TRIP REPORT

フォロワーゼロのつぶやき 中島悠二 #18 Everybody feels the same

2020.12.09
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<フォロワーゼロのつぶやき> 中島君(写真家)による、山や旅にまつわる写真と、その記録の断面を描いたエッセイ。SNSでフォロワーゼロのユーザーがポストしている投稿のような、誰でもない誰かの視点、しかし間違いなくそこに主体が存在していることを示す記録。それがTRAILSが中島君の写真に出会ったときの印象だった。そんな印象をモチーフに綴られる中島君の連載。


#18「Everybody feels the same」


例えばマラソン大会に出たとして、いきなり走らない。走らないからダントツ最下位。そのうち時間切れで大会スタッフは撤収しはじめ、沿道の人々は消えてしまった。それでも一人取り残されて、歩いている。

ロングトレイルってこんな感じかもしれない。風景は周回遅れの様相を帯びてきて、西日がすごく寂しい。でも心は落ち着いていて、風の動きがわかる。ひとりだけ、平行する別世界に入り込んだみたい。見える街並みはあまりに遠くて、雑草のワイルドサイドを横切ると、誰もいない信号を渡る。

宇多田ヒカルの「虹色バス」という曲がある。跳ねるようなリズムとメロディーから、2番のサビが終わると突然曲調がかわって、瞬間移動したみたいに遠いところから声がきこえはじめる。

“誰もいない世界へわたしを連れて行って
誰もいない世界へわたしを連れて行って”

 

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聴くたびにことばの切実さにぞっとする。2回繰り返すのが、それは決して叶わないとわかっていていっている、みたいにきこえる。ちなみに誰もいない世界とは、わたしをわたしと認識する人がいないのだから、“わたし”すらそこにはいない場所でもある。ともかく曲は「Everybody feels the same 」と続いて終わる。みんな思っている、という。みんな、もちろん自分も、”わたし”はそのことにいつも心を砕いてきた。口にはしないし、Facebookには書かない。外にでるはずのない、内側だけで反響する声。

“ここではない、どこかへ”

別に遠くじゃなくていい。距離の問題ではない。今いるところから、段差を踏み外してみればよくて、“放課後の教室”みたいに入り口はすぐそばにある。例えば携帯の電源を切ってみる。ボタンの長押し。難しくはない。が、簡単ともいえない。

何かをしない、と決めた時にそれははじまる。マラソン大会の外にでて、走らないだけ。もしくは逆に進む。途中で道をはずれるのもいい。スタートラインのピストル奪う。ユニフォーム投げる。道の上で大の字になって空を見る。青い空に雲のかたまりが、ゆっくり動いているのが見える。意識が雲に溶けていって、風の動きがわかるようになる。これで準備はOK。そのうち戻るのはわかっていて、あとは自由を楽しむのがいい。

 

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中島悠二

中島悠二

写真家。
1981年 神奈川県川崎市生まれ。
福島在住。

写真の大学を卒業後、建築の教育現場のスタッフとして5年、その後フリー。静かな活動。ようやく最近インスタはじめる。2014年に歩いたジョンミューアトレイルがきっかけで、LONG DISTANCE HIKERS DAY(ハイランドデザイン & トレイルズ主催)にスピーカーとして参加。

TRAILS編集部のクルーとは、同時代的な感性で意気投合。その後、いままで公式に発表されてこなかった山や旅の写真を中心に、トレイルズでの連載を開始する。
WEB: www.sunagomikusa.info

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