TRAILS REPORT

IN THE TRAIL TODAY #08|PCTの北カリフォルニアを堪能できる1週間のセクションハイキング

2021.02.03
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話・写真:石丸隆司 取材・構成:TRAILS

What’s IN THE TRAIL TODAY? | トレイルで遊ぶことに魅せられたピュアなトレイルズたちの日常の中で発生した、 “些細でリアルなトレイルカルチャー” を発信するハンドメイドのコミュニケーションツール『ZINE – IN THE TRAIL TODAY』。そのZINEにまつわるストーリーを『IN THE TRAIL TODAY』という連載でお届けしていきます。

* * *

長旅をあきらめていた人にも、ロング・ディスタンス・ハイキングの世界への扉は開かれています。セクション・ハイキングという旅の視点を得ることによって、たくさんの人にロング・ディスタンス・ハイキングの旅に出かけてほしい。そんな強い想いから生まれたZINE#02『SECTION HIKING』と、ZINE#03『SECTION HIKING 2』

今回紹介するトレイルは、アメリカ三大トレイルのひとつパシフィック・クレスト・トレイル (PCT ※)。

2019年に、このPCTをスルーハイキングした石丸隆司 a.k.a. TAKASHI (以下、タカシ) が、お気に入りのセクションを教えてくれました。

タカシは帰国後、2020年2月の『LONG DISTANCE HIKERS DAY』にも遊びに来てくれて、僕たちTRAILS編集部crewもそこで彼と出会い、付き合いが始まりました。

※ PCT:Pacific Crest Trail (パシフィック・クレスト・トレイル)。メキシコ国境からカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州を経てカナダ国境まで、アメリカ西海岸を縦断する2,650mile (4,265㎞) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。

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新潟県出身で、幼い頃から父親に連れられて山に登っていた。

PCTといえば、南カリフォルニアの砂漠地帯や中央カリフォルニアのシエラネバダ、ワシントンの山岳エリアなどがハイライトとして紹介されがちですが、タカシが選んでくれたのは「北カリフォルニア」のセクション (163km) です。

湖、稜線、森と、バリエーションに富んだ自然が特徴で、しかも彼はこのセクションを歩いている時に、忘れることのできない強烈な体験をしたそうです。

そのセクションの魅力を、パーソナルなエピソードも踏まえて語ってもらいました。

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北カリフォルニアの雄大な自然。


セクションごとに、さまざまな顔を見せてくれるPCTに惹かれた。


—— まず、PCTを歩こうと思ったきっかけはなんだったの?

そもそもの始まりは、ジョン・ミューア・トレイル (JMT) を知ったことですね。もともと趣味で登山をやっていたのと、海外旅行が好きだったこともあって興味を抱いて。

調べているうちに、JMTの大半がPCTと重複していることや、アメリカのハイキングカルチャーのことを知るようになりました。

最初はJMTを歩きたいと考えていたのですが、ちょうど仕事を辞めることが決まったので、だったらPCTを歩こうと思ったんです。

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さまざまな景色や気候を味わうことができるPCT。美しい花も魅力のひとつ。

—— アメリカにはアパラチアン・トレイル (AT) やコンチネンタル・ディバイド・トレイル (CDT) をはじめ、たくさんトレイルがあるけど、他のトレイルには興味を抱かなかった?

もちろんチェックはしたのですが、PCTが一番バランスが良さそうだなと思って。灼熱の砂漠地帯もあれば、風光明媚なシエラもあるし、森や湖もたくんさんある。セクションごとにいろんな個性があって、いろんな顔があるのを見て、個人的にすごく楽しめそうな気がしたんです。

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砂漠地帯でのテント泊。


おすすめのセクションは、湖あり、稜線あり、森ありの北カリフォルニア・エリア。


—— 今回紹介してくれる北カリフォルニアのセクションは、どんな個性があるの?

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石丸くんが好きなポイントのひとつが、このレイク・アロハ。

僕がおすすめしたいのは、PCTのエコー・レイクからシエラ・シティの7日前後で歩けるセクションです。湖あり、稜線あり、森ありと、とにかくバリエーションに富んでいます。

まずエコー・レイクから歩きはじめると、次にレイク・アロハっていうすごく大きな湖が現れて。裸になって泳いでるハイカーもいましたね。

そのあと峠を越えて、スキーリゾートを通って、今度は開放感バツグンの稜線歩きがはじまる。さらには森の中を静かに歩くエリアもあって。アップダウンもシエラに比べたらぜんぜん大したことないので、すごく気持ちよく歩けるんです。

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遠くの山々まで見渡すことができる稜線歩きも、このセクションの特徴。

—— PCTのおすすめセクションっていうと、砂漠地帯やシエラネバダをよく耳にするけど、北カリフォルニアもすごく魅力的だね。

そうなんです。特にスルーハイカーの人にとってはシエラがひとつの目標だったりするので、それを越えると心身ともにホッとするというか、ひと段落という感じなんですよね。

それもあって、北カリフォルニアはあまり取り上げられないし、目立たないのですが、実はすごく魅力的なセクションなんです。

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北カリフォルニアの豊かな自然の中でのテント泊は、いくら繰り返しても飽きることなく、とても気持ちがよかった。


72歳の元PCTハイカーのトレイルエンジェルと出会った場所。


—— ちょうどこのセクションを歩いている時に、トレイルエンジェルと遭遇したらしいね。

このセクションが強く印象に残っている理由のひとつが、トレイルエンジェルとの出会いがあったからなんです。

エコー・レイクからサウスレイクタホの町に行く際、湖の手前の道路でヒッチハイクするのがセオリーなんですが、僕はそれを知らずに行きすぎてしまって。とあるストアに入ってバスが出てるかどうか聞いたら、無いと。

店の前に電話番号が掲載されていて、ここに電話すればトレイルエンジェルが迎えにきてくれると書いてあったのですが、英語力に自信がなかった僕にとっては、電話はあまりにもハードルが高くて。

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ヒッチハイクをしそびれて、たどり着いたキャンプグラウンド。

もうどうしたらいいんだ……と困っていたら、その瞬間「おまえ、スルーハイカーか?」と声をかけてきた人がいて。「オレはトレイルエンジェルだから、クルマで送ってやるよ」と言ってくれたんです。

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72歳の先輩PCTハイカーと偶然出会い、町まで送ってもらった。

当時72歳の彼は数年前にPCTをスルーハイクしていて、今は仕事をリタイアしてたまたまここに来ていたと。僕としてはちょっと運命的なものを感じたし、こんな無償の施しというか、助けてくれる人との出会いが、すごく印象に残っているんです。

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スルーハイク中も、この笛を持ち歩いていたらしい。


ゴール祝いは、ワンパウンドバーガー!


—— ゴール地点のシエラ・シティは、カフェと食料品店と郵便局くらいしかない、小さな田舎町だよね。

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このトレイルヘッドから、ロードを2.5kmほど歩くとシエラ・シティにたどり着く。

ハイカー御用達のハイカータウンです。スルーハイカーが集まる町でもあるので、ハイカーと交流するにもピッタリのスポットです。

しかもここのストアのハンバーガーがめちゃくちゃウマくて。ワンパウンドバーガーと言って、その名のとおりワンパウンド (450g) のパティのバーガーで、手をベッタベタにしながら食べました! これはPCTのなかでもトップクラスの美味しさのハンバーガーなので、歩き終えたらぜひ食べてほしいです。

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シエラ・シティと言えば、このワンパウンド・バーガー!


毎日が非日常なので、ずーっと楽しい。


—— タカシが思うセクションハイキングならではの魅力はなにかな? スルーハイクと比べてどう?

スルーハイクしていると、すべてが日常になっていっちゃうんですよね。最初驚いていた絶景も当たり前になってしまったり、景色が美しくても進まないといけないから、あまりのんびりしているわけにもいきません。

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このセクションを歩いていると前方に見える山がある。それがシエラ・ビューツだ。

でもセクションハイキングなら、当たり前になることなく非日常がつづくし、その都度、楽しむことに重きを置くことができるんです。だから、ずーっと楽しいと思います。

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PCTでは、こういう手書きのサインもよく目にする。


TRIP INFORMATION


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■トレイル名
パシフィック・クレスト・トレイル (PCT)
■セクション名
エコー・レイク 〜 シエラ・シティ
■歩く距離・日数
163km・7日前後
■旅全体の日数
10日前後
■WEBサイト
Pacific Crest Trail Association (https://www.pcta.org/)
■ベストシーズン
7月~9月頃 (夏〜初秋)
■パーミッション / ブッキング
デソレーション・ウィルダネスの区間 (タホ・リム・トレイルと重なる部分) はパーミットが必要。
USDA forest service (https://www.fs.usda.gov/recarea/ltbmu/recarea/?recid=11786)
TAHOE RIM TRAIL ASSOCIATION (https://tahoerimtrail.org/regulations-permits/)
■予算目安
18〜25万円 (総額)
[内訳]
エア代:13〜15万円程度
現地宿代:サウスレイクタホ 1泊4000円~、シエラ・シティ 教会裏 無料 (ドネーション)
現地交通費:2万円程度 (移動手段による)
その他(食費など):2万円程度
■アクセス方法
[空港] リノ・タホ国際空港(RNO):サンフランシスコもしくはロサンゼルス経由で13〜16時間
[空港から近くの町へ] サウスレイクタホまでシャトルバスで約1時間
[IN:町からトレイルへ] サウスレイクタホからヒッチハイク (14km)
[OUT:トレイルから町へ] シエラ・シティまで徒歩 (2.5km)
■宿泊(町)
モーテルなどの各種宿泊施設。
■宿泊(トレイル)
トレイル沿いのテント適地。
■補給方法(水、食料、燃料など)
サウスレイクタホにグロサリーストア (食料品店) をはじめとしたストアがあるので、食料や燃料等をすべてそろえることができる。水はトレイル沿いのクリークなどで補給可能。シエラ・シティにもカフェとグロサリーストアがある。


ZINE#03 SECTION HIKING 2


ジョン・ミューア・トレイル(JMT)やアメリカの3大ロングトレイルをはじめ、ニュージーランド、北欧ラップランド、ヒマラヤなど、世界中のロングトレイル8つを紹介。いずれのトレイルも1〜2週間のセクションハイキングをするという方法にフォーカスし、上記『TRIP INFORMATION』も掲載している。

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TRAILSの出版レーベル第二弾、『ZINE – IN THE TRAIL TODAY』をスタート!

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ZINE – IN THE TRAIL TODAY #02 | 長旅をあきらめていた人のための、2週間で行く『SECTION HIKING』world trail編をリリース!

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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