TRAILS REPORT

PLAY!出社前に遊ぼう # 06 | TRAILS × 篠健司・佐々木拓史(patagonia) 地球を救うためにできること

2020.03.13
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文:根津貴央 取材・構成・写真:TRAILS

What’s PLAY? | 平日にトレイルで遊ぶオトナをもっと増やすための連載企画。オトナになると、仕事が忙くて遊ぶ時間がない、とつい言ってしまいがち。でも工夫次第で時間はつくれるもの。いつか仕事が落ち着いたら遊ぼう、なんて思っていたら、いつまでたっても遊べない。遊ぶなら今。『PLAY!』のスローガンは『Now or Never.』。今がチャンス!今しかない!今でしょ!だ。

この連載では、毎回、平日出社前(ときどき退社後)にTRAILS編集部crewがその時遊びたい人に、その時遊びたいことをオーダーして、ただただ一緒に遊ぶ模様をお届けします。一番大事なルールは遅刻せずに出勤すること。

* * *

第6回目のゲストは、この人。

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篠健司さん。1988年に入社。現在は環境・社会部門のブランド・レスポンシビリティ・マネージャー。一般社団法人コンサベーション・アライアンス・ジャパン監事を務めるほか、公益社団法人日本自然保護協会の理事でもある。

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佐々木拓史さん。マーケティング担当。入社前も含め、アウトドアにまつわる仕事には20年以上携わっている。

パタゴニアの篠健司さんと佐々木拓史さんだ。

篠さんは、パタゴニア日本支社における「環境プログラムの先生」的な方! 現在は、企業のサステナビリティを手がけている。トレイルランナーの石川弘樹さんとも親しく、信越五岳、斑尾トレイルレースの運営にも携わっている。

その篠さんを紹介してくれたのが、マーケティング担当の佐々木さん。佐々木さんは、TRAILS編集部crewの根津と一緒に国内外を旅したりしている間柄で、TRAILSの記事にも何度か登場してもらっている。

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早朝に、東戸塚にあるパタゴニア日本支社のエントランスに到着。当然、パタゴニアも始業前。

なぜ今回パタゴニアに遊びにいかせてもらうことになったのか。それは他でもない、環境保護に関するTRAILS的なスタンスをアップデートするためだ。

TRAILS編集長の佐井は「トレイルで遊んだり旅したりする人が増えれば、おのずと自分たちの遊び場である自然への愛情が増し、環境保護に関心を持つ人も増えるだろう。それによって少なからず地球環境が良い方向にシフトするはずだ。つまり、大自然の中での遊びや旅の啓蒙こそがTRAILSらしい環境保護へのアクションだ」というスタンスでトレイルカルチャーを発信するメディアを立ち上げた。あくまで楽しむことが前提だ。

ところが、昨今の急激な気候変動を目の当たりにし、もはや悠長なことは言ってられないと思った。メディアとしてのスタンスをアップデートし具体的なアクションを起こさなくてはいけない、そして読者の方々にも促していかなくてはならない、そんな危機感を抱いていた。

そこでアクションを起こす前に、まず話を聞きたいと思ったのがパタゴニアだった。そもそも佐井が学生時代に、“ビジネスと環境保護の共存を目指す” という強烈なメッセージをパタゴニアのプロダクトから受け取ったという原体験がきっかけだった。

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取材時に見せてもらった、完成したばかりの「パタゴニア 環境的・社会的イニシアチブ2018」最新版(右)。これは、パタゴニアがグローバルでこの1年間に実施した環境および社会のための活動をまとめた報告書。

パタゴニアは、前身のシュイナード・イクイップメントの時代に、自分たちが製造しているピトンが岩壁を大きく傷つけていることにショックを受け、ピトンを使用しないクリーンクライミングを提唱した。1972年のことだ。

そこから、パタゴニアはミッション・ステートメントにもある通り、ビジネスを手段とした環境保護の道を歩みはじめた。

1985年には環境活動への寄付プログラムを立ち上げ、1993年にはペットボトルからリサイクル・ポリエステルを製造することに着手し、1996年にはすべてのコットン製品をオーガニックコットンに切り替えるなど、業界のトレンドとは関係なく、自らの信念のもと、どこよりも先駆けて環境問題に対するイノベーティブな取り組みを実現させてきた。サステナブルファッションという言葉がトレンド入りするはるか昔にだ。

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篠さんに環境問題についてレクチャーを受ける。やさしい語り口で、とてもわかりやすく説明してくれた。

そんなパタゴニアの日本支社において、環境部門のマネージャーとして多方面で活動しているのが篠さん。その篠さんのレクチャーを受けに、僕たちは東戸塚のオフィスに訪れた。

とはいえ、このPLAY!の企画は、出社前に遊ぶというのがテーマ。だから、楽しく学ぶべく、みんなでドーナツ片手に、コーヒーを飲みながら篠さんの話を聞いた。

篠さんいわく、「気候変動はこれまでクライメイト・チェンジと言われてきたけど、今の状況はもはやチェンジ、変化というよりは、クライシス、緊急事態、あるいは崩壊、ブレイク・ダウンなんじゃないかと言われているんです」とのこと。

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たんに話を聞くだけではなく、気になったところはどんどん質問。佐々木さんも篠さんに鋭い質問をしたりして、朝からいい感じの盛り上がり。

さまざまなデータや話を聞かせてもらったのだが、印象的なものをいくつか紹介したい。

まずは、「プラネタリー・バウンダリー」という概念についてで、これは「地球の限界」を示すもの。

経済発展や技術開発により、さまざまなカテゴリーで不可逆性(すでに限界を超えて回復不可能な状態)が進行している。

「気候変動」「生物多様性」「土地利用の変化」「生物地球化学的な循環」は、すでに限界を超えていると指摘されている。

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人間が生きつづけるための地球の環境容量を、科学的な根拠にもとづきに示したもの。

地球の表面温度は、2100年には今から4度程度上昇する。

現在のペースで二酸化炭素が排出されつづけた場合、そんなシナリオが現実的になることもわかってきている。

もはや気温「温暖化」ではなく、「高温化」が進んでいるというのだ。

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気温上昇により、海面上昇や多くの種の絶滅が予想される。日本では熱帯性の伝染病の蔓延が予想されている。

ちなみに地球の大気中の二酸化炭素濃度は、過去80万年でもっとも高い数値とのこと。

二酸化炭素排出量は、1950年代をターニングポイントに加速度的に増えつづけている。1950年代以降、地球規模で近代化が加速度的に進み、人口やGDPをはじめ、ダムの数、漁獲量、水の使用量など、さまざまなジャンルの数値が軒並み急増しているのだ。

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現代の社会、経済の形が、CO2排出量を爆発的に増やしていることが一目瞭然。

じゃあ、いち個人として、トレイルで遊ぶ人として、ハイカーとして、具体的になにができるのか? 篠さんに聞いてみた。

すると、パタゴニアのオフィス内でも、実際にいろいろ取り組んでいるというので、僕たちは社内見学にくりだした。

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パタゴニア日本支社の社員の共有スペース。まるで社会科見学のよう。

「Zero Waste Month」(ゴミをゼロにしよう)

僕たちが訪れたときに、ちょうどこの取り組みが、パタゴニア社員のあいだで実施されているときだった。環境負荷の少ないリユーザブル(捨てずに繰り返し使える)なものを選び、ペットボトルや再利用しづらいパッケージに入っているものを、極力利用しないようにする取り組みだ。

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ゴミをゼロにする「ゼロ・ウェイスト」の取り組み。

「Zero Waste」の他にも、リサイクル、リユースできるものをきちんと分別するゴミ箱や、社員同士で利用できるリサイクルBOXなど、オフィスになかにはいいろいろな取り組みがあった。

パタゴニアで働く社員一人ひとりが、細かな日常的なところからも環境問題へのアクションを起こしているのだ。

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ゴミの分別が、ここまで細分化されていることに驚かされた。

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リサイクル回収ボックスにくわえて、譲りたい人と欲しい人をマッチングさせるテイクフリーボックスも設置。たしかにこれは便利。

なるほど、自分たちでも実践できそうなこともいろいろある!

ではオフィス以外に、僕たち個人が日常でできることはありますか? 篠さんに聞いてみた。

・なるべくペットボトルを買わない。
・日常の移動になるべくクルマを使わない。

そういったことは、個人でもできる取り組みだと紹介してくれた。すると隣にいた佐々木さんが、「篠さんは “篠グッズ” を持ってるんですよ」と言うので、それを見せてもらった。

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お気に入りのマイ箸を熱く語る篠さん。つねに2セット持ち歩いていて、一緒にご飯を食べる人も使えるように、という配慮までしているのが篠さんらしい。

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左上から時計回りに、ミックスナッツを入れたシリコンパッケージ、カトラリーケース、木製の箸(2種類)、ステンレス製ストロー、ステンレス製タピオカ用ストロー、オーガニックコットンのハンカチ。

篠さんいわく「旅をする際に水分の補給は当然あるじゃないですか。でも、事前にそのエリアの水源を調べておけば、ペットボトルを買わずにすむんです。自分はよく家の近所を走ったりするんですけど、どこの公園で水が汲めるかを把握しているんです。もう10年くらいペットボトルは買ってないですね」とのこと。

佐々木さんも、もともとペットボトルはあまり買わない派だったが、1年前に完全に断つことを決め、この1年はペットボトルを買っておらず、家族全員でも取り組みはじめている。

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刺激を受けまくりの約2時間。なかでも編集部crew全員一致でシビれてしまったのが、随所に見られる “本気度と実行力” だ。これだけ環境問題に取り組んできたパタゴニアだが、つねに地球環境の変化を把握し、危機意識を高め、自分たちがすべきことをアップデートしつづけている。

それは2018年12月に一新されたミッション・ステートメント「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」にも現れている。「地球を救う」という言葉はセンセーショナルだ。

今回受け取った最大のメッセージであり、TRAILSとしてアップデートした環境保護へのスタンスは「本気で考えよう、まずやろう」ということ。ではTRAILSとして具体的になにをするのか? それを決めなければ今回訪れた意味がない。

TRAILSとして、まずは行動変容を生みだす2つのアクションを起こすことにした。

① WEB MAGAZINE
毎月、環境保護に関する記事を発信する

② TRAILS INNOVATION GARAGE
SCHOOLで、環境保護に関する体験コンテンツをつくる

そして今後、トレイルでの遊びや旅で使うものを、どのようにリユース可能なものに切り替えていけるかを考え、実践していく。たとえば、飲料を入れるボトルや行動食のパッケージ、カトラリーなど。

楽しみながら、小さなアクションをどんどん積み重ねていきたい。

【さて、次はだれとどこでなにをするのか? 次回のPLAY!もお楽しみに】

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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