
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TRAILS編集部crewの根津による『TOKYO ONSEN HIKING』、第4回目。

今回は、4回目にして初めての悪天候。小雨がぱらつくなか、奥多摩の山と温泉を楽しんできました。

温泉は奥多摩駅にほど近い『玉翠荘』(ぎょくすいそう)。

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御前山(ごぜんやま・標高1405m)へとつづく登り道。

まずは、恒例のTOKYO ONSEN HIKINGのルール紹介!

① TRAILS編集部 (日本橋) からデイ・ハイキングできる場所
② 試してみたいUL (※1) ギアを持っていく (※2)
③ 温泉は渋めの山あいの温泉宿がメイン (スーパー銭湯に非ず)

うすうす気づいてはいたんだけど、どうやら自分は雨男のよう。ただ、意地でも負け惜しみでもなく、雨天の奥多摩は最高でした。「霧の奥多摩」とはよく言ったもので。言わない? いや本当に最高だったんだから。


橋のどまん中からハイクスタート!


奥多摩に行くたび、よく目にする看板があった。『玉翠荘』だ。前々から気になっていて、いつか訪れてみたいと思っていた。

それで今回、満を持してTOKYO ONSEN HIKINGで取り上げたというわけ。

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スタート地点の境橋バス停までは、JR奥多摩駅からバスで6分。全行程のコースタイムは5時間40分 (山と高原地図)。アップダウンに加えて岩場もちょくちょくあるため、余裕を持ったスケジュールを。

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境橋バス停は、多摩川にかかる境橋のどまん中! 想定外だったこともあり、少しだけ緊張ぎみ。

スタート地点の境橋バス停は、もちろん地図でチェック済みだったのだが、まさか橋のど真ん中だとは思ってもみなかった。こんなとこにおろされてちょっとビックリ。

でも、橋の上からの眺めがすばらしく、旅のスタート地点としては最高のロケーションだな、と雨天を忘れてしまうくらいテンションが上がった。

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境橋バス停から眺める多摩川。


これが、かの有名な「霧の奥多摩」か。


スタートから1時間弱くらいは舗装路を歩く。なんの変哲もない道だけど、途中、栃寄(とちより)集落のなかに奥多摩都民の森があったりと、歩いてみると意外と見どころがある (都民の森の施設「栃寄森の家」は3月15日[日]まで休館)。

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いよいよ御前山へとつづく登山道へ。雨で潤う木々が神秘的。

登山道に入ると、そこそこの急登。でも都民の森ということもあって、東屋や植物の紹介ボード、むかし炭焼き場だった場所の案内板などがあり、知的好奇心を刺激してくれるので飽きがこない。

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植林されたスギのなかでひときわ目立つメグスリノキの巨木! 存在感がハンパない。

ただ、登りにくわえ小雨も降っていて足元がすべりやすく、思ったより疲れを感じる。そこでちょくちょく食べていたのがTRAILS INNOVATION GARAGEのトレイルミックス『MYOM (Make Your Own Mix)』だ。

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デイハイキングにしては長めの行程だったこともあり、今回は高カロリーが特徴のヘーゼルナッツをメインに。TRAILS INNOVATION GARAGEの『MYOM (Make Your Own Mix)』。

それにしても、霧の奥多摩はいい。眺望はまったく期待できないが、そのぶん霧が立ち込める森を心しずかに、やさしい気持ちで歩くことができる。いい意味で半径数メートルしか見えないので、フォーカスが自分にしぼられ、歩くという行為に集中し、それをじっくり味わうことができるような気がした。

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御前山の手前、最後の登り。いつの間にか登りのキツさを忘れいていた。まるでゾーンに入ったかのよう。


自然をじゃましないULギアで、雨音をBGMにリラックスタイム。


実は、そうそうにお腹が空いてしまい、登山道の序盤にあった東屋でランチというかブランチをとった。早弁と言ったほうがいいかもしれない。

今回使用したアルコールストーブは、Sanpo’s Fun Lite Gear (サンポズファンライトギア) のCreep stove (クリープストーブ)。

これ、なにがすばらしいかって、風防とゴトクの一体型! これはありがたい。それぞれそろえる手間がはぶけるし、僕みたいにいろいろと忘れがちなハイカーにはぴったりだ。

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Sanpo’s Fun Lite GearのCreep stove。風防とゴトクが一体になっていて、手軽で面倒じゃないのが大きな特徴。

ただ、見てわかるように簡易風防なので、使うなら風があまりないときかな。火力もすごく強いわけではないので、低山でのドライフードのみのデイハイクなんかにおすすめ。ちなみに、固形燃料にも対応してるので、コケネン派の人もぜひ。

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今回のクッキングシステムの総重量はたったの81g。VARGOのTitanium Travel Mug (65g) とSanpo’s Fun Lite GearのCreep stove (16g)。このたたずまいが美しいじゃないか。

ポットは、チタンでおなじみのVARGO (バーゴ) の、Titanium Travel Mug (チタニウムトラベルマグ)。

1回沸かすだけで、主食のビバークレーション (『ULTRA LUNCH』の山メシ。詳しくはコチラの記事を参照) と、飲みもののインスタントコーヒーが作れて便利。しかも、火器一式とポットのセットで、たったの81gと軽量なのも良い。

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ULTRA LUNCHのビバークレーション (湯量200ml) とインスタントコーヒー (湯量180ml)。

お腹を満たして一気に御前山(ごぜんやま・標高1405m)の山頂へ。うっすらと霧が立ち込めるなか、ハンモックを張ってみる。

使用したのは、BIG AGNES (ビッグアグネス) のHeadwall UL (ヘッドウォールUL)。ULテントブランドならではの軽量ハンモックだ。

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BIG AGNESのHeadwall ULは、本体重量がたったの170g。軽さと快適性を両立させたモデルだ。霧の中のハンモック (フォギーハンモック?) もなかなか良かった。

あとは温泉に向かってガンガンくだって行くぞーっと思いきや、ここからなかなかのアップダウン。鋸山付近には斜度の大きなハシゴもあったり。おい、聞いてないぞ! なんて思いつつ、その手ごわさを楽しんだ。

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鋸山の手前に突如あらわれた急なハシゴ。雨でスリッピーだったので一歩ずつ慎重にのぼった。


80年以上の歴史をもつ温泉宿へ。


鋸尾根は、地図ではわからないのだが、けっこう岩場が多い。しかも、途中には天狗様がまつられている天聖神社、さらには防火の神様としても知られる愛宕神社もある。

以前、似たような感じのところを歩いたことあったなぁ、と思っていた。そうだ、大峯奥駈道だ。吉野と熊野を結ぶ、修験道の修行の道であり世界遺産。まさにこの大峯奥駈道のようだった。

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天聖神社にまつられている天狗様。

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立派なたたずまいの愛宕神社。

いやあ、想像以上にバリエーション豊かなデイハイキングルートだった。これ、天気が良かったら、さらにあっちこっちに気がいってしまい、日が暮れていたかもしれない。

そしてようやく、今日のクライマックスの温泉にたどり着いた。さすがは80年以上の歴史をもつ『玉翠荘』、たたずまいにも風情がある。

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事前に撮影のお願いをしていたこともあり、わざわざ「歓迎 根津御一行様」という看板まで用意してくれていた。

まずは支配人の前田達男さん (4代目) のすすめで、館内の絶景スポットへ。窓からこんなダイナミックな絶景が見られるとは! いやあ、ロケーションが最高すぎる。

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『玉翠荘』からの眺め。奥には日原川と多摩川の合流地点が見える、超貴重なスポット。

温泉は「鶴の湯温泉」を用いているそうで、名湯だけあって申し分ない。女湯と男湯にわかれていて、女湯は渓谷に面していて眺望がバツグン。一方、男湯はちょっと洞窟風呂っぽい雰囲気があり、いい感じのほのぐらさが、すごく落ち着く。

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渓谷美が堪能できる女湯。

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写真だと分かりにくいが、洞窟っぽい雰囲気があり、すごくリラックスできる男湯。玉翠荘は不定休ゆえ、利用の際は事前に連絡を。日帰り入浴の料金は750円 (3月3日現在)。

聞けば玉翠荘は、1937年に食堂としてスタートし、その後、温泉旅館になったという。館内には、ところどころに歴史を感じさせる調度品などもあり、日帰り入浴だけではもったいないと思うほど。次回は、宿泊してじっくり味わいたい。

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静けさと霧に包まれた鋸尾根をくだっていく。

霧の奥多摩から渓谷美が堪能できる温泉へ。今回も大満足の1日だった。

あらためて思ったのは、たった1日、日帰りのハイキングなのに、こんなにもたくさんのことが楽しめる、ということ。大事なのは時間の長さじゃなくて質の高さなのだ。

さて、次の『TOKYO ONSEN HIKING』はどこにしよう。

※1 UL:Ultralight (ウルトラライト) の略であり、Ultralight Hiking (ウルトラライトハイキング) のことを指す。ウルトラライトハイキングとは、数百km〜数千kmにおよぶロングトレイルをスルーハイク (ワンシーズンで一気に踏破すること) するハイカーによって、培われてきたスタイルであり手段。1954年、アパラチアン・トレイルをスルーハイクした (女性単独では初)、エマ・ゲイトウッド (エマおばあちゃん) がパイオニアとして知られる。そして1992年、レイ・ジャーディンが出版した『PCT Hiker Handbook』 (のちのBeyond Backpacking) によって、スタイルおよび方法論が確立され、大きなムーヴメントとなっていった。

※2 実は、TRAILS INNOVATION GARAGEのギャラリーには、アルコールストーブをはじめとしたULギアが所狭しとディスプレイされている。そのほとんどが、ULギアホリックの編集長・佐井の私物。「もともと使うためのものなんだし、せっかくだからデイ・ハイキングで使ってきてよ!」という彼のアイディアをきっかけにルール化した。

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根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年4月、TRAILSに正式加入。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS) がある。

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