TRAILS REPORT

「withコロナ」のロングトレイル(前編) | 日本のロングトレイル

2020.06.19
article_image

今年こそ、このロングトレイルを歩くぞ! そんな思いを持って、すでにプランを立てていた人もいたことでしょう。

しかしながら、2020年は早々に新型コロナウイルスの年となった。4月7日 (7都府県。4月16日に全国) に緊急事態宣言が発表され、しばらくは山にもいけない日々がつづいた。

そして1カ月以上が過ぎ、5月14日に47都道府県のうち39県で解除、さらに5月25日には全国で解除となり、ようやく世間にも日常が戻りはじめた。

それまで山に行くことを自粛していた多くの人が、解除宣言を受け、身近な山には足を運べるようになってきた。

ロングトレイルはどうだろうか? ハイキングができる状態になっているのだろうか?

そこでTRAILS編集部は、あらためて国内外のロングトレイルの運営団体および担当者にヒアリングを行なった。

そして、現状と今後の見通しといった、現時点での最新情報をこの記事でお届けできればと思う。

まずこの前編では、日本のロングトレイル「信越トレイル」「北根室ランチウェイ」「みちのく潮風トレイル」にくわえ、TRAILSのNIPPON TRAIL projectから「富士講」「房総・クジラの道」、トータル5つのトレイルを紹介する。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
夏の北根室ランチウェイにて。



信越トレイル



いわずと知れた日本におけるロングトレイルのパイオニア。2008年に80km全線開通し、10年以上の歳月が過ぎた。

2020年は、加藤則芳氏の悲願でもあった苗場山までの延伸が予定されていた。しかし新型コロナウイルスの影響で、残念ながら延期せざるを得なくなってしまった。

さらに、毎年6月末開催のトレイル開きも中止が決定。毎年、この夏前の時期がハイシーズンのひとつでもある信越トレイル。いったいどんな状況なのか。

STS02_01_
日本でも有数のブナの森が、信越トレイルの最大の魅力。

■ オープン? or クローズ?
イベントは開催しないが、7/1にオープンすることが決定。

■ 現時点の状況
今年度は、不特定多数の参加者が集まるイベントやトレイル整備は行なわないことになった。

そのため、整備ボランティアの募集もできなかったが、ルート点検をはじめ最低限のメンテナンスは、信越トレイルクラブ事務局のスタッフのみで対応中。

とはいえ、あくまで最低限のレベルゆえ、歩いてみて整備が十分でない場所があれば、事務局までご連絡くださいとのこと。

トレイルは、整備されているからこそ安心して歩けるもの。「トレイル整備協力金」も募っているので、支援したい人はぜひ信越トレイルのHPをチェックしてほしい。

■ 今後について
・国、長野県、新潟県、山岳4団体の指針を参考に、対応を検討している。
・ストップしていたガイド付きのハイキングは、7/16から再開予定。
・天水山~苗場山までの延伸は、来年に延期。
・信越トレイル苗場山延伸記念イベントも、来年に延期。

[最新情報・問い合わせ]
・信越トレイルHP
https://www.s-trail.net/

STS03_06
例年のように整備ボランティアは募れないものの、事務局のスタッフが懸命に整備を進めている。



北根室ランチウェイ



牧場の中を歩く北海道ならではのトレイルとして、年々人気が高まってきているKIRAWAYこと『北根室ランチウェイ』。

北海道は全国に先駆けて、2/28に独自の「新型コロナウイルス緊急事態宣言」を発表。北根室ランチウェイも、ホームページ上で「4/5より当面の間、トレイルを閉鎖いたします」とアナウンスを行なってきた。

緊急事態宣言が解除された今の状況とは?

IMG_1252 (1)
摩周湖近くの開けた稜線も魅力のひとつ。

■ オープン? or クローズ?
当面のあいだ閉鎖予定。

■ 現時点の状況
北根室ランチウェイは、他のトレイルと比べても早いタイミングで「トレイル閉鎖」を決定した。現時点でも、当面のあいだは閉鎖の予定である。

同トレイルは、他のトレイルと異なり、牧場など酪農地帯を歩くトレイルである。それゆえ、かねてより家畜伝染病の感染などへの懸念の声も挙がっていた。こういった背景もあり、今回の伝染病についても厳格な対応をとっている。

昨年の時点で、ルートの一部が変更となり、あらたな風景を楽しめる「ラーチの防風林」を歩く道も開通していた。新型コロナウイルスによる閉鎖のあいだも、トレイルの整備は行なっているとのこと。じっくりと再オープンのときを待ちたい。

■ 今後について
当面はクローズの予定。ハイカーは、上記のような酪農地帯ならではの特殊な事情があることを十分に理解し、気長に待つことが求められる。

再オープンする際は、ルートが一部変更になる可能性もあるとのこと。再オープン後に歩こうと思っているハイカーは、ホームページで事前にルートチェックをしておこう。

[最新情報・問い合わせ]
・北根室ランチウェイHP
http://kiraway.net/

HK01_02
酪農地帯を歩く北根室ランチウェイならではの光景。



みちのく潮風トレイル



2019年6月に全線開通し、先日1周年を迎えたばかり。初年度だけでスルーハイカーが15人も誕生したこともあり、今年はさらなる盛り上がりが期待されていた。

しかし、4/13から各種イベントの休止を発表し、4/18からは名取トレイルセンターも休館 (現在は再開)。一方で、SNSでのキャンペーンなどを通じて積極的に情報発信を行なってきた。

全長1,000km超のナショナルトレイルとして注目が集まる、全線開通から2年目の『みちのく潮風トレイル』の今とは?

22_Michinoku2
みちのく潮風トレイルには、海を眺めながら海岸を歩くセクションもある。

■ オープン? or クローズ?
現在「地域をまたがない」という条件はあるものの、ハイキングをしてOKというアナウンスをしている。6/19に国の指針発表があれば、条件について関係者と相談してSNS等で更新する。

■ 現時点の状況
全線開通1周年記念イベントをはじめ、多くのイベントが秋頃まで中止になっている。

整備ボランティアに関しては、広く募ることはできないが地域の方限定で再開。市町村の担当者や各担当セクションのスタッフ、その地域の人の手によってメンテナンスを行なっているので、ほとんどのトレイルは歩ける状態になっている。

ルート上には渡船もあるが、渡る先の島は高齢者の多い小さな集落ゆえ、感染防止のために渡船サービスは休止中。今は歩くことができない。6/19以降は再開が検討される予定。

また原則、国の指針に準拠しており、町中で活動 (飲食、宿泊) する際は、マスクの着用、3密を控えるなど、一般的なコロナ感染拡大防止の配慮をお願いしている。

■ 今後について
状況が落ち着いたら、年内のイベントでも再開していく考えはある。開催の可否については、国や県、市町村の方針が判断基準となる。

[最新情報・問い合わせ]
・みちのく潮風トレイル 名取トレイルセンターHP
https://www.mct-natori-tc.jp/

IMG_3258 (1)
随時、ハイカーに向けて情報発信中。最新ニュースは名取トレイルセンターのHPにて。(https://www.mct-natori-tc.jp/caution/1331)



NIPPON TRAIL 『富士講』



かつての江戸から富士山を目指す旅にインスパイアされ、NIPPON TRAILとしてTRAILSなりに再解釈して旅した『富士講』。

高尾山をスタートし、相模原の山々を越え、道志山塊を抜け、富士山周辺の山を巡りながら富士山5合目でゴールを迎える、約90kmのルート。

さまざまな山域をまたぐこのルートは、今、歩けるのだろうか?

NT_fujiko1_main
6日間にわたる「TRAILS的な富士山への旅=富士講ロングハイク」。

■ オープン? or クローズ?
下記エリアのみクローズ。
・相模原エリアにある、嵐山 (※)、石老山が、昨年の台風19号の影響で崩落等があり歩けない。
・富士山は今年は入山禁止。

※ 北側の嵐山ルートを往復することは可能。ただし、南側 (プレジャーフォレスト側) に抜けることができない。

■ 現時点の状況
上記以外のエリアに関しては、閉鎖や通行止めなどは行なっていない。

■ 今後について
上記相模原のエリアは、復旧の目処は立っていない。

新型コロナウイルスに関しては、いずれのエリアも国や都道府県の方針に沿って進めている状況。

[最新情報・問い合わせ]
・東京都 高尾ビジターセンターHP
https://www.ces-net.jp/takaovc/

・相模原市観光協会HP
https://www.e-sagamihara.com/

・道志村役場
道志村 産業振興課 (電話もしくは問い合わせフォーム)
http://www.vill.doshi.lg.jp/ka/list.php?ka_id=3

・富士登山オフィシャルサイト
http://www.fujisan-climb.jp/

fuji2_03_05
歩くごとに富士山がどんどん近づいてくる。そんなワクワク感が味わえるトレイル。



NIPPON TRAIL 『房総・クジラの道』



TRAILSが独自にルートとコンセプトを考え、房総半島に見出した『房総・クジラの道』。

捕鯨文化が今なお残る南房総の和田浦をスタートし、伊予ヶ岳、富山などの房総丘陵を越え、房総捕鯨発祥の地である安房勝山にたどり着き、鋸山を経てゴールする、房総半島横断の旅。

千葉県は、昨年の台風15号・19号で甚大な被害を受け、さらに続けざまに今回の新型コロナウイルスの猛威。今どんな状況なのか。

NT_boso1_main
クジラをテーマに房総半島を横断する『房総・クジラの道』。

■ オープン? or クローズ?
入山禁止等を行なっているエリアはなく、歩くことが可能。

■ 現時点の状況
昨年の台風15号・19号による被害が大きく、年始まではいずれのエリアも倒木がひどかった。

その後、地元の山岳連盟やボランティアの人のおかげで、最低限の整備は完了し、歩くことが可能に。

ただしあくまで倒木の撤去がメインゆえ、歩く際に注意は必要。特に、伊予ヶ岳、富山、津辺野山は登山やハイキングに不慣れな人は行かないほうがいいとのこと。

■ 今後について
道の駅をはじめとした各種施設もオープンしているが、いずれも国や県の方針に基づいた新型コロナウイルス感染拡大防止の対策を行なっている。

また、台風15号・19号の爪痕がまだあるため、ハイキングをする際は、事前に下記関係機関やウェブサイトで情報収集を。

[最新情報・問い合わせ]
・南房総市商工観光部観光ブロモーション課 (電話もしくは問い合わせフォーム)
https://www.city.minamiboso.chiba.jp/soshiki/6-2-0-0-0_1.html

・鋸南町役場まちづくり推進室 (電話もしくは問い合わせフォーム)
https://www.town.kyonan.chiba.jp/soshiki/10/

P14000321
山、町はもちろん、浜辺歩きも楽しめるのがこのトレイルの魅力でもある。

今回の国内5トレイルに関しては、全行程にわたって閉鎖しているのは、北根室ランチウェイだけということで、思っていたよりもロングトレイルを歩くことができる、という印象だ。

しかしながら、各トレイルともにハイカーとして配慮すべきことはさまざまあり、新型コロナウイルス前のような旅の仕方は、できそうにない。

そもそもロング・ディスタンス・ハイキングは、街を山をつなぎながら旅をするスタイルが特徴だ。街に下りれば、宿やお店に立ち寄ることになるため、当然ながらマスクの着用や手洗いの徹底、3密の回避が必要になる。

状況も日々変わるため、行き先にかかわる4つ(都道府県 → 山岳団体 → 役所 or 観光協会 → 事業者)の方針も、事前にチェックしておくべきだろう。

今回トレイル沿いの方々に取材をする中で、地元の人はお客さんに来てほしいという思いがある反面、感染リスクに対する心配や不安も抱いていた。そんな方々の気持ちを理解した上で旅をすることが、今、ハイカーに求められることだと思う。

ロング・ディスタンス・ハイキングは、自己完結の旅ではなく、さまざまな人のおかげで成り立っている旅なのだから。

関連記事
NT_fujiko2_main
NIPPON TRAIL #04 富士講 〜【後編】高尾山から富士山へ

NT_boso1_main
NIPPON TRAIL #05 房総・クジラの道 〜【前編】房総半島横断に見出した旅のテーマ


WRITER
トレイルズ

トレイルズ

佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

>その他の記事を見る