パックラフト・アディクト | #56 Packrafting Meet-up BENELUX 2022
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(English follows after this page.)
文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳・構成:TRAILS
TRAILSのアンバサダーであるコンスタンティンが、今回レポートしてくれるのは、ベネルクス (ベルギー、オランダ、ルクセンブルク) で初の開催となる、『ベネルクス・パックラフト・ミートアップ』。
ヨーロッパの2月開催ということで、寒い季節の開催にかかわらず、50人ものパックラフターが集まったそうだ。
以前にヨーロッパ全体での大規模なミートアップのレポートをお届けした (詳細はコチラ) 。今回はヨーロッパのローカルで、草の根的に立ち上げたミートアップだ。
ヨーロッパでは、他にもイギリス、イタリア、フィンランドでも、ローカルのパックラフトのイベントが開催されている。ヨーロッパのパックラフト・シーンの活況ぶりがうかがえる。
今回のベネルクスのミートアップは、一体どんなイベントだったのか、コンスタンティンのイベントレポートをお楽しみください。
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今回のミートアップで漕いだ川は、急流が少なく緩やかで、メロウに楽しむことができた。
ベネルクスにおける、記念すべき第1回目のミートアップ。
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「ベネルクス・パックラフティング・ミートアップ」の告知サイト。友人パックラフターのレミが教えてくれた。 (https://fagusoutdoor.be/beneluxpackraftmeetup/)
今年の1月末、オランダのパックラフティングのグループチャットで、パックラフティング仲間のレミが、「第1回目のベネルクス・パックラフト・ミートアップ」に誰か行く予定があるかと質問をなげました。
「え?なにそれ?いつ、どこで開催するの?」と私がレスをしたら、彼はベルギー人のパックラフター、マティアスのウェブサイトのリンクを送ってくれました。
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ミートアップの主催者であるマティアス。実は、過去に別のミートアップで会ったことがあった。
数年前にスロベニアで行なわれたヨーロッパ・パックラフティング・ミートアアップで、私もマティアスに会ったことがありました。今回のイベントは、SNS上で目にしたことはあったのですが、なぜかちゃんと意識したことがなく、具体的にどのようなイベントなのかもよく分かりませんでした。送ってくれたリンクを見て、概要をつかむことができました。
ウェブサイトによると、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク (ベネルクス) で大きくなっているパックラフティング・コミュニティをさらに盛り上げることを目的にした、ベネルクスで初のパックラフティング・ミートアップ、ということでした。
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ベネルクス (ベルギー、オランダ、ルクセンブルク) をはじめ、たくさんのパックラフターが集結。
ベルギーのアルデンヌ地方での開催予定で、2022年2月の終わり (2月25〜27日) に予定されていました。この時期はまだ冬ですが、川には十分な水量があり、公式に川を漕ぐのが許されている時期でもあります (ベルギーでは川を漕ぐのに、非常に厳格なルールがあるのです)。
私は、このようなミートアップのアイデアは好きです。ただ1回目の回だったので不安もありました。今まで参加したミートアップでも、オランダやベルギーのパックラフターと一緒になったことはありました。今回参加したベルギー人は、みんなオランダ語を話せる人たちだったので、その点は安心しました。
金曜日の夜に現地入りして、キャンプ場に宿泊。
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金・土・日の3日間の開催だったが、仕事の都合もあり多く人は金曜夜にキャンプ場に集まってきた。
私は機会さえあれば、このようなミートアップには参加するようにしていました。ただ、この2年間のコロナの教訓から、あまり前もって計画を立てないようにしていました。今回、幸運にもそのチャンスが巡ってきたのです。
その週は春休みで仕事がないだけでなく、国境も開いていて、余計な規制もありません。しかも、2月25日 (金) の朝、私はキプロスへの家族旅行から飛行機で帰ってくるので、オランダの南部 (ベルギーとの国境に近い) にいるはずでした。そのため、同じく南部に住むレミと一緒に旅をする約束をしたのです。
ミートアップは、金曜日から日曜日までの3日間でしたが、多くの人は僕とレミのように金曜日が「キャンプ場到着日」でした。
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夜は特に寒かったこともあり、車中泊する人がほとんどだった。
ポン・ド・ベルジューム・キャンプ場が私たちのベースキャンプ地となり、そのあとの2日間、ここがパックラフティングの拠点となりました。
このキャンプ場はウルト・オキシダンタル川 (ウルト川西部) のほとりにあり、乾燥室があるため、実は多くのパドラーがよく利用している場所なのです。テント場のほかに、小さな木造の小屋やキャンピングカー用のエリアもありました。
私たちが到着したとき、テントを張っていたのはもう1人だけでした。キャンピングカーや小屋のほうが人気があるようでした (土曜日にはさらに数人のテント泊の人が来ました)。
それもそのはず、日中は暖かいですが、この3日間の夜の気温は氷点下まで下がる予報だったのです。
しかも、土曜日から日曜日にかけての夜はもっとも冷え込み、−5℃まで下がりました (車の中の水筒が凍っていたと言う人もいました)。でも私は、まったく問題ありませんでした。というのも、予備の掛け布団とビビィを持っていたので、とても暖かいスリーピングシステムを作ることができたからです。
寒い季節にもかかわらず、50人ものパックラフターが集結。
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最初は焚き火のまわりに人が集まったものの、あまりの寒さに屋内に行く人が続出。
このミートアップは約50人が参加していました。しかし、夜の冷え込みはかなり厳しく、さすがに夜の外の集まりには参加を見合わせた人もいました。これは、参加者同士の交流においても影響がありました。マティアスが中央で焚き火をしたのですが、そのそばに座るには少し寒すぎて、多くの人がキャンプ場のバーに移動し、暖かく快適な環境でベルギービールを飲みながら会話を楽しんでいました。
ミートアップに参加した人たちは、ほとんどがベルギー人 (オランダ語とフランス語を話す人たち) で、他にオランダ人、ドイツ人、そして私の記憶違いでなければ、フランス人も1人か2人はいました (ルクセンブルクの人は誰もいませんでした)。
何人かは以前、ヨーロッパのミートアップ (スロベニアとオーストリアで開催) で会ったことのある人たちでしたが、ほとんどは初対面。そのうちの何人かは、実はパックラフトも初めてとのことでした。なかには、この2年間で、コロナがきっかけでパックラフトを始めたという人もいました。
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中央が、ドイツのラフトボートブランドであるカレント・ラフト社のティム。
一緒に漕いだ新しい仲間のひとりは、ドイツから来たカレント・ラフト社のオーナーである、ティムでした。この日、彼は会社を立ち上げた経緯を話してくれました。もともと彼はロシアのタイムトライアル社のスプートニクというパックラフトを持っていたのですが、あまり満足していなかったそうです。
また、市販されているものでも、自分が欲しいと思うものが見つからなかったとのこと。そこで、中国のメーカー数社とコンタクトをとり、自分のスペックにあったパックラフトをいくつか注文してみたそうです。
その結果、希望通りのものを見つけることができたのです。しかも、eBayに出品したところ、あっという間に売り切れてしまいました。そこで彼は、自分のブランドを立ち上げることを思いつき、現在では数種類のモデルをラインナップしています。そのうちの1つ (プロトタイプ) を日曜日に試乗させてもらいました。
川を漕ぐことがメインコンテンツの、まさにパックラフティング・ミートアップだった。
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イベント会場が川沿いのキャンプ場だったため、キャンプ場から漕ぎ出すことができた。
プログラムについて話すと、興味に応じてグループにわかれて一緒にパドリングすること以外には特にありませんでした。この点において、まさにミートアップでした。
唯一、土曜日の朝、会場の中央で最初のミーティングをしたとき、ベルギーのラフティング & パックラフティング協会を立ち上げようとしている代表者が、スピーチを行ないました。
彼はフランス語で話しましたが、私はフランス語がわからず、通訳もなかったので、内容は部分的にしかわかりませんでした。
私が理解したところでは、あらたに協会を設立して、川の利用に関して、ラフターやパックラフターがカヤッカー (彼らは独自のロビー活動のための協会を持っている) と同じ権利を得られるようにするためだそうだ。
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ベルギーでは、カヤックをする上でさまざまなルールが設けられている。こういった看板も特徴のひとつ。
ベルギーでは、何を、誰が、いつ漕ぐかに関して、多くのルールがあることは前述しました。川には、より難しく、より興味深い部分があるのですが、そこは公式ルールでは、カヤックしかアクセスできないようになっているのです。
参加者のなかには、この新しい協会を作ることに賛成している人もいましたが、全員が賛成しているわけではありませんでした。
後日、このイベントで一緒に漕いだ人と話したところ、彼は、まったく別の協会を作るより、カヤック協会にジョインしたほうが良いと言っていました。そして、「新しいけれど、似たようなものを作って、ただ認知されるだけでは意味がない。力を合わせて協力すべきだ」と彼は説明してくれました。
土曜日に下ったのは、ベルギーのウルト・オキシダンタル川。
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ベネルクス初のパックラフト・ミートアップということもあり、ちょっとテンション高めのコンスタンティン。
しかし、私たちがここに来た目的は、一緒にパックラフティングをすることです。もちろん、土曜日と日曜日の両日ともにそれを実行しました。
初日は、キャンプ場からニスラモン湖まで、ウルト・オキシダンタル川を漕ぐことにしました。この川は、高さ16mのダムによってウルト・オリエンタル (ウルト川東部) と合流する地点に作られています。
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1日目の行程は、ミートアップ会場のキャンプ場からニスラモン湖までの、約16km。
漕いで下って車で帰る人と、ハイキングで帰る人とに大きく分かれました。怠け者の私は、車のグループ (9人でみんな経験レベルが異なる) に入りました。というのも、私たちの車は湖の一番奥、ダムの近くに停まっていて、そこまで行くには静水エリアを4km以上漕がなければならなかったからです。ただ、向かい風がほとんどないのが幸いでした。
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川岸には木の枝がたくさんあり、それを避けながら漕いでいく。
川自体 (約16km) はそれほど難しくなく、ときおり堰や小さな急流があるほかは、ほとんどの「楽しみ」といえば、木に引っかからないように川の中央に留まることでした。ところが、参加者の女性が、木に引っかかり、転覆してしまったのです。これも、レスキュー技術を練習する、よい機会にはなりました。レミはスローロープで見事に救出し、私は彼女のパドルとパックラフトをキャッチしました。
日曜日に下ったのは、ルクセンブルクのザウアー川。
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ベルギーとルクセンブルクの国境の川でもある、ザウアー川。
2日目 (日曜日) は、漕ぐ人次第で、豊富なバリエーションがありました。ある人はウルテ川上流 (ニスラモンダムより下の部分) を、またある人はウルテ川東部を漕ぐことにしました。
ティムとレミと私のグループはザウアー川 (フランス語でラ・スール) を漕ぎました。ザウアー川はベルギーから始まり、私たちが出発したマルテランゲからルクセンブルグとの国境になっている川です。国境の川に興奮する私としては、とても興味深いものでした (国境の川については、私の過去の記事をご覧ください)。
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ベルギーのマルテランゲをスタートして、ルクセンブルクに入り、国境沿いを16kmちょっと漕いだ。
この川は、私が住んでいるところからはかなり遠いので、これまで漕ぐ機会がありませんでした。聞くところによると、漕ぐことが許可されるタイミングも少ないそうです (事実、前日は禁止されていました)。最後に、ルクセンブルクで漕ぐことができて、まさにベネルクスのミートアップとなりました。
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国境の川は、2国間を行ったり来たりするのが楽しい。
全部で16km強 (うち13kmは国境) のザウアー川を漕ぎました。私が見た印象では、これはもう少し複雑な川でしたが、思ったほどありませんでした。
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瀬でフリップして、スローロープで救助されるシーンもあった。
それでも3人が転覆しました。1回は低く垂れ下がった木に引っかかって、3回は古い水車の堰を下って、同じ人が2回フリップしました。
他の2人はティムと私でした。私は2回堰を通りましたが、1回目は舟の位置どりを間違えて、泳ぐことになってしまいました。2回目はうまくいきました。
一方ティムは、2回目で、ブレイス (※1) しようとしたときにパドルが折れてしまい、ひっくり返ってしまいました。幸いなことに、レミがパックラフトに予備のパドルを入れていた (レミはまたしても窮地を救いました)。
※1 バランスを崩した際、パドルで水面を押さえつけて艇を立てなおすテクニック。
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ティムは、ブレイスした際にパドルを折ってしまった。
今回のミートアップは、夜は寒く、プログラムも少なく、私はそのすべてを理解することも、すべての参加者を知ることもできませんでしたが、全体的に見たら成功だったと思います。
新しい人と出会い、新しいパックラフト仲間を作り、新しいパックラフトを試し、2つの新しい川を漕ぎ、泳ぐこともできました。これが楽しい週末でなかったわけがありません。
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ベルギー南部を流れるウルト・オキシダンタル川。
今回のベネルクス・ミートアップは、ヨーロッパの各エリアでパックラフト・シーンが盛り上がっているのが、伝わってくるイベントレポートであった。
そのイベントのなかに、新興のガレージメーカーのようなパックラフトメーカーが顔を出しているのも興味深い。
春になり暖かくなってきたので、そろそろ僕たちもみんなでリバートリップに出かけたい。
TRAILS AMBASSADOR / コンスタンティン・グリドネフスキー
コンスタンティン・グリドネフスキーは、ヨーロッパを拠点に世界各国の川を旅しまくっているパックラフター。パックラフトによる旅を中心に、自らの旅やアクティビティの情報を発信している。GoPro Heroのエキスパートでもあり、川旅では毎回、躍動感あふれる映像を撮影。これほどまでにパックラフトにハマり、そして実際に世界中の川を旅している彼は、パックラフターとして稀有な存在だ。パックラフトというまだ新しいジャンルのカルチャーを牽引してくれる一人と言えるだろう。
(English follows after this page)
(英語の原文は次ページに掲載しています)
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