TRIP REPORT

WOMEN HIKE John Muir Trail | #01 女性ハイカー3人、JMTへゆく

2019.09.27
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文・構成:TRAILS 写真:提橋真由美、伊藤範子、原靖子、TRAILS

今年の夏、John Muir Trail(JMT)をセクションハイキングした、3人の日本人女性ハイカーがいます。

TRAILSとも以前から親交のあった彼女たちに、TRAILS編集部crewの佐井和沙(以下、カズ)が声をかけて、帰国後に集結。自身も2010年にJMTを歩いたことがあるカズがファシリテーターとなり、旅の話をたっぷりと聞かせてもらいました。

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彼女たちが旅した、2019年の夏のJMT。

当初は、女性ならではの旅のTIPS話を期待していたのですが、いい意味でそういった類のものではありませんでした。

そこにあったのは、頭でっかちにならずピュアに心からロング・ディスタンス・ハイキングを楽しむ姿。旅っていいな、旅ってこういうものだよな、ということをあらためて感じさせてくれる内容でした。

そこで今回から3回にわたって、彼女たちのJMTの旅を紹介します。まず第1回目はプランニング編。何をきっかけにJMTに興味を抱き、そしてどんな準備をして旅立ったのか。歩く前のストーリーです。

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左から、提橋真由美さん(さげちゃん)、伊藤範子さん(のりちゃん)、原靖子さん(やっちゃん)。ファシリテーターはTRAILS編集部crewの佐井和沙。


3人の女性ハイカーがJMTに興味を持ったきっかけとは。


ーー 佐井和沙(以下、カズ):もともとJMTヘの憧れみたいなものがあったの?

原靖子(以下、やっちゃん):JMTは知ってはいたんですけど、基本的にスルーハイキングをするものだと思っていて。でも去年の10月、カズさんに誘われて参加したPOP HIKE CHIBA(※)でさげちゃん(提橋)と初めて会ってしゃべった時、彼女のJMTの話に食いついちゃって。え? なに? セクションハイクって? しかも初めての海外トレイルで、女性一人で行ったの? ってなって。

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TRAILSの佐井和沙は、2010年に夫婦でJMTを歩いた。

ーー カズ:そうそう、仕事辞めてまで行けないから、1週間くらいのセクションハイキングなら行けるかも! と話してたよね。

提橋真由美(以下、さげちゃん):私がJMT行ったって言っても、聞いているほうが知らなくてふーんってなったら話が終わるじゃないですか。でも、やっちゃんがすっごい興味持ってくれたのがうれしくて。ちょうどその夏に初めてのJMTに行ったばかりだったので、話している私もすごく楽しくなっちゃったんです。

※POP HIKE CHIBA:千葉にある『cafe STAND』がオーガナイズするハイキングイベント。そこに千葉が拠点のアウトドアギアブランド『GREAT COSSY MOUNTAIN』、千葉にゆかりのあるメンバーが立ち上げた『TRAILS』がサポートハイカーとして、『Hiker’s Depot』がゲストハイカーとして携わっている。年1回開催で昨年で7回目を迎えた。

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房総をメロウにハイキングするPOP HIKE CHIBAで3人は出会い、JMTの話で盛り上がった。

やっちゃん:そのあと、今年の2月に『LONG DISTANCE HIKERS DAY』に参加して、さげちゃんが登壇したトークを聞いたら、「もう今年ぜったいに行こう!」ってなって。ただ、一人じゃ不安だな……っていうのはありました。

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TRAILSとHiker’s Depot共催のLONG DISTANCE HIKERS DAY2019にて。さげちゃんは、「女1人のジョン・ミューア・トレイルの旅」(Navigator: 佐井和沙)を発表。

伊藤範子(以下、のりちゃん):私はニュージーランドのトレイルをちょっとだけ歩いたこともあり、以前から海外のロングトレイルに興味がありました。ロングトレイル関連のトークショーとかにも参加したりしてましたし。ただ、行くにあたってはたくさんのことを調べて、準備しないと、というイメージがあったので、私にとっては遠い話だったんです。でも今年、やっちゃんに突然誘われて行くことに(笑)。


興味を抱いてから旅に出るまでのスピードの速さ。トントン拍子で事が進んでいく。


ーー カズ:私の場合は新婚旅行で満を持してJMTに行った感じだったんだけど、実際に旅に行くまでスピード早くない?

やっちゃん:今年の3月末くらいに、さげちゃんと一緒にHiker’s Depotに行ったんです。JMTに詳しいスタッフのベぇさん(勝俣隆さん)に話を聞こうと思って。そしたらまたベぇさんトークが上手で。行きたいの? 行きたいです! 休み取れるの? いついつ取れます! とやりとりしてたら、おもむろにスマホでなにやら調べだして、ここのパーミットが空いてるからとりあず取っておきなさい(あとでキャンセルもできるから)って。それで、その場でパーミットを取ったんです。

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3人とも持っているJMTの地図。

さげちゃん:私はもともと今年も行こうと思ってたんで、パーミットは取得済みでした。やっちゃんが勧められた人気のエリアは、その時点(歩く日から約5カ月前)でパーミットが空いているなんてほんと奇跡的なんです。

のりちゃん:私は今年の4月くらいに、やっちゃんと高尾に走りに行った時にやっちゃんから「のりちゃんさ、私JMTに行くことになったんだけど、一緒にいかない?」って言われて。それで私も「行く行くー! いつ?」って即答して(笑)。完全にノリですよね。飲み会行こうぜーみたいな。

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ノリのいい二人は、JMTを歩きはじめる時もこのテンション!


3人とも会社員。夏休みや有給休暇をうまく利用して計画を立てた。


ーー カズ:そもそも3人は会社員って聞いてるけど、長期の休みが取りやすいの?

さげちゃん:私は出版社に勤めていて、雑誌の進行管理とか校正とかを担当してます。月刊誌なので毎月締め切り前は忙しいですけど、それが終わればわりと休みは取れます。もともと夏休みが6日あって、そこに有給休暇を4日プラスした感じです。

ちょうど締め切りを過ぎたタイミングだったのと、事前に私の仕事を他の人に引き継いでもいたので、問題はなかったです。あとは、以前から週末に山に行ってたし、去年もJMTのために休みを取ったりと、職場の人にも「こいつは山にハマってて休み取るやつだな」って思わせていたのもの良かったのかも。

やっちゃん・のりちゃん:それ大事! 大事!

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さげちゃんは、登山歴3〜4年。昨年夏にJMTをセクションハイキングした。

のりちゃん:私は損保会社の社員です。営業部にいて、保険を販売するパートナーの人を育成したりバックアップしたりと、まあそんな仕事です。会社からはは年に2回5連休を付与されていて。そのほかに有給休暇が20日あります。今回のJMTでは、その5連休に1日有休をつけて、トータル6日間休みを取りました。

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のりちゃんが山を本格的にはじめたのはここ4年くらい。トレイルランニングも楽しんでいる。

やっちゃん:私は農林水産省の外郭団体に勤務してます。所属部署では、資格試験を主催していて、会場や講習会の手配、進行などに携わっています。夏休みは平日3日間と決まっているので、本来であれば土日も含めてマックス5日間。でも、今回は1日有休もつけて6日間休ませてもらいました。

上司がロードバイクをやる人で、JMTのことも知っていて理解ある人だったんですよね。あとは前から6日休むことを決めていたから、そのぶん仕事もするし、上司に対してもどんどん休んでください! って言ってました。そういう休みやすい環境づくりはしてましたね。

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島根県出身のやっちゃんは、4年前に転勤で東京へ。そこから本格的に登山やハイキングをするように。同郷のTRAILS編集部crewのカズ(手前)とは、島根県出身者の集まりで既知の間柄。


悩みのタネは、背負う荷物の重さと、使用するバックパック。


ーー カズ:準備段階で苦労したこと、悩んだことはなかった?

やっちゃん:私たちは、バックパック問題があったの。

のりちゃん:旅の途中でリサプライ(再補給)できないルートだったので、食料含めて全荷物をずっと背負いつづける必要があったんです。でも、これまでずっとULっぽいスタイルで山に行っていたから重い荷物を持った経験がなくて。

やっちゃん:山小屋を利用することも多かったし。今回の行程だと、15キロ前後の荷物を担いで5日間歩くわけ。そんなことこれまでしたことなかったらか不安だったし、それに適したバックパックも持っていない。いまある大きめのザックは自重だけで2キロオーバー。さすがにそれは持って行きたくないなと。

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この大きなベアキャニスターが必携ということもあり、3人ともバックパック選びに悩んだ。

のりちゃん:なるべく軽いのがいいんだけど、とはいえベアキャニスター(クマ対策用の食料保管ケース。詳しくはコチラの記事)も背負わないといけないし、女性でも背負いやすいバックパックがいいなと。

やっちゃん:それで、知人がロングトレイルで使ってオススメしていたバックパックを借りることができたので、のりちゃんと歩荷練しようってなって。パッキングしたら、結局16〜17キロでした。

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JMTを想定した荷物を担いで、白馬へ。

のりちゃん:まず最初に二人で奥多摩に行ったんですけど、歩き始めたら想像以上に重くて……。やっちゃんが歩くたびに「重たーい! 痛ーい!」って(苦笑)。

やっちゃん:ショルダーハーネスが、いまいちフィットしてなかったんですよね。

のりちゃん:細かい調整が必要なバックパックだったんです。ちゃんとやればかなりのシンデレラフィットになるっていうのはわかっていたんですけど。

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のりちゃんが選んだHMGのPorter3400(左)と、やっちゃんが選んだHMGのWindrider3400。

やっちゃん:私たちみたいなガサツな人には……。まあそんなこともありつついろいろ検討して、最終的に私はHMGのWindrider3400、のりちゃんはHMGのPorter3400にしました。

正直、疲れるとバックパックのことに気が回らなくて。ちょっとしたことが面倒臭くなっちゃうんです。だから、なんにも考えずに雑にパッキングしても大丈夫なのが良かった。

ーー カズ:なるほど、たしかにフレームがないULのバックパックはパッキングに気をつかうよね。

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準備山行の白馬でのスリーショット。徐々に荷物の重さにも慣れてきた。

さげちゃん:私は去年、GREGORYのAMBER34っていう容量34Lのバックパックにバンバン外付けしたスタイルだったんですが、さすがにちゃんと収納したいなと思っていて。今回私はリサプライなしで9日間歩くプランだったので、かなりUL化しないとと考えていて。それを強制的に実現するためにも、あえてHMGのWindrider2400を選びました。もちろん、JMTの装備をほぼそろえて、実際にパッキングさせてもらった上で購入しました。

ーー カズ:昨年の写真を見ると、ベア缶も外付けで途中トレイル上に落としたりしてた(笑)。

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さげちゃんが最終的にチョイスしたHMGのWindrider2400。

さげちゃん:他のULザック、たとえばGossamer Gearなんかも検討はしたんですが、雨蓋はないほうがデザイン的に好みで。あとTRAIL BUMも考えましたが、今回の荷物の重量を考えるとショルダーハーネスの薄さが気になっちゃって。

HMGは、硬めのショルダーハーネスが重い荷物を入れた時にかなりフィットしてちょうどよかったんです。柔らかいのがいい人も多いみたいですが、私は重さがダイレクトに伝わってくる感覚があったので硬いほうを選びました。

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マンモス・ヨセミテ空港にて。着陸したタイミングではなんの問題もなく、後はスタートを待つばかりだった。

いちばんの悩みだったバックパックも、ようやく決まり、いざJMTへと旅立つことになった3人。

すんなりJMTを歩きはじめたのかというと、実はアメリカに着いてから、ちょっとしたハプニングがあったようです。

でも、旅にハプニングはつきもの。彼女たちは、その想定外の事態にどう対応し、そしてどんな旅がはじまることになったのでしょうか。

次回、『WOMEN HIKE John Muir Trail』の2回目は、3人の旅の模様をお届けします。お楽しみに!

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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