UL MAKER MOVEMENT

take less. do more. 〜 ウルトラライトとMAKE YOUR OWN GEAR by グレン・ヴァン・ペスキ | #09 グレート・ディバイドでのバイクパッキングのために設計したMYOGフレームバッグ。

2026.02.13
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(English follows after this page.)
文・写真:グレン・ヴァン・ぺスキ 訳・構成:TRAILS

Gossamer Gearのファウンダーであり、ウルトラライト (UL ※1)、MAKE YOUR OWN GEAR (MYOG)、およびULガレージメーカー (※2) のゴッドファーザーである、グレン・ヴァン・ペスキ (以下、グレン)。そのグレンによる「ウルトラライト (UL) × MYOG」に関する連載の第9回。

なぜ「ウルトラライト × MYOG」か?両者は分かちがたく結びついており、その本質を理解することが、現在のハイカーやMYOGer、ガレージメーカーが共有すべき新たな知恵になるはずだからだ。(本連載に込めたコンセプトは、第1回の記事を参照。記事はコチラ

グレンは、ウルトラライトとMYOGに関する「リビング・ディクショナリー (生き字引) 」の筆頭であり、その本質を伝える語り手として、グレン以上の人はいない。それは、いち早くULガレージメーカーを立ち上げた先駆性、プロダクトや思想の革新性や独自性において、他と一線を画しているためである。

今回の第9回は、グレンが仲間のマイクとともに出かけたグレート・ディバイド・マウンテンバイク・ルート (GDMBR ※3) でのバイクパッキングの旅の様子と、この旅のためにグレンがMYOGしたフレームバッグについての話。

このフレームバッグは、現在のグレンが自分の旅のためにMYOGしているギアであり、プロダクト化されているものでもない。純粋にパーソナルな旅のための、パーソナルなMYOGだ。

ぜひ現在進行形の、グレンのMYOGに対するアティチュードを楽しんでもらいたい。

※1 ウルトラライト (UL): ここではウルトラライト・ハイキング (Ultralight Hiking) を指す。

※2 ガレージメーカー: 英語ではCottage manufactures (コテージ・マニュファクチュアラー) とも呼ばれる。

※3 グレート・ディバイド・マウンテンバイク・ルート (GDMBR): 北はカナダのアルバータ州・バンフから、南はアメリカのニューメキシコ州・アンテロープ・ウェルスまたはコロンバスまで、総延長4455kmの自転車用ダートツーリングルート。バイクパッキング・ムーヴメントの中心地であり、バイクパッカー憧れの地。

ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT

TRAILSのプロダクト「ULTRALIGHT CLASSICシリーズ」や「MYOGer NIGHT」に込めた、僕たちが熱狂した実験的でイノベイティブなウルトラライト (UL)というカルチャー。それは2000年代以降に起きた、トレイルカルチャーにおける「メーカームーブメント (MAKER MOVEMET ※4) 」であり、僕たちハイカーに道具の進化にとどまらない知恵をも与えてくれた。新たに「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT」を合言葉に、シーンを盛り上げるブースターのひとつとして記事シリーズをお届けする。

※4 メーカームーブメント (MAKER MOVEMET): 2000年代以降、インターネットや新しいテクノロジーの普及とともに、ツールの民主化が広がり、製造業全般に世界中で起きたイノベイティブな潮流。これをクリス・アンダーソン (元・WIRED誌の編集長) が自身の著書『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』で、「メーカーズムーブメント (メイカーズムーブメント)」という概念で定義した。

グレート・ディバイド・マウンテンバイク・ルート (GDMBR)でのバイクパッキング。


GDMBRでのバイクパッキングの旅。

その日は私の誕生日で、私はマイクと一緒にモンタナ州ワイズ・リバーでバースデー・ブランチをする約束をしていて、楽しみにしていました。

マイクは、オレゴン州ベンドにある私の自宅の、道を挟んだ向かいに住んでいる友人です。私の息子のブライアンは、マイクのことを「お父さんの一番の冒険仲間」と呼んでいます。

数年前のこと。私たちが家の前の道路で話をしていたときに、マイクが自転車で長い旅をしたいと言い出したのです。自転車でグレート・ディバイドに行こう、と。

グレート・ディバイド・マウンテンバイク・ルート (GDMBR) は、カナダのバンフからニューメキシコ州のアンテロープ・ウェルズまで、主にグラベルロードやダートロードを約5,000キロメートル走るルートです。

私たちは、バンフからワイオミング州のジャクソンまでGDMBRに沿って走る計画を立てました。当初は2020年に計画していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響と、私がトレーニングライド中に転倒したことで、旅は2021年に延期され、出発点はカナダ国境になりました。


冒険仲間のマイクとともに (写真左がマイク、右が筆者)。

というわけで、旅に出て17日目、私たちはワイズ・リバーにいました。誕生日の朝食にありつこうと、ワイズ・リバー・クラブへ向かったのです。

すると、入り口のドアに、すっかり見慣れてしまった張り紙が貼られているのが目に入りました。コロナ禍によるスタッフ不足のため、営業時間を短縮しているという案内でした。残念ながら、そのせいで私の誕生日は、そのお店は営業していませんでした。

自転車旅行中に誕生日を迎えたのは、1976年の高校卒業した後に、アメリカ大陸6,700キロを横断したとき以来です (※この当時のことは「#02 MYOGのはじまり」に詳細あり。記事はコチラ。) 。


1976年、自転車でアメリカ横断した旅はメディアにも取り上げられた (一番左がグレン) 。

それから数十年、私は自転車の旅よりもハイキングに力を入れていました。そんななか、マイクがバイクパッキングの旅を提案してきたことで、私は新たにチャレンジしなくてはいけない課題に直面しました。バイクパッキングで野営することに関してはかなり自信がありましたが、キャンプ地間の900マイル以上を毎日移動するのは、全く未知の世界でした。

ULハイキングで磨いたスキルで、バイクパッキングのパッキングを試行錯誤する。


ウィルダネスを自転車で走り抜けるバイクパッキングの旅。

当然のことながら、装備の重量は最小限に抑えたいと思っていました。人生全般に対してもそうですが、とりわけ自然のなかでの旅において、私はまずそう考える人間なのです。

自転車の場合、車輪とギアのおかげで、ハイキングのように背中に乗った重みが、一歩ごとにのしかかる負担はかかりません。

しかし、グレート・ディバイドのような旅では話は別です。ルートの約15%が上り坂で、20%は下り坂です。また岩や根の露出した、深い轍のあるシングルトラックもあります。このようなルートでは、やはり軽量であることに越したことはありません。特に、荷物を満載した自転車を、倒木の上に持ち上げるような場合にはなおさらです。

ハイキングであれば、必要なものは200gの「Murmur (※5) 」ひとつにすべて収まるのに、バイクパッキングだと装備を運ぶのにいくつものバッグが必要になり、また重量もかさみます。

ラックやパニアバッグを付けて重くなることは避けたかったし、ペダルを漕ぎながらバックパックを背負うのも嫌でした。

最終的に、私は以下のバッグを自転車に取り付けることにしました。

・MYOGフレームバッグ
・SALSA / コックピットバッグ
・SALSA / EXP ANYTHING トップロード・ハンドルバーバッグ
・SALSA / EXP ANYTHING フロントポーチ
・Revelate Designs / Terrapin 16L シートバッグ
・Revelate Designs / Mountain Feedbag ×2 (ハンドルバーステム用)
・Revelate Designs / Joey Bag (ダウンチューブ用)

クレードル (※6) と取り付け金具を含めて、これらのバッグだけでなんと2kgを超えていました。私が普段ハイキングをするときは、バッグだけでなくギアも含めたベースウェイト (※7) でも、この重量以下で済みます。

私は長年にわたり、ハイキングでのMurmurの中身の整理術を磨き上げてきました。しかし、バイクパッキングのギア配置を最適化するのはもっと複雑で、次のようなことを考慮する必要がありました。

・重量:重量を抑えて安定性を高めるとともに、ハンドル操作に影響が出ないようハンドルバーにかかる重量を減らす。

・容量:バッグの容量には限りがある。

・アクセス性:荷物を出し入れする頻度、出し入れの速さ、出し入れするタイミング。


自作フレームバッグをはじめとしたパッキングシステム。

試行錯誤の末、旅全体を通してうまく機能するシステムを完成させました。

まずハンドルバーのロールバッグには寝袋を入れ、余ったスペースにフリーズドライ食を数個納めました。ハンドルバーのイージーアクセスバッグには、大型のペグ(スコップとして使用)、衛生キット、InReach、紙のマップ、小物バッグを収納しました。小さなコックピットバッグには、自転車のリペアキットと浄水器を入れました。

フードバッグには、フリップトップ付きの1リットルボトルを2本。

シートバッグには、調理キット、自転車のリペア・掃除用品、最大5日分の食料、フレームバッグに入っていないウェアを入れました。

ダウンチューブの下側のJoeyバッグには、170gのプロトタイプテント(後のGossamer Gear / Whisperになるテント ※その開発ストーリーの詳細はコチラ。)、ポリクライオ (※8) のグランドシート、ペグ類を収めていました。

フレームバッグには、複数のコンパートメントがあり、その日に必要なレインギアやその他のウェア、テントポール、チョップステーク (※9)、ファーストエイドキット、2リットル以上のプラティパス(予備の給水用で、満杯になることはほぼありません)、自転車の鍵を収納していました。

※5 Murmur: グレンがこよなく愛用する、ULを追求したバックパック。2009年の発売以来、仕様変更を重ねながらGossamer Gearのラインナップに残り続ける。

※6 クレードル: 自転車に取り付けるバッグを保持するための固定具。

※7 ベースウェイト: 水、食料、燃料などの消費するものを除いたバックパックの重量。背負う荷物の重量を測るための基準であるため、ハイキング時に着用するウェアやシューズ等はベースウエイトに含まない。また消費するものを含めたバックパックの重量を、パックウエイトと呼ぶ。

※8 ポリクライオ: ULハイキングにおいて、グラウンドシートやタープの素材として使われる、超軽量なポリオレフィン・フィルム。もともとは窓の断熱材として使われる素材。非常に薄いにもかかわらず、高い耐摩耗性と耐水性を持ち、穴が開きにくいという特性がある。

※9 チョップステーク: チョップスティック (箸) とステーク (ペグ) を兼用したギア。ULの重要な考え方の一つである「マルチユース」の、ある意味究極の体現。

自分にとって、理想のフレームバッグをMYOGすることに。


GDMBRのバイクパッキングで使ったフレームバッグ。

効率的なバイクパッキングのセットアップを実現できたのは、フレームバッグを自分で設計してMYOGしたからです。

自転車のフレームはメーカーやモデルによって形状が違うので、市販のプロダクトではサイズがぴったり合いません。そうすると容量と使い勝手も損なわれてしまいます。ですが、私はMYOGしたので、自分の自転車のメイントライアングルにぴったり収まるフレームバッグを作ることはできました。

フレームバッグは、荷物をしっかり収納できる幅を確保しつつ、側面が膨らんで脚に擦れてペダリングの妨げにならないように設計しました。市販のプロダクトでは、この擦れに対して、厚くて硬い生地を使うことで対応することがよくあります。

しかしフレームバッグはそれほど摩耗にさらされるものではないので、重量は最小限に抑えたいと考えました。そこで硬くて薄い軽量なプラスチックパネルを、側面に配置する実験もしてみたのですが、構造上問題があり、うまくいきませんでした。パネルを固定するために生地を二重にする必要も生じてしまいました。


フレームバッグをMYOGするための設計メモ。

フレームバックの容量を最大限活用するには、1つの大きなコンパートメントにすればよいはずです。しかしそれだと、いくつか問題がありました。

ひとつは、荷物がその大きなコンパートメントの中で偏り、側面が膨らんでしまうこと。もうひとつは、必要なものが大きなコンパートメントの底に沈んでしまい、取り出しにくくなることでした。

GDMBRは、セクションによって大量の水を運ばなければならないところもあれば、水が豊富にあるところもあります。なので、運ぶ水の容量に合わせて、柔軟に対応できる設計にする必要がありました。

水は重いので、たくさんの水をキャリーしなければならない時は、バイクの低い位置に積みます。その方が荒れたダートロードや障害物を乗り越えるときに安定するので。


フレームバッグ設計のためのスケッチ。

2019年2月21日に描いたスケッチには、当時の自分の考えや疑問が残されています。

2つの側面の間に仕切りを作れば、バッグが膨らんでペダリングの邪魔になるのを防げると考えました。また、片側をベルクロで固定する構造にすれば、一時的にバッグの全容量を使いたい場合に、仕切りをバッグ内でフラットに寝かせることができるとも考えました。

そして最終的な設計は、次のようなものになりました。


フレームバッグの構造を描いたスケッチ。

・(上の図にあるように) 縦方向の小さい仕切りと、ダウンチューブに平行な大きい仕切りにより、3つのコンパートメントに分けて荷物を整理できる構造に。1つの大きなコンパートメントとしても使用できるように、どちらの仕切りも片側が取り外し可能。長い方の仕切りにはベルクロを付け、バッグ内で邪魔にならない位置に固定できるため、ギアの出し入れを妨げたり、ウェアに引っかかったりすることがない。

・前面に小さなコンパートメントを設け、バッグ全体を開けなくてもスナックなどに簡単にアクセスできる。

・少量のスナックを収納できる小さな外部メッシュポケットを前方に配置。簡単にスナックを取り出せ、かつペダリングの邪魔にならない。

・ダウンチューブと平行な長いコンパートメントには、独立したジッパーからアクセス可能。このコンパートメントは、2リットル以上のプラティパスのウォーターコンテナが収納できるサイズで、重量を抑えながら水を安全に運べる。余分な水を必要としない時(ハンドルバーにも1リットルのボトルが2本ある)、プラティパスを丸めて、他のアイテムをこのコンパートメントに収納できる。

自転車のフレームにぴったりと収まるMYOGフレームバッグ。

・バッグ上部の内側にベルクロが付いており、分割式テントポールを取り付けることができる。邪魔にならず、使いたいときにすぐ取り出せる。

・ループロックと幅広のベルクロが付いたアタッチメントにより、適度なテンションをかけながら、フレームバッグを自転車のフレームにしっかりと取り付けることができる。

・内部のフラット・フェルド・シーム (折り伏せ縫い ※10) により、ほつれを最小限に抑え、ギアの出し入れも容易になっている。

・止水ジッパーで、夏場のサンダーストームによる水の浸入を最小限に抑える。

・サイドのファブリックにはX-Pacを使用し、最小限の重量で安定性を実現。

・エッジ部分には一枚続きの生地を使用し、破損が起こる可能性を最小限に。より厚手のX-Pacを使用することで、摩耗の問題を解消し、より高い剛性を実現。


フレームバッグ製作のための型紙。

※10 フラット・フェルド・シーム (折り伏せ縫い): 縫い代を包むように縫うことで、ほつれにくく、また縫い代が平らになる縫製方法。

モンタナ州ワイズ・リバーで迎えたバースデー。


完成したMYOGフレームバッグはうまく機能してくれた。

この設計は、2021年の今回の旅と、その後の2023年の旅でもうまく機能しました。

食料のリサプライ (補給 ※11) をした後でも、自転車にすべての荷物を積むのに十分なスペースがありました。ワイズ・リバーは、そういったリサプライ地点の一つでした。

この日は、私の誕生日。それなのに、朝食を食べられないことに落胆していました。郵便局でフードボックスを受け取ってから、「H Bar J Saloon and Café」に行き、外のテーブルを借りて食料の仕分けをしていました。

食料を仕分けてパッキングを済ませ、出発の準備を整えていた時、鍵を持った女性がやって来て、「これから店を開けるとこよ!」と声をかけてくれました。

朝食の代わりに、バースデーのランチを食べられることになったのです。しかもウェイトレスが、この日が私の誕生日であることを知ると、バーでカクテルを一杯サービスしてくれました。

お腹も心も満たされ、私たちは再びGDMBRに向けてペダルを踏み出しました。


なんとかありついた、至福の誕生日ランチ。

※11 リサプライ (補給): 長距離・長期間の旅において、町に立ち寄って食料やギアの補給をすること。

 
前回のレポートで、グレンはまるで「また新たなULガレージメーカーをやりなおしているようだ」と書いたが、今回はまさにその様子が伺えるレポートであった。
 
バイクパッキングのMYOGは、グレンにとってもチャレンジングなものであった。しかし、今まで磨いてきたスキルとTIPSをもとに、課題をクリアしていくところに、ULハイキングの知恵が宿っている。 
 
また次のレポートを楽しみに待ちたい。

(English follows after this page / 英語の原文は次ページに掲載しています)

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WRITER
Glen Van Peski

Glen Van Peski

ゴッサマーギア (Gossamer Gear)のファウンダーであり、ウルトラライト (UL)、 MYOG、およびULガレージメーカーのゴッドファーザー。「take less. do more.」という言葉に、彼のウルトラライトのフィロソフィーが詰まっている。グレンはUL史において、ウルトラライトギアの最初期のULバックパックの「G4」、100g台のSUL (Super Ultralight) のバックパック「Whisper」、カーボンを採用したそれまでにない超軽量トレッキングポール「LT」、アウトドアプロダクトとしてそれまで使われてこなかったスピンネイカーを使用したバックパック「G5」やタープ「Squall tarp」等、いくつもの画期となるマイルストーンを刻んだギアを開発し続けてきた。ウルトラライトのコミュニティーへの伝説的な貢献から、トレイルネームは「Legend」と呼ばれている。

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