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話・写真:松本卓也 取材・構成:TRAILS

What’s IN THE TRAIL TODAY? | トレイルで遊ぶことに魅せられたピュアなトレイルズたちの日常の中で発生した、 “些細でリアルなトレイルカルチャー” を発信するハンドメイドのコミュニケーションツール『ZINE – IN THE TRAIL TODAY』。そのZINEにまつわるストーリーを『IN THE TRAIL TODAY』という連載でお届けしていきます。

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長旅をあきらめていた人にも、ロング・ディスタンス・ハイキングの世界への扉は開かれています。セクション・ハイキングという旅の視点を得ることによって、たくさんの人にロング・ディスタンス・ハイキングの旅に出かけてほしい。そんな強い想いから生まれたZINE#02『SECTION HIKING』と、ZINE#03『SECTION HIKING 2』

今回紹介するトレイルは、北極圏トレイル (ノルドカロッドレーデン ※1)。

このトレイルがあるのは、スカンジナビア半島北部、ノルウェー,スウェーデン,フィンランド、ロシアにまたがるラップランド (※2) と呼ばれるエリア。そのほとんどが北極圏 (北緯66度33分以北の地域) であるため、冷涼な気候が特徴です。

ラップランドには数多くのトレイルがありますが、そのなかでも最長のトレイルが全長800kmの北極圏トレイルです。今回、2015年にこのトレイルの約500kmを1カ月間かけて旅した松本卓也 a.k.a. SHOBO (以下、ショボウ) が、お気に入りのセクションを紹介します。

ショボウさんはTRAILSとの親交も深く、『LONG DISTANCE HIKERS DAY 2019』のスピーカーとして登壇し、その際は、TRAILS編集長の佐井と一緒に、ラップランドの魅力を語ってくれました。

今回、ショボウさんが選んだセクションは、パジェランタレーデン (140km)。北極圏トレイルと一部重複しているトレイルです。

このセクションは、ZINE『SECTION HIKING』でもショボウさんが紹介してくれているものですが、今回は特別にスピンオフ企画として、あらたなエピソードも追加してお届けします。

※1 北極圏トレイル:Nordkalottleden (ノルドカロッドレーデン) のこと。スカンジナビア半島北部のラップランドにある、全長800kmのトレイル。ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの国境沿いに位置している。

※2 ラップランド:スカンジナビア半島およびコラ半島の北部、ノルウェー,スウェーデン,フィンランド、ロシアの4カ国にまたがるエリアを指す。先住民族のサーミ人が住んでいる地域であり、ラップランドの人口はおよそ200万人で、5%程度 (8~10万人) がサーミ人。大部分が北極圏内 (北緯66度33分以北の地域) に位置しているため、寒帯もしくは冷帯に属する地域がほとんどで、冷涼な気候である。


サハラマラソン完走など、ウルトラランナーでもあるショボウさん。海外のロング・ディスタンス・ハイキングは、この北極圏トレイルが初めて。


海外トレイル初心者でも、気軽に行けるトレイル。


—— まず、北極圏トレイルを歩こうと思ったきっかけを教えてください。

そもそも興味を持ったきっかけは、2014年に『北緯66.6° ~北欧ラップランド歩き旅~』(本の雑誌社、森山伸也 著) という本を読んだことですね。

トレイルはあるものの、どこを歩いてもいいし、どこで寝てもいいし、どこでテントを張ってもいいという、自由度の高さに惹かれました。妻が、ここに行きたい! と強く言ってきたのも大きかったですね。


妻の念願でもあったラップランドの旅。冷涼で湿潤な環境は、北極圏にあるこの土地ならでは。

—— 自由度の高さでいうと、アメリカのトレイルも候補になりそうですよね。

LONG DISTANCE HIKERS DAYにも参加していますし、仲間からアメリカの情報はたくさん聞いていました。もちろん私も、いつかアメリカ3大トレイルのどれかをスルーハイクしたい! という思いはありますよ。

でもアメリカだと、パーミットも取らないといけないし、ヒッチハイクもやらないといけないし……私たち夫婦にとってはいろいろハードルが高かったんですよね。それで、そのいずれも必要のないラップランドに行くことにしたんです。


なだらかで開放感のあるトレイルが、どこまでもつづくセクション。


—— 今回、パジェランタレーデンという140kmのセクションを選んだ理由を教えてください。

とにかく歩いていて気持ちいいんです。高木がなく、平坦で、どこまでも見わたせる景色のなかを、ずっと歩いていく。ベリー類もそこかしこに自生しているので食べ放題です。


ビルベリーをはじめさまざまなベリーが自生していて、食べながらハイキングするのが楽しい。

このスウェーデンのセクションは、整備も行き届いているし、小屋もたくさんあるので、海外トレイルが初めて、ハイキングの経験が少ない、といった人も安心して歩くことができると思います。

北極圏トレイルのなかには、けっこう険しいセクションもあるんです。ノルウェーのトレイルとかは、そこそこ標高も高く、踏み跡も明瞭じゃなくて迷ってばかりでした。


140kmのトレイルに、スタート地点とゴール地点も含めて12個の小屋がある。

—— 同じ北極圏トレイルでも、その国によってずいぶんと様相が異なるんですね。

スウェーデンでいうと、日本では王様の散歩道と呼ばれている『クングスレーデン』もあって、ここも歩きやすいんですが、超メジャールートなので人が多いんですよね。日本でいうなら上高地みたいな。

私たち夫婦はシャイなこともあって、のんびり静かに歩けるパジェランタレーデンが好みですね。

地形がなだらかなので、遠くまで見渡すことができるのも、魅力のひとつ。


小屋で買ったトラウトが新鮮で、最高に美味しかった。


—— トレイル上の小屋は利用しましたか?

基本的にテント泊だったので宿泊はしていませんが、食料補給のために何度か立ち寄りました。小屋では食料を販売しているので、全行程分を背負うことなく、都度都度、補給できるのがいいですね。


ドゥッタラ小屋では、小屋番の夫婦にいろいろとお世話になった。

中盤にあるドゥッタラ小屋では、小屋番のご夫婦に、「チョコレートのお菓子作ったから食べていかない?」って招かれました。そしたら旦那さんが釣りをする人で、釣り談義がはじまって。携行していたテンカラ竿の話をしたら、湖でやって見せてくれ! と言われて、いやいや湖じゃ無理だからといいつつ、とりあえずやって見せたりして。もちろん釣れませんでしたが (笑)。

帰りがけに、ご主人が昨日湖で釣ったトラウトを買って、またトレイルに戻りました。


シャイなショボウさん夫妻も、釣り談議で現地の人と打ち解けた。

—— トラウトの味はどうでしたか?

焼いて食べたんですが、新鮮でしたし、それはもう最高に美味しかったです。これまでずっとドライフードばかりだったんで、なおさらでしたね。

でもそれ以上に、彼らの優しさが嬉しかったですね。もともとウチの夫婦は、ハイキング中に他の人に積極的に話すタイプじゃないんです。一緒の場に居合わせたとしても、英語もあまり話せないし、世間話も苦手なので、声をかけたりしないんです。

それでもこういう出会いが生まれたのは、すごく嬉しかったですし、印象深かったです。


釣ったばかりの新鮮なトラウトは、塩のみのシンプルな味付けで。使用した火器は、スウェーデンのブランド、トランギアのストームクッカー。


毎日、野営地は選びたい放題。最高のロケーションで、極上のテント泊。


——— 宿泊に関しては、毎日テント泊だったんですね。

どこにテントを張ってもいいのは、本当にラクでしたね。あたり一面、テント泊適地ばかりなので、泊まる場所をすぐに見つけることができます。

気に入った場所があったら時間が早くても、そこで切り上げてテントを張っていました。何時であろうと、好きなところで1日を終えることができるというのは、すごくよかったですね。見晴らしが良く開放的なところが多いので、テント泊が好きな人には天国とも言える場所だと思います。


マイベストテント泊は、この眼下に湖がある展望抜群のロケーション。

あと私たち夫婦にとって、テント泊をすることは、人に煩わされず、いつでもプライベートな空間が作れるという点においても重要でした。どんな状況であっても、ここだけはホッとできる安息の地なんです。


この旅では、TRAILSの二人用スリーピングバッグのBUDDY BAGをチョイス。湿気にも強い。組み合わせたマットは、断熱性に優れたEXPEDのDownMat。


自分好みのところだけを楽しむことができる、という贅沢。


—— ショボウさんが思うセクションハイキングの魅力とは?

いいとこ取りができることですかね。苦手なところとか、嫌なところを歩く必要がなく、自分好みのところだけを選んで、歩けるわけですから。スルーハイキングではそうはいきません。


歩いている途中、遠くに見えたトナカイ。

私みたいに基本夫婦2人で旅する人にとっては、自分ひとりだけではなく2人の問題になるわけじゃないですか。そういう点においても、セクションハイキングは場所を選びやすいですし、満足度が高いと思います。

特に今回のセクションは、スタート地点もゴール地点も、ストックホルムから1日あれば行ける距離にあります。歩く期間は1週間なので、現地で必要な日数は最短8日です。2週間足らずで日本から行って帰ってこられるので、会社員の人でも大型連休と組み合わせて休みを取れば、行くことが可能になるんじゃないでしょうか。


南端にあるゴール地点のクビックヨックには、ボートに乗って行く。


TRIP INFORMATION



 
■トレイル名
北極圏トレイル (ノルドカロッドレーデン)
■セクション名
パジェランタレーデン
■歩く距離・日数
140km・6〜7日
■旅全体の日数
13日前後
■WEBサイト
DISTANT NORTH (https://www.distantnorth.com/destinations/padjelantaleden-introduction/)
BADJELANNDA LAPONIA TURISM (http://padjelanta.com/)
■ベストシーズン
8月~9月
■パーミッション / ブッキング
不要
■予算目安
30〜35万円 (総額)
[内訳]
エア代:17万円程度
現地宿代:1泊6,000円 (目安)
現地交通費:7万円程度
その他(食費など):5万円程度
■アクセス方法
[空港] ストックホルム・アーランダ空港(スウェーデン):日本から約12時間
[空港から近くの町へ] ストックホルム市街地へ電車で約20分
[IN:町からトレイルへ] 電車とバスで、北側のトレイルヘッド・リッツェムへ約19時間。そこからトレイルヘッドへはボートで約20分 (南側から入る場合はクビックヨックから)
[OUT:トレイルから町へ] バスと電車でストックホルムへ1日
■宿泊(町)
リッツェムとクビックヨックにはホステルあり。
■宿泊(トレイル)
キャンプ適地を見つけてテント泊 (どこでも可) もしくは山小屋。
■補給方法(水、食料、燃料など)
水は、適宜川から補給できるので困ることはない。食料は、小屋ごとに購入可能。ただし、ラボニア地区の小屋は在庫が少なく、12〜16時は閉まっているため到着時間に注意。燃料は、アルコールおよびガス缶ともに小屋 (一部除く) で購入可能。


ZINE 『SECTION HIKING』


アメリカの3大ロングトレイルをはじめ、ニュージーランド、スペイン、北欧ラップランド、ヒマラヤなど、世界中のロングトレイルを紹介。いずれのトレイルも1〜2週間のセクションハイキングをするという方法にフォーカスした内容になっている。今回のショボウさんおすすめのパジェランタレーデンも掲載している。

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<MOVIE>

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今回のコースは、美々橋〜美々川タップコップ親水公園の約8km (所要約2時間半)。美々橋は2つあるが、松美々橋の上流にある美々橋が今回のスタート地点。ウライ (漁網) 設置箇所は左岸をポーテージ (6月10日〜9月20日)。美々川までは新千歳空港からクルマで約10分。ゴールの美々川タップコップ親水公園からは、やや遠いが千歳線 植苗駅まで徒歩30分で行くことも可能。苫小牧市が発行しているカヌーガイドに各種注意事項あり。

前回のトリップ・レポートに続き、今回は北海道の美々川 (びびがわ) のムービーをお届けしたい(前回の記事はコチラ)。

迷路のように小さくクネクネ流れる川を漕いでいく様子を、ムービーだとより感じてもらえるだろう。

以下の旅のあらすじのなかに、前回のトリップ・レポートでは割愛してしまった、エピソードも加えた。先住のアイヌ民族が美々川を「リバートレイル」として使っていた話や、美々川が流れ込むウトナイ湖は希少な野鳥の生息地となっている話など、美々川にはワクワクするストーリーがいろいろあるのだ。

言いたいのは、美々川は、語りたおしたくなるほど、魅力的だったというこだ。


旅のあらすじ


美々川 (びびがわ) は、原生自然に近い湿原のなかを流れている。場所は、新千歳空港からクルマでわずか10分ほどのところ。この旅の詳細は、ぜひ前回のトリップ・レポートをご覧になっていただきたい。(前回の記事はコチラ)。

美々川が流れる勇払原野 (ゆうふつげんや) は、釧路湿原、サロベツ原野 (利尻) とならぶ、北海道の三大原野。かつては釧路湿原にも匹敵する規模の原野であったのだという。

先住のアイヌ民族は、この美々川を生活路として使って、太平洋側と日本海川を行き来していたそうだ。まさにリバートレイルだ。勇払川〜ウトナイ湖〜美々川〜陸路〜千歳川を結ぶ道は「勇払越え」と呼ばれ、美々川にも丸木舟が往来していたのだという。

また美々川が流れ込むウトナイ湖周辺は、希少種も含む重要な野鳥の生息地になっている。その豊かな自然環境を保護するため、ラムサール条約 (水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約) に指定されている。

6月〜9月には、美々川にベニサケが遡上する。パックラフトを漕ぎながら、ベニザケが泳ぐ姿を見る旅、というのも絶対にやってみたい。しかし今回は遡上の季節とは外れていたので、これはまた次回の宿題にとっておこう。

 

文・構成:TRAILS 写真:TRAILS / Fumi Sakurai

手付かずの自然が残った湿原のなかを、迷路のように、小さくクネクネ流れる川。

難しい技術などいらないゆるい流れ。しかし、この川を漕いだら、間違いなく無邪気な遊び心がわいてきて、誰もが子どもようにはしゃいでしまう。それが美々川 (びびがわ) だ。

美々川のある勇払原野 (ゆうふつげんや) は、釧路湿原、サロベツ原野 (利尻) とならぶ、北海道の三大原野のひとつ。そんな手付かずの状態に近い自然が、新千歳空港のすぐそばにあるのだ。

陸からはほとんど近づくことができない勇払原野の湿原のなかを、美々川は流れている。道路からも川の様子はほとんど見ることができない。つまり、川の上に一度浮かんでしまえば、まわりに人工物がほとんど見えない、最高の川旅が始まるのだ。

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美々川の魅力はなんと言っても、探検心をくすぐられるフィールドであること。


最初は千歳川のおまけとして考えていた美々川。


朝8:00に羽田発の飛行機に乗り込み、うたたねをしている間に、あっという間に新千歳空港に到着。時間は9:30。季節は秋。空港の外に出ると、冷たい空気が着ていたフリースの生地を抜け、体に入ってきてしゃきっとした。

美々川 (びびがわ) は、新千歳空港からクルマでわずか10分ほどの場所にある。

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今回のコースは、美々橋〜美々川タップコップ親水公園の約8km (所要約2時間半)。美々橋は2つあるが、松美々橋の上流にある美々橋が今回のスタート地点。ウライ (漁網) 設置箇所は左岸をポーテージ (6月10日〜9月20日)。美々川までは新千歳空港からクルマで約10分。ゴールの美々川タップコップ親水公園からは、やや遠いが千歳線 植苗駅まで徒歩30分で行くことも可能。苫小牧市が発行しているカヌーガイドに各種注意事項あり。

今回一緒に行ったのは、これまで何度もともに川旅をしてきたバダさん。実はこの旅では、千歳川での鮭の遡上を狙って北海道入りしたのだった。バダさんとは、「でもせっかくだから、近くの美々川というところにも行ってみようか」、という話をしていた。そう、最初はおまけのつもりだったのだ。それがいい意味ですこーんと裏切られた。

美々川は、いわゆる北海道の川に期待するような、雄大な大河でもなく、驚くほど綺麗な水があるわけでもない。またダイナミックな瀬があるわけでもない。

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美々橋から望む美々川上流部の景色。

ところがスタート地点に到着し、そこで初めて目に入った川の景色を見ると、僕たちの心模様が変わった。「えー!なになに、この楽しそうな川は!」と、バダさんと一緒にテンションのゲージがだだアガりになった。

そこには魅惑的な湿原の景色があった。道路からはよく見えなかったが、間近で見ると想定以上にワイルドな自然。まわりには生い茂った湿原の草木。川のなかに密生したクサヨシ。そんな湿原のなかに、うねうねと曲がった小さな川がある。

それは、一般的な川下りのイメージとはまったく違う景色だった。雄大な釧路湿原を流れる釧路川とも違い、美々川は周りから見えずにひっそりと、鬱蒼と茂った箱庭的な湿原のなかを流れている。なにか隠微な魅力を感じた。

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美々橋のたもとからスタート。


原始の湿原を縫うように流れる小さな川。


僕たちは上流部の美々橋から川にプットインした。漕ぎ出してしばらくして気づいた。「なんとパックラフト向きの川ではないか」。

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川の上の視線から見る美々川。蛇行が多く先が見えない楽しさにテンションがアガる。

場所によっては、舟がぎりぎり通れるくらいの、川幅が数十cmくらいの狭いところがある。そして、かなりの角度で川が蛇行している。これがめちゃくちゃ楽しく、しかもパックラフトの小ささと、小回りのよさがいかんなく発揮されるのだ。

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上流部では、こんなに狭いところも通っていく。

スタートした美々橋から次の松美々橋までの上流部は、特に川幅が狭い。生い茂るクサヨシが、川幅をさらに狭くしている。パックラフターには、このセクションが本当にオススメだ。カヌーでは苦戦しそうなところも、パックラフトならば、小気味よく通過してゆけるのだ。

迷路のようにうねうねとした川の流れ。蛇行が多く、川の両岸には背丈ほどの草が生い茂っているため、視界は限られている。先が見えない湿原の雰囲気が、また探検心をそそる。まわりには人工物もほとんど目に入らない。

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パックラフト向きの川!と興奮して漕いでいく。

美々川は、子どもの頃に大人の目から隠れて、自然のなかで遊んだときのような、いたずら心に満ちた探検心を思い起こさせてくれる。

それなりにスキルの必要な川ばかりに行っていて、こういった単純な探検心を忘れてしまっていた。川の上は自由だ。川の上には、陸からは感じられない、何者にも束縛されない解放感がある。

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ずっとゆるやかな流れのなか、湿原の内部と分けいるように川が流れている。


北海道三大原野のひとつ、勇払原野を流れる美々川。


松美々橋を過ぎて、美沢川と合流すると、一気に川幅が広がった。いままでの迷路のような川から一転して、広大な湿原の景色が見渡せるようになる。

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美々川の中流域に入ると、広大な湿原の景色が広がる。

こんなにも自然豊かな湿原が、よく札幌の近くに残っているものだと思う。これが北海道の三大原野のひとつなのである。しかも、かつては釧路湿原にも匹敵する規模の原野であったのだというから、なお驚きだ。

さらにしばらく漕ぎ進むと、迂回路を示す看板が目に入ってきた。漁網が設置される箇所だ。美々川では、6月〜9月はベニサケが遡上する姿も見られるのだそうだ。

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6月10日〜9月20日は一部迂回が必要。ベニザケの漁に使われるウライ (「やな(梁)」のアイヌ語表現) が設置されるため。

今回はベニザケが遡上する季節とは外れてしまっていた。しかし「今度はベニザケの遡上を見に、また来なくちゃいけないな」と、またここに来る理由をつくることができた。


湿原を染める夕日を見ながらゴール。


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下流域では、新千歳空港を離着陸する飛行機がよく見える。

漕ぎ始めてから約2時間半。ゴール地点の近くで、ちょうど夕暮れの時間となった。右岸の上空に、新千歳空港に着陸する飛行機が見える。

見上げる飛行機と、目の前に広がる原生状態に近い湿原との対比が不思議だ。

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落陽に川面がきれいに照らされたなか、ゴールを目指す。

ゴールまではあと数kmだったが、前半であんまりのんびりしすぎて、日没ぎりぎりになってしまった。暗くなる前にゴールまでたどり着こうと、少し焦ってパドルを漕ぐ。

美々川をそのまま漕いでいくとウトナイ湖につながるが、湖の周辺は野鳥の保護区域に入るため、一般のパドラーはその手前のタップコップ親水公園までしか漕ぐことができない。

ゴールの美々川タップコップ親水公園に到着すると同時に、日が沈んだ。公園では、そこに住み着いているらしき白鳥がお出迎えしてくれた。

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ゴールの美々川タップコップ親水公園。

次回は、この川旅のMOVIEをお届けする。また今回はお伝えしきれなかった、美々川とアイヌ民族とのかかわりや、美々川と勇払原野の特異な自然環境についても紹介したい(MOVIE編の記事はコチラ)。

 

TRAILSとハイランドデザイン (ハイカーズデポ) が立ち上げたイベント『HAMMOCKS for Hiker』(※)。

このイベントにまつわる4回の記事シリーズ最終回は、今までこのイベントに出展してくれたメーカーから、Hammocks for Hiker的オススメ『ハンモック周辺ギア』をセレクト。

本記事では、山のなかでハンモック・キャンプを楽しむためのギアを中心に、ピックアップした。今回の記事の前半では、ダウンキルト、タープ、ハンギング・ギアなどのスリーピングギア&シェルター。そして後半では、ハンモックにゆられながらミニマムな焚き火を楽しむための、ストーブ、クッカーなどを紹介したい。

HAMMOCKS for Hiker:2016年に、TRAILSとハイランドデザイン (ハイカーズデポ) が立ち上げた、ハイカー向けのハンモックイベント。ハイキング向けのハンモックを出すメーカーが集まるイベントとして、国内最大規模。ハイキングと野営を前提としたハンモックにフォーカスしているのが大きな特徴。ハンモックメーカーが一堂に会し、数多くのハンモックを実際に体験することができる。毎年5月に山梨県の『月尾根自然の森キャンプ場』で開催 (2020年はコロナのため中止。2021年は秋開催を検討中)。


ハンモック・ハイキングには、ハンモック以外のギアも欠かせない。


WESTERN MOUNTAINEERING ウエスタンマウンテニアリング


■ SLINGLITE (スリングライト)
・重量 440g
・価格 37,290円 (税込)


 
1970年、2人の登山家が自分たちのスリーピングバッグを作りはじめたことがきっかけで誕生したウエスタンマウンテニアリング。

妥協を許さない製品づくりのポリシーは、50年を経た今も変わらず、それは、現在もほとんどの製品をアメリカはサンノゼの自社工場でつくり続けていることからもわかる。創業以来、保温性と軽量性に優れたスリーピングバッグやダウンジャケットなど、ハイカーから愛され続ける定番のダウン製品を作ってきた。

そんなウエスタンの唯一のハンモック用プロダクトが、このアンダーキルトだ。850+フィルパワーのダウンが225g封入されていて、高い保温性を有する。サイドにはフックとループが計6つ付いており、ハンモック本体との隙間を減らして保温力をより高めることもできる。


 
さらに、頭から足元までつながっているボックス構造は、コンティニュアスバッフルと呼ばれ、内部でダウンを移動させることが可能。たとえば、足元の冷えが気になる場合は、足元部分のダウン量を増やして保温力をアップさせることができるのだ。


PAAGOWORKS パーゴワークス


■ NINJA TARP (ニンジャタープ)
・重量 約400g
・価格 19,800円 (税込)


 
パーゴワークスのニンジャタープは、280 × 280cmという大きさなので、ハンモックとの組み合わせも可能なタープだ。

しかも、もともとタープ単体での使用を想定して作られていることもあり、ハンモック以外のさまざまなシーンでも活躍してくれる。最大の特徴である豊富な設営バリエーションにくわえ、ジョイント部分が21カ所も付いているため、複数のタープを連結して、パーティーで広い屋根を作ったりすることができるのも面白い。

ちなみに、このダークベージュのモデルは、2021年6月発売予定の新色だ。これまでカラー展開をしてこなかったニンジャタープ (コラボモデルでカラーモデルを限定発売したことはある) に、定番カラーが追加されることになった。

■ SHURIKEN (シュリケン)
・重量 約4g (1個あたり)
・価格 2,200円 (税込・4個セット)


 
シュリケンは、テントやタープなどを張る際に、ロープワークを知らずとも、ガイラインの長さ調整や、結束、分岐などができるアイテム。

このシュリケンは、ハンモックでのギア・ハンギングとの相性が非常に高い。リッジラインにギアを吊るす際、ロープワークも必要なく引っかけるだけでハンギングが可能になるのだ。


MSR エムエスアール(マウンテン・セーフティ・リサーチ)


■ WindBurner Personal Stove System (ウィンドバーナーパーソナルストーブシステム)
・重量 465g (ガス缶除く)
・価格 28,600円 (税込)

■ WindBurner Hanging Kit (ウィンドバーナーハンギングキット)
・重量 30g
・価格 4,840円 (税込)


 
クライミングのカルチャーのなかで磨かれてきたギアやテクニックは、ハンモック・キャンプに応用できるものがある。この観点で面白いのが、MSRのウィンドバーナーパーソナルストーブシステムと、ウィンドバーナーハンギングキットだ。

アメリカ本国において、MSRのウィンドバーナーは、登山家やハイカー、クライマーから絶賛されてきた (ついに2020年春に日本でも発売開始)。特徴は、専用ポットの下部がバーナーを覆い、炎が表に出ず、完全に閉じられた空間で燃焼する構造であること。実質的に風の影響をほとんど受けないため、燃焼効率も非常に高い。


 
このバーナーに専用のハンギングキットを組み合わて吊るす方法は、安定した水平な設置面を確保できないクライミングの世界などでは常識的に行なわれてきたスタイルだが、実はハンモックにも応用できる。山のなかでハンモック・キャンプをするときは、斜面や不整地で設営することもある。そういった、地面にストーブを安定して置けない場合に、ハンギングシステムが有効になるのだ。

ただし、このハンギングキットは、全長を変えることができないため、ハンモックとの高さのバランスだけ注意が必要だ。干渉しないようにうまくセッティングしよう。


VARGO バーゴ


■ Titanium Hexagon Backpacking Wood Stove (ヘキサゴン・ウッドストーブ)
・重量 116g
・価格 10,780円 (税込)

■ Titanium Sierra Cup 450 (チタニウム・シエラカップ 450)
・重量 55g
・価格 4,180円 (税込)


 
2003年の創業以来、一貫してチタンにフォーカスして独自の製品開発をつづけているメーカー。無駄を排除し、できる限りシンプルなデザインにすることで、プロダクトの強度も高めているのが特徴でもある。

このヘキサゴン・ウッドストーブは、煙突効果 (チムニー効果) が生まれる構造になっており、燃焼効率がいい。しかも、パーツがすべて連結しているため組み立ても簡単で、パーツを失くす心配もない。シンプルにすることによって、壊れにくさだけではなく、使い勝手も向上させているのだ。

今回、このストーブに組み合わせたのが、2021年に新たに発売された、同ブランドのチタン製の軽量シエラカップだ。シエラカップでありながらも注ぎ口が付いているため、水切れがいい。調理にも食事にも使える便利なギアだ。

■ Titanium Travel Coffee Filter(チタニウム・トラベル・コーヒーフィルター)
・重量 36g
・価格 7,480円 (税込)


 
ハンモックに揺られながらのコーヒーは最高だ。そんなシーンで重宝するのが、このチタン製のコーヒーフィルター。耐食性が高く匂い移りがないので、美味しいコーヒーを淹れることができるのだ。

また、内側と外側の二重の網目構造になっているのも特徴的。内側は精緻かつ細かいメッシュで、ろ過機能に優れ、これがコーヒーの旨味にもつながる。

折りたたみ式の脚は、さまざまな大きさのカップにフィットするのも便利。トランギアのメスティンにもセットできたりと、カップ以外の容器と合わせることも可能だ。


FIREBOX ファイヤーボックス


■ Nano Titanium Box Set(ナノ・チタン・ボックス・セット)
・重量 206g
・価格 15,400円 (税込)


 
ファイヤーボックスは、40年以上の歴史を誇る、折りたたみ式ウッドストーブのメーカーである。BBQやキャンプ用も含めさまざまなストーブを開発しているが、なかでもハンモック・ハイキングに最適なのが、この最軽量モデルだ。

ストーブ本体は115gと軽量で、折りたたむと厚さはわずか6mm。シャツやパンツのポケットにも入る大きさである。しかも小さいわりに側面の穴が広く、大きな枝を入れることができるため火が長持ちするのだ。

付属のケース (Xケース) は、その名のとおり内側にX型の溝があり、そこにストーブの脚をセットできるようになっている。これにより安定性が高まり、重いポット等をおいても揺れにくく、安心して使うことができる。また、このケースは灰受けとしても機能するので、地面の保護にもなるし、片付けも簡単だ。

ちなみに、写真のとおり、MAXI TITANIUM (マキシ・チタニウム) のチタンコーヒーメーカー (200ml) とも相性がいい。


MAXI TITANIUM マキシ・チタニウム


■ Titanium Water Bottle (チタン・ウォーター・ボトル)
・重量 150g
・価格 10,890円 (税込)


 
マキシ・チタニウムは、純度の高いチタン(グレード1:ASTM規格)のみを使用したポットやボトルを作っているブランドだ。

このチタン製のウォーターボトルは、強度があることはもちろん150gと軽量で、容量は800ml。ハイキングで水筒として使いつつ、野営時にはそのまま火をかけることができるという、水筒にも鍋にもなるユニークなプロダクトである。

フタを閉めれば密閉性が高く、内容物がこぼれることはないため、気軽にハンモック上に置いておくこともできる。塗装などはいっさい施されていないことから直火もOK。ウッドストーブと組み合わせるにもピッタリだ (ただし、火にかける時はフタを外すこと)。

チタンコーヒーメーカーも含めてマキシ・チタニウムのプロダクトは、現在のところ国内では欠品中らしいので、再入荷をウォッチしておこう。


 
ハンモック・ハイキング、ハンモック・キャンプをテーマとして、全4回のシリーズ記事をお届けしてきた。

1回目は、ハンモックのルーツから使い方までを紹介する『ハンモックのA to Z』。

2回目は、宿泊道具としてのハンモックの楽しみ方を紹介する『ハンモック・キャンプ』。

3・4回目は、メーカーごとのHammocks for Hiker的オススメを紹介する『ハンモック・ギア』。

「ハイカーのためのハンモック」を網羅的につかめる内容を目指して作成したシリーズ記事だ。今回の記事が、山でハンモック・ハイキングを実践するためのガイドになればと思う。

TRAILSとハイランドデザイン (ハイカーズデポ) が立ち上げたイベント『HAMMOCKS for Hiker』(※)。

直近2回の記事では、このイベントを通じて制作してきた、さまざまなコンテンツを凝縮した『HAMMOCKS for Hiker』の「ダイジェスト版」をお届けした。

ここから2回はギア編だ。今までこのイベントに出展してくれたメーカーから、Hammocks for Hiker的オススメ『ハンモック・ギア』をセレクト。

今年・昨年に出た新製品から、ハンモック・ハイカー的にはこれでしょという定番製品まで、幅広いラインナップが揃った。

ハンモック単体製品、オールインワンモデル、その他ジャンルという順番で紹介していこう。

HAMMOCKS for Hiker:2016年に、TRAILSとハイランドデザイン (ハイカーズデポ) が立ち上げた、ハイカー向けのハンモックイベント。ハイキング向けのハンモックを出すメーカーが集まるイベントとして、国内最大規模。ハイキングと野営を前提としたハンモックにフォーカスしているのが大きな特徴。ハンモックメーカーが一堂に会し、数多くのハンモックを実際に体験することができる。毎年5月に山梨県の『月尾根自然の森キャンプ場』で開催 (2020年はコロナのため中止。2021年は秋開催を検討中)。

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さまざまなメーカーから、個性あふれるハンモックがリリースされている。


COCOON コクーン


■ ハンモック:Ultralight Hammock (ウルトラライト・ハンモック)
・重量 240g
・価格 9,350円 (税込)

■ ツリーストラップ:Hammock Straps Ultralight (ハンモックストラップ・ウルトラライト)
・重量 70g
・価格 4,620円 (税込)
※今回のシステムの総重量:310g

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コクーンは、快適な睡眠をミッションに掲げる、トラベルシーツやスリーピングバッグライナーのブランドで、ハイカーからも支持されている。

そのコクーンから2020年にハンモックが発売された。特徴は、軽量ながらやや大きめのサイズ感。それとリッジラインがあるため、自然と寝心地の良い角度で設営できることだ。

重量は240gという軽さながら、全長が325cmと長く (ほとんどのハイキング用ハンモックは300cm以下)、幅も148cmと少し広めの設計。そのため、生地にゆとりがあり、圧迫感のない極上の寝心地が得られる。リッジラインは、ハンモックを最適な角度に固定してくれるだけでなく、ギアを吊るしておくこともできるので、宿泊時にも重宝する。

組み合わせたストラップは、ハンモックストラップ・ウルトラライト。重量70g (ペア) は、ツリーストラップのなかでも最軽量級の軽さだ (今回紹介したなかでは最軽量)。

またコクーンからのULラインナップとして、蚊帳として上記ハンモックに追加で取り付けられるモスキートネット・ウルトラライト (重量190g・価格6,820円 [税込]) のほか、ウルトラライト・モスキートネット・ハンモック (重量395g・価格11,550円 [税込]) も発売されている。


ENO イーノ(イーグル・ネスト・アウトフィッターズ)


■ ハンモック:Sub6 (サブ・シックス)
・重量 164g
・価格 10,450円 (税込)

■ ツリーストラップ:Helios Ultralight Suspension System (ヘリオス・ウルトラライト・サスペンションシステム)
・重量 110g
・価格 4,950円 (税込)
※今回のシステムの総重量:685g

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※各ギアの重量は、付属品を除く本体のみの実測値。

アメリカのハンモック・シーンを牽引する、ハンモック専門メーカーであるイーノの最軽量モデル (164g)。UL (※) ハイカーが、ハンモック・ハイキングする際の定番モデルといってよい。ミニマムながらも、シルクのようなしなやかさがあり、かつ生地の編み方によりストレッチ性も感じられるので、寝心地も抜群。アメリカのロング・ディスタンス・ハイカーから支持されているのも納得だ。

イーノは、90年代にオンボロなバンで旅をしながら、音楽フェスやイベントでハンモックを売ることからスタートしたメーカー。ブランド誕生の頃からレイドバックなスタイルを重視している。

今回、ハンモック本体と組み合わせたのは、ヘリオス・ウルトラライト・サスペンションシステムとプロフライ・シル・レインタープ。ツリーストラップはヨレにくい厚みがあり、使いやすい。タープは、支点となる木との接続部分がアップデートされ、よりシンプルな構造で、スピーディーな設営が可能になった。


SEA TO SUMMIT シートゥサミット


■ ハンモック:Ultralight Hammock Set Single (ウルトラライトハンモック・セット・シングル)
・重量 220g
 *本体 122g ツリーストラップ 73g スタッフサック 25g
・価格 11,880円 (税込)

■ タープ:Hammock Tarp (ハンモック・タープ)
・重量 297g
・価格 16,060円 (税込)
※今回のシステムの総重量:517g

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本体が122gという今回紹介したなかでもっともULなハンモック (ハンモックとツリーストラップのセットも200gと最軽量)。シースルーの特徴的なルックスもインパクトがあるが、なにより圧倒的な通気性がある。また実際に寝てみるとわかるが、視界を遮らない開放感もハンモックの快適さをブーストしてくれる。

ちなみにこの生地は、釣り糸にも使われるモノフィラメントを使用しており、透けてはいるが強度は高く安心感もある。

シートゥサミットは、タープも個性的だ。片側の頂点は1つで、反対側は2つというアシンメトリーなデザイン。頂点が1つの側は開放感があり、ハンモックに座って食事をしたりくつろいだりするのにも使いやすい。反対側は耐候性を重視した2カ所でペグダウンする構造で、風雨の吹き込みを防いでくれる。ちなみに、今回紹介したなかで最軽量のタープだ。


EXPED エクスペド


■ ハンモック:Travel Hammock Kit (トラベルハンモック・キット)
・重量 395g
 *本体 277g ツリーストラップ 118g
・価格 9,680円 (税込)

■ タープ:Solo Tarp (ソロ・タープ)
・重量 333g
・価格 16,500円 (税込)
※今回のシステムの総重量:728g

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軽さよりも寝心地を重視するならば、このトラベルハンモックはその代表モデルのひとつとなるだろう。

体をホールドしてくれる絶妙な生地がポイントだ。軽量ハンモックの多くが20〜40D (デニール) を採用しているが、トラベルハンモックは70Dというしっかりした生地厚。そして、滑らかな肌ざわり。製品名に「トラベル」という名前を付けているのも、旅における快適な寝心地を追求したモデルだからだろう。

また、ハンモック本体とツリーストラップが一体になっているため、設営、撤収、収納もストレスなくラクにできるのもいい。組み合わせたタープは、同メーカーのソロ・タープ。あらかじめ8カ所にコードロック式ガイラインが付いていて、設営しやすいタープだ。


HENNESSY HAMMOCK ヘネシーハンモック


■ Expedition A-sym Zip (エクスペディション・アシンメトリー・ジップ)
・重量 1,160g
・価格 27,500円 (税込)

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この画像は、ハンモック内部へのエントリー方法が異なる、Expedition A-sym Classic (エクスペディション・アシンメトリー・クラシック)

ヘネシーハンモックは、野営はハンモック以外でしたことがないと豪語するトム・ヘネシーが創業した野営ハンモック界のレジェンドメーカー。「シェルターとしてのハンモック」のシステムを確立したハンモック専門メーカーだ。ヘネシーハンモックの登場によって、ハイカーはハンモックを宿泊道具として使えることに気づかされた。

このエクスペディション・アシンメトリー・ジップは、同ブランドのスタンダードモデル。タープとバグネットがセットになったオールインワンタイプで、いずれもハンモックと連結されているため設営も簡単。タープのサイズもハンモック本体に最適化されている。

ハンモック本体は、寝ると自然と最適なポジションにおさまる独自の非対称構造になっている。これは世界中で特許を取得している設計で、この寝心地の良さはヘネシーハンモックならではだ。


KAMMOK カモック


■ Mantis UL (マンティスUL)
・重量 960g (付属のペグ6本除く)
・価格 43,780円 (税込)

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2010年にアメリカ・テキサス州で誕生したハンモック専門メーカーのカモックは、ハンモック界に新しい風を吹き込む新興メーカー。

2020年に発売したマンティスULは、ヘネシーハンモックと同様の、ハンモック本体、ツリーストラップ、タープ、バグネットがセットになったオールインワンモデル。最大の特徴は、タープもバグネットも取り外しができる自由度の高さだ。

ハンモック本体だけでも持っていくことができるし、バグネットだけを外して持っていくこともできる。シチュエーションに合わせて、組み合わせを自由に変えられるのだ。ハンモック・キャンプのエントリーモデルとして安心感があるだけなく、スタイルに応じて変化させていける点も優れている。

細かなところで、にくいギミックも施されている。バグネットには、テントのメッシュ部分によくあるトグル&ループが付属しているため、半開にして開放感を味わうことも可能だ。


AXESQUIN アクシーズクイン


■ ハンモック:UKIGUMO (ウキグモ)
・重量 1,054g
・価格 71,280円 (税込)

■ ツリーストラップ:Hammock Suspension Kit (ハンモック・サスペンション・キット)
・重量 118g
・価格 4,400円 (税込)
※今回のシステムの総重量:1,172g

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ダウンキルト一体型ハンモックという斬新なハンモックが、このウキグモ。ハンモックで寝泊まりする際、天敵である「背面の冷え」の対策は欠かせない。従来であれば、スリーピングバッグ&マット、キルトなどを別途携行するのが常識だったが、それを覆すハンモックだ。

ハンモック本体に沿うようにダウンキルトが一体となっており、トップキルトも付属している。そのため、ハンモック・キャンプの防寒・保温に関して、基本的にこれ以外の寝具は必要ない。しかもトップキルトは取り外し可能で、ダウンポンチョとして使用することも可能。つまりダウンジャケットも要らないということだ。

重量1kg超ゆえ、一見ヘビーウェイトに思うかもしれないが、寝具や防寒着込みで考えると、かなり軽量と言えるだろう。


まとめ:ハンモックスペック調査 2021


最後にまとめとして、ハンモックの主要モデルのスペックを比較したグラフを紹介したい。

図1では、ハンモック単体で発売されている製品7つを、縦軸を「重量」、横軸を「幅」にしてプロットした。


[図1]

図2では、ハンモック単体のものだけではなく、他のギアとのセットで発売されている製品も含めて、スペック一覧を作成した。


 

[図2] ※「Ultralight」「Light Weight」の重量は、ハンモック本体の実測値。

ここ数年で、さまざまなメーカーからハンモックがリリースされたが、ハンモックの傾向として、大きく下記3つに分類されることが見てとれる。

① 徹底的に “UL化” する
② 軽さと寝心地の両方に力点を置き “バランス” をとる
③ “野営” に効果的な機能の追求

このグラフを参考にして、軽量性と快適性のバランスを考えながら、自分好みのハンモック選びに役立ててもらえればと思う。

もちろん、ハンモック・ハイキングをする上では、ハンモック本体だけではなく、周辺ギアも含めたシステム全体を考える必要がある。どんなツリーストラップやタープと組み合わせるのか、自分の目指すスタイルにあわせて、楽しみながら選んでほしい。

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ハンモックのシリーズ記事の第3回目の今回は、「ハンモック・ギア」というテーマで、ハイキングの宿泊道具としておすすめのハンモックを紹介した。

次回は、この4回シリーズ記事の最終回。ハンモックと合わせて使用したい、アンダーキルトやウッドストーブなどの周辺ギアをレコメンドする。

※ UL:Ultralight (ウルトラライト:超軽量) の略であり、Ultralight Hiking (ウルトラライトハイキング) のことを指すことも多い。ウルトラライトハイキングとは、数百km〜数千kmにおよぶロングトレイルをスルーハイク (ワンシーズンで一気に踏破すること) するハイカーによって、培われてきたスタイルであり手段。1954年、アパラチアン・トレイルをスルーハイクした (女性単独では初)、エマ・ゲイトウッド (エマおばあちゃん) がパイオニアとして知られる。そして1992年、レイ・ジャーディンが出版した『PCT Hiker Handbook』 (のちのBeyond Backpacking) によって、スタイルおよび方法論が確立され、大きなムーヴメントとなっていった。

TRAILSとハイランドデザイン (ハイカーズデポ) が立ち上げたイベント『HAMMOCKS for Hiker』(※)。

このイベントを通じて制作してきた、さまざまなコンテンツを凝縮した『HAMMOCKS for Hiker』の「ダイジェスト版」をお届けする、4回連続のハンモック記事の第2回目。

今回のテーマは、『ハンモック・キャンプ』だ。

毎年イベントの前に、僕たちは事前にテストと実験を行なっている。TRAILSとハイランドデザインを中心に仲間を集め、いち早く新作ギアを試したり、新しい遊び方の実験をしたりしてきたのだ。

今回は、テスト&実験を繰り返してきた「ハンモック・キャンプ」の過去記事だけを集めて、今までの試行錯誤を一気にダイジェストでお届けしたい。

「ハンモック・キャンプ」で掲げたテスト&実験は、以下のように多岐にわたる。初期の頃のハンモックとタープの野営セットの探索から、寒い時期の防寒対策、斜面でギアのハンギング実験、山のなかでのハンモック適地の探し方など。

今までの僕たちの「ハンモック・キャンプ」を辿っていただきながら、あなた自身のテーマを探して、ぜひ山のなかで、自分のスタイルの実験に役立ててもらえればと思う。

HAMMOCKS for Hiker:2016年に、TRAILSとハイランドデザイン (ハイカーズデポ) が立ち上げた、ハイカー向けのハンモックイベント。ハイキング向けのハンモックを出すメーカーが集まるイベントとして、国内最大規模。ハイキングと野営を前提としたハンモックにフォーカスしているのが大きな特徴。ハンモックメーカーが一堂に会し、数多くのハンモックを実際に体験することができる。毎年5月に山梨県の『月尾根自然の森キャンプ場』で開催 (2020年はコロナのため中止。2021年は秋開催を検討中)。

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毎年恒例のハンモック・キャンプの風景。


CAMP (その1):「ハンモック・ウイルス」にヤラれた初回キャンプ。


■ Article1 ハンモックキャンプ 2016
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記念すべき第1回の『HAMMOCKS for Hiker』に先立って行なわれた、初回のハンモック・キャンプのレポート。僕ら自身が明らかに「これから何かが始まる」という熱にうなされていたことがわかる、不必要なまでにディープでロングなレポートになっている。まさに初夜の宴会。

ハンモック、タープ、ウッドストーブを手当たり次第に集め、この時集まった7人のハイカーが、全員異なるスタイルを試した。

今でこそ他のメディアやショップで、さまざまなハンモックが多く取り扱われるようになったが、この2016年の時点では、ハイカー向けのハンモックをここまで幅広く網羅し、実際のテストを行なった記事はなかった。

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ひたすらウッドストーブを試しまくったハンモック・キャンプ。

この記事では、内容はもちろんのこと、事始めに特有のあやしげなグルーヴ感を感じ取ってもらえると嬉しい。


CAMP (その2):寒い時期に行なった、ハンモックの防寒実験。


■ Article2 ハンモックキャンプ 2017
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2017年の第2回の「ハンモック・キャンプ」では、ハンモックの防寒実験を行なった。

ハンモックの天敵は「背面の冷え」。その対策方法はいろいろあるが、「人体実験」のごとく、あえてまだ寒い時期の山に入り、自分たちの身をもってテストしてみた。

実験した方法は、ハンモックを上下とも覆うようにスリーピングバッグをかぶせたり、スリーピングマットを敷いたり、アンダーキルトを使用したり、Pea Podと呼ばれるすっぽりと覆うハンモック用にスリーピングバッグを使用したりと、メンバーによってさまざま。

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個性あふれるハンモックシステム。

最近では、春夏だけでなく、秋冬でもハンモック・キャンプを楽しんでいるハイカーも多く見かけるようになった。自分のギアを少しずつアップデートして、シーズンを問わずハンモック・キャンプができるようになると、またハイキングの楽しみ方が広がるはずだ。


CAMP (その3):ハンモックで野営するための、ギア・ハンギングの実験。


■ Article3 ハンモックキャンプ 2018
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この時の実験テーマは、「ギア・ハンギング」。つまり、ギアを地面に置かずに、いかに吊るしておけるか、というチャレンジだ。

ハンモックの強みは、テントと違って、地面が斜めだったり、べちょべちょ・ごつごつの不整地でも、設営できることだ。そのときに、ギアを地面につけずに吊るしておくハンギングのTIPSを身につけておくと、ハンモック・キャンプの幅がさらに広がる。

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ギアを吊るしてしまえば、地面が斜めだろうが、濡れていようが関係ない。

ギア・ハンギングは、それほど難しいスキルは必要なく、長めのガイラインとカラビナを用意し、ちょっとしたロープワークを覚えておけばできる。また本体の下に張るギアスリングなどの、ハンモック専用のギアを投入するのも有効だ。


CAMP (その4):身近な山でハンモック適地をハンティング。


■ Article4 ハンモックキャンプ 2019
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2019年は、「ハンモック・キャンプ」をあらためてリアルなハイキングの文脈で捉えなおすべく、身近な山を実際にハイキングしながら、ハンモック適地をハンティングする実験を行なった。

このときのハンモック・ハイキングで、「ハンモックは、ハイキングをより自由にしてくれるものだ」という、シンプルな答えを再確認することができた。

もちろん、今までにテスト&実験してきた、ギア・ハンギングのTIPSも大活躍した。

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1泊2日のトリップを通じて、あらためてハンモックが、ハイキングの旅を拡張してくれるギアだと実感した。

この記事を読んでもらいながら、あなたが普段よく行く山域の地図をよーく眺めてみてほしい。トレイルからちょっとだけ外れたところにも、ハンモック適地を見つけられるはずだ。

[MOVIE] ハンモック・キャンプ

ハンモックのシリーズ記事の第2回目の今回は、「ハンモック・キャンプ」というテーマで、宿泊道具としてのハンモックの特徴から使い方、楽しみ方までを、僕たちのハイキングやキャンプを通じてレポートした。

次回からは2回にわけて、メーカーおすすめのハンモック&周辺ギアを紹介する。

定番製品から新製品まで、さまざまなギアを紹介するので、ぜひ購入時の参考にしてほしい。そして、自分なりのハンモックの楽しみ方を見つけてみてください。

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TRAILSとハイランドデザイン (ハイカーズデポ) が立ち上げたイベント『HAMMOCKS for Hiker』(※) の初開催は、今から5年前の2016年。

今回からはじまる4回連続のハンモック記事では、イベントを通じて制作してきた、さまざまなコンテンツを凝縮した『HAMMOCKS for Hiker』の「ダイジェスト版」をお届けしていきたい。

今まで掲載してきた『HAMMOCKS for Hiker』の記事のアーカイブは、ハンモックの基本から応用までを網羅するコンテンツが揃っている。なので、ハンモック・ハイキングのビギナーから経験者まで、誰にとっても役に立つ内容となっている。

HAMMOCKS for Hiker:2016年に、TRAILSとハイランドデザイン (ハイカーズデポ) が立ち上げた、ハイカー向けのハンモックイベント。ハイキング向けのハンモックを出すメーカーが集まるイベントとして、国内最大規模。ハイキングと野営を前提としたハンモックにフォーカスしているのが大きな特徴。ハンモックメーカーが一堂に会し、数多くのハンモックを実際に体験することができる。毎年5月に山梨県の『月尾根自然の森キャンプ場』で開催 (2020年はコロナのため中止。2021年は秋開催を検討中)。

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ハイキング向けのハンモックを出すメーカーが集まるイベントとして、国内最大規模を誇る。

2021年の今年の『HAMMOCKS for Hiker』は、コロナの状況を見ながらではあるが、現在、秋開催を模索しているところ。

とはいえ、あたたかくなってきたし、コロナに気をつけつつハンモックを持って山に出かけたいハイカーも多いはず。ハンモック・ハイキング、ハンモック・キャンプのガイドとして、この全4回のシリーズ記事を楽しんでいただければと思う。

1回目は、ハンモックのルーツから使い方までを紹介する『ハンモックのA to Z』。
2回目は、宿泊道具としてのハンモックの楽しみ方を紹介する『ハンモック・キャンプ』。
3・4回目は、メーカーごとのHammocks for Hiker的オススメを紹介する『ハンモック・ギア』。

まず1回目のA to Zでは、5つのクラシックとも言える過去の記事を引用しながら解説していきたい。

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イベントでは、毎年たくさんのハンモックハイカーが集結。他に類を見ない、ハイカーのためのハンモックイベントだ。


はじめに:『HAMMOCKS for Hiker』を立ち上げた理由。


このイベントを立ち上げた当初は、日本における現在のハンモック・ハイキングのムーブメントが起こる「前夜」であった。それは、ちょうど100g台のウルトラライト (UL) なハンモックが、いくつかのメーカーから登場しはじめた時期。

従来からハイキングに使われてはいたが、このUL化をはじめとしたプロダクトのアップデートを機に、僕たちは、あらためてハイキングの旅を拡張してくれるギアだと再認識した。そして僕たちは、仲間たちと一緒に、ハンモック・キャンプへと繰り出したのだった。

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第1回目のイベント前のこのハンモック・キャンプが、大きなきっかけとなった。このキャンプの詳細は、次回の記事で紹介する。

キャンプでは、ハンモックのシステムや、ハンモックと相性のいいウッドストーブをはじめとしたギアなど、何かに取り憑かれたかのように、夜が明けるまで試しまくった。

まさしく実験的なキャンプだった。そして、ハンモックのポテンシャルに熱狂した僕たちは、ハイランドデザインと一緒に、ハイカーのためのハンモックイベント『HAMMOCKS for Hiker』を立ち上げることを決めた。

『HAMMOCKS for Hiker』の立ち上げ後には、他のメディアでもハンモック特集が頻繁に取り上げられるようになった。さらに、僕たちが本イベントの開催地として選んだ「月尾根自然の森 キャンプ場」は、今や「ハンモックの聖地」として知られるようになった。


A to Z (その1):宿泊道具としてのハンモック。そのルーツとヒストリー。


■ Article1 ハンモックの歴史と魅力
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まず最初に紹介したいのが、『HAMMOCKS for Hiker』の記念すべき第1回に行なわれた「ハンモック・トーク」の内容をまとめたレポート。僕たちは、このイベントの立ち上げに際し、ルーツとヒストリーを調べ直した。

ルーツとして面白いのは、米軍放出品のジャングルハンモックを、ハイキングに使い始めたことから発展していったことだ。この流れのなかから、ハイカーの宿泊道具としてヘネシー・ハンモック (HENNESSY HAMMOCK) が誕生した。

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第二次世界大戦中、アメリカ製のジャングルハンモックを使っているオーストラリアの兵士。

日本のULシーンでは、川崎一さんがブログで紹介したことによって、このヘネシー・ハンモックが、2004年頃に900gを下回るシェルターとして話題になった。

そして現在、アメリカのロングトレイルを歩くハイカーたちは、マダニ対策の実践的な道具として、ハンモックの価値を再発見し、活用している。

このようなルーツ&ヒストリーを紐解きながら、現在の日本におけるハンモックの価値を語り合ったレポートである。


A to Z (その2):ハンモックの選び方。


■ Article2 ハンモックの最新スペック調査
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現在、各メーカーからいろいろなタイプのハンモックが販売されている。そのスペックをリサーチして、大きく3つのタイプに分類した、『TRAILS research』(トレイルズ・リサーチ) のレポート。ハンモック選びの最初のガイドとして、ぜひ活用してもらいたいデータだ。

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『快適性』を表す軸として、「Width 横幅」を採用して整理した。快適性には、幅の広さ以外にも、素材や構造など複数の要素があるが、シンプルに整理できる指標を採用。

『ウルトラライト(UL)ハンモック』: 今後変わる可能性はあるが、現段階では200g以下であることが境界線となりそうだ。幅は120cm前後のミニマムなものが、ここに区分される。

『ライトウェイト(LW)・ハンモック』: 2018年頃からのトレンドは、「軽量さ」と「快適性」を兼ね備えたラインナップの充実が挙げられる。300g以下に抑えつつも、幅150cm以上で寝心地の自由度を高めたものが多い。

『スタンダード・ハンモック』: パッカブルハンモックのクラシックスタイルで、ライトなものよりもしっかりした生地(70デニールの厚み)で、寝心地に優れているのが特徴。ENOの定番Double Nest Hammockなどがこのカテゴリーの代表モデルだ。

ハンモック選びの基準のひとつとして、『軽量性』と『快適性』のバランスがある。自分のハイキングのスタイルに合ったカテゴリーのハンモックを探してほしい。


A to Z (その3):ハンモック・キャンプの方法 (基本)。


■ Article3 ハンモックのキャンプスタイルABC
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次に紹介するのは、ハンモック・キャンプの方法とTIPSをまとめた記事。

ハンモックの上にタープを張れば、基本的な野営環境はできあがる。しかし、ハンモック・キャンプの天敵は「背面の冷え」。この「背面の冷え」対策として、ハンモック・キャンプの基本となる3つのスタイルがある。

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ハンモックでの宿泊スタイルのひとつ「Pea Pod エンドウ豆」では、チューブ状のキルトでハンモックを覆う。

その3つとは、「スリーピングバッグ & スリーピングマット」スタイル、「アンダーキルト & トップキルト」スタイル、「Pea Pod エンドウ豆」スタイルだ。


A to Z (その4):ハンモック・キャンプの方法 (応用)。


■ Article4 ハンモックジャンキーになるためのキャンピングTIPS
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ハンモック・キャンプのAdvance編を紹介したのが、次の記事。

ハンモック・キャンプのアドバンテージとしては、「テントでは得られない、最高に気持ちいい浮遊感」はもちろんのこと、「地面の状況に左右されずに安定して寝られる (枝、下草、岩、泥が多いところや斜面でも、2つの支点さえあればキャンプ&レストできる)」も挙げられる。

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ギアを地面につけず、吊るしておくためのハンギングシステム。

このアドバンテージを活かすため、濡れた地面や斜面でハンモック泊するためのTIPSを整理した。ここまでできるようになれば、ハンモック・ジャンキーの仲間入りだ。


A to Z (その5):ハンモック・ハイカーのスタイル紹介 & ギアレビュー。


■ Article5 ユーザーレビュー
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ハンモック・ハイカーのリアルなレビューを集めた『TRAILS research』(2019実施)。

『HAMMOCKS for Hiker』には、ハンモックの初心者からマニアックな熟練者まで、さまざまなグラデーションのユーザーが遊びにきてくれる。イベントで実施したリサーチでは、会場に来た人の半数以上が「ハンモックを2つ以上持っている」という結果もあった。そんなハンモック・ハイカーのスタイルを見ているだけでも楽しい。

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ハイカーのスタイルから、ハンモックギアへの偏愛ぶりがうかがえる。

この記事では、工夫を凝らしたハンモック・キャンプ用ギアのカスタマイズから、率直なユーザー評価まで、ハンモック・ハイカーのリアルが詰まっている。

ハイカーによって、軽さ優先、寝心地優先などの基準の違いよって、選ぶギアも変わる。また設営方法の簡単さで選ぶ、というのも実にリアルな意見だ。


A to Z (その6):ハンモック・ムービー。


最後に、『HAMMOCKS for Hiker』のイベントの雰囲気がわかる動画を。

その他、TRAILS Youtubeチャンネルでは、たくさんのハンモック・ムービーを公開中。ぜひこちらもチェックしてみてください! (詳しくはコチラ)

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ハンモックのシリーズ記事の第1回目の今回は、「ハンモック・ハイキングの A to Z」というテーマで、ヒストリーから、具体的な楽しみ方やTIPSまで、全体像を把握できるようなレポートとしてまとめた。

次回は、『ハンモックキャンプ 〜宿泊道具としてのハンモック〜』と題して、これまでTRAILS編集部が仲間と一緒に楽しんできた、さまざまなハンモック・キャンプを紹介する。

毎回、新たなハンモックのスタイルやTIPSにトライして遊んでいる僕らを通じて、ハイカーにとってのハンモックの魅力や奥深さを知ってもらえたら嬉しい。

話・写真:石田啓介 構成:TRAILS

『SKI HIKING』は、「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした企画記事だ。BCクロカンは、滑りながら歩けるその機動力で、雪の世界におけるハイキングの旅を拡張してくれる。

TRAILSがBCクロカンに惹かれた理由の詳細は、ぜひこちらの記事をご覧になっていただきたい (SKI HIKING | #05 BCクロカン2021 Second Season)。

今回の「BCクロカンのおすすめ日帰りルート」の第3回目 (最終回) は、栂池 (つがいけ) 自然園だ。

北アルプスの白馬連峰を望むことができる、抜けのいい絶景が広がる栂池自然園。ここは過去2回で紹介したエリアとは異なり、決まったルートもなく、そのためBCクロカンのすいすいと自由に歩き回れる開放感がたまらないフィールドである。

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標高約1,900mにある栂池自然園の広大な雪原を歩いていく。

おすすめルートを紹介してくれるのは、これまでと同じく、ケースケさん (石田啓介さん)。以前、僕らと一緒に信越トレイルをBCクロカンで旅した、名古屋のアウトドアショップ「MOOSE (ムース)」のオーナーだ。

石田啓介 Keisuke Ishida名古屋のアウトドアショップ『MOOSE (ムース)』代表。1978年、愛知県生まれ。先代が創業当時から山でのクロスカントリースキーツアーを開催。その後、約30年前から道具の進化とともに、テレマークスキーへと徐々に移行し今に至る。現在、冬の雪遊びをする人を増やすために、スキー経験が無くても楽しめるBCクロカンの魅力を広めるべく奮闘中。
石田啓介 Keisuke Ishida名古屋のアウトドアショップ『MOOSE』代表。先代が創業当時から山でのクロスカントリースキーツアーを開催。現在、雪遊びをする人を増やすため、BCクロカンの魅力を広めるべく奮闘中。

今回のおすすめルート:長野県・栂池自然園。雪の山岳エリアを歩く。


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まずはゴンドラ (約20分) とロープウェイ (約5分) を乗り継いで、スタート地点へ。ビジターセンターを過ぎると、雪でおおわれた山岳エリアへと入っていく。上記ルートはあくまで参考。定められたルートはないので、どこを経由して戻ってきても良い。ロープウェイは運行期間が限られているため、事前に要確認。

ケースケさん:「今回のルートは、高層湿原で有名な栂池自然園です。グリーンシーズンは、木道を歩きながら湿原や高山植物を楽しめますが、冬季は雪でおおわれ、広大な雪原のなかを歩くことができるのです。

目の前の白馬連峰の絶景を眺めながら、楠川を越えたあたりまで行って、そこから戻ってくるのが、時間的にもちょうどいいと思います。ただ、ルートがあるわけではないので、どこに行ってもOKです。

注意点としては、時期や場所によって雪崩のリスクがあることですね。厳冬期や雪が降った直後は行かないほうがいいでしょう。また、天狗原 (てんぐっぱら) の急斜面には近づかないようにしてください」


長野県・栂池自然園のレコメンド・ポイント。


[1] 歩きメインもよし。ステップアップしたい人は斜面で滑りの練習も。
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バリエーション豊かな地形も大きな特徴。歩き、登り、滑り、BCクロカンの特性をぜんぶ発揮できる。

ケースケさん:「栂池は平坦なところがメインですが、山岳エリアなので、緩斜面、急斜面など、いろんな斜度の斜面もあります。だから、歩きメインの人も、滑りメインの人も、その両方の人も、みんなが満足できるフィールドなんですよ。

たとえば、BCクロカンのレベルが1〜10まであるとすれば、全レベルの人が楽しめるほど、バリエーションが豊かなんです。特に初心者の人は、ステップアップに向けてちょうどいい場所ですね」

[2] 決まったルートがなく、自由に歩き回れる開放感がある。
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定められたルートがないので、自分が行きたいルートを進むことができる。

ケースケさん:「夏場は木道が整備されていてその上を歩くのですが、冬場は一面雪なので、道はもちろん道標もいっさいありません。

トレースがあることも多いですが、それを選んでも選ばなくてもOK。自分の判断で進むことになるので力量が問われますが、自由にルートを描くおもしろさを味わうことができます」

[3] 北アルプスの白馬連峰の絶景。
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前方には白馬連峰。山岳エリアの魅力を存分に味わえる。

ケースケさん:「このエリアは、白馬連峰をはじめ山々が連なる山岳地帯です。これまで紹介した戸隠、北八ヶ岳とは比べものにならないくらいの絶景が広がっています。

そんなエリアを、BCクロカンで軽快に進んでいると、雪山を旅している感覚がより実感できるはずですよ」

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TRAILS編集部の『SKI HIKING』の観点から、栂池自然園のルートのおもしろさを紹介する。

栂池の魅力は、何といっても開放感抜群の北アルプスの山並みを眺めながら、決められたコースのないエリアを、自由にスキーで歩き回れるところだろう。

しかも、平坦なエリアも多く初心者でも十分楽しめるフィールドでありながら、滑りをがっつり楽しみたい人にうってつけの斜面もある。

危険なところに行かないように、地図読みやGPSでの現在地確認には注意する必要はあるが、BCクロカンの機動力と自由度を、ばっちりと体感できるはずだ。

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SKI HIKING | #07 BCクロカンおすすめ日帰りルート 長野県・北八ヶ岳

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SKI HIKING | #05 BCクロカン2021 Second Season

話・写真:石田啓介 構成:TRAILS

『SKI HIKING』は、「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした企画記事だ。BCクロカンは、滑りながら歩けるその機動力で、雪の世界におけるハイキングの旅を拡張してくれる。

TRAILSがBCクロカンに惹かれた理由の詳細は、ぜひこちらの記事をご覧になっていただきたい (SKI HIKING | #05 BCクロカン2021 Second Season)。

今回の「BCクロカンのおすすめ日帰りルート」の第2回目は、北八ヶ岳だ。

北八ヶ岳といえば、スノーシューでのハイキングのイメージが強いが、実はBCクロカンでハイキングすると、スノーシューとは違った楽しみを体感できる。

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標高2,000mを超える北八ヶ岳のルートは、高所ならではの景色が堪能できる。

おすすめルートを紹介してくれるのは、前回の戸隠ルートと同じく、ケースケさん (石田啓介さん)。以前、僕らと一緒に信越トレイルをBCクロカンで旅した、名古屋のアウトドアショップ「MOOSE (ムース)」のオーナーだ。

石田啓介 Keisuke Ishida名古屋のアウトドアショップ『MOOSE (ムース)』代表。1978年、愛知県生まれ。先代が創業当時から山でのクロスカントリースキーツアーを開催。その後、約30年前から道具の進化とともに、テレマークスキーへと徐々に移行し今に至る。現在、冬の雪遊びをする人を増やすために、スキー経験が無くても楽しめるBCクロカンの魅力を広めるべく奮闘中。
石田啓介 Keisuke Ishida名古屋のアウトドアショップ『MOOSE』代表。先代が創業当時から山でのクロスカントリースキーツアーを開催。現在、雪遊びをする人を増やすため、BCクロカンの魅力を広めるべく奮闘中。

今回のおすすめルート:長野県・北八ヶ岳。雪の林道を歩く。


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山麓駅から山頂駅までは、ロープウェイで約7分。山頂駅からスタートして、雨池で折り返して帰ってくる。コースタイムは約3時間。人気の登山ルートでもあるため道は明瞭だが、高所ゆえ天候が悪い時は避けること。また、ロープウェイの最終便に乗り遅れるとゲレンデで下ることになるため、事前に要確認。

ケースケさん:「今回のルートは、無雪期のハイキングでも人気のコースです。標高2,000m以上のエリアながら、ロープウェイで一気にスタート地点まで行けるので、アクセスも抜群です。

ロープウェイの山頂駅をスタートすると、すぐに坪庭と呼ばれる自然園が広がっています。そこを経て、樹林帯を下って林道へ。林道を抜けると、折り返し地点の雨池にたどり着きます。開放感満点なので、ここでのんびり休憩するのがいいでしょう。

途中、勾配の急な樹林帯もありますが、そこはスキー板を外して担ぐか手に持つかして歩けば大丈夫です。手軽に高所でのBCクロカンが楽しめるので、僕もツアーでよく足を運んでいます」


長野県・北八ヶ岳のレコメンド・ポイント。


[1] なだらかな林道がBCクロカンでは最高の道になる
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なだらかな林道も、BCクロカンだとスピード感あるハイキングに変わる。

ケースケさん:「林道はBCクロカンだと、気持ちいい道になるんですよ。フラットかつ単調で、歩きだと退屈になりがちな林道が、別物になります。

今回のルートでは、大石川林道というなだらかな林道を通ります。ここをBCクロカンで歩くと、スノーシューに比べてかなりのスピードで進むことができるので、気分がアガると思いますよ」

[2] 凍結した湖を縦横無尽に滑って歩ける
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冬の雨池は、広大で、一面真っ白。BCクロカンだとすいすいと進んで、駆け回れる。

ケースケさん:「折り返し地点の雨池は、冬季は湖面が全面凍結し、雪が積もっています。冬ならではの幻想的な光景は見るだけでも楽しいですが、この広い湖面をBCクロカンで縦横無尽に歩きまわるのもおすすめですね。

BCクロカンで風を切って進んでいると、フラットな湖面はまるでスケートリンクのようで、平地を滑る楽しさが実感できるはずです」

[3] 整備された登山道なので迷いにくい
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人気の登山ルートということもあり、整備が行き届いている。

ケースケさん:「このルートは、年間通して人気のハイキングルートでもあります。登山道として整備されているため、道標があるのはもちろん道も明瞭なので、迷いにくいでしょう。

また、トレースもしっかりあることが多いので、BCクロカンに慣れていない人でも、比較的、歩きやすいですね」

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TRAILS編集部の『SKI HIKING』の観点から、今回の北八ヶ岳ルートの魅力を紹介したい。

最大の魅力は、長い林道だ。歩きだと退屈になりがちな林道が、BCクロカンだとすいすいとスケーティングしながら進めるので、疾走感を楽しめるトレイルに変わるのだ。

また、スノーハイキングにおけるメジャールートである。行き慣れた場所だからこそ、いつもの旅との違いを実感しやすいのも面白い。

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SKI HIKING | #06 BCクロカンおすすめ日帰りルート 長野県・戸隠

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SKI HIKING | #05 BCクロカン2021 Second Season

話:石田啓介 写真:小関信平、石田啓介 構成:TRAILS

『SKI HIKING』は、「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした企画記事だ。BCクロカンは、滑りながら歩けるその機動力で、雪の世界におけるハイキングの旅を拡張してくれる。

TRAILSがBCクロカンに惹かれた理由の詳細は、ぜひ前回の記事をご覧になっていただきたい (SKI HIKING | #05 BCクロカン2021 Second Season)。

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BCクロカンで旅した春の信越トレイル。

さて今回からは、3回連続で「BCクロカンのおすすめ日帰りルート」をレポートする。

なぜルート案内か。それは、BCクロカンはどこで遊べばよいのか、という遊びのフィールドに関する情報がきわめて少ないからだ。今回の記事シリーズが、BCクロカンにビビッときた人にとって、エントリーするためのナビゲーションになればと思う。

おすすめルートを紹介してくれるのは、以前に僕らと一緒に信越トレイルをBCクロカンで旅した、名古屋のアウトドアショップ「MOOSE (ムース)」のオーナーである、ケースケさん (石田啓介さん) だ。

石田啓介 Keisuke Ishida名古屋のアウトドアショップ『MOOSE (ムース)』代表。1978年、愛知県生まれ。先代が創業当時から山でのクロスカントリースキーツアーを開催。その後、約30年前から道具の進化とともに、テレマークスキーへと徐々に移行し今に至る。現在、冬の雪遊びをする人を増やすために、スキー経験が無くても楽しめるBCクロカンの魅力を広めるべく奮闘中。
石田啓介 Keisuke Ishida名古屋のアウトドアショップ『MOOSE』代表。先代が創業当時から山でのクロスカントリースキーツアーを開催。現在、雪遊びをする人を増やすため、BCクロカンの魅力を広めるべく奮闘中。

今回のおすすめルート:長野県・戸隠。雪の参道を歩く。


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戸隠高原には、戸隠クロスカントリーツアーコースが設定されている。その中でも、今回紹介するのは奥社・牧場コース。

ケースケさん:「このルートは、戸隠高原にある戸隠クロスカントリーツアーコースの一部です。昔からあるクロスカントリースキーのコースなので、もちろんBCクロカンにもピッタリですよ。

戸隠キャンプ場からスタートして、丸山をトラバースしながら随神門 (ずいじんもん) へ。そこから参道を通り、戸隠奥社入口から、さかさ川沿いを歩きながらスタート地点へと戻る周回コースになります。

のんびりまわって5時間くらいですね。アップダウンも少なく、BCクロカン初心者でも行きやすいルートです」


長野県・戸隠のレコメンド・ポイント。


[1] 雪化粧した参道を歩くことができる
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戸隠神社の随神門 (ずいじんもん) は、神聖な空気につつまれている。

ケースケさん:「雪が積もった参道を歩くことなんて、なかなかないですよね。しかも戸隠神社の参拝シーズンは無雪期なので、人もほとんどいません。

そんなひっそりと静まり返った参道を、BCクロカンで滑るように歩くのは、とても新鮮な感覚です。この雪の季節だからこそ味わうことができる体験ですね」

[2] ゆるやかな起伏でスピード感を体感できる
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アップダウンが少なく歩きやすいのも、このルートの特徴。

ケースケさん:「無雪期は、スタート地点〜随神門の区間が、ささやきの小径という散策コースとして親しまれています。でも雪が積もるとその道は見えなくなるので、どこでも自由に歩くことができます。

アップダウンが少なくスノーシューでも楽しめますが、BCクロカンだと滑るように歩くので、ゆるやかな傾斜をダイレクトに感じられるんですよね。わずかな起伏でさえスピードに強弱が生まれるので、アップダウンを楽しむことができると思いますよ」

[3] 冬用の道標が頼りになる。
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スキー板を履いたクマのイラストが目印。

ケースケさん:「雪山では基本的にナビゲーションスキルが求められますが、ここはクロスカントリーコースに指定されているので、要所要所に積雪期でも視認性の高い道標があるんです。

もちろん地図やGPSアプリは必須ですが、それにプラスしてこの道標も頼りにして歩けば、比較的迷いにくいと思います」

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TRAILS編集部の『SKI HIKING』の観点から、今回の戸隠のルートの面白さをピックアップすると大きく2つある。

まずは、雪景色の神社の参道をハイキングできることだ。山のなかにある神社の参道も、BCクロカンならば、遊びのフィールドになる。日本らしい雪景色のなかを、スキーでハイキングできるというのは、他にはない感覚だ。

もうひとつは、トレイルサインのある安心感だ。もちろんノートレース (道がない) のエリアもある雪上の遊びゆえ、地図とGPSアプリは必須。とはいえ、BCクロカンをこれから始めたい人にとって、このようなナビゲーションは、大きな助けとなるだろう。

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SKI HIKING | #05 BCクロカン2021 Second Season

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SKI HIKING | #01 BCクロカンの誕生とそこから広がる旅の世界

ひさしぶりの『SKI HIKING』。「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした企画記事だ。

2年前に掲載した『SKI HIKING』の4つの記事は、TRAILS編集部で想像した以上に多くの反響をいただいた。1年前は緊急事態宣言で掲載できなかったが、今シーズンはこの企画記事の続編をリリースしていく。

今回の記事では、「BCクロカンとは?」という出発点を、過去記事をRevisitしながら、TRAILSがBCクロカンの何に惹かれているのかを、あらためて伝えていきたい。

次回の記事からは、情報が少ない「BCクロカンで遊べるフィールド」について3回連続でお届けしていく。

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BCクロカンによって、雪の旅の世界が広がる。


TRAILSがBCクロカンに惹かれた理由。


そもそも僕たちTRAILSがBCクロカンに興味を抱いたのは、BCクロカンがスノー・ハイキングの旅を拡張してくれるツールだからだ。

スノー・ハイキングのツールとしてはスノーシューがメジャーだが、BCクロカンは滑りながら歩けるため圧倒的な機動力を持つ。もちろん登る、滑降することもできる。それゆえ、スノーシューと比べ、より速く、より遠くまで旅することが可能になる。くわえて、ブーツがプラスチック製ではなく革製で、扱いやすいことも魅力的だった。

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2019年4月にBCクロカンで旅した、雪の信越トレイル。

この圧倒的な機動力は、衝撃的だった。それは僕たちがパックラフトに出会った時のインパクトと近しいものだった。パックラフトは、ハイキングと川下りの世界を接続し、ハイキングの旅を拡張してくれるツールとして衝撃を受けた。BCクロカンも、従来のスノー・ハイキングにはない機動力と移動範囲で、雪の旅を拡張してくれるツールだと感じたのだ。

BCクロカン自体は、今にはじまったわけではなく昔から存在しているものであり、TRAILSでもさまざまな形でチェックしてきたし、その魅力も頭では理解していたつもりだった。しかし、2019年に旅した『NIPPON TRAIL #06 北加伊道・クスリの道』で、その認識に大きなアップデートがあった。それは、旅の体験を通してでしか気づけなかったであろう、BCクロカンでフラットなフィールドをスノーハイキングする可能性の再発見だった。

次のチャプターからは、過去の記事を振り返りながら、そもそもBCクロカンとは何か? をはじめ、BCクロカンの誕生秘話、「BC」という名前に込めたもの、BCクロカンのギア、旅の楽しみ方といった全体像を捉えなおしていきたい。


BCクロカンのルーツを知ろう。


1回目の記事『SKI HIKING | #01 BCクロカンの誕生とそこから広がる旅の世界』では、BCクロカンのルーツに迫った。

背景にあるテレマークスキーの存在や、BCクロカンの名前の由来、誕生背景、使用する道具などについて、BCクロカンといえばこの二人! という日本におけるBCクロカンのパイオニアである氣田稔充さんと石木田博さんへのインタビューした記事だ。

またTRAILS編集部的な観点として、Ambassadorのトラウマや、アンドリュー・スクーカといった、ロング・ディスタンス・ハイカーやULハイカーのSKI HIKINGについても紹介した。

SKI HIKING | #01 BCクロカンの誕生とそこから広がる旅の世界
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BCクロカンの魅力や楽しみ方、使うギアを知ろう。


2回目の記事『SKI HIKING | #02 BCクロカンに魅せられた7人』では、まさに今BCクロカンにハマっている人たちに、それぞれのBCクロカンの楽しみ方と、使っているギア (板、ビンディング、ブーツ、ポール) を紹介してもらった。

BCクロカンの楽しみ方の広がりを感じられる内容であり、またギアの入門的な情報として読んでもらえる記事となっている。

SKI HIKING | #02 BCクロカンに魅せられた7人
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BCクロカンならではの旅を知ろう。(海外編)


3回目の記事『SKI HIKING | #03 BCクロカンで旅する、厳冬期のイエローストーン国立公園』では、冬のイエローストーン国立公園(アメリカ)を舞台にした、BCクロカンのトリップレポートを紹介した。

「最低気温はマイナス40℃ !? 厳冬期のイエローストーンで、オオカミの群れを追え!」という、探検隊的なノリの2泊3日の旅。BCクロカンの機動力の高さ、旅の道具としてのポテンシャルの高さが伝わってくる記事だ。

SKI HIKING | #03 BCクロカンで旅する、厳冬期のイエローストーン国立公園
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BCクロカンならではの旅を知ろう。(国内編)


4回目の記事『SKI HIKING | #04 BCクロカンで旅する、春の信越トレイル』では、雪に覆われた信越トレイルにおける、1泊2日のトリップレポートを紹介。

いつもは初夏か秋に訪れている信越トレイルを、雪景色の中でハイキングしてみたい! という衝動から、BCクロカンで旅をしてきた。歩いて、登って、滑れるBCクロカンならではの旅のスタイルを知ることができる記事だ。

SKI HIKING | #04 BCクロカンで旅する、春の信越トレイル
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次回からは、3回連続で「BCクロカンのおすすめ日帰りルート」をお届けする。

なぜルート案内か。それは、BCクロカンはどこで遊べばよいのか、という遊びのフィールドに関する情報が極めて少ないからだ。

TRAILSとしては、今回からスタートした今シーズンの『SKI HIKING』の記事が、BCクロカンにビビッときた人にとって、エントリーするためのナビゲーションとなればとても嬉しい。

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SKI HIKING | #01 BCクロカンの誕生とそこから広がる旅の世界

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SKI HIKING | #02 BCクロカンに魅せられた7人

話・写真:利根川真幸 構成:TRAILS

2020年10月1日に開通した北海道の『摩周・屈斜路 (ましゅう・くっしゃろ) トレイル (MKT) 』(※1)。

この後編の記事では、今回旅した利根川真幸 a.k.a. TONY (以下、トニー)に、摩周・屈斜路トレイルの旅を総括してもらった。

PCT (※2) をスルーハイキングした経験があり、毎年のように日本のトレイルも旅しているトニーに、『摩周・屈斜路トレイル』はどう映ったのだろうか。

ハイキング、釣り、パックラフティングとやりたいことを詰め込んでみた、今回の旅の振り返りとともに、トニーにとってMKTはどんなトレイルだったのかを語ってもらった。

※1 摩周・屈斜路トレイル (MKT):阿寒摩周国立公園内にある全長44kmのトレイル。「火山と森と湖の壮大なカルデラをたどる道」というコンセプトのとおり、摩周湖と屈斜路湖という2つのカルデラ湖を渡り歩き、火山がつくり出した独特の自然景観、温泉街や野湯、また古くからあるアイヌのコタン(集落)を通りながら歩くトレイル。

※2 PCT:Pacific Crest Trail (パシフィック・クレスト・トレイル)。メキシコ国境からカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州を経てカナダ国境まで、アメリカ西海岸を縦断する2,650mile (4,265㎞) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。

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摩周・屈斜路トレイルのつつじヶ原自然探勝路から望む硫黄山。


遊び尽くしたつもりだったが、むしろもっと旅を広げられると感じた。


—— 編集部:まず、4日間の旅を振り返って、どうだった?

トニー:「旅が終わった直後は、終わっちゃったなぁという少しさみしい気持ちと、4日間遊び尽くした! という満足感の両方がありました。

でも少し時間が経つと、また歩きたい! まだ足りない! っていう気持ちのほうが強くなりました」

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今回の行程は、DAY1〜2がMKTのセクションハイキングで、DAY3〜4が釧路川のパックラフティング。「DAY1:川湯温泉駅〜川湯温泉」「DAY2:川湯温泉〜コタン」「DAY3:コタン〜摩周大橋」「DAY4:標茶〜塘路」。

—— 編集部:現時点でやりたかったことを、詰め込めたんじゃないの?

トニー:「4日間という限られた日数でできることは、すべてやり尽くしたと思うんですが、もっと長く歩きたかったし、もっと釣りもしたかったし、パックラフトも釧路の市街地まで漕ぎたかったなと。

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屈斜路湖では釣りも楽しんだ。

摩周・屈斜路トレイルは、東は北根室ランチウェイ (※3) にもつながっていて、西は釧路川にもつながっています。トレイルとしてのポテンシャルがすごく高いので、遊び尽くすにはもっともっと時間が必要ですね。だから、一度旅したからってこれで終わりではなく、次も来るぞ! と思いました」

※3 北根室ランチウェイ:2020年10月に閉鎖が発表され、すでにクローズとなった。TRAILSとしては、また違った形でもこのトレイルが残りつづけることを願っているし、そのあり方を模索している。ただし、ステージ5〜6があった摩周湖外輪山のトレイルは、既存の登山道として歩くことができる。

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念願だった釧路川でのパックラフティング。


歩くことで、ロング・ディスタンス・ハイキングのカルチャーへ恩返しがしたい。


—— 編集部:トニーは、2015年にスルーハイクしたアメリカのPCTが、ロング・ディスタンス・ハイキングの原体験だよね。以来、いろいろ歩いているけど、トレイルの何に惹かれてるの?

トニー:「トレイルを長く歩くっていう行為自体も楽しいんですが、それ以上に、その歩き旅の途中での出来事がやっぱり面白いんですよね。人に出会ったり、大自然に浸ったり、のんびり釣りをしたり」

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PCTでは、たくさんのハイカーと出会った。

—— 編集部:歩くこと自体だけじゃなくて、旅の途上での “出来事” が大事だっていうのはよくわかる。トニーは、その “出来事” を求めて、今回の摩周・屈斜路トレイルをはじめ国内のさまざまなトレイルを歩いていると。

トニー:「PCTでの経験は自分にとっては一生忘れられないものです。帰国してあらためてロングトレイルのことを考えた時に、これからは自分のライフワークとして、少しでもロングトレイルのカルチャーに恩返しができればと思いました。それで毎年1回は、日本のトレイルを歩くようにしているんです。

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牧場地帯が印象的な「北根室ランチウェイ」。

もちろん単純に楽しみたいという思いもありますが、一方で、人や地域のためと言ったらおこがましいですが、自分が歩いてトレイルの情報をアップデートしたり発信したりすることで、役に立てたらなと。地域に住んでる方や、地方自治体、トレイルに関わっている方に、少しでも貢献できればと思って旅をしています」

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「塩の道トレイル」でのテント泊。


やっぱり日本のトレイルは、海外よりも人と接しやすくてストレスが少ない。


—— 編集部:アメリカのトレイルと比べて、日本のトレイルはどう?

トニー:「日本のトレイルを歩いて感じるのは、当たり前かもしれませんが、人との接しやすさですね。自分は人との距離感をはかることが苦手なほうなので、なかなか一歩が踏み出せないんです。

PCTを歩いた時は英語もそんなにできないから、なおさら距離感がわからなくて本当に苦労しました。でも日本だと、文化や習慣の違いはあれど、同じ言語で話せるし打ち解けやすいですよね。

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摩周・屈斜路トレイルにある硫黄山レストハウス。

あとは海外と比べると日本のトレイルは補給がしやすい。特に摩周・屈斜路トレイルは、トレイル沿いに川湯温泉や屈斜路湖、コタンといった観光地もあれば、レストハウスやコンビニなども要所要所にあります。オンシーズンならキャンプ場も複数あるので、本当に便利ですね」

—— 編集部:たしかに、国内だからこそ気軽に旅ができるよね。

トニー:「PCTを歩いていた時、現地のハイカーは何かあれば途中で家に帰ったりしてたんです。それは自国だからこそできることなんですよね。日本のトレイルであれば、僕も同じようにできるわけです。そういう自由度だったり気楽さみたいなのはありますよね」

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今回の4日間の旅のスタート地点「川湯温泉駅」には、カフェや足湯が併設されていた。


2021年は、信越トレイルの延伸区間や、みちのく潮風トレイルを歩いてみたい。


—— 編集部:2021年は、どこのトレイルを歩こうと考えているの?

トニー:「1つは、信越トレイルの延伸区間です。計画を知った時からずっと歩きたいと思っていて。延伸によって新潟県の津南を通ることになるのですが、そこで開催されている大地の芸術祭によく行ってたこともあって、好きな地域なんですよ。

もう1つは、みちのく潮風トレイルです。新しいトレイルで、まだまだこれからという段階ですよね。なので、セクションを歩いてみた感想や経験を共有することで、何かしら役に立てればと思っています。

あとは、先の話にはなりますが、長めのまとまった休みが取れたら、自分で地図上に線を引いて、自分なりのトレイルをつなげて歩いてみたいですね。きっといろいろ詰め込みすぎて、遊びきれないくらいのロングトレイルになると思います (笑)」

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トニーの歩き旅は、これからも続く。

ひとつ旅をすると、次にやりたい旅が生まれてくる。その連鎖のなかで、ハイカーは生きている。

そんなことを感じさせてくれるトニーのレポートだった。もっと釣りができる旅にしたい。パックラフトで、もっと先まで漕いで行きたい。もっと遠くまで歩きたい。トニーからはそんなハイカーのピュアな衝動が溢れ出ていた。

どうやら、彼の旅はこれで終わりというわけではなさそうだ。次はどんなスタイルで旅するのか、今後のトニーの旅も楽しみだ。

今シーズン、摩周・屈斜路トレイルを歩きたいと思っている人は、今回3回にわたって紹介したトニーのトリップレポートと合わせ、TRAILSが旅したMKTの記事も参考にしてみてください。

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